出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
お楽しみ頂ければ、幸いです。
2020/2/27
終盤の展開を一部改訂しました。
死柄木side
「それでは、本日連れてきた2人を紹介させていただきましょう」
芝居がかった動きと共に義爛がそう言うと、背後に立っていた2人が前に出てきた。さて、どんな人材を連れてきたのやら…。
「まず、こちらの可愛い女子高生。名も顔もしっかりメディアが守ってくれちゃってるが、連続失血死事件の容疑者として追われてる」
「トガです! トガヒミコ。生きにくいです! 生きやすい世の中になってほしいものです!」
「ステ様になりたいです! ステ様を殺したい! だから入れてよ、弔くん!」
………なかなか強烈だ。所謂
「会話は一応成り立つ。きっと役に立つよ」
俺の反応を見て、フォローを入れてくる義爛。まぁ、実力があって意思の疎通が出来るなら、多少破綻している程度は
「続いては、こちらの彼。今のところ目立った罪は犯してないが、ヒーロー殺しの思想にえらく固執してる。名前は…」
「今は『荼毘』で通してる」
「通称か…本名は?」
「訳あって、大っぴらにはしてない。出すべき時には出すさ…大騒ぎになるタイミングを狙ってな」
「大騒ぎになる
「……まぁ、アンタになら話しても構わないか…」
そう言うと荼毘は俺に近づき、他言無用と念を押した上で―
「俺の本名は―」
耳元で己の本名を囁いた。なるほど。たしかにこいつの名前は、軽々しく大っぴらには出来ないな。
「OK、よろしく頼むぜ、荼毘」
「話が早くて助かる」
「なかなかの人材を連れてきてくれて、感謝するよ。黒霧、ミスター義爛に支払いを」
「こちらになります」
俺の指示を受け、義爛に札束の入ったアタッシュケースを差し出す黒霧。義爛はそれを受け取ると―
「それでは、私はこれで。今後もご贔屓にお願いしますよ」
そう言って、アジトを後にした。
「さて、固めの盃といこうか。好きな物を頼みな。今日は俺の奢りだ」
「トマトジュースをください! 塩分無添加のやつ!」
「…ジン・バック」
「俺はウイスキー。ロックだ」
「かしこまりました」
トガと荼毘、そして俺のオーダーを受けた黒霧は、テキパキと3人分の酒とトマトジュースを用意。
「乾杯だ。2人の
「「
2分とかからずに、俺達は杯を交わす事が出来た。
「そういえば弔くん。ステ様にはいつ会えるんですか?」
トマトジュースをストローで吸いながら、そんな事を聞いてくるトガ。その目はアイドルに憧れるファンのように、キラキラと輝いている。
「あぁ、先輩は今保須市で負った傷の治療中だからな…暫くは会えないだろう」
「そうですか…」
「だが、ここにいれば会える。それは確実だ」
「そうですね! ステ様に会える日を楽しみにしています!」
しょげたかと思えば、すぐに復活。感情の幅が広い奴だ。
「………」
一方の荼毘は、静かに酒を飲むタイプらしく、黙ってグラスに口をつけている。
「お前は、先輩に会いたくないのか?」
「……会えるならば会いたいさ。だが、騒ぐ事に意味を感じないだけだ」
「なるほど」
荼毘の素っ気ない返答に微かな笑みを浮かべながら、俺はウイスキーを一気に呷る。そこへ―
「死柄木弔、
黒霧がそんな事を言ってきた。そうだな…そうするか。俺はスマホを取り出し―
「
電話の相手に短く用件だけを告げた。
「お待たせしました。死柄木弔」
それから30秒と経たない内に、1人の男がアジトへ入ってきた。その顔を見た2人は―
「お前は…」
「あ、あなた。テレビで見ました!」
同じ反応を見せた。テンションの差は激しいがな。
「過去は全て捨てた。今の俺は
「
「先生の命名だ。我らに仇なす者達を
「はい、俺の全ては先生と死柄木弔に捧げています」
俺に跪き、淡々と言葉を紡ぐ絶無。こいつを見た時、あのヒーロー気取りな連中がどんな顔をするのか、楽しみでたまらないな。
雷鳥side
特別試験の後、八百万主催で開かれた『期末試験全員合格おめでとうパーティー』も無事終了。心操も帰宅して、日常が戻った我が家。
俺はいつもの通り台所に立ち、夕食を作っていた。
「よし、完成」
出来上がった夕食をテーブルに並べ-
「「「いただきます」」」
俺達は1週間ぶりとなった3人での夕食を食べ始める。ちなみにメニューは―
・蒸し鶏のネギソース
・小松菜と油揚げの煮浸し
・人参の塩きんぴら
・ワカメと大根の味噌汁
・ごはん(五穀米)
以上5品だ。
「あぁ、美味しい。やっぱり家のご飯がホッとするね」
味噌汁を1口啜り、しみじみと呟く出久。高校生らしからぬ台詞だが…まぁ、気持ちはわからなくもない。
「昼のパーティーは、なかなか緊張したからな」
立食スタイルのパーティーで、八百万は
フォアグラやキャビア、A5ランクの和牛等、高級食材を惜し気もなく使った料理をズラリと並べた段階で、カジュアルではないと感じたのは、俺だけではあるまい。
「料理も凄く美味しかったけど…やっぱり僕は、こんなご飯が一番だね」
「俺達庶民は、それで良いんだよ」
夕飯を終え、リビングでのんびりしているとー
「あっ! いけない!」
風呂上がりの姉さんが、突然そんな声を上げたかと思うとバタバタと自室へ走っていった。なんだ?
「雷鳥。ごめんなさい! お昼にあなた宛ての郵便が来ていたのをスッカリ忘れていたわ」
ごめんね! と手を合わせて謝る姉さんに、気にしてないと言いながら郵便を受け取る。さて、誰からだ?
「これは…」
そうか。
「出久、パスポート…持ってたよな?」
「うん、雄英に合格してすぐに発行してもらったけど…」
「だったら、夏休みに
そう言いながら手紙を見せた途端、驚きと歓喜の入り混じった声を上げる出久。まぁ、内容が内容だけに仕方ない。
何しろ、海外にある巨大人口移動都市『Iアイランド』で行われる個性技術博覧会『Iエキスポ』プレオープンへの招待状だからな。
だが、喜んでばかりもいられない。あの島で何が起きるのか、前世の記憶が
さて、俺はどう動くべきか…。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回より第6章 林間合宿編改め、劇場版 ~2人の英雄~編となります。