出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第75話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
雷鳥side
Iアイランドで発生した初めての
「では、時間となりましたので、今回の
「まず、事件の概要につきまして、私オールマイトの方から、説明させていただきます」
事件解決から4時間後。急遽行われた記者会見の場には、オールマイトと共に俺、出久、轟、飯田、八百万が同席していた。
世界中の注目を集めるIエキスポ。そのプレオープンの時期に起きた
ただでさえ話題になる条件が揃っている上に、セントラルタワーの屋上で繰り広げた戦闘があまりにも
後になって聞かされたが、オールマイトがウォルフラムの乗ったヘリを叩き落した辺りから、飛行系の“個性”を持つ一般人やカメラマン。更には無数のドローンカメラなどが、全てを撮影しており、ネット上にはかなりの数の動画が投稿されているらしい。
即ち…俺や出久、轟だけでなく1-A全員が事件解決の為に奔走していた事が明らかになったという事だ。
まぁ、罪に問われるような事は何もしていないから、堂々としていれば良いのだが、マスコミに痛くもない腹を探られるのも面倒…という訳で、オールマイトやシールド博士、Iアイランドの上層部が話し合った結果。
最初から全てをオープンにしてしまおう。という事で話が纏まり、オールマイトの弟子である俺と出久、エンデヴァーの実子である轟、1-Aを代表して委員長の飯田と副委員長の八百万が、この記者会見に同席する事となった。
「…以上が、今回の事件の大まかな内容となります。何かご質問は?」
事件の概要を説明し終えたオールマイトが質問を受け付けると、報道陣から次々に手が上がり始める。
オールマイトに対しての物が殆どで、たまに俺達への質問も飛んできたが、殆どが想定内の物ばかりだったので、そつなく対応する事が出来た。まぁ、日本の
「
「
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俺達が何かを答える前に、世界各国の良識あるジャーナリストの皆さんが、会見場から叩き出してくれた。
日本ではないIアイランドで、なぜ日本と同じやり方が通用すると思ったのか…理解に苦しむよ。
そして、良識あるジャーナリストの皆さん。ありがとうございました。
出久side
記者会見から2日が経ち、ようやく平穏を取り戻したIアイランドのセントラルタワー。そのパーティー会場に、僕達1-Aは集合していた。
今回の事件の功労者である僕達に、少しでもお礼がしたいと、Iアイランド上層部が食事会を開いてくれたのだ。
「それでは! 事件が無事に解決した事と、シールド博士の退院を祝って! 乾杯!」
飯田君の号令と共に、皆が飲み物が入ったグラスを掲げ、それぞれのペースで食事を楽しんでいく。
「凄い…あんな、大きなお肉…」
鉄板焼きで供される巨大なサーロインやフィレの塊に目を奪われる麗日さん。どうやら、興味はあるけど、注文しようか迷っているみたいだ。
「麗日さん。お肉…頼んでこようか?」
「う、ううん! 大丈夫。自分で頼んでみるよ!」
僕が声をかけた事で決心がついたのか、気合の入った表情で向かっていく麗日さん。うん、頑張って!
「えっと…
「
「
「OK」
どうやら無事に注文出来たみたいだ。じゃあ、僕も注文するとしよう。
「
「OK」
見事に焼きあがったステーキを受け取り、テーブルへと戻る僕と麗日さん。
ステーキが焼きあがるまでの時間を使って、他のメニューも貰っておいたから、あとは食べるだけだ。
「うわ…このお肉……柔らかくて美味しっ…」
フィレステーキを一口食べた途端、驚きで硬直する麗日さん。新鮮な反応で、見ているだけで温かい気持ちになる。
「麗日さん。ステーキも美味しいけど、他の料理も美味しいよ。冷めないうちに食べてね」
轟side
「流石はIアイランド。肉質もシェフの腕前も極上ですわ」
そんな事を言いながら、分厚いサーロインステーキを食べ進めていく八百万。男の俺から見ても、惚れ惚れする食べっぷりだ。
「八百万…相当腹減っていたんだな」
「恥ずかしながら、あの戦いで脂質を粗方使い切ってしまい…補充しないと“個性”がまともに使えないのです」
「そうか…大変だな」
八百万と話をしながらロブスターのグラタンを食べ終えた俺は、新たな料理を取りに席を立つ。
洋食メインで蕎麦がないのが残念だ…代わりにパスタでも食うか。
常闇side
「あーあ、Iエキスポが中止になって、俺達のバイトも終了か…せっかくの出会いのチャンスが…」
「本来貰う予定だったバイト代は全額保証。しかも色まで付けてもらって、まだ文句言ってんのかよ…」
「そこまで言うなら、Iアイランドに就職したらどうだ?」
「まったくだな。まさに厚顔無恥…」
様々な事後処理が終了し、平和を取り戻したIアイランドだが、残念ながらIエキスポは中止される事が発表された。
その事を…正しくはそれによってアルバイトが続けられなくなった事を、己の都合だけで嘆く峰田に、思わず溜息が出る。
いかんいかん。折角の食事会だ。心から楽しまねば失礼というもの!
「とりあえず、このリンゴのソースがかかった鶏料理をもう1皿…」
梅雨side
「
「
「
フランス人のシェフとフランス語で会話している吸阪ちゃん。内容は解らないけど、多分料理の事。
「本当に不思議な人だわ」
私達と同年代なのに、その立ち居振る舞いは時々、凄く年上の様にも見える。もしかして…
「…我ながら馬鹿な想像だわ。吸阪ちゃんが年齢を誤魔化しているなんて」
頭に浮かぶ余りに馬鹿馬鹿しい想像に、思わず苦笑が漏れる。そこへ―
「どうした梅雨ちゃん。何か楽しい事でもあったのかい?」
吸阪ちゃんがテーブルに戻って来たわ。その両手には料理が盛られた2枚のお皿。
「はい、ローストポーク。ソースはパッションフルーツをメインにしたフルーツソースだって」
「美味しそうだわ。ケロケロ」
スマートな仕草でお皿を差し出す吸阪ちゃん。本当に不思議で…素敵な人ね。
雷鳥side
「えー、皆さん。少しだけ私の話を聞いてください」
楽しい時間は瞬く間に過ぎ、食事会も終わりに近づいた頃、マイクを片手に、ステージへと上がるシールド博士。
その頭部に巻かれた包帯が痛々しいが、本人はすこぶる元気で、この食事会でも俺達と気さくに接してくれた。
そんな博士が、何を話すのか。全員がステージに注目する中、シールド博士が口を開いた。
「実は…昨晩、私が入院している病室に…合衆国政府の
アメリカ大統領からの要請。話のスケールの大きさにどよめきが起こる中、博士は話を続けていく。
「要請の内容は、現在合衆国政府が建設している……Iアイランドと同等以上の規模を誇る政府直轄の研究施設。そこの所長となってほしい。というものです」
………事件があった直後に、研究施設への所長就任要請だと? それって、俺の考え過ぎじゃなかったら…
「デイヴ! それは、つまり…」
どうやら、オールマイトも同じ結論に至ったようだな。
「あぁ、トシ…オールマイトの想像している通りだ。要請とは名ばかり…合衆国政府は、私を籠の中の鳥にしたいらしい」
「
「今回の一件で、私をIアイランドではなく、自分達の手が届く範囲に置いておきたいのさ。気持ちはわかる」
「デイヴ、その要請を受ける必要はない。今回の件を受けて、Iアイランドの警備システムは更に強化されると聞いた。君の安全は十分に保障される筈だ!」
普段とはまるで違う…焦りと困惑と怒りの混ざった表情で、博士を説得するオールマイト。だが―
「オールマイト…私はこの要請を受けた」
シールド博士は既に決心していた。
「何故だ、デイヴ。話を聞く限り、その施設の所長になったら…」
「あぁ、施設の出入りは
「そこまで解っていて、どうして…」
「自らへの戒めだよ…ギリギリで踏み止まれたとはいえ、私は悪の道へと堕ちかけた。その事を自ら罰したいのさ」
「デイヴ…そこまで……」
博士の悲壮な決意に、その場の誰もが言葉を失う。だが―
「あぁ、勘違いしないでくれ。今回の本題はこの事じゃないんだ」
本題は別にあった。
「所長就任を受ける見返りとして、私は1つだけ条件を出した。それを受けてくれるなら、所長になる…とね」
「その、条件とは?」
「………メリッサの自由だ。メリッサの行動に、一切の制限をかけない事を要請し…受け入れられたよ」
「パパ…そんな…」
博士の言葉に思わずへたり込み、言葉を失うメリッサさん。
「メリッサ。私とは違い、まだ若い君が5年もの時間を首輪を着けられたままで過ごすのは、あまりに残酷だ」
「私もお前と離れたくはない。だが…お前の未来を考えれば…私から離れる事が最善の道だ…私は、そう考えている」
「パパ……」
「そして、ここからが本題だ……オールマイト、メリッサの後見人になって、一緒に日本へ連れて行ってくれないか?」
「なるほど…そういう事か」
博士の申し出に納得した表情のオールマイト。たしかに、他の国に比べ
「そして、吸阪君、緑谷君、1-Aの皆さん。どうか、メリッサを見守り、時には助けてくれないだろうか…こんな頼りない父親からの願い、どうか聞き届けてほしい!」
そう言って、俺達に深々と頭を下げる博士。俺達の答えは決まっていた。
「任せてください! オールマイトには及びませんが、メリッサさんの事は俺達が守ります! そうだろ? 皆!」
俺の問いかけに、出久が、轟が、1-Aの全員が大きく頷く。
「ありがとう…皆さん、本当にありがとうっ」
こうして、今回の事件は本当の意味で…終わりを迎えた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回より第7章 林間合宿編となります。