出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
短いですがお楽しみ頂ければ、幸いです。
2019/01/20
指摘を受け、大幅な加筆修正を行いました。
第6話:雄英高校入学試験!(改訂版)
雷鳥side
互いの“個性”をフルに使っての特訓を開始して4ヶ月、雄英高校入試まであと3日となったその日。
「成績上位での合格…ですか」
「一応、理由をお聞かせ願えます?」
特訓を終えた俺と出久は、オールマイトからの『お願い』に首を傾げていた。
「うむ…薄々君達も解っているとは思うけど、ぶっちゃけ私が平和の象徴として立っていられる時間って、実はそんなに長くない」
「…はい」
「だからこそ! 次代の平和の象徴として、私は君達を選んだ! 君達が来た! という事を世の中に知らしめる第一歩として、雄英高校入試では成績上位で合格してほしい!!」
「なるほど…オールマイトの仰りたい事はよくわかりました。でも、
「え?」
「やるからには、ワンツーフィニッシュでしょう! なぁ、出久!!」
「そうだね! 雷鳥兄ちゃん!!」
オールマイトの『お願い』にそう答えを返し、俺と出久は互いの拳をぶつけ合う。
「見据えていたのは、遥か先…か」
そんな俺達を、オールマイトはどこか眩しそうに見つめていた。
そして、3日後。俺達は雄英高校入試に望んでいた。
会場入りする前に、
「今日は俺のライヴにようこそー!! エヴィバディセイヘイ!!」
「こいつぁシヴィー!! 受験生のリスナー! 実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!! アーユーレディ?」
むしろ問題なのは、実技試験のレクチャーを行っているボイスヒーロー『プレゼント・マイク』の滑りっぷりだ。
「ラジオ毎週聞いてるよ。感激だなぁ…」
感銘を受けているのは出久ぐらいだぞ…まぁ、それはさておき…今の説明で事前に調べておいた実技試験内容との確認作業は出来た。
1つ、制限時間10分の間に、市街地を模した演習場で仮想
2つ、仮想
3つ、他人への妨害などアンチヒーローな行為はご法度。
4つ、アイテムの持ち込みは自由。
「これだけわかれば十分だ」
レクチャーも無事終了し、他の受験生達がそれぞれの試験会場へ急ぐ中、俺は少し離れた場所に座っていた出久に視線を送り、簡単なハンドサインでメッセージを送る。
オレノ シケンカイジョウ D
お、返信来た。出久の試験会場はFか。だったら…。
オソラク フイウチ クルゾ キヲツケロ
…了解、そっちも気をつけて。か。どうやら緊張はしていないみたいだな。さて、会場に行くとしますか。
「街じゃん! 敷地内にこんなんがいくつもあんのか!」
背後から聞こえるそんな声に内心同意しつつ、俺はウォームアップを済ませ、事前に準備し、ポケットに突っ込んでおいたベアリングボールと、先端を潰した釘を確認。いつでも“個性”を発動出来る状態で待機していると―
「ハイ、スタートー!」
なんとも気の抜けたプレゼント・マイクの声が聞こえた。
「っしゃぁ!」
それと同時に走り出し、集団を抜け出した俺は“個性”を発動。地面から15cm程浮遊するとそのまま滑走。どんどん試験会場の奥へと進んでいく。
他の連中は…プレゼント・マイクに発破をかけられてようやく動き出したか。序盤のリードを活かして、ポイントを荒稼ぎさせてもらおう。等と思っていると、目の前のビルを壊しながら仮想
「標的捕捉!! ブッ殺―」
「電パンチ!」
耳障りな機械音声を遮る形で、すれ違いざまに電気を纏わせた拳で頭部を一撃。同時に高圧電流を流し込んで無力化する。まずは1P。
「標的捕捉!!」
「標的捕捉!!」
「標的捕捉!!」
すると何かしらの反応を察知したのだろう。近くに潜んでいた3体の仮想
「ブッ殺―」
「やかましい!」
在り来たりな台詞を言わせる暇など与えない。指で弾いたベアリングボールを電磁加速して、仮想
たかがベアリングボールと侮るなかれ。海浜公園を掃除している時に試してみたが、
ちなみに、出久が同じ事をやったら、木の板どころか粗大ゴミの冷蔵庫を貫通していた…。すごいね、筋力。
「お、来た来た」
そんな事を考えていると、会場の中心部から何体もの仮想
「全部で9体。一網打尽といきますか!」
気合を入れなおし、敵集団へ滑走。全機がこちらの射程に入ったところで、右手を突き出し―
「サンダー! ブレークッ!!」
指先から直接放電。薙ぎ払うように9体を一気に無力化する。
「さてお次は……ん?」
軽く呼吸を整え、新たな敵を求めて周囲を見回すと1人の女子が5体の仮想
女子は蛙のような動きで敵集団の攻撃を避け続けているが、多勢に無勢なのは見るまでもない。
「人助けもまたヒーローの道ってね!」
迷う事無く女子の援護を決めた俺は、全力で滑走。ベアリングボールよりも空気抵抗を受けにくい分、長距離を狙える釘を連続で射出して、2Pの2体を無力化。更に―
「暫く、止まってろ!」
両手から磁気を放出して、3Pの3体をまとめて拘束する。
「今だ! 攻撃するなり離脱するなり、好きにしろ!」
「ケロッ!」
俺の声に反応し、跳躍からの両足蹴りで2体。長い舌を巻きつけての投げ飛ばしで1体を無力化する女子。“蛙”の個性か。さっきの回避といい、なかなかのセンスだ。
「大丈夫か?」
「えぇ、攻撃は避け続けたからダメージはないわ」
「ピンチのように見えたんでな。余計なお節介とは思ったが、助太刀させてもらった」
「お節介だなんてとんでもないわ。助けてくれてありがとう」
「あぁ、じゃあ残り6分。お互い最後まで頑張ろうな!」
そう言って女子に背を向けた俺は、新たな敵を求めて移動を開始した。俺の名前を問う声が聞こえた気がするが、こういう時はクールに去るのが格好良いんだよな!
さて、現時点での戦果は1Pの奴が9体に2Pの奴が6体。合計21Pか。主席合格を狙うにはまだまだ足りない。更にギアを上げていきますか!!
残り時間6分。俺は持てる“個性”の全てを駆使して、仮想
途中、直接戦闘には不向きな“個性”を持つ受験生が苦戦していたのを見かけては、磁力で仮想
………散々やっておいて今更だが、これって問題ないよな? たしか、他人への妨害がご法度だったから…まぁ、大丈夫だろう。
そうしている間に制限時間は残り2分を切り…試験会場に変化が起きた。ビル並の大きさをした仮想
「な、なんだよアレ! いくら何でもデカすぎる!!」
「どうせ0Pなんだろ!? だったら、無理に戦う必要なんかねぇよ!」
その巨体に恐れをなしたのか、受験生の殆どが蜘蛛の子を散らすように逃げていくなか、俺は周囲とは反対に巨大仮想
「お、おい! 何やってんだ!」
「馬鹿! あんな奴ほっとけ! 逃げるんだよ!」
周囲からは自殺志願者とでも見られているようだが、奴らは気づいていない。巨大仮想
「ひぃぃぃぃぃっ!! も、もう駄目だ! 潰されるぅ!」
「ケロッ! まだ逃げる時間はあるから落ち着いて!」
おいおい、助けようとしているのはさっきの蛙女子かよ! 多少なりとも知り合っちまった相手なら、猶更助けないとな!
「オラオラオラッ! お前の相手はこっちだ!」
残る全てのベアリングボールと釘を連続で射出し、巨大仮想
「こいつは俺が何とかする! 今のうちにそのちっこい奴を連れて行け!」
蛙女子に指示を下し、巨大仮想
「これで最後だ…ド派手に決めてやるよ! 最大出力! サンダー! ブレーク!!」
俺は今放てる最大出力で放電。落雷にも匹敵する高圧電流で、巨大仮想
「…俺の、勝ちだ!」
白煙を上げながら崩れ落ちる巨体をバックに右手を掲げる俺。こうして俺の実技試験は終了した。
出久side
「ハイ、スタートー!」
プレゼント・マイクの声に反応して、周りよりも早くスタートする事が出来た僕は、緑色のオーラを全員に迸らせながら、試験会場の中心へ向かって疾走する。
半年に及ぶ海浜公園の清掃とその後4ヶ月の猛特訓で、『ワン・フォー・オール』の出力上限は当初の23%から30%にまで上昇したけど、正直どこまでやれるかは未知数。最初から全力だ!
「標的捕そ―」
「はぁっ!」
早速遭遇した仮想
「標的捕捉!!」
「標的捕捉!!」
「標的捕捉!!」
しまった! 派手に吹き飛ばしたせいで、周りの仮想
「でぇぇぇいっ!!」
咄嗟に右拳を地面に叩きつけて、僕を中心にした半径5m程の地面を深さ2m程度のすり鉢状に凹ませる。突然の事に仮想
「はぁぁぁっ!」
あとは簡単。僕の間合いに入ってきた仮想
「これで10体! まだまだいくぞぉ!」
試験開始から8分。仮想
途中、苦戦していた受験生を何度か助けたけど、皆お礼を言った後に『パワーが違いすぎる…』『レベルが桁違いだ…』とか青い顔で言っていた。オールマイトに比べたら、僕なんてまだまだヒヨッコなのに…皆! そんな事じゃヒーローになれないよ!
そんな事を考えていると、ビルを破壊しながら、巨大な仮想
「うわぁっ! に、逃げろ!」
「冗談じゃねぇ! あんなのありかよ!」
「倒す必要はないんだ! 戦術的に見て、撤退した方が賢明だ!」
それを見た受験者達は一目散に逃げていく。倒す必要がないから、戦術的に撤退した方が賢明、その判断は決して間違ってはいないだろう。でも、彼らの目には映っていないのか?
「させるかぁっ!!」
あの様子から見て、何かしらの怪我をしているのは間違いない。女の子を回収して離脱するのはタイミング的にギリギリ。だったら!
「うぉぉぉぉぉっ!!」
十分な加速をつけた所でジャンプ!
「一撃! 必倒!」
全力で殴る! 命中の瞬間物凄い破裂音が響き、
「終了ー!!」
着地と同時にプレゼント・マイクの声が響き、僕の実技試験は終了した。
これは余談だけど、助けた女子は試験前に僕を助けてくれた子だった。すぐに担架で運ばれていったから名前も聞けなかったけど、無事に合格しているといいな。
雷鳥side
試験から1週間後。出久と引子姉さんは俺の家、即ち引子姉さんの実家に来ていた。
出久の手には雄英高校からの手紙が握られていて…そう、俺の結果と一緒に見ようというわけだ。
「い、出久も雷鳥もだ、大丈夫よね?」
緊張のあまり、声が上ずっている引子姉さん。俺の両親も声こそ出さないが緊張を必死に押し殺しているのがよくわかる。まぁ、長男と初孫の入試結果を同時に聞かされるわけだから、気持ちはわからなくもない。
「よし、それじゃあ見るか」
「うん!」
両親達と違い、俺と出久は気楽なものだ。入っていた機械を同時に作動させれば―
『『私が投影された!!』』
それぞれ映し出されるオールマイト。どうやら来年度から雄英高校の教師になるらしい。他にも何か話したがっていたが、画面外から何やら指示を受けたらしく、合否の発表となった。
まず、筆記試験だが…これは俺も出久も合格ラインを余裕でクリア。そして実技試験は―
『緑谷出久! 撃破ポイント85P! 文句なしの合格だ!』
『吸阪雷鳥! 撃破ポイント77P! 文句なしの合格だ!』
8P差か。仕方ない、主席合格の座は出久に譲るとするか…そう思いながら、機械のスイッチを切ろうとすると―
『『だが、実は先の入試で見ていたのは
オールマイトがそんな事を言い出した。よく聞いてみれば、
『緑谷出久!
『吸阪雷鳥!
なんと、同点かよ。
『『おめでとう! 君達が同点で主席合格者だ!!』』
『『来いよ、少年達。
オールマイトのこの言葉と共に、両親と引子姉さんが歓喜の声を上げる。
こうして俺達の雄英高校での日々が始まる事となった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ついにUAが15000を突破!
これからも皆様からの期待に応えられるよう、頑張ってまいります!!
なお、2人のヴィランポイントの内訳ですが…
出久 1P×27 2P×20 3P×6 合計85P
雷鳥 1P×26 2P×18 3P×5 合計77P
となります。