出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
第68話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第68話:It's too late(遅すぎた)

雷鳥side

 

 さて、カフェで寛いでいる最中に聞こえてきた音。その正体を確かめに来た訳だが…

 

『クリアタイム25秒! 第5位です!』

「切島君!」

 

 音の発生源と思われるステージ。その巨大なスクリーンへ映し出される切島の雄姿に、思わず声を上げる出久。その声に気づいたのか―

 

「よう! 皆もやってみないか! このヴィラン・アタック!」

 

 切島もこちらに手を振りながら呼びかけてきた。ヴィラン・アタックか…なかなか面白そうだ。

 

「切島さん、いつIアイランドヘ?」 

「あぁ、俺は―」

『さぁ、続いての挑戦者はコチラ!』

 

 八百万の問いに答えようとした切島の声を遮って響き渡るMCの声。その声と共にステージへ上がったのは、轟だ。

 

『一体、どんな記録を出してくれるのでしょうか!』

 

 MCの声に気負った様子もなく構える轟。どんな記録を見せてくれるのやら。

 

『ヴィランアタック! レディーッ、ゴー!』

王狼の領域(フェンリルテリトリー)、凍てつけ!」 

 

 開始と同時に、轟は右手を闘技場へ当て、全体を一気に凍結させながら、鋭く尖った氷柱を何本も生やしていく。

 あの技…雄英体育祭で俺に放った時より、速さも精度も向上しているな。

 

『は、8秒! 現在の所、ダントツの1位です!』

 

 2位以下を大きく引き離した大記録に、周囲の観客から湧き上がる大歓声。

 轟は特に表情を変える事もなく、一礼すると俺達の元へとやって来た。

 

「轟君、お疲れ様! 凄かったよ!」

「あぁ、とりあえず10秒は切れたから、ホッとしてる」

「轟さんもエキスポへ招待を受けたんですの?」

「招待を受けたのは親父で、俺はその代理だ」

「俺はその同伴。轟に誘われたんだ!」

「なるほどな。それにしても、これで18人。青山と口田がいれば、Iアイランドに1-A勢揃いだ」

「青山はわかんねぇけど、口田は見かけたぜ。たしか、生物関係のパビリオン目当てとか言ってたぞ」

 

 生物関係か、口田らしいチョイスだな。

 

「それで、お前らもやるんだろ? ヴィラン・アタック」

 

 

?side

 

「ブツは予定通り受け取った」

 

 半死半生の状態で拘束された警備員が、何人も転がる中を平然とした顔で歩きながらスマートフォンで連絡を取る男。

 

「なに? オールマイトが?」

 

 だが、変声機で声を変えた電話相手は、Iアイランドへオールマイトがやって来たという予想外の事態に驚きを隠せないようだ。

 

「狼狽えるな。それはこちらで対応する」

 

 そんな電話相手を男は、一言で黙らせて通話を終了すると、目の前にあるコンテナ。その中身を見ながら―

 

「この島にオールマイトが…」

 

 獲物を前にした肉食獣のような笑みを浮かべるのだった。

 

 

オールマイトside

 

 セントラルタワーの診察室。デイヴに半ば無理やりここへ連れてこられた私は、有無を言わさず診察カプセルへと押し込まれ、徹底的な検査を受けさせられた。

 

「あっ、あぁ…」

 

 全ての検査が終了し、モニターに結果が映し出されると同時に、デイヴの口から悲痛な声が漏れうのが、カプセル越しに聞こえた。そして―

 

「ど、どういうことだ…トシ」

「個性数値が、なぜこれほど急激に下がっているんだ?」

「オール・フォー・ワンとの戦いで、体に大きなダメージを負った事を考慮しても、この数値は異常過ぎる!」

「一体…君の体に何があったというんだ…」

 

 カプセルが開くと同時に、私へ矢継ぎ早に問うてくるデイヴ。その顔はとても苦しそうで…そして、私の事を心の底から心配していた。

 そんなデイヴを見て、私は機内で吸阪少年に言われた事を思い出す。そうだ。こんなに私の事を思いやってくれる親友に、これ以上の不義理は許されない。

 

「……デイヴ、私の話を聞いてくれないか?」

「トシ…」

「今から話す内容は、とても信じられないような事だが、真実だ。そして、これを知った事で、キミやメリッサに危険が―」

「危険が及ぶ? そんな事、君と出会って相棒をやると決めた時点で、とっくに覚悟している。心配するのが、30年は遅いぞ」

「そうだな…その通りだ」

 

 デイヴからのツッコミに苦笑しながら、私は深呼吸をし…。

 

「デイヴ、もう私には……“個性”が無いんだ」

 

 真実を告げた。

 

「………は?」

 

 余りに予想外過ぎたのだろう。デイヴは完全に思考停止状態に陥り―

 

「ど、どういう事なんだ!? ま、まさかオール・フォー・ワンに!?」

 

 それから回復すると、私の両肩を掴んで困惑をぶつけてきた。

 

「違うんだ。違うんだよデイヴ…私の“個性”は、『ワン・フォー・オール』。オール・フォー・ワンと対を成す…聖火の如く引き継がれる、“個性”を“譲渡”する“個性”」

「なん、だって………そ、それじゃあ、個性数値が急激に下がったのは…」

「そう、私の“個性”は消えたり、奪われた訳じゃない…弟子の1人、緑谷出久に引き継いで貰ったのさ」

「ま、待ってくれ…その『ワン・フォー・オール』は、彼…緑谷少年に引き継いでもらったとして、トシ本来の“個性”はどうしたんだ?」

「…デイヴ、私は元々“無個性”だったんだ。メリッサと同じだよ」

「そ、そんな、まさか…」

 

 頭を抱えるデイヴ。オールマイト()にもう“個性”がなく、更に愛娘(メリッサ)と同じ“無個性”だと聞かされたのだ。その衝撃は相当なものだろう。

 

「トシは…オールマイトは、もう…平和の象徴では、いられないのか?」

「あぁ、私はそう遠くない未来、表舞台から消えるだろう。だが、安心してくれデイヴ。私の弟子であるあの2人は、私を超えるヒーローになるだけの才能を秘めている」

「…そうなのか?」

「あぁ、今でも2対1とはいえ、本気の私と戦って30分持ちこたえる程だ」

「なんだって!? 2人はそれほどの実力を…」

 

 私の言葉に、デイヴの表情から悲観的な物が消えた。

  

「だからデイヴ。君も見守っていてくれ。新しい希望は、着実に芽を伸ばしている」 

「……わかったよ。トシ。君の後継者達、見守らせてもらうよ」

「ありがとう…デイヴ」

 

 私とデイヴは、ガッチリと握手を交わし…互いに大きく頷くのだった。

 

 

雷鳥side

 

 さて、切島のオススメに従い、ヴィラン・アタックをやってみる事になった。

 飛び入り参加したのは、俺、出久、飯田、尾白の4人。障子と心操、女性陣は見物に回るそうだ。

 そして、4人で厳正なる抽選(ジャンケン)を行い、尾白、飯田、出久、俺の順番で挑戦することになった訳だが…。

 

『クリアタイム10秒! 第2位です!』

 

 尾白が15秒の好記録を出して、2位につけたのも束の間。飯田が更に上の記録を叩き出した。

 

「クッ、2秒及ばなかったか!」

 

 本人は悔しがっているが、範囲攻撃も飛び道具もない飯田がこれほどのタイムを叩き出したのは、見事なものだと思う。

 

『さぁ、続いての挑戦者はコチラ!』

 

 続いては出久。さぁ、どんな記録を出すのやら…。

 

「うぉぉぉぉぉっ!」

 

 気合と共に『フルカウル』を発動する出久。迸るエネルギーからして、出力は全開の40%だな。

 

『ヴィランアタック! レディーッ、ゴー!』

「はぁっ!」

 

 スタートと同時に最高速で走り出した出久は、岩山を一気に駆け上り―

 

「はぁっ!」

 

 拳の一撃で的であるロボットを次々と撃破していく。

 

「これで最後!」

 

 頂上に陣取っていたロボットも木っ端微塵に破壊して、そのタイムは―

 

『な、7秒! し、信じられない記録が出ました!』

 

 見事、トップに躍り出た。観客の大歓声に、何度も頭を下げながら戻ってくる出久。

 

「見事だ! 流石だな、緑谷君!」

 

 飯田からの賛辞に嬉しそうな出久。さて、お兄ちゃんも本気(・・)出しますか! 

 

『さぁ、続いての挑戦者はコチラ!』

 

 MCに呼ばれながら、俺はポーチの中に入れていたベアリングボールを的と同じ数取り出し―

 

「俺流フルカウル…発動!」

 

 俺流フルカウルを発動。脳の処理速度を大幅に向上させる。そして―

 

『ヴィランアタック! レディーッ、ゴー!』

「ターボユニット!」

 

 スタートと同時にターボユニットで加速をかけ、一気にジャンプ。標的全てを視界に収めると―

 

「マグネ・マグナム! マルチシュート!」

 

 マグネ・マグナムの連続射撃で、的の全てをほぼ同時(・・・・)に撃ち抜いた!

 

「パーフェクト」

『ろ、6秒!?』

 

 俺の着地から僅かに遅れて、MCの驚いた声が響く。それからきっちり5秒後、大歓声が湧き起った。

 

 

デヴィットside

 

 トシから秘密を打ち明けられた後、研究室に戻った私は休憩中のサムを呼び出し、前々から持ち掛けられていたある計画(・・・・)に対し、返答した。

 

「サム…君から提案を受けたあの件だが…私は聞かなかった事にするよ」

「博士、何を言っているんです!? あの装置の研究は、博士の悲願じゃないですか!」

「あぁ、確かにそうだ…いや、そうだった(・・・・・)。と言うべきだ…やはり、犯罪に手を染めてまで行う研究などない。そういう事だよ」

「………今更、そんな…もう、準備は98%済んでいるんですよ! 人材も! 機材も! 全てが無駄になる!」

「その通りだ。私が、もっと早くに決断するべきだったんだ。本当に済まない、サム」

「………」

「君が雇った劇団員(・・・)には、提示した報酬の3倍支払う。手配した機材は、全て私が言い値で買い取ろう。サム、君にも望むだけの額を払う。どうか、わかってくれ」

 

 無言のサムに頭を下げながら、言葉を尽くす。長年一緒にやってきた関係だ。きっとわかってくれる筈…。

 

「………やれやれ、あの人(・・・)の言ったとおりだ。怖気づいたな! デヴィット・シールド!」

「サム?」

 

 今まで聞いた事のないサムの怒声に顔を上げると、そこには私にテーザー銃を突きつけたサムの姿が…。

 

「サム、何を―」

 

 その直後、テーザー銃から放たれた電極が私に刺さり、高圧電流が体の自由を奪っていく。

 

「どう、して…」

 

 全身が硬直し、床に倒れた私を見下ろしながら、サムはどこかに電話をかけ…

 

「暫く眠っていろ。役立たずが」

 

 鈍器(ブラックジャック)で、私の頭を殴打した。駄目だ…意識が、遠く…。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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