出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
第7章 林間合宿編の導入として短編を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第7章 林間合宿編
第75.5話:悩む担任達


イレイザーヘッド(相澤消太)side

 

「どうしたものか…」

 

 エアコンが効きすぎるほどよく効いた職員室。

 愛飲しているゼリー飲料片手に、俺は2週間後に迫った林間合宿について考えを巡らせていた。

 入学当初の予定では、生徒達の成長は主に精神面や技術面、あとは多少の体力的な成長で、“個性”自体の成長は微々たるものである。という想定から、1週間ひたすらに“個性”を使わせ、“個性”自体を成長させる。としていたが…。

 

「まったく、どこまでも教師陣(おれたち)の想定を上回ってくれる…」

 

 担任の贔屓目を抜きにしても、A組の成長度合いは凄まじいの一言だ。

 成績上位を独占した雄英体育祭、体験先の各事務所から高評価が続出した職業体験、そして全員合格という快挙を成し遂げた期末試験。

 クラス内の2人か3人程度ならまだしも、クラス全員がここまで高い実力を持った事は、長い雄英の歴史でも類を見ない。

 言い換えれば…異常事態(・・・・)だ。

 そんな奴らに、当初の予定通りの林間合宿を行って良いのか? 答えは否だ。

 

「全員は無理だとしても…実力上位者には、もっと実戦的な内容にする事を校長に提言してみるか…」

 

 決心した俺はゼリー飲料を一気に飲み干し、校長への意見書を手早く作成していく。

 兵は拙速を尊ぶ。そう言っていたのは孫子だったか…こういう事はスピード勝負だ。

 

 

根津side

 

「なるほど…」

 

 相澤先生から提出された林間合宿に関しての意見書。それを読みながら、僕は林間合宿についての考えを巡らせる。

 この意見書にもある通り、1-Aの成長速度は凄まじいの一言。その点を考慮せず、例年通りの内容で林間合宿を行う事は、不合理の一言だろう。何より―

 

こんな事(・・・・)も起きた事だし…ね」

 

 僕の呟きに怪訝な表情を浮かべた相澤先生を尻目に、リモコンを操作してテレビを点ける。

 

「なっ…」

 

 沈着冷静な相澤先生が驚愕の表情を浮かべるのも無理はない。画面に映っているのは、オールマイトと共に記者会見に臨んでいる1-Aの生徒達なのだから。

 

「つい先程飛び込んできたニュースだけどね。Iアイランドで(ヴィラン)集団による襲撃事件が発生し、オールマイトと1-Aの生徒達が解決に尽力したそうだよ」

「あいつら…オールマイトさんは、何をやっているんだ…」

「まぁ、Iアイランドは“個性”使用に対して寛容だし、情報によると戦闘行為も正当防衛の範囲内に収まっているようだよ」

 

 思わず頭を抱える相澤先生にそんなフォローを入れ、再び意見書の方に意識を戻す。

 

「相澤先生。ここにある実力上位者とは、体育祭で成績上位に入った子達と考えていいのかな?」

「はい。最終種目でベスト8に残った吸阪、緑谷、轟、飯田、蛙吹、八百万、常闇、麗日の8人を考えています。全員に実戦的な訓練が行えないなら、この8人だけでも…と」

「ふむ…A組の実力を考えた場合、全員に実戦的な訓練を行った方が、結果的にはプラスとなるだろうね…よろしい、この件はこちらで何とかしよう」

「ありがとうございます」

 

 頭を下げる相澤先生に微笑みながら、細かい事を詰めていく。今年の林間合宿は、中々刺激的な物になりそうだ。

 

 

ブラドキング(管赤慈郎)side

 

「どうしたものか…」

 

 エアコンが効きすぎるほどよく効いた職員室。俺はある書類を手に考えを巡らせていた。

 その書類とは、B組の期末試験の結果一覧表。筆記は1名の赤点を除いて全員合格。これはいい…問題は……。

 

「実技試験の合格率…」

 

 今回、実技試験に合格したのは20人中12人。合格率は6割だ。

 この数字だけを見れば、平年並といったところで、決して低い数字ではない。しかし、A組は全員合格という快挙を成し遂げている上に、全員が80点以上を叩き出したという話だ。

 B組の合格者の中には、赤点ギリギリで突破した者もおり、クラスとしての平均点は70点に届くかどうかといった所…A組との差は歴然だ。

 

「一体何が…何が違うと言うのだ…」

 

 まず個々の実力を高めていく方針のA組に対し、B組の育成方針は、協調と団結を第一としてきた。

 その事もあり、体育祭の時点での実力差は許容範囲だったが…ここに至ってその差はますます開いている。

 俺の方針が間違っていたのか? 協調や団結を二の次にして、まずは個々の実力を高めていけば良かったのか?

 

「そうであるならば、俺は生徒達に何と言って償えば…」

 

 思わずな弱気な事を呟き…慌ててその考えを打ち消す。教師である俺がこんな弱気でどうする?

 あいつらは俺を信じ、ここまで付いて来てくれたのだ。俺が俺自身を信じられないなど、あいつらへの侮辱だ!

 

「方法は必ずある筈だ…」

 

 B組の力を高め、A組との差を縮める方法を見つける為、俺は資料に目を通し、考えを巡らせる。

 今日も長い1日になりそうだ。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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