出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第66話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
雷鳥side
さて、大食堂の一件から時は流れ、無事に夏休みを迎えた俺達は、オールマイトが
「流石に、オールマイトが
離陸から15分。雲1つない快晴の空を飛ぶジェット機の中は…すこぶる快適だった。
十分な余裕を持って設置されたシートは、俺*1や出久*2が、思いっきり手足を伸ばしても何の問題もなく、シートその物の座り心地もまさに最高。
この居心地の良さ…前世で海外出張へ行った際、ビジネスクラスを何度か利用したが…正直それ以上。ファーストクラス並だな。
「み、みみ、緑谷君…わ、私…こ、こんな贅沢して、え、ええのん?」
その一方で…麗日はとんでもない事になってるな。
Iアイランドにはプライベートジェットで行く。という事に驚き、更にジェット機の内装。その豪華さに驚いて…今は半ば涙目でシートに
「麗日さん、少しリラックスしよう。そんなにガチガチじゃ、Iアイランドに着くまでに疲れきっちゃうよ」
心配した出久が、CAさんに頼んで瓶入りのミネラルウォーターを持ってきてもらい、それを受け取った麗日は―
「う、うん。ありがとう……うわ、このお水美味しっ!」」
水を1口飲んだ事で、大分落ち着いたようだ。でも、あの銘柄ってたしか…イタリアの高級ブランドだったよな。
500mlの瓶1本で、800円位したような…まぁ、言わぬが花だな。
梅雨side
「ふぅ、美味しかったわ」
離陸から4時間。
「吸阪ちゃん。オールマイトは大丈夫なの?」
オールマイトは離陸前から、ドア1枚隔てた先にある仮眠室に篭もったきり…もし、体の具合が悪いのだったら、心配だわ。
「あぁ、心配には及ばないよ。オールマイト、寝不足なんだ。日頃忙しいから」
「寝不足。それじゃあ…」
「こういう時でないと、ぐっすり眠れないって、愚痴ってたよ。一応、到着30分前に起こしてくれって、頼まれてる」
「そうだったの。安心したわ」
「梅雨ちゃんが心配してたって、オールマイトには伝えておくよ。さて、少し早いけど…寝坊を防ぐ為に起こしてきますか」
そう言って、笑いながら仮眠室へと入っていく吸阪ちゃん。やっぱり、ナンバー
雷鳥side
「そういう訳で、梅雨ちゃんの方は上手く誤魔化しておきました」
「すまないね。吸阪少年。助かるよ」
仮眠室のベッドに座り、俺に微笑むオールマイト。その姿はいつものマッスルフォームではなく、
原作より『ワン・フォー・オール』、その
「それにしても…起こしに来るのが、少し早くないかい? 到着まであと1時間はある筈だが…」
「えぇ、予定より早く起こしに来ました。
「お話しておきたい事…吸阪少年。一体何を…」
俺が何を言いたいのか、わからない。そう言いたげな表情のオールマイト。俺としても、今からの
「単刀直入にお聞きしますね。オールマイトにIエキスポの招待状を送ってきた知人って…デヴィッド・シールド博士、もしくは博士と非常に近い関係の方…ですよね? 例えば…
「す、吸阪少年! 何故、それを…」
「幾つか入手出来た情報から導き出される…簡単な推理です。まぁ、オールマイトの反応から見て、この推理が正しいという確信が持てました」
「では、ここからが本題。その知人の方…仮にデヴィッド・シールド博士にしておきますが…博士は、『ワン・フォー・オール』の事を知っていますか?」
「………いや、デイヴは
「『ワン・フォー・オール』には、危険がつきまとうから…ですか?」
「……そうだ」
俺の問いかけに重々しく頷きながら、答えるオールマイト。気持ちはわかる。でも、それじゃあ駄目なんですよ。オールマイト。
「オールマイト、16の若造が偉そうな事言わせて貰いますけど…それって、
「なっ…」
俺の言葉に絶句するオールマイト。だが、ここで遠慮する訳にはいかない。敢えて無視させてもらう。
「だって、そうじゃありませんか。まぁ、『オール・フォー・ワン』との戦いに親友を巻き込みたくないっていうオールマイトの気持ちも解ります。でも、その事を博士に話しましたか?」
「………いや」
「………酷な言い方になりますけど……それって、博士を
「そ、そんな事はっ!」
「勘違いしないでください。これは、オールマイト自身がどう思っているかは、
「………」
「あくまでも、俺の
「ッ!?」
「『ワン・フォー・オール』の事を知らないとしても、オールマイトの体に何らかの異変が起きている事は、確実に察知するでしょうね。その時、オールマイトは博士に何と言うんですか?」
「そ、それは…」
「まさかとは思いますけど……『
「そ、それは…」
言うつもりだったな…。
「まぁ、博士も大人でしょうから、その言い訳を
「そ、そんな事は…」
「だから、勘違いしないでください。これは、オールマイト自身がどう思っているかは、
「………」
俺の容赦ない物言いに黙り込んでしまうオールマイト。
「まぁ、今回の再会が良い機会です。御親友と胸襟を開いて話し合う事をおすすめしますよ」
「あぁ…考えておくよ。ありがとう、吸阪少年。君に指摘されるまで、そんな事考えてもみなかった」
考えておく…か。まぁ、この辺りが落としどころだろう。
「是非そうしてください。弟子の分際で色々と出過ぎた事を言いました」
オールマイトに頭を下げ、仮眠室を後にしようとしたその時―
「あぁ、吸阪少年」
オールマイトが俺を呼び止め―
「前々から聞こうと思っていたんだが……君、本当に16歳かい?」
そんな事を聞いてきた。
「俺が年齢詐称をしているとでも? 残念ながら肉体年齢も戸籍上の年齢も16歳ですよ。まぁ、
「HAHAHA、そうだよね。いや、変な事を聞いて申し訳ない」
「お気になさらず。あ、そうだ。俺からも1つ」
「何かな?」
「機内食、滅茶苦茶美味かったです。ただ……
「え? ロッシーニ風ステーキって…そんな凄いのが出たの?」
「オールマイトが頼んだんじゃ…ないんですか?」
「いや、私はこのジェット機を
「………忖度か」
出久side
無事にIアイランドの空港に到着した僕達は、学校に申請して持ってきた
「さて、4人にquestion。この人工島が造られた理由は?」
移動しながらIDの確認や網膜、虹彩、声紋の認証といった様々なチェックを受けていると、オールマイトからそんな質問が飛んできた。
「えっと…世界中の才能を集め、“個性”の研究やヒーローアイテムの発明を行う為です」
「うむ、正解!」
「この島が移動可能なのは、研究成果や科学者達を
「そういうのほんと詳しいね。君!」
「えt!?」
オールマイトの声で、思考に夢中になっていた事に気づく。あぁ、またやってしまった。
そうしている内に入国審査は無事に終了し―
「うわぁ…」
「こいつは、凄いな」
「壮観な光景ね」
「すっごく広い…」
僕達はIアイランドに足を踏み入れた。目の前に広がるのは人工島とは思えない広大な敷地と、最先端技術が作り出した夢のような光景。
「一般公開前のプレオープンで、これほどの来場者がいるとは…」
オールマイトも驚きを隠せないみたいだ。
「実際に見ると、本当に凄いですね!」
「Iアイランドは日本と違って、“個性”の使用が自由だからね。パビリオンには、“個性”を使ったアトラクションも多いらしい。後で行ってみると良い」
「「「「はい!」」」」
「さて、ホテルの場所は…」
ホテルの場所を確認しようと立ち止まり、ナビを確認しようとするオールマイト。そこへ―
「Iエキスポへようこそ…」
コンパニオンのお姉さんが声をかけてきたんだけど…
「って、オ、オールマイト?」
この一言がきっかけになり―
「オールマイト?」
「ナンバー
「本物だわ!」
「すっげー!」
あっという間に大勢の人に囲まれてしまった。
「一言お願いします!」
「同行していらっしゃるのは、お弟子さんの吸阪雷鳥さんと緑谷出久さんですよね?」
「Iアイランドへの来訪の理由は? やはりIエキスポですか?」
「吸阪さん! 緑谷さん! そちらのお嬢さん方は? どういったご関係ですか?」
僕や雷鳥兄ちゃんにもマイクが向けられて、もう半ばパニック状態だ。
「HAHAHA! 熱烈な歓迎をありがとう! サインは順番にね!」
そんな中でも余裕の表情でマスコミ対応やサインをこなしていくオールマイト。流石だなぁ…。
「あそこまで足止めされるとは…」
どうにかマスコミやファンへの対応を終え、近くの公園で一息つく。オールマイトは顔中に歓迎のキスを受けて、キスマークだらけだ。
「約束の時間に遅れるところだったよ…」
「約束?」
「あぁ、久しぶりに古くからの親友と再会したいと思ってね」
「古くからの親友…もしかして、オールマイトにIエキスポの招待状を送ったのって」
「残念ながら、招待状を送ってくれたのは、その親友本人ではない。だが、その親友と非常に関係が深い人物だよ。済まないが4人とも、少し付き合ってもらえるかい?」
「もちろんです!」
「喜んで、お供させていただきます」
「ケロケロ。どんな人なのか、楽しみだわ」
「きっと、凄い人に違いないよ!」
そんな事を話していると、奇妙な音がこっちへ近づいてきた。その音の方へ視線を送ると―
「おじさまー!」
ホッピングのような機械に乗った女性が、こちらへ向かって来た。女性はそのままオールマイトへ跳びつき―
「マイトおじさま!」
「OH! メリッサ!」
オールマイトと一緒にクルクル回りながら、ハグを交わす。
「お久しぶりです! 来てくださって嬉しい!」
「こちらこそ招待ありがとう! しかし見違えたな。もうすっかり大人の女性だ」
「17歳になりました。昔と違って重いでしょ?」
「なんのなんの! HAHAHA!」
なんというか…久しぶりに会う親戚のおじさんと姪っ子みたいなやり取りだ。そうしている内に、女性はこちらを向きー
「4人に紹介するよ。彼女は私の親友の娘で―」
「メリッサ・シールドです。はじめまして」
笑顔で右手を差し出してきた。
「はじめまして。雄英高校ヒーロー科1年、吸阪雷鳥です」
まず最初に雷鳥兄ちゃんが―
「同じく雄英高校ヒーロー科1年、緑谷出久と言います。はじめまして」
「はじめまして。蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んでね」
「はじめまして。麗日お茶子です!」
続けて、僕、梅雨ちゃん、麗日さんの順番で挨拶を交わす。
「おじさま。吸阪さんと緑谷さんがおじさまの…」
「そう! 私の弟子さ! そして、蛙吹少女と麗日少女は、ヒーロー科1年女子の中でも5本の指に入る実力者。4人とも未来のヒーロー候補さ!」
「すっごーい! そんな将来有望な人達と知り合えるなんて、ラッキーだわ!」
僕達と知り合えた事を凄く喜んでくれるメリッサさん。天真爛漫という言葉がよく似合う人だ。
「それじゃあ、パパの研究室に案内しますね。こっちです!」
こうして、メリッサさんに案内されて、僕達はオールマイトの親友であるメリッサさんのお父さんの研究室へ向かうのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
オマケ
機内食のメニュー表
-アミューズ-
・キャビアのカナッペ
・タラバガニとマッシュルームのフラン
・シェーブルチーズの揚げラビオリ
-アペタイザー-
・天使の海老と完熟アボカドのタルタル仕立て
-スープ-
・コンソメスープ 国産小麦の天然酵母パンを添えて
-魚料理-
・天然鱸のパイ包み焼き ソース・ショロン
-肉料理—
・ロッシーニ風ステーキ
-デザート-
・ピンクグレープフルーツのレアチーズケーキ
・コーヒーもしくは紅茶
なお、レストランで食べた場合1人2万円は下らない模様