出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
第62話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第62話:期末試験ー最終戦その2ー

雷鳥side

 

「試験だなんだと考えてると、痛い目見るぞ。私は(ヴィラン)だ。ヒーローよ。真心込めてかかってこい!」

 

 そう言うが早いか、一気に最高速度へ加速して、こちらへ突っ込んでくるオールマイト。220cm、255kgの超重量級でこのスピード。出鱈目にも程があるだろ!

 

「HAHAHA!」

 

 次の瞬間、笑い声と共に放たれる打ち下ろしの右(チョッピングライト)

 ひび割れたアスファルトの地面に、巨大なすり鉢状の凹み*1を作る程の一撃を、俺と出久は何とか回避し―

 

「マグネ・マグナム!」

「スナップショット!」

 

 俺はオールマイトの正面、出久は頭上から、ありったけのベアリングボールを撃ちまくる!

 

「うぉぉぉっ!?」

 

 攻撃を放った直後のオールマイトは、防御も回避もしないまま。ベアリングボールの嵐に晒される。

 さて、俺のマグネ・マグナムは22口径の拳銃弾並、出久のスナップショットは口径5.56mmのライフル弾並の威力がある訳だが…。

 

「……正面と頭上からの飽和攻撃。実に見事だ」

 

 オールマイトから、ダメージの類は全く感じられない。ある意味予想通りだ。

 

「惜しむらくは、弾丸(たま)が小さ過ぎる。散弾銃で大型の猛獣を仕留められないように、私には通用しない」

 

 そう言いながら、オールマイトが軽く力を込めると、その筋肉の表面で止まっていたベアリングボールがボトボトと地面に落ちていく。

 いや、正確にはベアリングボールだった物(・・・・)だな。どれもが無残に潰れ、再使用は出来そうにない。

 

「さて、攻撃はもうお終いかな? だとすれば、少々拍子抜けだね」

 

 ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりと構えを取るオールマイト。余裕を見せてくれるが、いくらなんでも舐め過ぎだ!

 

「生憎と、まだ小細工(・・・)は残ってるんですよ!」

 

 俺は叫びながら“個性”を操作。すると、オールマイトの周囲の落ちていたベアリングボールの内、俺の放った分だけが浮かび上がる。

 

「これは、ベアリングボールが帯電して…まさか!」

 

 気がついたようですが、もう遅い!

 

「ライトニングウェブ!」

 

 次の瞬間、俺の放った電撃が帯電したベアリングボールによって、増幅・拡散し、電撃の網を作り出す!

 

「こ、これはっ!」

 

 全身に絡みつく電撃の網によって、動きを封じられるオールマイト。今がチャンス!

 

「出久! ぶちかませ!」

「うぉぉぉっ!」

 

 俺の声に答える様に、出久は近くで横転していた軽自動車を持ち上げ―

 

「でやぁぁぁっ!」

 

 オールマイトに投げつける!

  

「ぬぉぉぉっ!」

 

 投げられた軽自動車をまともに受け、吹っ飛ぶオールマイト。

 軽自動車と言っても、その重量は700kgを軽く超える。いくらオールマイトでも、全くのノーダメージとはいかない筈だ。

 

「ダブルサンダー! ブレーク!」

 

 更に両腕から放つ電撃を、追撃として叩き込む!

 

「どうだ!」

「いくらオールマイトでも、これなら!」

 

 相応のダメージを与えた事を確信する俺達。だが―

 

「HAHAHA! 2人とも見事だ!」

 

 オールマイトは俺達の予想を超えていた。

 濛々(もうもう)と砂煙が立ち込める中、ゆっくりと歩いてくるオールマイトは、戦闘服(コスチューム)が多少焼け焦げている以外、ダメージを受けた形跡が見られない。

 

「少しも効いてないのかよ…」

「いや、そんな事はないさ。近頃肩凝りが酷かったんだが、スッカリ良くなってね。出来れば、もう2、3発受けてみたいものだ」

 

 俺の呟きに、そんな笑えないジョークを返したオールマイトは、右腕を振りかぶり―

 

TEXASSMASH(テキサススマッシュ)!」

 

 必殺の右ストレートを繰り出した。それによって巻き起こる強烈な衝撃波。電磁バリアを展開する暇も無く、俺達はそれに巻き込まれ―

 

「「うわぁぁぁぁぁっ!」」

 

 悲鳴と共に吹き飛ばされた。

 

 

お茶子side

 

「緑谷君!」

「吸阪ちゃん!」

 

 オールマイトの攻撃で吹き飛ばされる緑谷君と吸阪君を見て、私と梅雨ちゃんが同時に声を上げる。

 

「オールマイト、いくらなんでも強過ぎるだろ…」 

「吸阪君が指摘していた通り、超圧縮重り(ハンデ)が全く機能していない…」

「そもそも…オールマイト、本気出し過ぎなんじゃ…」

「それって、試験にならないって事じゃないの!?」

 

 切島君や飯田君、瀬呂君、三奈ちゃんも次々に声を上げていく。たしかに、これは試験と言うより、師匠と弟子の対決みたいな感じがする。

 

「先輩、どうしますか?」 

「…インカムが壊れている以上、ここからオールマイトを止める術は無い。俺達が会場まで向かい、オールマイトを止めるしかない」

「それしかねぇな…会場まで最速で3分。それまで吸阪と緑谷が無事な事を祈るぜ」

 

 そして先生達は、そんな事を話しながらモニタールーム(ここ)を飛び出そうとした。その時! 

 

「見て! 2人が!」

 

 透ちゃんの声に、全員がモニターに目をやれば、そこには立ち上がり、オールマイトへ向かっていく2人の姿が!

 

「あの2人。まだ戦う気かよ!」

「………2人に続行の意思がある以上、試験はまだ(・・)中断しない。会場近くでギリギリまで待機だ」

 

 相澤先生の決断に頷き、モニタールーム(ここ)を後にする先生達。

 

「緑谷君、吸阪君…どうか2人が無事に試験を終えられますように」

 

 私は神様に、2人の無事を祈らずにはいられなかった。

 

 

出久side

 

「うぉぉぉぉぉっ!」

 

 オールマイトのTEXASSMASH(テキサススマッシュ)で吹き飛ばされた僕と雷鳥兄ちゃんだけど、その位で諦めたりはしない。

 制限時間はまだ残っている。最後の1秒までもがき、足掻くだけだ!

 

PARABELLUM(パラベラム)スマッシュ!」

「ライトニングプラズマァ!」

 

 2人で一気に間合いを詰めて、オールマイトのボディに左右の連打を叩き込む! だけど―

 

「2人して回転数は見事なものだ。だが…弱連打じゃ、ダメージは与えられないぞ!」

 

 オールマイトには殆どダメージは与えられないまま― 

 

「吸阪少年はすこぶる器用だが、決定力が足りない! フンッ!」

「ぐはぁっ!」

 

 まず雷鳥兄ちゃんがボディブロー1発で吹っ飛ばされて、瓦礫の中に埋もれ―

 

「そして緑谷少年は、攻撃が素直すぎる!」

 

 僕も繰り出した右ストレートをあっさりと掴まれ―

 

「そぉれっと!」

「うわぁぁぁぁぁっ!」

 

 力任せに振り回され、投げ飛ばされた。

 

「HAHAHA! どうした! ヒーロー達! これで終わりかな?」

 

 オールマイトの高笑いが周囲に響く。その時!

 

「超電磁! タ! ツ! マ! キィッ!!」

 

 瓦礫の中から飛び出してきた雷鳥兄ちゃんの放つ超電磁タツマキが、オールマイトを飲み込んだ!

 

「こ、これは、なかなか…」

 

 USJでは、あの脳無の動きをも封じた雷鳥兄ちゃんの超電磁タツマキ。流石のオールマイトも、簡単には動けないようだ。

 

「長い時間抑えるのは無理だ! 出久! 今のうちにぶちかませ!」

「わかった!」

 

 雷鳥兄ちゃんの声に応え、僕は『フルカウル』の出力を限界(40%)の更に上。自壊半歩手前の45%まで高め、構えを取る。

 

「HAHAHA! そう簡単にいくと思ったら大間違いさ!」

 

 その時、オールマイトがその体を縛る戒めから、力任せに抜け出し始めた。だけど、今ならまだ間に合う筈だ!

 

「全力全開!」

 

 僕はオールマイトへ跳びかかり―

 

44MAGNUM(フォーティーフォーマグナム)! スマッシュ! シックスオンワン!」

 

 44MAGNUMスマッシュを一点集中の6連発で打ち込む!

 

「ぬぉっ!」

 

 声を上げながら後退するオールマイト。駄目だ。ギリギリで防御されたのか、手応えが浅い!

 

「出久! しゃがめぇ!」

 

 そこに聞こえてきた雷鳥兄ちゃんの声。僕が反射的に腰を屈めた直後―

 

「ライトニングソニック!」

 

 僕の頭上を跳び越える形で、雷鳥兄ちゃんが必殺キックを発動。オールマイトに叩き込んだ!

 

「ぬぉぉぉぉぉっ!」

 

 今度こそ吹き飛んでいくオールマイト。

 

「今だ! カフスを!」

 

 このチャンスを逃す訳にはいかない。僕と雷鳥兄ちゃんはオールマイトにカフスを掛けようと同時に跳びかかる! だけど―

 

「まだまだ甘い! PENNSYLVANIASMASH(ペンシルベニアスマッシュ)!」

 

 その動きを読んでいたオールマイトは、必殺の右アッパーを繰り出した。それによって巻き起こる強烈な衝撃波に、僕達は吹き飛ばされ―

 

「くそっ!」

「まだまだ!」

 

 何とか体勢を立て直したけど―

 

「タイムアップ! 制限時間終了だよ!」

 

 無情にも制限時間の30分が経過してしまった。ゲートを潜る事も、カフスを掛ける事も出来なかった僕達は―

 

「不合格…か」

「そんな…」

 

 不合格と言う結果に、僕達は力なく項垂れる。皆からあれだけエールを送ってもらったのに…自分の無力さが嫌になる。

 

「吸阪少年、緑谷少年、2人とも私の予想以上の戦いぶりを見せてくれた」

「今回は試験不合格という結果になってしまったが、これで全てが終わる訳ではない。この敗北を糧に、君達が更なる成長を見せてくれる事を、私は信じているよ」

 

 そんな僕達を見つめながら、声をかけてくるオールマイト。そうだ、これで全てが終わる訳じゃない。肝心なのは、この敗北をバネにどれだけ成長できるかどうかだ。

 

「僕達には、落ち込んでいる暇なんて無い」

「そうだな。夏休みの補習で、更に強くならないといけないな」

 

 

オールマイトside

 

 試験終了直後は、不合格と言う結果に項垂れていた2人だったが、すぐに気持ちを切り替える事が出来たようだ。

 しっかりとした足取りでマイクロバスへ戻っていく姿は、実に頼もしい。

 

「2人とも頑張りたまえ。今日の敗北が、必ず明日の君達を強くする糧になる。君達が成長を続けていけば、必ず私を超えるヒーローになれるだろう」

「あの、オールマイト」

「うぉっ!」

 

 突然の声に驚きながら振り返ってみれば、そこには相澤君達の姿が…どうして試験会場(ここ)に?

 

「あなたのインカムが試験早々に破損したから、ここへ来たんですよ」

「あぁ…そうだったのか。それは申し訳ない」

「それにしても…オールマイト、やってくれましたね。勝ち筋の欠片も見えないような戦いやって、どうするんですか?」

「………あ」

 

 相澤君の言葉に、今更ながら自分の失敗に気がつく。しまった! やってしまった!

 

「それと、両腕の超圧縮重り、外れてますけど…気がついてます?」

「え? あ、いつの間に…」

 

 戦っている最中に外れてしまっていたのか…これも気付かなかった。

 

「トナルト、オールマイトハ実質ハンデ無シノ状態デ、試験ニ臨ンデイタトイウ訳カ…」

「おいおい、イレイザー。どうするよ? 実質ハンデ無しかつ全力のオールマイトを相手に、あの2人は戦った訳だ。時間切れの為、不合格って言うのは流石に無慈悲が過ぎるってもんだぜ?」

「たしかに、何かしらの救済措置を取るべきだと」

「………その辺の判断は校長に任せる。とりあえず、モニタールームに戻るとしよう……それから、オールマイト。校長からの言伝で、『やってくれたね。オールマイト。後でゆっくり話をしよう』だそうです」

 

 相澤君経由で伝えられた校長の言葉に、全身から冷や汗が吹き出てくる。

 私は2人とは真逆の重い足取りで、マイクロバスに戻るのだった。

*1
直径20m、深さ5m




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
演習試験の結果は以下のようになっております。

第1戦(終了)○切島鋭児郎&砂藤力道vsセメントス×
第2戦(終了)○轟焦凍&八百万百vsイレイザーヘッド×
第3戦(終了)○瀬呂範太&峰田実vsミッドナイト×
第4戦(終了)○蛙吹梅雨&常闇踏陰vsエクトプラズム×
第5戦(終了)○飯田天哉&尾白猿夫vsパワーローダー×
第6戦(終了)○口田甲司&耳郎響香vsプレゼント・マイク×
第7戦(終了)〇障子目蔵&葉隠透vsスナイプ×
第8戦(終了)〇青山優雅&芦戸三奈&麗日お茶子vs13号×
第9戦(終了)?吸阪雷鳥&緑谷出久vsオールマイト?

果たして第9戦の結果はどうなるのか。次回をお楽しみに!

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