出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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短編の中編を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。

なお、今回の投稿にあたり、第50.5話のタイトルと後書きを一部変更しております。


第50.6話:歓迎とお疲れ様の食事会ー中編ー

雷鳥side

 

 買い物を済ませ、俺達に合流した出久と麗日だったが、別れる前とその雰囲気が少し違っていた。これは、もしかして…。

 

「……緑谷ちゃん、お茶子ちゃん。おめでとう」

 

 あ、俺よりも早く梅雨ちゃんが口を開いたか。そして、その言葉が意味する事は…まぁ、()()()()()だよな。

 

「フッ、()()()()」 

 

 静かにそう呟き、密かに悪い笑みを浮かべてみる。出久の奴も奥手だからな。この位やらないと、上手くいくものもいきやしない。

 

「麗日…」

 

 俺は真顔に戻って麗日の方を向き―

 

「これは出久の叔父として言わせてもらう。これからも、出久の事をよろしく頼む」

 

 深々と頭を下げた。突然の事に麗日も慌てた様子だったが…。

 

「こ、こちらこそ!」

 

 顔を真っ赤にしながらも、そう返してくれた。うむ、これでよし。

 

 

 家に戻り、自前のエプロンとバンダナや三角巾を()()した俺達は、石鹸による洗浄とアルコールによる消毒を手指に施し、キッチンに集合した。

 

「さて、集合時間まであと2時間半弱。会場までの移動時間なんかを考えると、仕込みに使えるのは2時間というところだ。焦らず急いで慎重にやっていこう」

 

 俺の言葉にしっかりと頷いてくれる出久達。ホント、頼りになる3人だよ。

 

「では、担当を割り振らせてもらう。皮担当は出久。焼き餃子用と水餃子用、2種類を作ってもらう。少々力がいる工程がいるから頼んだぞ」

「わかったよ。雷鳥兄ちゃん」

「タネは焼き餃子が3種類に水餃子が1種類の合計4種類。まずは焼き餃子用を俺、梅雨ちゃん、麗日で作っていこう」

「ケロケロ。美味しい餃子を作りましょうね」

「頑張ります!」

「それぞれのレシピは冷蔵庫に貼っているけど、解らない事があったら遠慮なく聞いてくれ。それじゃあ、始めていこう!」

 

 俺の号令で一斉に動き出す出久達。うん、気分はまるで料理長だな。

 

 

出久side

 

 雷鳥兄ちゃんお手製のレシピを改めて確認して、僕は皮作りを開始する。

 雷鳥兄ちゃん達が作る様々なタネを包む皮。その出来が悪ければ、折角の餃子が台無しになってしまう。

 

「責任重大。頑張らないと!」

 

 気合を入れた僕は、まず以前雷鳥兄ちゃんが作って冷凍していた鶏ガラスープを、凍ったまま鍋に入れ、強火で加熱。

 更に秤を使って薄力粉と強力粉を正確に計量していく。

 そうしていると、以前雷鳥兄ちゃんが言っていた事をふと思い出した。

 

 -なんで皮まで手作りするのかって? まぁ、市販の皮でも十分美味い餃子は作れるさ。でもな…俺の経験上、皮まで手作りした方が、間違いなく餃子は美味い!-

 -時間に余裕があるなら、ギリギリまで拘って、最高最善を目指したい。まぁ、ある意味俺の悪癖だな-

 

 最後の最後まで最善を尽くす。それはヒーローにとっても大切な事だ。雷鳥兄ちゃんの姿勢…見習わなきゃ。

 

「えっと、同量の薄力粉と強力粉を混ぜ合わせ、一度(ふる)う」

 

 篩った粉は焼き餃子用と水餃子用、それぞれ3対1に分けておく。

 

「まずは焼き餃子用から」

 

 その頃には加熱していた鶏ガラスープは相当熱くなっているから、火を消し―

  

「少しずつ…慌てずに」 

 

 熱々の鶏ガラスープを少量ずつ、粉に加えながら菜箸を使って混ぜ合わせる。

 粉とスープが混ざり、ある程度まとまった頃には、生地は触れる程度まで冷めているので、調理用のゴム手袋をつけた手で打ち粉をした台の上に乗せる。

 

「ここからは力を込めて…捏ねる!」

 

 力を込めて5分も捏ねれば、耳たぶ程度の硬さのしっとりまとまった生地になる。ボウルに戻し、ラップをかけて暫く生地を寝かせよう。

 

「次は水餃子用っと」

 

 同じ要領で水餃子用の生地も作っていくけど、ここで大切なのは熱いスープではなく冷めたスープを使う事。

 雷鳥兄ちゃん曰く、熱いスープやお湯で捏ねると、小麦粉の中のグルテンが熱で糊化(こか)し、軟らかくモチモチした生地になり、焼き餃子向き。

 逆に冷たいスープや冷水で捏ねると、グルテンが形成され、粘りや弾力が増した伸びの良い生地になり、水餃子向きになるそうだ。

 

「雷鳥兄ちゃんは、何でも知ってるなぁ」

 

 水餃子用の生地を捏ね終わり、ラップをかけた僕はそんな事を呟きながら、麦茶で水分補給。そして-

 

「雷鳥兄ちゃん。皮の方は一段落したよ」

「じゃあ、もやしの方の下拵えを頼む」

「芽とひげ根を取っていけば良いんだね?」

Exactly(そのとおり)

 

 付け合わせのナムルを作る為に、もやしの下拵えに取り掛かる。10袋分のもやしはまさに大量の一言。手早くやっていかないと!

 

 

お茶子side

 

「よし、出来た」

 

 餃子のタネ作り。私が担当する事になったのは、3種類の焼き餃子の1つ。その名も海老とアボカドのチーズ餃子!

 作り方はまず、殻と背わたを取った海老を粗みじんに切ってボウルにあけたら、お酒と片栗粉を入れて揉みこみ、水洗いして汚れと臭みを取る。

 アボカドは皮を剥いて、種を取ってからフォークを使って潰し、レモン汁を加える。

 水気をしっかり拭き取ったエビとアボカドを混ぜ合わせ、塩胡椒とマヨネーズ、お醤油で味付けすればほぼ完成。

 あとは皮に包む時に、ピザ用のチーズを加える。意外に簡単で正直、助かってます。

 

「吸阪君、こんな感じでいいかな?」

「あぁ、バッチリだ」

 

 出来上がったタネを吸阪君に見せて、OKを貰う事が出来た。あぁ、よかった。

 

「麗日、悪いが一息ついたら、出久の手伝いを頼む。もやしの下拵えやってるから」 

「うん、わかった!」

 

 

梅雨side

 

 吸阪ちゃんから指示を受けて、緑谷ちゃんの手伝いに向かうお茶子ちゃん。傍から見ても解るくらいにウキウキしているわね。

 

「お茶子ちゃん、本当に良かったわ」

「まったくだ」

 

 私の声に同意してくれる吸阪ちゃん。それは嬉しいのだけど…。

 

「私としては、吸阪ちゃんの()()()も知りたいものだわ…」

 

 長葱を微塵切りにしながら、そんな呟きが口から漏れてしまう。

 初めて会った時から、吸阪ちゃんは私へ誠実に接してくれる。でも、それはお茶子ちゃん達、他の女子に対しても同じ事。

 私に好意を抱いてくれている事は、感じているけど…それが友情(Like)なのか愛情(Love)なのかはわからない…もどかしいものだわ。

 

「俺は好きだぜ。梅雨ちゃんの事」

「えっ!?」

 

 不意打ちの様に聞こえてきた言葉に、思わず声のした方を向けば、そこには不敵な笑みを浮かべた吸阪ちゃんの顔。

 

「いや、言わなくても伝わってるよな…なんて思って、口にはしてなかったけど…やっぱり口にしなきゃ駄目だった?」

「………そうね。言葉にしなくても伝わる物は、確かに存在するけど…これに関しては、ちゃんと言葉にしてほしかったわ」

「ごめんな。俺って悪い男だから」

「ホント、吸阪ちゃんは悪い男だわ。台所で愛の告白なんて、流行らないわよ」

 

 私は真っ赤になった顔を隠すように俯きながら、早口でそう言うと餃子のタネ作りを再開する。

 包丁で叩いてミンチにしたマグロの赤身と微塵切りにした長葱、おろし生姜をよく混ぜ合わせ、マヨネーズ、ごま油、塩を加えて更に混ぜ合わせれば…。

 

「はい、ネギトロ餃子のタネ、完成よ」

「ありがとう、梅雨ちゃん」

 

 私が差し出したタネの入ったボウルを受け取り、笑顔を見せてくれる吸阪ちゃん。

 その手元を見れば、私やお茶子ちゃんの作った物の倍近い量のタネが既に出来上がっている。その手際の良さ…流石だわ。

 

 

雷鳥side

 

「よし、これで焼き餃子の準備はOK」  

 

 頷く俺の目の前には、出久の作った生地と、3種類の焼き餃子のタネ。梅雨ちゃんの作ったネギトロ、麗日の作った海老アボカド、そして俺の作ったプレーンが並んでいる。

 

「出久、そろそろナムルの方に取りかかってくれ。水餃子のタネは、俺が一気に仕上げる」

 

 生地とタネが入ったボウルを冷蔵庫に入れながら、俺は出久に指示を送る。

 

「わかったよ。雷鳥兄ちゃん」

「梅雨ちゃんと麗日は、そこのメモを見ながら、紙皿なんかの確認をお願い」

「わかったわ。足りない物があったら、追加しておくわね」

「あぁ、頼むよ」

 

 梅雨ちゃんの声にそう答え、俺は水餃子のタネ作りに取りかかる。

 適当に切ったラム肉を包丁で叩いてミンチにした後、微塵切りにしたセロリ、おろし生姜を加え、塩胡椒、醤油、酒、ごま油で味付けして混ぜ合わせれば、タネの完成だ。

 

「雷鳥兄ちゃん、ナムルの方出来たよ」

 

 出久の方も出来上がったか。予定通りだ。

 

 

 クーラーボックスに、生地とタネの入ったボウルと会場で調理する分の食材、それから多めの保冷剤も入れておく。

 その他の準備も完了して、いつでも出発出来る訳だ。あとは…。

 

「姉さん、本当に昼の用意はしなくていいのかい?」

「えぇ、今日は編集さんと、打ち合わせも兼ねた昼食会だから大丈夫よ」

 

 姉さんの方も問題なし。さぁ、行くとしますか。

 

「それじゃあ、姉さん。行ってきます」

「母さん。行ってきます」

「「おじゃましました!」」

「はい、いってらっしゃい。梅雨ちゃんもお茶子ちゃんも、また遊びにいらっしゃいね」

 

 姉さんに見送られ、俺達は家を後にする。

 さぁ、パーティーの開始はもうすぐだ。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回、食事会完結。
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