出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第69話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
雷鳥side
さて、ヴィラン・アタックを終えた後も、俺達はIアイランドの散策を楽しみ―
『本日は18時で閉園になります。ご来園、ありがとうございました』
閉園30分前に、瀬呂達の働くカフェへと戻って来た訳だが…。
「はぁ…」
「プレオープンでこの忙しさって事は、明日からどうなっちまうんだ一体…」
「多事多端…なのは、間違いないだろうな」
「考えたくねぇ…」
瀬呂達4人は、疲労困憊と言った様子で椅子に座り込んでいた。
「4人ともお疲れ様!」
「労働よく頑張ったな!」
そんな4人に苦笑しながら、出久と飯田が声をかけ―
「ほら」
俺は前以てメリッサさんから受け取っていた4枚のチケットを差し出す。
「こ、これは…」
「レセプションパーティーへの招待状ですわ」
「パ、パーティー?」
「お、俺達に?」
「メリッサさんが用意してくれたの」
「せめて今日くらいはって!」
「余ってたから、良かったら使って?」
差し出されたチケットの出所が自分である事を、耳郎や麗日に明らかにされてしまい、若干焦った様子のメリッサさん。
そんなメリッサさんを見て―
「瀬呂…」
「峰田…」
「「俺達の労働は報われた!!」」
瀬呂と峰田は泣きながら抱き合い、砂藤や常闇も声にこそ出さないが、喜びを噛み締めている。
そして4人、特に瀬呂と峰田が落ち着いた頃―
「パーティーには、プロヒーロー達も多数参加すると聞いている!」
「雄英の名に恥じない為にも、正装に着替え! 団体行動でパーティーに出席しよう!」
「18時30分に、セントラルタワーの7番ロビーに集合! 時間厳守だ! 青山君と口田君には、俺から連絡を入れておく!」
「では解散!」
委員長モードフルスロットルな飯田の指示を合図に、俺達は一時解散する事となった。
オールマイトside
診察室でデイヴと別れ、
「そうか…デイヴは不在なのか…」
「え、えぇ…急な呼び出しを受けて、少し前にここを飛び出していきました」
残念な事に、デイヴは不在だった。
「入れ違いか…レセプションパーティーへ一緒に行こうと誘いに来たんだが…仕方ない」
「博士がお戻りになられたら、オールマイトが訪ねて来られた事をお伝えしておきます」
「すまないね、サム。では、レセプションパーティーで会おう!」
応対してくれたサムにそう言って、研究室を後にする。パーティーまで1時間。もう少し体を休めておくとしよう!
?side
『拘束しました。警備は5人。プランどおりです』
「まだ、警備システムは生きてる。殺さずに軟禁しておけ」
『はい、これより作業に入ります』
「順調だな」
別行動を取っている部下から、スマートフォン越しに齎される報告に、満足げな笑みを浮かべる男。そこへ―
「ボス、シールド博士をお連れしました」
意識を失った状態で、資材運搬用の大型ケースに押し込められたシールド博士が運ばれてきた。
「怪しまれなかっただろうな?」
「大丈夫です。
「それならいい…そろそろ時間だ。ダンタリオン達B班は手筈通り、シールド博士を運んで
「了解」
「C班とD班は、俺について来い。祭りの時間だ」
肉食獣のような笑みを金属製のマスクで隠しながら、男は部下達に指示を下す。100%の勝算を胸に抱きながら。
出久side
「散らかっててごめんね」
「うわぁ…本格的」
「いやはや、こいつは大したもんだ」
「私の借りてる
「ケロケロ。凄いわ。メリッサさん」
ドアの向こうに見える…1人の学生が使うには十分過ぎる程広い研究スペースに、思わず声が出る。
飯田君達と別れ、ホテルに戻ろうとした僕と雷鳥兄ちゃん。そして麗日さんと梅雨ちゃんをメリッサさんが呼び止め、自身の研究室に招待してくれたのだ。
そう言えば、ここに来る途中メリッサさんが麗日さんに何か耳打ちして、麗日さんが慌ててたけど…何かあったんだろうか?
雷鳥兄ちゃんも梅雨ちゃんも微笑むだけで何も教えてくれないし…。思わず思考に没頭しそうになっていると―
「こんな場所で研究出来るとは…メリッサさんは優秀なんですね」
タイミング良く放たれた雷鳥兄ちゃんの声で、我に返る事が出来た。いけないいけない。この事は後で考えよう。せっかくメリッサさんが招いてくれたんだから。
「実はね…私、そんなに成績良くなかったの」
当のメリッサさんは、雷鳥兄ちゃんの声に、困ったような笑みを浮かべながら、隣の部屋へ移動し―
「だから、一生懸命勉強したわ。どうしてもヒーローになりたかったから」
何かを探し始めた。
「ケロ? メリッサさんは元々ヒーロー志望だったの?」
「ううん、それはすぐに諦めた。だって、私“無個性”だし」
メリッサさんの放った言葉に誰もが息を飲む。“無個性”って…。
「5歳になっても“個性”が発現しないから、お医者さんに調べてもらったの。そしたら、発現しないタイプだって診断されたわ」
「………」
「あっ、気にしないで。もちろんショックだったけど…私にはすぐ近くに
「目標?」
「私のパパ」
そう言いながら微笑むメリッサさんの視線の先には、シールド博士の写真が幾つも並べられていた。
ノーベル個性賞を受賞した時の物から、普通の家族写真まで…どれもメリッサさんへの惜しみない愛情が溢れている。
「パパはヒーローになれるような“個性”を持ってなかったけど、科学の力でマイトおじさまや、ヒーロー達のサポートをしている。間接的にだけど、平和の為に働いている」
「ヒーローを助ける存在…ですか」
「そう。それが私の目指す…ヒーローのなり方。それでね。ここに来てもらったのは…これの為」
「これは…」
メリッサさんから差し出された小さな箱。そこにはパネルが付いた赤い腕輪が…。
「このサポートアイテムは、前にマイトおじさまを参考に作った物なの」
「オールマイトを?」
僕の問いにメリッサさんは頷き、僕にコートを脱ぎ、シャツの袖を
「ここのパネルを押してみて」
「わかりました」
99%の好奇心と1%の恐怖心を感じながら、パネルを押してみると―
「うわっ!」
腕輪は瞬時に変形し、僕の右前腕を覆う手甲へと変化した。これって…。
「名付けるなら、『フルガントレット』かしら?」
「フル…ガントレット…」
「マイトおじさまが、雷鳥君と出久君を弟子だって公表してすぐ、ネット上に広まった噂。それから雄英体育祭の映像を見て、98%間違いないって思ってたんだけど、今日…ヴィランアタックを間近で見て確信したわ」
「出久君。意図的に“個性”の出力をセーブしているのよね? 高すぎる“個性”の出力に、体が自壊しないように」
「………はい」
「このフルガントレット。マイトおじさま並のパワーで拳を放っても、3回は耐えられる位の強度があるわ。きっと出久君本来の力を発揮出来ると思う」
「僕本来の力…」
メリッサさんの言葉に、思わずフルガントレットで覆われた右手を見つめる。今、『フルカウル』の最高出力は安定状態で40%。自壊半歩手前で45%。
このフルガントレットを使えば、まだずっと先だと考えていた出力100%が発揮…出来る?
「それ、出久君が使って」
「え!? で、でも大切な物なんじゃ…」
「だから、使って欲しいの。困っている人を助けられるステキなヒーローになってね」
「……わかりました。大切に使わせてもらいます」
僕の返答へ満足げに頷くメリッサさん。そこへ―
「良いなぁ。出久ばっかりそんな凄いアイテム貰えて」
雷鳥兄ちゃんがふざけ半分にヘッドロックを仕掛けてきた。きっちり極まっているから…結構痛い!
「フフッ、安心して。雷鳥君にも役に立ちそうなアイテムをプレゼントするから」
「…それはありがたい」
メリッサさんの一言で、雷鳥兄ちゃんはようやく解放してくれた。あぁ、痛かった…。
「勿論、お茶子ちゃんや梅雨ちゃん…今日出会えた皆にも、プレゼントさせてもらうわ」
「そんな、良いんですか!?」
「えぇ、未来のヒーローに使ってもらえるなら、これ以上光栄な事は無いわ」
ただ、どこにあるか判らなくなっている物もあるから、明日まで待ってね。そう言って、ペロッと舌を出すメリッサさん。
何だかホンワカした雰囲気になったところで、僕達は正装に着替える為、ホテルへ向かうのだった。
雷鳥side
集合時間であった18時30分から早10分。青山と口田を除く男子は、5分前には集合完了したんだが…女性陣はまだ1人も来ていない。
ちなみに飯田の話によると、口田は何か先約があり、パーティーには参加できない旨を返信してきたらしいが、青山は送ったメッセージが既読にすらなっていないらしい。もしかして、Iアイランドへまだ来ていないのかもしれないな。
「遅い! 女性陣は、団体行動を何だと思っているんだ!」
未だ1人もやって来ない女性陣に、怒り心頭の飯田。
「ただ着替えれば良い俺達と違って、女性は髪やメイクで時間が取られるもんなんだ。多少の遅刻は大目に見てやるもんだぜ。飯田」
「む…それは、そうかも知れないが、我々は雄英生として恥ずかしくない行動を…」
「あくまでもビジネスシーンにおける話だが、人は他人の第一印象、その9割を外見で判断する…なんて話もある。服装や身だしなみに万全を期す事は、結果的に雄英の為になると思うが?」
「そうか…そういう物なのか…」
俺の
そんな事を考えていると―
「ごめーん! 遅刻してもうた!」
麗日を皮切りに―
「遅くなって、申し訳ありません」
「ごめんねー!」
「ほら、耳郎ちゃん」
「うぅ…ウチ、こういう格好はその…何というか…」
「似合ってるんだから、堂々といこうよ!」
次々と女性陣がやってきた。これで18人が揃ったな。
「よく似合ってるよ。梅雨ちゃん」
「ケロケロ。お世辞でも嬉しいわ。吸阪ちゃん」
女性陣はそれぞれに華やかな衣装を身に纏っているが、俺個人としては梅雨ちゃんがナンバー
たしか、こういうシルエットのドレスをAラインとか言ったな。それにしても…。
「正装なんて初めてだ。八百万さんに借りたんだけど…」
「に、似合ってるよ。うん、凄く!」
「緑谷君たら! お世辞なんて言わんで良いって!」
「そ、そんな! お世辞だなんて!」
あの2人は初々しいねぇ。
「耳郎のは…あれだ。馬子にも衣裳」
「女の殺し屋みてぇ」
「だ、ま、れ!」
「「みぎゃぁぁぁぁぁっ!」」
耳郎に失言かまして、制裁を喰らっている瀬呂と峰田は…よくある光景だな。
期末試験で峰田と組んでから、瀬呂は馬鹿をやる回数が増えた気がするが…まぁ、いいか。
「2人とも! そんな事を言ったら、耳郎さんに失礼だよ!」
「耳郎さん、僕は凄く似合っていると思うよ。耳郎さんのクールなイメージにピッタリだと思う!」
「あ、ありがと…」
そんな2人に強い口調で注意する出久。言っている事に間違いはないんだが…。
「梅雨ちゃん、出久だけどさ…天然ジゴロの才能あると思わない?」
「そうね。本人に自覚が無いのが、更に厄介だわ」
お兄ちゃん。なんとなく心配だよ。
「皆、まだここにいたの? パーティー始まってるわよ」
そこへ現れるメリッサさん。瀬呂と峰田が鼻の下を伸ばしながら、どうにかなっちまう。等と言っているが…まぁ、どうにでもなれ。
オールマイトside
「えー、ご来場の皆様。Iエキスポのレセプションパーティーに、ようこそおいでいただきました!」
「乾杯の音頭とご挨拶は、来賓でお越し頂いたナンバー
「皆様、盛大なる拍手を! どうぞ、ステージにお越しください!」
司会者からの呼びかけと、周囲からの拍手に押され、壇上へと上がる。
こういう事は、本来ならデイヴの役割なんだが…用事が長引いて乾杯には間に合いそうにない。と、サムから聞かされたし…仕方ないか。
「ご紹介に預かりました、オールマイトです。堅苦しい挨拶は―」
抜きにして。そう続けようとしたその時。突然、緊急事態を告げるサイレンが鳴り響いた。
『Iアイランド管理システムよりお知らせします。警備システムにより、Iエキスポエリアに爆発物が仕掛けられたという情報を入手』
『Iアイランドは、現時刻をもって厳重警戒モードに移行します』
爆発物が仕掛けられた。という聞き捨てならない情報に、会場にいた私を含むプロヒーローが一斉に動き出そうとしたその時―
「きゃぁぁぁっ!」
会場のドア全てが一度に開き、銃火器とボディアーマーで完全武装した覆面の男達が数十人雪崩込み―
「聞いた通りだ。警備システムは俺達が掌握した」
一番最後に入ってきた首魁と思わしき赤毛の男が、堂々と犯行を宣言した。男は今にも自分へ飛びかかろうと構えているプロヒーロー達を鼻で笑い―
「言っておくが…反抗しようなどと思うな。そんな事をしたら…この島の警備マシンが、何の罪もない善良な市民に牙を剥く事になる」
スクリーンに映し出されたIアイランド各所の映像を武器に、我々の動きを封じてしまう。この状況は即ち…。
「そう、人質は…この島にいる全ての人間だ! 当然、
「なにっ!?」
「やれ!」
男の声が響いた次の瞬間、緊急時の為に設置されていたセキュリティ用捕縛装置が作動し、プロヒーロー達を、そして私を拘束していく。
「いかん!」
私は力を込め、拘束から脱出しようとするが―
「動くな! 一歩でも動けば、無差別に住人どもを殺すぞ」
銃声と男からの警告が、私を二重に縛り付け…。
「Shit!」
私は成す術なく男に蹴り倒され、完全に動きを封じられてしまう。
「良い子だ。全員、オールマイトを見習って、無駄な抵抗はやめるんだな!」
高らかに宣言しながら、男は私を踏みつけ―
「オールマイト。お前にはもう1つ
「枷…だと?」
「お前の親友、デヴィット・シールド博士の身柄は、我々が確保している」
「なっ…」
信じられない事を口にした。デイヴが、こいつらに捕らわれているだって!?
「実はシールド博士には
「いやぁ、ノーベル個性賞の受賞者だ。どれだけ優秀かと思えば…正義感? 道徳? 倫理観? そんな犬の糞にも劣る物を後生大事にして、大局を見抜けない大馬鹿だったよ」
「貴様…」
「だが、その頭脳によって生み出された発明の価値は計り知れない。特に、このセントラルタワーに
アレ? 何だ、デイヴは一体何を発明したというんだ…。
「そういう訳だ。親友を墓場送りにしたくないなら、ここで借りてきた猫のように大人しくしているんだな」
島中の住人、そしてデイヴの命を盾にされ、身動きが取れなくなった私の頬に、男は唾を吐き捨てると―
「サミュエル・エイブラハム。デヴィット・シールド博士の助手だな。お前にやってもらいたい事がある。連れていけ」
部下に指示を下し、サムをどこかへと連れて行ってしまった。
「くっ…」
最悪の状況だ。マッスルフォームを維持できるのは、あと2時間強。その間に
いや、出来る出来ないではない。やるんだ。私は平和の象徴なのだから…!
周囲に気づかれぬ様、ゆっくりと力を込め始めたその時、天窓越しに見える上層階から、誰かが此方を覗き込んでいるのが見えた。あれは…吸阪少年と緑谷少年!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。