出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
第63話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第63話:期末試験ー総評と特別試験にむけてー

イレイザーヘッド(相澤消太)side

 

 最終戦が終了してすぐ、生徒達は演習試験の総評を聞く為に教室へと戻っていった訳だが…その雰囲気は試験開始前とは違い、葬式並に暗いものだった。

 吸阪と緑谷、クラス最強の2人がまさかの不合格に終わったのだから、無理もない。

 

「はぁ…どうしてこうなった?」

 

 思わずそんな言葉が口から漏れる。全ての原因となったオールマイトは、問答無用で校長室に呼び出されていった。そして―

 

「デハ、協議ヲ始メルトシヨウ」

 

 最終戦の合否判定を校長から丸投げ(・・・)された教師陣(おれたち)は、本来やる必要のなかった緊急協議だ。まったく、これこそ不合理の極みだ。

 

 

飯田side

 

 演習試験終了後、僕達は相澤先生の指示で教室に戻った訳だが…。

 

「………」

「………」

「………」

「………」

「………」

 

 もう30分、誰も口を開かず…その雰囲気はまるでお葬式のようだ。その時―

 

「皆…すまなかった」

 

 吸阪君が静かに口を開いた。皆の視線が吸阪君に集中する。

 

「全員合格。なんて偉そうな目標掲げておいて、言い出しっぺの俺達が不合格。まさに有言不実行。情けないにも程がある」

「そうだよね…穴があったら入りたいよ」

 

 吸阪君に続き、緑谷君も口を開くと―

 

「皆…本当にごめんなさい!」

「このとおりだ!」

 

 2人同時に立ち上がって頭を下げる。くっ…まさか2人のこんな姿を見る事になるとは…。

 

「お2人とも頭をあげてください! もしかしたら、どんでん返しがあるかもしれませんし…」

「ヤオモモ…それ、口に出したらダメなパターンだよ…」

「そ、そうなのですか!?」

 

 あぁ、普段冷静な八百万君まで狼狽えている…何という事だ…。

 

「待たせたな」

 

 そこへ入室してくる相澤先生。遂に総評が始まるのか…。

 

「まずは演習試験お疲れ。不合格者は補習に参加という話だったが………林間合宿は全員行きます」

 

「「「「「「どんでんがえしだぁ!!」」」」」」

 

 相澤先生の発表に、文字通りクラスが揺れた。だが、すぐに吸阪君と緑谷君が手を挙げる。

 

「せ、先生! 僕達も合宿に行っていいんですか!?」

「そ、そうです! 俺達2人は合格条件を満たしていませんよ!」

お前達2人の演習試験(その件)についてだが、お前達は赤点じゃない」

「「え?」」 

「オールマイトさんを除く試験官全員で協議したが、実質ハンデ無し且つ本気のオールマイトさん相手に、あれだけの戦いぶりを見せたお前達2人を不合格にするのは、流石に不合理が過ぎる。と言うのが、全員の一致した意見だ」

「追試を受けさせるという意見もあるにはあったが、お前達なら他の誰が試験官を務めても、合格する可能性が極めて高いという事で、話が纏まった」

「なお、オールマイトさんは校長とリカバリーガール。それと外部から急遽お呼びする関係者の方(・・・・・・・・・・・・・・・・)、この3人で査問会(お説教)だそうだ」

 

 相澤先生の説明を聞き、2人はようやく張りつめていた物が緩んだのだろう。ホッとした表情を浮かべていた。

 

「では、演習試験の総評を始める。まず第1戦。切島と砂藤」

「「はい!」」

 

 そして始まる演習試験の総評。だが、全員が合格(クリア)している為か、それほど厳しいものではなく、順調に進んでいく。そして―

 

「以上が、演習試験の総評となる。最後に…心操」

「はい!」

「特別試験は1週間後。詳細はこれに書いてある」

 

 心操君に特別試験に関する情報が渡され、総評は無事に終了した。

 

 

雷鳥side

 

「吸阪! 緑谷! 良かったなぁ!」

「皆一緒に、合宿へ行けるね!」

 

 相澤先生が退室した直後、皆が一斉に口を開き、俺と出久の合格を喜んでくれた。

 

「補習の覚悟はしていたが…こうして皆と合宿に行ける事になったのは、何より嬉しいよ」

 

 俺は皆からの祝福にそう答えながら、席を立ち―

 

「特別試験、どうなりそうだ?」

 

 試験の情報が書かれたプリントを見つめる心操へ声をかけた。

 

「……こんな感じだ」

「拝借」

 

 心操からプリントを受け取り、素早く目を通す。なるほど…こう来たか。それなら―

 

「心操、明日は試験明けの休みで時間がある。お前が望むなら、朝から特訓と洒落込むか?」

「………良いのか? その、演習試験で疲れてるだろ」

「心配するな。一晩寝ればそのくらい回復する。それに、特別試験の内容が相澤先生と1対1(タイマン)なんて知って、黙ってられるかよ」

 

 そう、心操の特別試験は相澤先生と1対1での模擬戦。細かいルールは当日知らされるとはいえ、半端な準備で乗り切れるようなレベルじゃないのは間違いない。

 

「…すまない吸阪。甘えさせてもらう」

「気にするな。俺はただ、全員で合宿に行きたいだけだよ」

 

 頭を下げる心操に、俺が笑顔でそう答えると―

 

「そういう事なら、僕達にも手伝わせてくれ!」 

「及ばずながら、私達も助力させていただきます」

 

 飯田と八百万を先頭に、クラスの皆が手伝いを名乗り出てくれた。

 

「こいつは良い。まさに1-A対相澤先生の戦いだな」

「皆…ありがとう」

「そうだ。いっその事、明日から俺の家に泊まり込んで、強化合宿っていうのもアリだな」

「え?」

「そうだね! その方が夜も特訓出来そうだし!」

「いや…」

「よし、姉さんには俺と出久から話をしておく。心操も親御さんに話しておいてくれ」

「あ、あぁ…」

 

 よし、話は纏まった。心操人使強化大作戦といきますか!

 

 

グラントリノside

 

 根津校長から連絡を受け、数十年ぶりに雄英高校に訪れた訳だが…。

 

「俊典…」

 

 根津校長やリカバリーガールへの挨拶もそこそこに、見せられた演習試験の映像。儂は思わず天を仰ぎ―

 

「何をやっとるのだ! お前はぁ!!」

 

 目の前で正座する痩身状態(トゥルーフォーム)オールマイト(俊典)の頭を思いっきりぶん殴った! 

 

「がはぁ! ……も、申し訳ありません…」

 

 息も絶え絶えに儂へ謝罪するオールマイト(俊典)。儂が雄英高校(ここ)へ来るまでの2時間。根津校長とリカバリーガールから、徹底的に絞られていたようだが…そんな事は関係ない。

 

「相手があの2人だったから、まだ良かったものの…一歩間違えば病院送り! 自分のやらかした事がわかっとるのか!」

「ふ、2人の師匠として、これまで何もしてやれず…せめて、今回は試験官として、2人の壁になろうと…」

「試験なら猶更、越えられる壁でなければ意味が無かろうが! お前は師匠であると同時に教師なんだぞ!」

 

 平身低頭のオールマイト(俊典)を容赦なく叱り飛ばす。強制的にでも教師として成長して貰わなければ、後継者達(あの2人)の将来が危ないからな!

 

「お前にこのまま成長が見られんのなら、2人の指導は儂が行う!」

「そ、そんな!」

「根津校長。それで構わんよな?」

「そうだねぇ…事ここに至っては、それも選択肢としてアリ(・・)かもしれないね」

「せ、先生! どうか、どうかそれだけは!」

「それが嫌なら、少しは教師として成長してみせろ! 時間はそんなに無いものと思え!」

「は、はいぃぃぃぃぃっ!」

 

 まったく、ここまでやらにゃならんとは…不肖の弟子にも程がある!

 

 

「じゃあ、儂は帰るが…精進を怠るなよ!」

「は、はい! 御足労をおかけしました!」

 

 オールマイト(俊典)と別れ、帰路に就く。6時半か…7時半過ぎの新幹線に間に合えば良いが…。

 

「あれ? グラントリノ?」

「ん?」

 

 聞き覚えのある声に振り返れば、そこにいたのは―

 

「おぉ、グリュンフリートにライコウか。久しいな」

 

 緑谷出久(グリュンフリート)吸阪雷鳥(ライコウ)、それに保須市の病院で会った若者を含む男女5人組。

 

「お久しぶりです! いつ雄英に?」

「あぁ、1時間ほど前だ。俊…オールマイトの件でな」

「…なるほど。お疲れ様です」

 

 儂の一言で粗方の事を察する吸阪雷鳥(ライコウ)緑谷出久(グリュンフリート)も苦笑いを浮かべている。この察しの良さ…アイツには勿体無いくらいだ! 

 

「グラントリノ! 先日はキチンとしたご挨拶も出来ず、申し訳ありませんでした! 私―」

「飯田天哉。インゲニウムの名を継いだ弟…だな。奴はこの老いぼれより、遥かに立派なヒーローだった。その名を汚さぬように、励めよ」

「はい!」

「麗日さん、梅雨ちゃん。こちらはグラントリノ。かつて雄英に勤められていた事もあるベテランヒーローで、オールマイトの担任だった方だよ」

「出久の職場体験先であり、俺も保須市でお世話になった方だ」

「は、初めまして! 麗日お茶子、ヒーローネームはウラビティです!」

「蛙吹梅雨。ヒーローネームはFROPPYです」

「うむ、よろしく。まぁ見た通りの老いぼれだ。そんなに固くならんでいいぞ」

 

 そんな会話を交わしながら、校門へと歩いていく。こうやって若い者達と話すのも随分と久しぶりだ。

 

「そういえば、グラントリノはもう甲府へお帰りですか?」

「あぁ、7時半過ぎの新幹線に乗るつもりだ」

「そうですか…グラントリノにご相談したい事(・・・・・・・)があったのですが…」   

 

 吸阪雷鳥(ライコウ)からの問いに、ふと興味が湧く。ご相談したい事…か。

 

「まぁ、気楽な隠居爺。誰かが待っているわけでもなし。帰る時間なんぞ何時になっても構わんぞ」

「そう言って頂けるとありがたいです。そうだ…相談が長くなるかもしれないし、いっその事、うちに泊まってもらうのはどうでしょうか?」

「そうだね。母さんにもグラントリノを紹介したいし! もちろん、グラントリノがよろしければ…ですけど」

「どうやら、かなりの難問のようだな。2人の親御さんが許していただけるなら、儂に否やはない」

 

 とんとん拍子で今晩、2人の家に厄介になる事が決まった。やれやれ、どんな難問を相談されるのやら…。 




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回、心操君の特別試験編になります。

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