出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第73話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
「ソキル達を向かわせろ! 絶対に最上階へは近づけるな!」
『はい!』
ガキどもの一部が190階に到達したという報告に、俺は苛立ちながら指示を下す。
「それから、ダンタリオンの方はどうなっている?」
『プロテクトは残り2つ。あと15分、いえ10分あれば!』
「7分で終わらせるように伝えろ!」
『は、はい!』
「いいな! 俺が行くまで制御ルームは死守しろ!」
通話を終えると同時に、俺は最上階へと移動を開始する。ガキどもの力を少々侮りすぎたか…いや、
雷鳥side
198階に到達した直後、俺達の前に立ち塞がる3人の
「胸糞悪いガキどもが!」
「ウォルフラム様の命令だ。ここから先へは行かせねぇよ!」
「………蹴り潰す!」
それぞれ腕を刃物に変化させる“個性”、狼の“個性”、バッタの“個性”か…。
相手がどんな“個性”持ちだろうと、ここで時間を浪費する訳にはいかない。
「ここは―」
「俺に任せてくれ」
この場を引き受けようとした俺の言葉を遮り、心操が前に出た。そして―
「頼むよ」
そう呟く心操と視線が合った瞬間、俺はその狙いを察する。頼むぜ、心操。
心操side
「あんたら3人。俺がまとめて相手をするよ」
1歩ずつ前に出ながら、俺は努めて不敵に
「3人まとめてだと!?」
「あぁ、そうさ。あんたら如きが吸阪や緑谷の相手をするなんて、力不足もいいところだ」
「悔しかったら、かかって来いよ。一山幾らの雑魚
「てめぇ!」
俺の煽りを受けて、爆発した
「さぁ、
間髪入れず放った俺の指示に従い、仲間である2人に襲いかかる
「ソキル! 何しやがる!?」
「気でも狂ったか!?」
突然仲間から攻撃を受け、浮足立つ
「ライトニングブラスト!」
「
その僅かな時間があれば、あいつらには事足りる。
吸阪と緑谷の一撃を受け、吹っ飛ばされていく狼
「せいっ!」
洗脳されたままの
「ぐへぇ…」
派手な音を立てながら階段を転げ落ち、潰れた蛙のような声を出して気を失った。
「心操、お見事」
「流石だね。心操君」
「いや、吸阪と緑谷が、後ろで睨みを利かせてくれたおかげだよ」
2人からの称賛にそう答え、先へと急ぐ。他の皆なら、もっと手早く片付けられた筈…俺もまだまだだな。
雷鳥side
「来たぞ!」
最上階手前で俺達を食い止めようと、アサルトライフルを乱射する2人の
「俺達を止めたきゃ、ミサイルでも持ってこい!」
だが、その程度で俺達は止められない。銃弾は電磁バリアで完全に防御され―
「はぁぁぁぁぁっ!」
その隙に飛び出した出久の一撃を受け、意識を刈り取られる。周囲を確認し、一気に階段を駆け上がれば―
「200階、到達」
遂に、200階に辿り着く事が出来た。
「メリッサさん。制御ルームの場所は?」
「中央エレベーターの前よ」
だが、のんびりしている暇はない。メリッサさんに案内されながら、先を急いでいると―
「ストップ、あの部屋に…誰かいる」
先頭を走る出久が何かに気づいた。全員で出久の示した先、保管庫を覗き込むと―
「あれは…サムさんだわ」
そこにはコンソールを操作するシールド博士の助手、サムさんと―
「あそこ、シールド博士が」
拘束され、床に転がされたシールド博士の姿。
「どうやら、
「シールド博士、怪我をしている。早く助けないと!」
「あぁ…だが、その前に…いるのはわかってるんだ。出て来いよ」
救出に飛び込もうとする出久達を制しながら、俺は10m程先の通路の陰に声をかける。すると―
「気配は消していたつもりだったが………よく気が付いた。誉めてやるぞ」
髑髏を模した仮面を付け、長い青髪をポニーテールにした女
「私はダンタリオン。ウォルフラム様の側近にして、Iアイランドを襲撃した部隊の副隊長だ」
堂々と名乗りを上げ、腰に下げていた
「俺に任せてくれ」
先程同様、心操が前に出た。そして、先程同様『洗脳』を発動しようとした瞬間―
「シィッ!」
「ッ!」
心操の首目掛けて、ダンタリオンの
俺が咄嗟に心操を引き寄せた事で、ネクタイが斬り落とされるだけで済んだが…あとコンマ数秒遅かったら、心操の首と胴が永遠にお別れしていただろう。
「す、すまない。吸阪…助かった」
「気にするな。ヒーローは助け合いだよ」
顔を青くしながら礼を言ってくる心操にそう返しながら、俺と出久はダンタリオンを睨みつける。すると―
「私は人の心が読める。どんなに恐ろしい“個性”も、前以て解っていれば、潰す事も容易い」
既に勝利を確信したのか、心操の『洗脳』を発動前に潰せた種明かしをしてくるダンタリオン。
「なるほど…ダンタリオンという名前、思い出したよ。たしか、ソロモン王が使役した72体の悪魔。その1体だったな。その能力は…他人の心を自在に読み取る事」
「その通り! 吸阪雷鳥!お前の電撃も、緑谷出久! お前の超パワーも、私の前では単なる宝の持ち腐れだ!」
「だったら、試してみるか?」
勝ち誇るダンタリオンに、俺は不敵な笑みを返し―
「俺が打つのは右ストレートだ。一直線で行くから覚悟しな」
そう宣言した。
「俺が打つのは右ストレートだ。一直線で行くから覚悟しな」
吸阪雷鳥の言葉に、思わず耳を疑う。わざわざ攻撃を予告するとは…何を企んでいる?
“個性”を発動し、奴の心のを読み取るが―
-まっすぐ突っ込んで、右ストレート-
-まっすぐ突っ込んで、右ストレート-
-まっすぐ突っ込んで、右ストレート-
聞こえてくるのは、この一文ばかり。なんだ、単なる自信過剰の馬鹿か。
「オールマイトの弟子も―」
大した事ない。そう続けようとしたその刹那、私の顔面に叩き込まれる吸阪雷鳥の拳。
髑髏を模した仮面が木っ端微塵に砕かれ、鼻が無残に潰れるのを感じながら、私は吹き飛び、壁に叩きつけられた。
雷鳥side
「相手に心を読まれ、次に取る行動が知られているなら、
壁に叩きつけられ、崩れ落ちたダンタリオンにそう告げながら、俺流フルカウルを解除する。
“個性”といい、
「悪いな。俺、喧嘩弱いから…小細工させてもらった」
ダンタリオンが完全に意識を失っている事を確認し、俺達は保管庫へと走り出した。
サムside
「よし…プロテクトは全て解除出来た」
保管庫から、私が取り出そうとしている物。それは、このIアイランドに所属する優秀な科学者達が生み出した幾多の発明の中でも、究極と呼ぶに相応しい物。
この社会の有り様すらも変えてしまう…まさに至高の発明だ。16に及ぶ厳重なプロテクトを全て解除して、ようやく私の手に…。
「完璧だ。全て揃っている」
アタッシュケースの中を確認し、私は歓喜に震えた。これがあれば、これがあれば、莫大な金が私の元に!
「サ、サム…」
博士が意識を取り戻したのは、そんな時だ。
「は、博士…」
「サム……だ、駄目だ…それを、
私の目を見ながら、途切れ途切れの口調で私を止めようとする博士。やめてくれ…そんな目で私を見ないでくれ!
「あ、貴方が…貴方が皆悪いんだ! 貴方が、貴方が…」
その目から逃げるように、保管庫から出ようとしたその時―
「サムさん…」
「お、お嬢さん…」
私の前に立ち塞がったのは、お嬢さんだった。
雷鳥side
「お、お嬢さん…」
「サムさん…どういう事なの? パパが皆悪いって、どういう事なの!?」
「そ、それは……」
「正直に答えろ。あんたが、この事件の首謀者…だな?」
サムに詰問した。
「ひっ!?」
殺気に当てられたのか、サムは小さく悲鳴を上げ…
「そ、そうだ…」
俺の問いに答えた。
「そんな……」
父…シールド博士の助手として、長年仕えてきたサムが首謀者だと言う事実に、言葉を失うメリッサさん。俺はそんなメリッサさんを出久と心操に任せ、サムへの詰問を続けていく。
「目的は、そのアタッシュの中身か?」
「……あぁ…この中には、機械的に“個性”を増幅させる装置が入っている。この画期的な発明を使えば、“弱個性”や“没個性”等と呼ばれ、辱められている人達の評価を高める事も、使い方次第では“無個性”の人に“個性”を発現させる事だって出来る!」
“無個性”に“個性”を発現させる事も出来る。サムの言葉に、こめかみの部分が僅かに動くのを感じる。だが、サムはそれに気付く事無く喋り続ける。
「しかも闇ルートで出回っている薬物等とは違い、人体に影響を与える事もない。まさに、世界を変える発明なんだ! だが、この発明と研究データはスポンサーによって没収。研究その物も凍結させられた」
「発明の公表により、社会構造が激変する事を恐れた各国政府の圧力でね! その結果、博士が得る筈だった名声も! 栄誉も全てが消えてしまった!」
「
「う、煩い! お前に…お前達に何がわかる! デヴィット・シールドという、圧倒的な天才を前にした凡人の気持ちが、どれだけ努力しても追いつけない…絶対的な才能の差を見せつけられた人間の気持ちが、お前達にわかってたまるか!」
「サム……私は…」
思いがけないサムからの告白に、シールド博士も言葉が出てこない。
「博士、私はね……貴方がずっと妬ましかった。だから、今回の計画は意趣返しだったんですよ…貴方が計画に乗れば、その時点で貴方は
「計画に乗らなくても、貴方が作り出した最大の発明を
「大した計画だ…だが、ここでお前をぶちのめせば、発明は取り返せるし、お前を刑務所に送れるな」
全てを自供したサムにそう宣告し、構えを取る俺。同時に、出久もシールド博士を救出する為飛び出そうとするが―
「ッ!?」
次の瞬間。俺の索敵に
「出久! 心操! メリッサさんを守れ! 何かヤバイ奴が来る!」
出久side
雷鳥兄ちゃんが警告を発した直後、僕達に向けて様々なサイズの金属塊が次々と飛んで来た。金属を操る“個性”での攻撃か!
「
「はぁぁぁっ!」
雷鳥兄ちゃんは電磁バリアで、僕は
「少し大人しくしていろ」
そこに現れる新たな
「サム、装置は?」
リーダー格は、僕達が弾き飛ばした金属塊を再度操って俺達を足止めしながら、サムさんへと声をかけ―
「こちらになります。ウォルフラムさん」
その声に安堵したサムさんは、何の躊躇いもなくアタッシュケースを差し出した。その結果…。
「約束の謝礼だ」
対価として、左肩に撃ち込まれる銃弾。
「あっ!」
「サムさん!」
「な、何故…や、約束が違う……」
「約束? 忘れたなぁ…」」
サムさんの抗議を、ウォルフラムは平然と聞き流し―
「謝礼はこれだよ」
更に2発、サムの両足に銃弾を撃ち込む。悲鳴を上げながら激痛に悶えるサムさんを尻目に、ウォルフラムは―
「シールド博士。あんたにはまだ利用価値がある。同行してもらうぞ」
拘束されたままのシールド博士を連れ去ろうとする。
「行かせるかよっ!」
次の瞬間、雷鳥兄ちゃんが最大出力で磁気を放ち、金属塊の動きを止めた。
「うぉぉぉぉぉっ!」
今がチャンス! 僕は全力でウォルフラムに突撃! ウォルフラムは、咄嗟に床の金属を操作して壁を作るけど―
「
必殺の一撃が、それを木っ端微塵に破壊!
「くっ!」
それにウォルフラムが怯んだ隙に、シールド博士を奪還する事が出来た。
「パパ!」
「あぁ、メリッサ…」
救出されたシールド博士を見て、喜びの声を上げるメリッサさん。出来る事なら再会の喜びに浸らせてあげたいけど、そうもいかない。
「メリッサさん。ここは俺と出久が引き受けます。制御ルームへ行って、システムを奪還してください」
「えぇ、任せて!」
「私も行こう。システムの再変更は、1人より2人でやったほうが早い」
「心操君。メリッサさんとシールド博士について行ってあげて」
「わかった。2人とも…任せた」
短く言葉を交わし、制御ルームへと走る。メリッサさん達。
「どこまでも邪魔をしてくれるな……オールマイトの弟子。ガキどもが!」
「ガキと思って、甘く見たのがお前達の敗因だよ」
「悪事の報い…受けてもらう!」
最後の戦いのスタートだ!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。