出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

79 / 120
短編を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。

2020/2/27

終盤の展開を一部改訂しました。


第65.5話:強い光には、濃い影がつきまとう(改訂版)

死柄木side

 

「それでは、本日連れてきた2人を紹介させていただきましょう」

 

 芝居がかった動きと共に義爛がそう言うと、背後に立っていた2人が前に出てきた。さて、どんな人材を連れてきたのやら…。

 

「まず、こちらの可愛い女子高生。名も顔もしっかりメディアが守ってくれちゃってるが、連続失血死事件の容疑者として追われてる」

「トガです! トガヒミコ。生きにくいです! 生きやすい世の中になってほしいものです!」

「ステ様になりたいです! ステ様を殺したい! だから入れてよ、弔くん!」

 

 ………なかなか強烈だ。所謂破綻者の類(・・・・・)だな。

 

「会話は一応成り立つ。きっと役に立つよ」

 

 俺の反応を見て、フォローを入れてくる義爛。まぁ、実力があって意思の疎通が出来るなら、多少破綻している程度は許容範囲(・・・・)だ。先生もそう言っていたからな。

 

「続いては、こちらの彼。今のところ目立った罪は犯してないが、ヒーロー殺しの思想にえらく固執してる。名前は…」

「今は『荼毘』で通してる」

「通称か…本名は?」

「訳あって、大っぴらにはしてない。出すべき時には出すさ…大騒ぎになるタイミングを狙ってな」

「大騒ぎになるタイミング(・・・・・)だと…お前、何者だ?」

「……まぁ、アンタになら話しても構わないか…」

 

 そう言うと荼毘は俺に近づき、他言無用と念を押した上で―

 

「俺の本名は―」

 

 耳元で己の本名を囁いた。なるほど。たしかにこいつの名前は、軽々しく大っぴらには出来ないな。

 

「OK、よろしく頼むぜ、荼毘」

「話が早くて助かる」

「なかなかの人材を連れてきてくれて、感謝するよ。黒霧、ミスター義爛に支払いを」

「こちらになります」

 

 俺の指示を受け、義爛に札束の入ったアタッシュケースを差し出す黒霧。義爛はそれを受け取ると―

 

「それでは、私はこれで。今後もご贔屓にお願いしますよ」

 

 そう言って、アジトを後にした。

 

「さて、固めの盃といこうか。好きな物を頼みな。今日は俺の奢りだ」

「トマトジュースをください! 塩分無添加のやつ!」

「…ジン・バック」

「俺はウイスキー。ロックだ」

「かしこまりました」

 

 トガと荼毘、そして俺のオーダーを受けた黒霧は、テキパキと3人分の酒とトマトジュースを用意。

 

「乾杯だ。2人の新顔(ニューフェイス)に」

「「(ヴィラン)連合に」」

 

 2分とかからずに、俺達は杯を交わす事が出来た。

 

 

 

「そういえば弔くん。ステ様にはいつ会えるんですか?」

 

 トマトジュースをストローで吸いながら、そんな事を聞いてくるトガ。その目はアイドルに憧れるファンのように、キラキラと輝いている。

 

「あぁ、先輩は今保須市で負った傷の治療中だからな…暫くは会えないだろう」

「そうですか…」

「だが、ここにいれば会える。それは確実だ」

「そうですね! ステ様に会える日を楽しみにしています!」

 

 しょげたかと思えば、すぐに復活。感情の幅が広い奴だ。

 

「………」

 

 一方の荼毘は、静かに酒を飲むタイプらしく、黙ってグラスに口をつけている。

 

「お前は、先輩に会いたくないのか?」

「……会えるならば会いたいさ。だが、騒ぐ事に意味を感じないだけだ」

「なるほど」

 

 荼毘の素っ気ない返答に微かな笑みを浮かべながら、俺はウイスキーを一気に呷る。そこへ―

 

「死柄木弔、()と2人を会わせておいた方がよろしいのでは?」

 

 黒霧がそんな事を言ってきた。そうだな…そうするか。俺はスマホを取り出し―

 

絶無(ぜむ)。アジトにいる。降りて来い」

 

 電話の相手に短く用件だけを告げた。

 

「お待たせしました。死柄木弔」

 

 それから30秒と経たない内に、1人の男がアジトへ入ってきた。その顔を見た2人は―

 

「お前は…」

「あ、あなた。テレビで見ました!」

 

 同じ反応を見せた。テンションの差は激しいがな。

 

「過去は全て捨てた。今の俺は(ヴィラン)連合の剣。絶無(ぜむ)だ」

絶無(ぜむ)?」

「先生の命名だ。我らに仇なす者達を()やし、()に帰す者。だから絶無(ぜむ)。今のこいつは、先生と俺の命令なら何でも聞く忠実な駒さ。そうだよな?」

「はい、俺の全ては先生と死柄木弔に捧げています」

 

 俺に跪き、淡々と言葉を紡ぐ絶無。こいつを見た時、あのヒーロー気取りな連中がどんな顔をするのか、楽しみでたまらないな。

 

 

雷鳥side

 

 特別試験の後、八百万主催で開かれた『期末試験全員合格おめでとうパーティー』も無事終了。心操も帰宅して、日常が戻った我が家。

 俺はいつもの通り台所に立ち、夕食を作っていた。

 

「よし、完成」

 

 出来上がった夕食をテーブルに並べ-

 

 

「「「いただきます」」」 

 

 俺達は1週間ぶりとなった3人での夕食を食べ始める。ちなみにメニューは―

 

 ・蒸し鶏のネギソース

 ・小松菜と油揚げの煮浸し

 ・人参の塩きんぴら

 ・ワカメと大根の味噌汁

 ・ごはん(五穀米)

 

 以上5品だ。

 

「あぁ、美味しい。やっぱり家のご飯がホッとするね」

 

 味噌汁を1口啜り、しみじみと呟く出久。高校生らしからぬ台詞だが…まぁ、気持ちはわからなくもない。

 

「昼のパーティーは、なかなか緊張したからな」

 

 立食スタイルのパーティーで、八百万はカジュアル(・・・・・)だと言っていたが…。

 フォアグラやキャビア、A5ランクの和牛等、高級食材を惜し気もなく使った料理をズラリと並べた段階で、カジュアルではないと感じたのは、俺だけではあるまい。

 

「料理も凄く美味しかったけど…やっぱり僕は、こんなご飯が一番だね」

「俺達庶民は、それで良いんだよ」

 

 

 夕飯を終え、リビングでのんびりしているとー

 

「あっ! いけない!」

 

 風呂上がりの姉さんが、突然そんな声を上げたかと思うとバタバタと自室へ走っていった。なんだ?

 

「雷鳥。ごめんなさい! お昼にあなた宛ての郵便が来ていたのをスッカリ忘れていたわ」

 

 ごめんね! と手を合わせて謝る姉さんに、気にしてないと言いながら郵便を受け取る。さて、誰からだ?

 

「これは…」

 

 そうか。あの出来事(・・・・・)は、この時期に起きていたのか…。

 

「出久、パスポート…持ってたよな?」

「うん、雄英に合格してすぐに発行してもらったけど…」

「だったら、夏休みにここへ行くぞ(・・・・・・)

 

 そう言いながら手紙を見せた途端、驚きと歓喜の入り混じった声を上げる出久。まぁ、内容が内容だけに仕方ない。

 何しろ、海外にある巨大人口移動都市『Iアイランド』で行われる個性技術博覧会『Iエキスポ』プレオープンへの招待状だからな。

 だが、喜んでばかりもいられない。あの島で何が起きるのか、前世の記憶が大体のところ(・・・・・・)は教えてくれたからな。

 さて、俺はどう動くべきか…。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回より第6章 林間合宿編改め、劇場版 ~2人の英雄~編となります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。