出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
第51話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第51話:期末試験に向けて

雷鳥side

 

 盛況の内に幕を閉じた食事会から時は流れ…期末テストまで、残すところ10日程となった頃―

 

「全く勉強してなーい!」

「してなーい!」

 教室に芦戸*1と葉隠*2の声が響く。まぁ、体育祭や職場体験で忙しかったからな……。まぁ、行事が無くても同じ事を言っていたかもしれないが…これは口に出さない方が良いだろう。

 そんな事を考えていると…。

 

「中間はまぁ、入学したてで範囲狭いし、特に苦労なかったんだけどな…」

「行事が重なったのもあるけどやっぱ、期末は中間と違って……」

「演習試験もあるのが、辛えとこだよな」

 

 砂藤*3と口田*4の話に割り込む形で、峰田*5がドヤ顔を披露し―

 

「あんたは同族だと思ってた!」

「そーだそーだ!」

「お前みたいな奴は、バカで初めて愛嬌出るんだろうが……どこに需要あんだよ…」

「まぁ…“世界”かな」

 

 芦戸や葉隠、瀬呂*6にツッコミを受けていた。それにしても、世界とは…峰田もデカイ事を考えているようだ。その方向性は別として…。

 

「芦戸さん、葉隠さん、瀬呂君、頑張ろう! やっぱり全員で林間合宿いきたいもん! ね!」

「うむ!」

「普通に授業受けてりゃ、赤点は出ねえだろ」

 

 そんな3人を見て、出久*7、飯田*8、轟*9の3人が、それぞれなりのフォローを入れ―

 

「お三方とも、座学でしたら私…お力添え出来ると思います」

 

 更に八百万*10が救いの手を差し伸べた。 

 

「ヤオモモー!!」

「ありがとー!!」

「マジで助かる!!」

 

 その言葉に諸手を挙げて喜びを表す芦戸達。更に―

 

「お三方じゃないけど、ウチもいいかな? 2次関数、ちょっと応用躓いちゃてて」 

「俺もお願い出来るかな?」

「俺も頼むぜ!」

 

 耳郎*11、尾白*12、切島*13が次々と八百万に助けを求めていく。

 

「良いデストモ!!」

 

 皆から頼られた事が嬉しいのか、ハイなテンションの八百万だが…ふむ、これは八百万1人だけでは、手が足りないな。助け舟を出してみるか。

 

「いっその事、合同勉強会でも行うか?」

 

 

出久side

 

「いっその事、合同勉強会でも行うか?」

「合同勉強会! それは良いアイデアですわ!」

 

 雷鳥兄ちゃん*14の発した一言に、思いっきり食いついてくる八百万さん。これって…ちょっとテンション高すぎない!?

 

「では、今度の週末にでも、私の家でお勉強会を催しましょう!」

「うわぁ、ヤオモモん家、マジで楽しみー!」

「あぁ! そうなるとまず、お母様に報告して()()を開けていただかないと…!」

 

 え? 講堂!? 

 

「皆さん、お紅茶はどこかご贔屓ありまして!?」 

 

 紅茶のご贔屓!?

 

「我が家はいつもハロッズかウェッジウッドなので、ご希望がありましたら用意しますわ!?」  

 

 え、えーと…八百万…さん?

 

「必ずお力になってみせますわ…」

 

 なんというか…すっかりやる気になっている八百万さん。育ちの良さを見せつけられた気がしないでもないけど、厭味さを感じさせないのは、彼女の生まれ持った品の良さのおかげなのだろう。

 

「………」

 

 あれ? 八百万さんの表情が急に曇った。どうしたんだろう?

 

 

八百万side

 

「必ずお力になってみせますわ…」

 

 皆さんのお力になろうと決意を固めた次の瞬間。

 

 -百ちゃんの言っている事。よくわかんない!-

 

 過去の記憶が不意打ちのように蘇り、大きな不安に襲われました。

 この記憶は…そう、幼稚園の頃。今のようにお友達を家に招待しようとした時の記憶。

 

 -百ちゃんとお話ししてても面白くない! もう遊ばない!-

 

 私はただ、お友達に喜んでもらいたいだけでした。でも、お友達から見れば、私は小難しい事を次々と並べたてる訳のわからない存在でしかなくて…。

 きっと、皆さんも戸惑っておられるのでしょうね…あぁ、またやってしまいましたわ。

 

「紅茶か…個人的にはダージリンの夏摘み(セカンドフラッシュ)が好みだな」

 

 え…吸阪さん。今、なんと仰いました?

 

「おや、吸阪君は夏摘み(セカンドフラッシュ)が好みなのかい? 僕はダージリンなら春摘み(ファーストフラッシュ)が好みだよ」

 

 青山さん*15まで…これって、もしかして…。

 

「あぁ、春摘み(ファーストフラッシュ)の爽やかな香りも良いと思うが、味の深みという点では、夏摘み(セカンドフラッシュ)の方に軍配が上がるだろう」

「たしかに…でも、春摘み(ファーストフラッシュ)の爽やかな香りはIl est difficile de remplacer quoi que ce soit(何物にも代え難い)

「それに関しては同感だ。それにしても、青山が紅茶好きとは思わなかったな。フランスはどちらかというとコーヒーが人気だろ?」

「日頃飲むのはコーヒーがメインだけど、嗜好品としての紅茶はTrès populaire(大人気だよ)

「素晴らしいですわ! 紅茶を嗜まれる方がお二人も! お任せください。茶器も茶葉も最高の物をご用意いたしますわ!」

「うん! よくわからないけど、ヤオモモおススメの…いろはす? でいいよ!」

「ハロッズですね! かしこまりましたわ!」

 

 あぁ、私はなんて愚かだったのでしょう。過去の失敗に囚われるあまり、大切な事に気がつかなかっただなんて…そう、今はあの頃とは違う。今ならばきっと皆さんにわかっていただけますわ!

 その為にも、最高の物を用意しなくては!

 

 

出久side

 

 雷鳥兄ちゃんと八百万さんのやり取りから、開催が急遽決定した合同勉強会。

 雄英体育祭前の合同特訓のように、中間テストの成績上位者。八百万さん、雷鳥兄ちゃん、飯田君、僕、轟君の5人で、他の皆を指導する形になりそうだ。

 当然の事ながら、全員参加…1人で3人を担当か。林間合宿に行けるかどうかもかかっているから…責任重大だ。

 

 

「普通科目は授業範囲内で、まだなんとかなるけど…演習試験が内容不透明で怖いね…」

 

 昼休みの大食堂。大盛りカツ丼を前にそんな事を呟くと―

 

「突飛なことはしないと思うがなぁ」

「普通科目はまだなんとかなるんやな………」

「一学期にやった事の総合的内容」

「と、だけしか教えてくれないんだもの…相澤先生」

「戦闘訓練と救助訓練。あとはほぼ基礎トレだよね」

 

 飯田君や葉隠さん、梅雨ちゃん*16、麗日さん*17がそう返してくれた。 

 うん、演習試験の内容がわからない以上、あらゆる事態を想定して体力面も万全に―

 

「ッ!」

 

 次の瞬間、背後に感じる気配。咄嗟に手を出して、頭に迫っていた()()を受け止める。

 

「物間君。ちゃんと前を見てないと危ないよ」

「………あぁ、ごめん」 

 

 数秒間沈黙してから、渋々僕に謝罪する物間君。表情は取り繕っているけど、微かに口元がヒクついているのがわかる。

 本当は事故に見せかけて、僕の頭に一発入れたかったんだろうけど…残念だったね。そんな事を考えていると―

 

「そういえば、緑谷君。君やそこにいる吸阪君、轟君は保須市で大活躍だったそうだね。チンピラや(ヴィラン)を随分と捕まえたとか…」

「体育祭に続いて、注目を浴びる要素ばかり増えていくよねA組って…ただ、その注目って、期待値とかじゃなくてトラブルを引きつける的なものだよね」

「あぁ怖い! いつか君達が呼ぶトラブルに巻き込まれて、僕らにまで被害が及ぶかもしれないなぁ! あぁこw…」

「洒落にならん事言うんじゃない。飯田の件知らないとは言わせないよ」

 

 下種一歩手前な顔で物間君が僕達を煽り、拳藤さんの一撃で沈められていた。なんと言うか…拳藤さんも大変だなぁ…。

 

「ごめんなA組。こいつ心がちょっとアレなんだよ」

「大丈夫。物間君の心がアレなのは、体育祭で把握しているし」

 

 拳藤さんの謝罪に笑顔でそう答えると、拳藤さんは苦笑し―

 

「あんたらさ、さっき…期末の演習試験が不透明とか言ってたね」

「入試ん時みたいな対ロボットの実戦演習らしいよ」

 

 耳寄りな情報を提供してくれた。

 

「えっ!? 本当!? 何で知ってるの!?」

「私、先輩に知り合いいるからさ。聞いた。ちょっとズルだけど」

 

 ズルじゃないよ! そうだ、きっと前情報の収集も試験の一環として織り込まれていたんだ。

 

「そうか…先輩に聞けばよかったんだ。なんで気が付かなかったんだ」

「緑谷ちゃん。声が出てるわよ」

「………ごめんなさい」

 

 梅雨ちゃんの声と、若干引き気味の拳藤さんを見て、思考が途中から口に出ていた事に気づく。あぁ、またやってしまった…。

 

「ば…馬鹿なのかい拳藤……せっかくの情報アドバンテージを! こ、ココこそ憎きA組を出し抜くチャンスだったんd…」

「憎くはないっつーの」

 

 僕が反省している間に、拳藤さんは意識を取り戻すや否や、再び文句を口にし始めた物間君に、手刀の一撃を叩き込んで去って行った。 

 ロボット相手の実践演習か。内容を事前に知る事が出来たのは、なによりの幸運だ。拳藤さんに感謝しないといけないな。

 

 

雷鳥side

 

「なんだよ、ロボット相手ならラクチンだぜ!」

「やったぁ!」

 

 演習試験の内容がロボット相手の実践演習と知り、安堵の表情を浮かべる峰田や芦戸。たしかに、ロボット相手なら楽な試験だ。

 だが、脳裏に浮かぶ前世の記憶が、演習試験が()()()()()()()()()()事を教えてくれる。

 

「雷鳥兄ちゃん。どうかしたの?」

「吸阪ちゃん、何か言いたげな表情ね」

 

 そんな俺の思いを察したのか、声をかけてくる出久と梅雨ちゃん。さて、上手い事話すとしますか。

 

「いや…俺達がこうやって試験内容を調べる事を、先生達が想定していないと思うか?」

「え……」

 

 俺の一言で動きを止め、油の切れた機械のようなぎこちない動きで、こちらを向く芦戸。峰田も俺の言葉の意味を察したのか、顔色が変わっている。

 

「まぁ、考え過ぎなら良いんだけどさ…ロボット相手で安心している所に、別の試験内容を提示してきそうなんだよね…雄英高校(この学校)

「たしかに…十分考えられるわね」

「そうだとすると…本当の試験内容は、ロボット相手じゃなく……まさか!」

 

 そして、何かに気づく出久。そう、()()()()()さ。 

 

「対ロボットではなく、対人……俺は雄英所属のプロヒーロー(先生達)が相手だと考えてる」

先生達(プロヒーロー)が相手…流石に難易度が高すぎる…」

「あぁ、あまりに分が悪い勝負だ」

 

 俺の声に常闇*18と障子*19から不安気な声が漏れ、他の皆も一様に不安げな表情を浮かべている。

 たしかに1対1(タイマン)なら俺や出久、轟でも厳しい勝負なのは間違いない。だが―

 

「流石に1対1(タイマン)はない筈だ。いくら何でも俺達の分が悪すぎる。恐らく……俺達が2人1組(ツーマンセル)3人1組(スリーマンセル)で、先生1人に挑むって形だろう」

「そして試験だから…先生を倒す以外にも合格条件(抜け道)がある筈だ。例えば…一定時間先生の追跡から逃げ切る。とか…な」

 

 俺の予想という形で、前世の記憶(原作の試験内容)を話せば、皆の不安も少しは薄れたのか、表情も和らいでいく。

 

「そして、演習試験の対策だが…出久、お前が勝利の鍵だ」

「え!? ぼ、僕!?」

「あぁ、知ってるぞ。B組の面々だけじゃなく、()()()()()()()()()を作っている事」

「…バレてたんだ」

 

 俺の指摘に対し、恥ずかしそうに頬を掻く出久。だが、今は何よりも()()が必要だ。

 

「今度の合同勉強会の時、それを使って演習試験の対策も行う。だから、出久。それまでに研究ノートを一応で良い。完成させてくれ」

「完成…」

「そうだ。そいつがA組全体の勝利の鍵になる。お前が頼りなんだ。頼むぞ、出久」

「……わかったよ、雷鳥兄ちゃん。やれるだけの事はやってみる」

 

 そう言って力強く頷く出久。皆の覚悟も決まったようだ。

 さぁ、期末試験に向けて全力を尽くすとしよう。

*1
中間テスト20/20位

*2
中間テスト17/20位

*3
中間テスト13/20位

*4
中間テスト12/20位

*5
中間テスト10/20位

*6
中間テスト18/20位

*7
中間テスト4/20位

*8
中間テスト3/20位

*9
中間テスト5/20位

*10
中間テスト1/20位

*11
中間テスト8/20位

*12
中間テスト9/20位

*13
中間テスト16/20位

*14
中間テスト2/20位

*15
中間テスト19/20位

*16
中間テスト7/20位

*17
中間テスト14/20位

*18
中間テスト15/20位

*19
中間テスト11/20位




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

オマケ

中間テストクラス内順位一覧表

  1位:八百万百
  2位:吸阪雷鳥
  3位:飯田天哉
  4位:緑谷出久
  5位:轟焦凍
  6位:爆豪勝己(※除籍)
  7位:蛙吹梅雨
  8位:耳郎響香
  9位:尾白猿夫
 10位:峰田実 
 11位:障子目蔵
 12位:口田甲司
 13位:砂藤力道
 14位:麗日お茶子
 15位:常闇踏陰
 16位:切島鋭児郎
 17位:葉隠透
 18位:瀬呂範太
 19位:青山優雅
 20位:芦戸三奈

 なお、心操人使は1-Cで中間試験を受けており、クラス内順位は8位。

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