出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
第74話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第74話:2人の英雄

芦戸side

 

「アシッドブラストォ!」

 

 私は声と共に、両手の指先から水滴状の酸をマシンガンのように連射!

 向かって来る警備マシン。その脚を潰して、次々と転倒させていく。

 

「ハーレムは譲らねぇからな!」

 

 峰田は煩悩丸出しな事を口走りながら、もぎもぎを投げまくり―

 

「峰田。そういう事言うから、駄目なんだよ!」 

 

 瀬呂もそんな峰田にツッコミを入れながら、テープを放って、警備マシンを足止めしていく。

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

 飯田は猛スピードで駆け回りながら、手当たり次第に警備マシンを蹴り飛ばし―

 

「落ちろ落ちろ落ちろ!」

「当たれぇ!」

 

 葉隠と耳郎は、ヤオモモが創造した銃火器を撃ちまくる。

 次から次に湧いて出てくる警備マシンを、私達は倒して倒して倒しまくった。でも―

 

「痛ッ!?」

 

 突然両手を走る激痛。見れば酸の出し過ぎで、指先がボロボロになってた。これじゃあ、もう攻撃なんて…。

 

「芦戸君!」

 

 異常を察した飯田が、私を助けようとしたけど―

 

「うぁぁぁぁぁっ!」

 

 それが隙を作る事になり、たちまち劣勢に追い込まれてしまう。

 

「脂質切れ……そ、創造の限界が…」

「オイラの頭皮も限界だ…」

「くそっ、テープが出ねぇ…」

 

 ヤオモモも、峰田も、瀬呂も、もう限界。

 

「葉隠! ウチが時間を稼ぐから、ヤオモモ達を避難させて!」

「駄目! 響香ちゃん1人じゃ無茶過ぎるよ!」

「無茶でも何でも、やるしかない!」 

 

 なんとか動ける耳郎が囮になろうとしたその時。私達を取り囲んだ警備マシンが、一斉に捕獲用ワイヤーの発射態勢に入った。

 

「ここまで…なの?」

 

 恐怖と悔しさに思わず目を瞑る。だけど…ワイヤーは一向に飛んで来なくて…。

 

「と、止まった?」

 

 恐る恐る目を開けてみると、警備マシンは1機残らず機能を停止していた。これって―

 

「吸阪君達が、やってくれたんだ…警備システムを奪還してくれた!」

 

 飯田の声を聞いた瞬間、私は思わずその場にへたり込んだ。よかったぁ…。

 

 

雷鳥side

 

「忌々しいガキども…お前達のせいで、計画が滅茶苦茶だ!」

「そいつは何よりだ。(ヴィラン)の計画を邪魔出来るなんて、ヒーローとしてこの上ない喜びだよ」

「貴様……社会の厳しさって奴を、教えてやる必要があるようだなぁ!」

 

 怒りの形相で金属塊を操り、俺目がけて飛ばしてくるウォルフラム。

 

「それはこっちの台詞だよ!」

 

 だが、残念。金属を操る事なら、俺も多少は心得があるし、さっきまでの攻防でコツ(・・)は掴ませてもらった。

 飛んできた金属塊を最大出力の磁気で受け止め、そのまま弾き返す!

 

「ッ!?」

 

 驚きの表情を浮かべ、飛んできた金属塊をギリギリで避けるウォルフラム。

 

「はぁぁぁっ!」

 

 そこへ、出久が一気に間合いを詰め―

 

44MAGNUM(フォーティーフォーマグナム)! スマァァァァァッシュ!!」

 

 必殺の一撃を土手っ腹に叩き込む!

 

「うぉぉぉぉぉっ!」

 

 保管庫の外へと吹っ飛んでいくウォルフラム。一見、出久の1発KOにも見えるが…。

 

「駄目だ、雷鳥兄ちゃん。ギリギリで防がれた!」

 

 出久の言葉通り、ウォルフラムはギリギリのところで金属の壁を生やし、出久の一撃を防御。そのダメージを軽減していた。

 

「往生際が悪い!」

 

 思わずそんな声が出た次の瞬間。警備システムが通常モードに移行した事を知らせるアナウンスが響く。メリッサさんとシールド博士が、やってくれた!

 

「あとは、アイツをぶちのめすだけだ。追うぞ! 出久!」

「うん!!」

 

 逃げるウォルフラムを追って、俺と出久も走り出す。途中、ウォルフラムが生やした金属の壁に追跡を阻まれるが、その度に破壊して進んでいく。

 これまでの報い…たっぷりと受けてもらうぞ!

 

 

オールマイトside

 

「やり遂げてくれたな! 皆!」

 

 警備システムが元の状態に戻り、捕縛装置から解放されたプロヒーロー達が、会場にいた(ヴィラン)達を無力化したのを見届けた私は、最上階へと急いでいた。

 そこへ鳴り響く着信音。相手は…。

 

「どうした? メリッサ」

『マイトおじさま! (ヴィラン)のリーダーが屋上のヘリポートに向かってます。雷鳥君と出久君が後を追って…』

「大丈夫! 2人だけに危険な真似はさせないさ。私が行く!!」

 

 

ウォルフラムside

 

「ボス、他の連中は?」

「警備システムが再起動しきる前に、ここを出るぞ。急げ!」

「「はい!」」

 

 なんとか屋上のヘリポートまで辿り着いた俺は、待機していた部下2人に手早く指示を伝え、ヘリへと乗り込む。

 部隊はほぼ全滅。損失は莫大だが…手に入れた個性増幅装置(こいつ)には、それを補って余りあるだけの価値がある。

 ここから逃げ切る事が出来れば…俺の勝ちだ! だが―

 

「待てっ!」

「逃がすかよ!」

 

 ヘリが浮上を開始したところで、ガキどもが追いついてきた。本当にしつこい奴らだ!

 

「撃て! ガキどもを近づけるな!」

「は、はい!」

 

 部下にアサルトライフルを乱射させて、接近を阻もうとするが…大した足止めにもならんか。だったら―

 

「お前、俺の為に…死ね」

「えっ…」 

 

 俺が発した言葉の意味が分からないのか、間抜け面を見せてきた部下に蹴りを叩き込み、30m程浮上したヘリから落とす。

 悲鳴を上げながら落ちていく人間を前に、ガキどもはどうする? そう、助けるよなぁ! 例えそれが(ヴィラン)であろうとも!

 

「ヒーローってのは、不自由だなぁ! おかげで俺は助かったわけだが!」

 

 安全圏まで浮上したヘリから屋上のガキどもを見下ろし、嘲笑う。何か喚いているようだが、もはや負け犬の遠吠えだ。

 この上ない満足感と共にヘリのシートに腰を下ろし、一息ついた次の瞬間―

 

「逃がしはしないぞ!」

 

 耳に飛び込んでくる忌々しい声。アイツまで来たのか…。

 

「何故って? 私が来た!」 

 

 パーティー会場から屋上(ここ)まで…いくらなんでも早過ぎるだろう! オールマイト!

 

 

雷鳥side

 

「悪事の報いを受けるがいい! (ヴィラン)よ!」

 

 驚異的なジャンプ力で、ヘリの前に立ち塞がった(・・・・・・)オールマイトは、そのままの勢いでヘリへと突っ込み―

 

「ハァッ!」

 

 右拳でぶん殴った(・・・・・・・・)。ただそれだけで、ヘリコプターは独楽の様にクルクルと回りながら落下していく。

 

「流石はオールマイト…だな」

「うん…そうとしか、言いようがないね」

 

 スクラップ半歩手前の状態で屋上に不時着したヘリコプターと、その前に着地したオールマイトを交互に見ながら、おもわずそんな言葉が漏れる。

 あんな芸当、今の俺達じゃ逆立ちしたって出来そうにない。

 

「さぁ、大人しく投降してもらおうか」

 

 歪んで開かなくなったドアをもぎ取り、中のウォルフラム達を引っ張り出そうとするオールマイト。その時、俺の索敵に何か(・・)が引っかかった。

 

「オールマイト! 離れて!」

「Shit!」

 

 オールマイトも異変を察知していたのだろう。俺が声をかけるよりも早く、その場から後退しようとしたが―

 

「ぬぉぉぉっ!」

 

 それよりも早く飛来した巨大な金属塊の一撃を受け、吹き飛ばされた。

 

「オールマイト!」

 

 オールマイトが吹き飛ばされるという光景に、悲痛な声をあげる出久。その間にも状況は変化し続けていく。

 

「マジかよ…」

 

 ヘリの残骸や屋上の一部が、何かに飲み込まれるように融合、一つの形を成していく。その中心にいるウォルフラムの頭には、奪ったシールド博士の発明、“個性”増幅装置が装着されている。

 

「往生際が…悪いな!」

 

 当然、それを黙って見ているオールマイトじゃない。 

 

TEXAS(テキサス)SMASH(スマッシュ)!」

 

 一気に間合いを詰め、必殺の右ストレートを繰り出すが―

 

「なにっ!?」

 

 その一撃は突然出現した分厚い障壁に防がれた上、障壁から次々と突き出る金属塊を食らって、吹っ飛ばされてしまう。

 

「オールマイトもその程度か! それなら、今の俺は無敵って事だな!」

 

 オールマイトを一蹴した事で勝ち誇るウォルフラム。同時に、屋上全体、いやセントラルタワーの上層階。そのあちこちから次々と金属が引き寄せられ、ウォルフラムに融合していく。そして―

 

「流石は、デヴィッド・シールドの作品。“個性”が活性化していくのが解る…ハハハ! いいぞこれは! 良い装置だ!」

 

 誕生したのは、巨大な胴体と九つの首を持つ…金属の九頭大蛇(ヒュドラ)

 

「これが、デイヴの作った…装置の力か…」

 

 流石のオールマイトも、これは想像の範疇を超えていたようだ。いつもの軽口も鳴りを潜めている。

 

「さぁて…装置の価値を釣り上げる為にも、オールマイトをブッ倒す…デモンストレーションと行こうか!」

 

 次の瞬間、九頭大蛇(ヒュドラ)の頭が次々とオールマイトへ襲いかかる。オールマイトはそれらを巧みに避け―

 

CAROLINA(カロライナ)SMASH(スマッシュ)!」

 

 向かってきた頭の1つにクロスチョップを叩き込んだ! 強烈な一撃に、砕け散る頭だったが―

 

「なにっ!?」

 

 神話の九頭大蛇(ヒュドラ)同様、この金属九頭大蛇(ヒュドラ)にも再生能力があった。砕け散った金属が集められ、瞬時に頭部を再構成。オールマイトを襲う!

 

「ぬぉぉぉぉぉっ!」

 

 自らを潰そうとする九頭大蛇(ヒュドラ)の頭を受け止め、力比べの体勢となるオールマイト。そこへ新たな頭が2つ、攻撃を仕掛けるが―

 

「ダブルサンダー! ブレーク!」

「ダブル44MAGNUM(フォーティーフォーマグナム)! スマァァァァァッシュ!!」

 

 片方は俺の電撃、片方は出久の諸手突きで撃破。

 

「フン!」

 

 オールマイトも左アッパーで頭を粉砕し、態勢を立て直す。それを見たウォルフラムは―

 

「オールマイト以下の羽虫ども…目障りなんだよ!」

 

 怒りの咆哮を上げ、俺達にも攻撃を仕掛けてきた。

 

「出久! 俺達で少しでも奴の攻撃を引き付けて、オールマイトの負担を減らすんだ!」

「うん!」

 

 ウォルフラムの攻撃を避けながら、俺がオールマイトの右翼、出久が左翼に展開。それぞれに攻撃を仕掛ける。

 これでウォルフラムの攻撃が3方向に分散。オールマイトの負担が減る筈だ。

 

「ダブルサンダー! ブレーク!」

「ダブル44MAGNUM(フォーティーフォーマグナム)! スマァァァァァッシュ!!」

 

 俺の電撃と出久の諸手突きが九頭大蛇(ヒュドラ)の頭をそれぞれ1つずつ破壊し―

 

TEXAS(テキサス)SMASH(スマッシュ)!」

「&! PENNSYLVANIA(ペンシルベニア)SMASH(スマッシュ)!」

 

 オールマイトの右ストレートと左アッパーのコンビネーションが、更に2つ破壊する。だが―

 

「ぬぅぅぅっ!」

 

 残る5つの頭が防壁となり、オールマイトの接近を許さない。そう、俺と出久が引きつけられる頭は、精々2つ。

 オールマイトへの負担は確かに減った。だが、9対1が7対1となったところで、オールマイトの負担が未だ大きい事に変わりはない。

 

「オールマイト未満の羽虫が2匹加わったところで、何が出来る! 目障りなんだよ!」

 

 苛立たし気なウォルフラムの声と共に、一斉攻撃を開始する9つの頭。駄目だ、今のままじゃ、手が足りない!

 

 

出久side

 

 ウォルフラムの声と共に、9つの頭が一斉に動き出した。もう、出し惜しみしている場合じゃない!

 

「ワン・フォー・オール、フルカウル! 100%!」

 

 僕は『フルカウル』いや『ワン・フォー・オール』の出力を100%開放して、ウォルフラムへ突撃。

 それを見たウォルフラムも、9つの頭の内4つを1つに束ね、1つの巨大な頭を作り出すと―

 

「お前からミンチにしてやるよ!」

 

 僕へと差し向けた。来るなら来い! 真っ向勝負だ!

 

50CALIBER(フィフティーキャリバー)! スマァァァァァッシュ!!」

 

 次の瞬間、僕の最強必殺技を叩き込まれた九頭大蛇(ヒュドラ)の頭は、全体に亀裂を走らせ、文字通り木っ端微塵に砕け散った。

 

「クソガキがぁ!」 

 

 僕に頭4つ分を1つに束ねた攻撃が粉砕されるとは、夢にも思っていなかったのだろう。怒りに顔を歪ませながら、残りの頭全てを差し向けるウォルフラム。

 だけど、それらは僕に届く事はなかった。何故って?

 

不死鳥の眼光(フェニックスグレア)!」

「レシプロ! トルネード!」

「必殺! 堕天使の戦斧(ルシファーズバルディッシュ)!!」

海魔の双槌(クラーケンハンマー)!」

 

 轟君の炎、飯田君の回し蹴り、常闇君の踵落とし、障子君の諸手突き、そして―

 

Je te dédommagerai pour mon retard(遅刻した分の償いは、させてもらうよ)♪」

 

 青山君のレーザーが、頭を次々と破壊してくれたから!

 

「羽虫が…ウジャウジャとぉ!」

 

 破壊された頭を次々と再生させ、攻撃を再開しようとするウォルフラム。そこへ―

 

「ぬぉっ! なんだこいつらは!」

 

 突然飛来したカモメの群れが、ウォルフラムに襲いかかった。無数の嘴に突かれ、狼狽するウォルフラム。この“個性”は! 

 

「遅くなって、ごめん」

 

 口田君! 君も来てくれたんだね!

 

「がぁぁぁぁぁっ! クソガキどもぉぉぉっ!」 

 

 群がるカモメを全て追い払い、怒りの咆哮をあげるウォルフラム。だけど、今はさっきまでとは違う!

 

「怪物の頭は、俺達で引き受けます!」

「1-A全員の力を合わせ、オールマイトを援護するぞ!」

 

 

オールマイトside

 

 まったく…君達は常に私達の予想を上回ってくれるよ。

 

「教え子達がここまでやってくれたんだ。私もやってみせねば、ならないよなぁ!」

 

 両足に力を込め、全力で前へ飛び出す。

 

「限界を超えて、更に向こうへ!」

 

 私に向けて次々と飛来する九頭大蛇(ヒュドラ)の頭。だが、それに意識を向ける必要はない。

 

「降り注げ! 不死鳥の羽根(フェニックスフェザー)!」

 

 轟少年が!

 

影の鎚矛(シャドーメイス)!」

 

 常闇少年が!

 

「レシプロ! トルネード!」

 

 飯田少年が! 

 

海魔の双槌(クラーケンハンマー)!」

 

 障子少年が!

 

Sortie maximale(最大出力さ)♪」

 

 青山少年が!

 

「ダブルサンダー! ブレーク!」

「ダブル44MAGNUM(フォーティーフォーマグナム)! スマァァァァァッシュ!!」

 

 そして、吸阪少年と緑谷少年が! 次々と九頭大蛇(ヒュドラ)の頭を潰してくれる!

 彼らだけじゃない。ここに来るまでに消耗し、戦う力が残っていない少年少女達も、私を信じ、あらん限りの声を振り絞って声援を送ってくれる!

 これだけ火を点けられて、私自身が燃えない訳にはいかない!

 

「そう! “Plus Ultra(更に向こうへ)”だ!!」

CAROLINA(カロライナ)SMASH(スマッシュ)!」

 

 残った防御を纏めて吹き飛ばし、首魁ウォルフラムまであと少し!

 

「観念しろ! (ヴィラン)よ!」 

 

 これが、とどめの一撃!

 

「ぬっ!?」

 

 だが、放たれた拳がウォルフラム(やつ)にあと10cmのところで、私の動きは急停止した。金属製のワイヤーケーブルが全身に絡みついて…。

 

「だが、この程度!」

 

 力を込め、絡みつくワイヤーケーブルを弾き飛ばしていく。だが、次の瞬間―

 

「ぬぐっ!」

「観念しろ? そりゃお前だ…オールマイト」

 

 ウォルフラムの右手が私の首を掴み、締め上げ始めた。こ、この力は―

 

「なんだ…このパワーは…」

 

 奴の“個性”は金属の操作の筈。こんなパワーは持っていない筈…。

 

「ぐわぁぁぁぁぁっ!」

 

 次の瞬間、腹の古傷を鷲掴みにされ、想像を絶する激痛に思わず苦悶の声を漏らしてしまう。

 この力は『筋力増強』の“個性”……“個性”の複数持ち…。

 

「ま、まさか…」

「あぁ、この強奪計画を練っている時、あの方(・・・)から連絡が来てな。『是非とも協力したい』と言ってきた」

「何故かと聞いたら、あの方はこう言ったよ。『オールマイトの親友が、悪に手を染めると言うなら、是が非でもそれを手伝いたい。その事実を知ったオールマイトの、苦痛に歪む顔を見られないのは、残念だけれどね』とな!」

 

 ウォルフラムの言葉に全てを察する。今回の一件、全てを裏で操っていたのは!

 

「オール・フォー・ワン…」

 

「ようやく、ニヤケ面が取れたか。デヴィッド・シールドが悪の道に落ちなかったのは残念だが、お前をぶち殺せたなら上出来だ!」

「Noooooo!」

 

 叫びと共に渾身の力を右腕に込め、ワイヤーケーブルを弾き飛ばす。そのままウォルフラム(やつ)の顔面へ叩き込もうとするが― 

 

「ぐはぁっ!」

 

 それよりも早く九頭大蛇(ヒュドラ)の頭が私を吹き飛ばし、体勢を立て直す間もなく、他の頭が私へと殺到する。いかん! これでは!

 

 

出久side

 

「さらばだ! オールマイト!!」

 

 ウォルフラムの声と共に、オールマイトを捕らえた巨大な金属塊へ、巨大な槍が次々と突き立てられていく。

 

「「「「「オールマイト!」」」」」

「オールマイト!」

「マイトおじさま! いやぁぁぁっ!」

 

 飯田君達や、救急パックを手に駆け付けたシールド博士やメリッサさんの悲痛な声が響く中、僕は無我夢中で走り―

 

「ワン・フォー・オール、フルカウル! 100%!」

 

 さっきと同じように『ワン・フォー・オール』の出力を100%開放。

 

50CALIBER(フィフティーキャリバー)! スマァァァァァッシュ!!」

 

 金属塊へ全力の一撃を叩き込んだ! 金属塊は粉々に砕け、自由を取り戻したオールマイトは、着地と同時に僕を抱えて、皆の元へ後退し―

 

「緑谷少年! なんて無茶を!」

 

僕を叱りつけた。うん、オールマイトの気持ちもわかる。自分でも、無茶だと思う。でも…。

 

「だって…困ってる人を(たす)けるのがヒーローだから…」

 

 僕は何度同じ状況に遭遇したとしても、同じ選択をするだろう。それがヒーローだから。

 

「あ…」

 

 僕の言葉にオールマイトは一瞬、虚を突かれたような表情を見せ―

 

「HAHAHAHA!」

 

 大声で笑い出した。

 

「ありがとう! たしかに、今の私は、ホンの少しだけ困っている。手を貸してくれ、緑谷少年。いや、グリュンフリート!」

「はい!」

 

 オールマイトから差し出された手を握り、僕は立ち上がる。

 

「お2人さん。俺達の事もお忘れなく」

「及ばずながら、我ら全員! オールマイトに助力致します!」

「すまない諸君! 助力を頼むよ!」

 

 雷鳥兄ちゃんと飯田君の声に、オールマイトはそう答え―

 

「行くぞ!」

「はい!」

 

 僕達は最後の攻撃へ走り出す!

 

 

雷鳥side

 

「皆! オールマイトと緑谷君を援護だ! 全員、残る力の全てを振り絞れ!」

 

 飯田の号令と共に、1-A全員が一斉に動き出す。

 

「くたばりぞこないと羽虫の群れ…往生際が悪いんだよ!」

 

 ウォルフラムの咆哮と共に、九頭大蛇(ヒュドラ)の首が次々と襲いかかる中―

 

「我に従いなさい。白き翼を持ち、海風に乗って空を飛ぶ者達。災いの元凶たる九つの首持つ大蛇、討ち取る為に力を尽くすのです」

 

 口田はカモメの群れを操り、九頭大蛇(ヒュドラ)を牽制。

 

「尾白君! 梅雨ちゃん! お願い!」

「任せろ!」

「ケロッ!」

 

 麗日が“個性”で浮かせた瓦礫を、尾白は尻尾で、梅雨ちゃんは舌で打ちまくり―

 

「『シュガードープ』Lv3、砂糖細工の悪魔(シュガークラフトデーモン)!」

「もっと硬く…固めて、決して倒れぬ壁となる! 安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)!!」

「行くぜ、切島!」

「おう! おもいっきりやってくれ!」 

 

 砂藤は期末試験の時のように、切島を棍棒代わりに装備し、九頭大蛇(ヒュドラ)の頭をぶん殴る!

 

「残る全てを出し切る! レシプロ! トルネード!」

海魔の双槌(クラーケンハンマー)!」

「必殺! 堕天使の戦斧(ルシファーズバルディッシュ)!!」

 

 飯田の回し蹴り、障子の諸手突き、常闇の踵落としが、九頭大蛇(ヒュドラ)の頭に次々と炸裂!

 

「皆さん、これを使ってください!」

 

 八百万はメリッサさんが持ってきていた非常食でカロリーを補給し、重火器を創造。

 

「こういうのを使うのは初めてだけど…あれだけ的がでかければ、外しはしないな!」

「そういう事だ!」

 

 心操、瀬呂、峰田、芦戸、耳郎、葉隠と共に撃ちまくる!

 

Sortie maximale(最大出力さ)♪」

 

 青山も遅れた分を取り戻そうとレーザーを連射! 全ては出久とオールマイトの為に!

 

 

出久side

 

「頭の上は気にするな! 最短距離を最速でまっすぐに…一直線に走れ!!」

 

 雷鳥兄ちゃんの声に後押しされながら、僕はウォルフラムへ向けて走り続ける。

 オールマイトは別ルートを進んでいるけど、何も心配する必要はない。目的地は同じなんだから!

 

「ヌガァァァァァッ!」

 

 皆の援護で苛立ちが頂点に達したのだろう。獣のような声をあげたウォルフラムは、一度後退させた九頭大蛇(ヒュドラ)の頭を―

 

「ゴミクズドモォ! イイ加減ニ…諦メロ!」

 

 一斉に皆へ向けて、解き放った!

 

「諦めるのは…お前の方だ! いくぜ! 轟!」

「あぁ! 全力でいく!」

 

 それを迎え撃つのは、雷鳥兄ちゃんと轟君!

 

「残った全てをこいつにつぎ込む! トールハンマー!」

竜の(ドラゴン)!」

「ブレイカァァァァァッ!!」

咆哮(ロアァァァァァッ)!!」

 

 雷鳥兄ちゃんの放った電撃と、轟君の放った衝撃波は、途中で1つに融合。互いの威力を高め、九頭大蛇(ヒュドラ)の頭を纏めて薙ぎ払う!

 

「ナァッ…」

 

 その想像を絶する威力に、一瞬言葉を失うウォルフラム。今がチャンスだ!

 

「オールマイト!」

「グリュンフリート!」

 

 僕とオールマイトはそれぞれの場所から同時にウォルフラムへ跳びかかる。

 

「目の前にあるピンチを!」

「全力で乗り越え!」

「人々を!」

「全力で(たす)ける!」

「それこそが!」

「ヒーロー!」

「ク、クルナァァァァァッ!」

 

 僕達の叫びに怯んだのか、再生させた九頭大蛇(ヒュドラ)の首を全て使って防御を固めるウォルフラム。だけど無駄だ! そんな物で僕達は止められない!

 

DETROIT(デトロイト)!」

50CALIBER(フィフティーキャリバー)!」

「「SMAAAAAAAAAASH(スマァァァァァァァァァッシュ)!!」

 

 僕とオールマイトの同時攻撃が炸裂した瞬間、容易く打ち砕かれる九頭大蛇(ヒュドラ)の防御。

 

「緑谷君! いっけぇぇぇぇぇっ!!」 

「「「「「「「「オールマイト!!」」」」」」」」

「「「「「「「「緑谷!!」」」」」」」」 

「「ぶちかませ!!」」

 

 更に皆の声援を受けながら、とどめの一撃!

 

「更に!」

「向こうへ!」

「「プルス! ウルトラァァァァァッ!」」

「ヒィッ!」

 

 渾身の力を込めた同時攻撃は、九頭大蛇(ヒュドラ)のボディを紙のように突き破りながら、咄嗟に最奥部に退避したウォルフラムへ炸裂。

 

「ゲ…ボァァァッ!」 

 

 大量の吐血と共に、その意識を完全に刈り取った。

 

 

雷鳥side

 

「やった…のか?」

 

 崩壊し、単なる瓦礫の山と化していく九頭大蛇(ヒュドラ)を見ながら、茫然と呟く飯田。

 

「やったんだ…(ヴィラン)をやっつけたんだ!」

 

 その声に峰田が答えた瞬間、一斉に歓声が上がる。そこへ―

 

「グ、ア、アァ…」

 

 四肢が明後日の方を向き、ボロ雑巾のようになったウォルフラムを引きずりながら、オールマイトと出久が姿を見せた。

 

「緑谷君!」

 

 すぐさま出久へ駆け寄り、抱き着く麗日。一瞬驚いた顔をした出久だったが―

 

「ただいま、麗日さん」

 

 すぐに優しい笑みを浮かべ、麗日を抱きしめる。その光景に再び沸き起こる歓声。

 こうして、今回の事件は幕を下ろすのだった。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回が第6章 劇場版 ~2人の英雄~編の最終回となります。
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