出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
第70話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第70話:19人の反抗作戦

雷鳥side

 

 緊急事態を告げる放送に異変を感じた俺達は、様子を伺おうとメリッサさんの案内で非常階段を駆け上がり、上層階からパーティー会場を覗き込んだ訳だが…。

 そこは既に(ヴィラン)の集団によって占拠され、数多のプロヒーロー、そしてオールマイトが拘束されている…最悪以外の何物でもない状態だった。

 耳郎の助けもあって、何とかオールマイトからのメッセージを受け取ったのだが―

 

 1、(ヴィラン)がセントラルタワーを占拠し、警備システムを掌握している。

 2、パーティーの出席者だけでなく、島内の人間全員が人質となっている。

 3、(ヴィラン)の要求を拒否したシールド博士が、(ヴィラン)の手中に落ちている。

 4、(ヴィラン)の目的は、シールド博士が開発し、セントラルタワーに封印されたある発明である事。

 

 まったく、絵に描いたような最悪の展開だ。オールマイトは危険である為、一刻も早くここから脱出するよう言っていたが…。

 

「俺は…雄英校教師であるオールマイトの言葉に従い、ここから脱出する事を提案する」

 

 監視カメラの無い非常階段の踊り場。

 沈黙を破るように飯田が脱出を提案し― 

 

「飯田さんの意見に、賛同しますわ。私達はまだ学生…免許も無しに(ヴィラン)と戦う訳には…」

 

 八百万もそれに賛同する。たしかに、それは正論(・・)ではある。

 

「そ、そうだよ! 何とか脱出して、外のヒーローに助けを求める。これが一番だって!」

 

 ここで峰田が飯田や八百万の意見に賛同するが―

 

「脱出は…正直困難だと思う。ここは(ヴィラン)犯罪者を収容するタルタロスと同じレベルの防災設計で建てられているから…警備システムを突破して脱出するのは、ほぼ不可能…0に等しいわ」

 

 メリッサさんの言葉に敢え無く撃墜されてしまう。

 

「じゃ、じゃあ、どこかに立て籠もって、助けを待つのは?」

 

 続いて、恐る恐るという感じで葉隠が意見を述べるが…。

 

「葉隠さん、脱出がほぼ不可能なら、侵入も同じくらい困難って事だよ…そもそも、情報が遮断されているなら…ここで何が起きているのか、知りようがない。助けに来る来ない以前の問題だよ」

 

 尾白によって否定されてしまう。再び周囲を沈黙が支配しようとしたその時―

 

「逃げるのも隠れるのも駄目なら…残った選択肢は1つだな」

「そうだね。何よりも僕達はヒーローを目指しているんだから」

 

 轟、そして出久が口を開いた。

 

「まさか…やめるんだ! 轟君! 緑谷君!」

「そうです! 危険過ぎますわ!」

 

 2人の言葉に、何をしようとしているのか(・・・・・・・・・・・・)察したのだろう、慌てた様子で止めに入る飯田と八百万。だが―

 

「たしかに俺達はまだ学生だ。オールマイトも逃げろと言っている。だからって…何もしないで良いのか?」

「そ、それは…」

「助けたい。助けに行きたい。これは僕の偽らざる本心だよ。飯田君も八百万さんも、本当はそう思っているんじゃないの?」

「「………」」

 

 轟と出久の問いかけに言葉を失ってしまう。更に―

 

「飯田、ヤオモモ。ルールを守る事の大切さはわかるよ。でも、囚われている人達を助けに行きたい、助けに行こうって気持ち、心の中に一欠片もないの?」

「今、自由に動けるのはウチ達だけ…それなのに、自分達だけ逃げたり、何もしないで隠れてるなんて、ウチは嫌だ!」

「私も同感! 少なくとも私達は戦う力を持ってる。だから…やれる事をやらないで逃げるのは間違ってると思う!」

 

 耳郎と麗日も声を上げ、風向きが徐々に変わっていく。

 

「吸阪ちゃん。何か言いたい事があるんじゃないの?」

「梅雨ちゃん。どうしてそう思うだい?」

「ケロケロ。こういう時、いつもの吸阪ちゃんだったら、自分から進行役をやっているのに、黙ったまま。何か企んでいる(・・・・・・・)と考えた方が、自然だわ」

「流石は梅雨ちゃん。見事な観察力だ」

 

 梅雨ちゃんの問いに、俺は苦笑いしながらそう答え―

 

「まぁ、企んでいるというか、皆の自主性に任せただけなんだけどね」

 

 皆にそう告げた。

 

「1-Aトップ3の内、既に出久と轟が救出に向かいたい。そう表明している状態で、俺まで何かしらの意思を示せば、皆の思考にバイアスが掛かる。全員揃って右向け右な状態は避けたかったからな。暫くの間、沈黙を貫かせてもらった」

「だが、今ならもう大丈夫だろう。さて、諸君。What do you want to do(一体どうしたい)?」

 

 俺からの問いかけに、皆の返答は同じもの(・・・・)だった。

 

 

出久side

 

「それじゃあ、救出の為のプランを説明するね。このプランが上手くいけば、戦闘を最大限避けつつ(・・・・・・・・・・)人質を救出出来る(・・・・・・・・)と思う」

 

 救出の為のプランを話し始める僕に、全員の視線が集中するのを感じる。大丈夫、焦らず、落ち着いて話す事を心がけろ。

 

「内容は単純だよ。1つ、警備システムを奪還して、拘束されているオールマイトやプロヒーローを開放する。2つ、捕らわれているシールド博士を見つけ出し、可能であれば奪還する」

「警備システムの奪還って…そんな簡単に出来るのかよ?」

「オールマイトからの情報から判断する限り、十分可能だと思う。メリッサさん、そうですよね?」

「えぇ、Iアイランドの警備システムは、このセントラルタワーの最上階で一括管理されているわ。(ヴィラン)がシステムを掌握したという事は、認証プロテクトやパスワードは全て初期化されているという事だから…私達にも、システムの再変更が出来る筈よ」

 

 メリッサさんからの心強い言葉。うん、おかげでプランの成功率がグンと高まった。

 

「最上階では確実に、途中でも(ヴィラン)と遭遇する可能性があります。その際は?」

「戦闘は仮免持ちの俺、出久、轟がメインで行う。もっとも、Iアイランドは日本じゃない。襲ってきた(ヴィラン)を“個性”を使って返り討ちにしても、半殺し程度だったら(・・・・・・・・・)正当防衛が成り立つ」

 

 八百万さんの問いかけに、物騒極まりない返答を返す雷鳥兄ちゃん。だけど、今はそれがこの上なく心強い。

 

「警備システムに関してだけど…入場ログが残っている筈なのに、これまで何の探知も行われていないという事は、(ヴィラン)側が警備システムを100%使いこなせていないって事だと思う。だから、当面は安心して良いと思う」

「だが、油断は禁物だ。慌てず急いで慎重に進んでいこう」

 

 僕の声に補足するように、雷鳥兄ちゃんが皆の気を引き締めてくれた。

 

Ladies and gentlemen(紳士淑女の皆さん).Are you ready(準備はいいか)?」

「作戦名、Nineteen Resistance(19人のレジスタンス)。皆…行こう!」

 

 さぁ、作戦スタートだ!

 

 

オールマイトside

 

 マッスルフォームの維持を最優先に、状況を打破する為のプランを考えている最中―

 

「ッ!」

 

 上層階から視線を感じた。気づかれないように視線を動かすと、そこには吸阪少年と緑谷少年の姿。逃げたんじゃなかったのか!?

 

「「………」」

 

 その無言ながらも力強い瞳に、彼らがやろうとしている事を察する。

 君達の行動を教師としては、咎めないといけないのだろう…だが、ヒーローを志す者が逃げろと言われて、素直に逃げる訳がないよな!

 雛鳥達よ…信じているぞ! 君達がこの状況を打破してくれる事を!

 行動を開始した若者達に、私は声なきエールを送り…来るべきその時まで、何が何でも耐え抜くと決意を新たにするのだった。

 

 

サムside

 

「姉御。連れてきましたぜ」 

 

 セントラルタワーの最上階にある管制室へと連れて来られた私が見たもの。それは―

 

「姉御じゃない。作戦中はコードネームで呼べ」

 

 他の(ヴィラン)とは違う…髑髏を模した仮面を付け、長い青髪をポニーテールにした女が、光を放つ両掌を気絶したままのシールド博士の頭に当てている…ある種幻想的で異様な光景。

 

「失礼しました。ダンタリオン」

「わかればいい…ソキル。ソイツにさっさと保管室のプロテクトを解除させろ。私はこっちの読み取り(・・・・)で手一杯なんだ」

「わかりました。オイ」

 

 どうやら、この中ではあのダンタリオンという女(ヴィラン)が最上位らしい。

 私を連れてきたソキルと言う(ヴィラン)は、私に視線で合図を送り…私は黙って保管庫のプロテクト解除を始める。

 ………正直、何かをされているシールド博士を見て、心が痛まない訳じゃない。だが…

 

「貴方が悪いんだ。シールド博士…私は、私は悪くない…」

 

 誰にも聞こえない小さな声で呟きながら、プロテクトを順番に解除していく。

 あと2時間もすれば、全てが終わり…私は大金を手に入れてIアイランドから消える。

 ほとぼりが冷めるまで姿を隠してから、オーストラリア辺りでのんびり暮らすんだ。そうだ、そうしよう…。 

 

 

雷鳥side

 

 監視カメラの無い非常階段を俺達は駆け上がり続ける。途中、最上階が200階だと知った峰田が、情けない声を上げたりしたが―

 

(ヴィラン)と出くわすよりマシですわ!」

 

 八百万に一刀両断されからは、それも無くなった。

 50階を過ぎた辺りから、メリッサさんが遅れ始め…麗日が“個性”を使ってのサポートを申し出たが―

 

「ありがとう。でも大丈夫! その力はイザという時の為に…取っておいて!」

 

 メリッサさんは気丈にもその申し出を断ると、履いていた靴を脱ぎ捨て、裸足で階段を駆け上がり始めた。ホント、強い女性だよ。

 更に俺達は階段を駆け上がったが、80階に辿り着いたところで―

 

「シャッターが!」

 

 分厚いシャッターに行く手を阻まれてしまった。

 

「どうする…壊すか?」

「そんな事をしたら、警備システムが反応して、(ヴィラン)に気付かれるわ!」

 

 轟の提案をメリッサさんが却下した次の瞬間。

 

「なら、こっちから行けばいいんじゃねぇ?」

 

 息も絶え絶えな峰田が、非常ドアに近づき―

 

「峰田君!」

「駄目っ!」

 

 出久とメリッサさんの静止も間に合わず、ドアを開けてしまった。直後、センサーが反応し、警告音が鳴り渡る。

 

「峰田ちゃん…」

「何をやっている…」

「し、仕方ねぇだろ…」

 

 今ので間違いなく(ヴィラン)に察知されてしまった。全員がやらかした峰田に冷たい視線を送るが、それも一瞬。

 

「とりあえず、ここから移動しよう! 狭い非常階段で襲われたら元も子もないよ!」

「あぁ、万事解決したら、峰田は俺がぶん殴っておく」

 

 こんな会話を交わしながらフロアに入り、再び走り出す。

 

 

オールマイトside

 

「80階の隔壁を全て下ろせ。ガキどもを逃がすな」

 

 首魁の男が通信にそう答えながら、部下3人を追撃要員として上層階へと向かわせる。

 気を付けるんだ皆…(ヴィラン)は狡猾だぞ…。

 

 

轟side

 

「他に上に行く方法は?」

「廊下の先に同じ構造の非常階段があるわ!」

「急ぐぞ!」

 

 その声と共に飯田がスピードを上げた次の瞬間。通路の隔壁が次々と閉まり始めた。

 

「シャッターが!」

「後ろもですわ!」

 

 背後の隔壁も次々と閉じていく。くそっ、俺達を閉じ込める気か! だが―

 

「轟君!」

「あぁ!」

 

 幸運にも隔壁の隙間越しに扉を見つける事が出来た。俺は最大出力の氷結で、閉まる隔壁を塞き止める。人が潜るには少々狭いが―

 

「いくぜ! 障子!」

「あぁ」

 

 “個性”を発動した砂藤と障子が力づくで隔壁を押し上げ―

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

 それによって生じたスペースを飯田が突っ切り、その勢いを乗せた蹴りで扉を蹴り破った。

 

「この中を突っ切ろう!」

 

 飯田の声に従い、俺達は隔壁の隙間を潜り抜けて扉の中へと入っていく。

 

 

 扉の中は植物園のような空間だった。走りながら緑谷が、メリッサさんに問う。

 

「ここは?」

「植物プラントよ。“個性”の影響を受けた植物を研究―」

「待って!」

 

 ここで、耳郎が何かを察知して、俺達を静止した。その視線の先にあるのは…エレベーター!

 

「エレベーターが上がってきてる!」

(ヴィラン)が追ってきたんじゃ…」

「間違いなくそうだろうな…」

 

 今の表示は57階。このペースだと1分かからずにここに到着するだろう。

 

「どうする? 隠れてやり過ごすか?」

「いや、ここで時間をかける訳にはいかない。迎え撃とう」

「そうだね。僕と雷鳥兄ちゃん、轟君の3人で一気に―」

「いや」

 

 共同戦線を提案する緑谷の言葉を俺は遮り―

 

「カッコつけた言い方だが…ここは俺に任せろ(・・・・・・・・)

 

 皆の足元から巨大な氷柱を生やして、上へと運んでいく。

 

「轟君!」

「轟さん!」

「まだ先は長いんだ。俺達3人揃って消耗するのは、合理的じゃない」

「馬鹿! 1人で格好つける気かよ!」

「安心しろ。後から必ず追いかける」

 

 心配する皆の声にそう答え、エレベーターに向けて構えを取る。その直後―

 

「「轟!」」

 

 常闇と切島が、氷柱から俺の背後へ飛び降りた。

 

「お前ら…」

「余計なお世話かもしれないが…俺達も手伝わせてもらう!」

「1人より2人、2人より3人だぜ!」

 

 …まったく、お節介な奴らだ。だが…ありがたい。

 

「3人とも! 先に行くけど…必ず追いかけてきて!」

「やられたら、承知しねぇからな!」

 

 そんな声を残し、移動を再開する緑谷達。それと同時にエレベーターが到着。

 

「凍てつけ!」

 

 ドアが開くタイミングに合わせ、俺は最大出力の氷結を叩き込んだ!

 

「やったか!?」

「いや、まだだ!」

 

 常闇の声の直後、氷塊に3つの巨大な穴が開き、小太りと痩身、そして海老のような顔をした異形型。合計3人の(ヴィラン)が無傷で現れた。

 

「ガキどもが…つけあがってんじゃねぇぞ!」

 

 そんな声と共に、小太りの(ヴィラン)の体が膨れ上がり、紫色のゴリラのような姿となる。

 同時に、残る2人も構えを取り、俺達と互いに睨み合う。そして―

 

「いくぜぇ!」

 

 切島の声を合図に俺達は一斉に走り出した!




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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