出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
第77話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。





第77話:林間合宿ーその1ー

出久side

 

 謎の(ヴィラン)絶無の出現により、失敗に終わった死柄木弔の確保。

 その事と爆弾などが仕掛けられている可能性を考慮し、ショッピングモールは一時的に閉鎖。徹底的な捜索が行われた。

 僕と麗日さんも警察署へ連れられ、事情聴取を受けた。雄英襲撃、保須事件、警察は既に(ヴィラン)連合に対し、特別捜査本部を設置し、捜査にあたっているらしい。

 

「………うん、よし。ありがとう緑谷君。貴重な情報を入手出来たよ」

「いえ、大した情報じゃなくて、申し訳ないです。もっと、色々な事を引き出せていれば、良かったんですけど…」

 

 死柄木弔の人相や会話内容等、話せる事全てを塚内さんに話したけど、正直価値のある情報は、死柄木弔の人相くらいだろう。

 

「いやいや! ガールフレンドを人質に取られた状態で、よく耐えたよ。普通なら恐怖でパニックになってもおかしくない。犠牲者が出なかったのは、君が冷静でいたおかげだよ」

 

 塚内さんはそう言って慰めてくれたけど、僕はやっぱりまだまだだ。もっと…強くならないと…。

 

 

雷鳥side

 

「……そろそろ2時間か」

 

 出久と麗日が事情聴取を受けている間、俺と梅雨ちゃんは待合スペースで2人を待ち続けていた。

 他の皆も警察署で2人を待つ。と言っていたが、あまり大人数で詰めかけても迷惑なので、今は帰宅している。

 

「まったく…死柄木弔(信楽焼)のせいで、楽しい買い物が台無しだ。今度会ったら、全身が蛸みたいになるまでぶちのめしてやる」

 

 死柄木弔(信楽焼)への苛立ちを口にしつつ、すっかり(ぬる)くなったペットボトルのお茶をがぶ飲みしていると―

 

「長時間の事情聴取にご協力いただき、感謝します」

 

 出久と麗日がそれぞれ事情聴取を受けていた部屋から出てきた。

 

「出久、麗日」

「緑谷ちゃん、お茶子ちゃん」

 

 俺と梅雨ちゃんが声をかけると、ようやく緊張の糸が切れたのだろう。出久は安堵の表情を浮かべ―

 

「梅雨ちゃーん」

 

 麗日も泣きながら、梅雨ちゃんに抱き着き、慰められていた。

 

 

 暫くして泣き止んだ麗日は―

 

「それじゃあ、お茶子ちゃんは今晩、私の部屋に泊まってもらうわ」

「なんか、ごめんね。梅雨ちゃん」

「ケロケロ。困った時はお互い様よ」

「それじゃあ、梅雨ちゃん。麗日の事、頼むな」

「頼まれたわ」

「麗日さん、何かあったらすぐに連絡してね」

「うん、それじゃあ…またね」

 

 梅雨ちゃんに付き添われ、警察署を後にした。あの様子から見て、大丈夫だとは思うが…万が一の時にどう動くか、出久と話しておくか。

 そんな事を考えながら、歩いていると…。

 

「吸阪少年! 緑谷少年!」

 

 警察署の正門。そのすぐ外で、痩身形態(トゥルーフォーム)のオールマイトが、友人である塚内さんと話をしていた。

 

「オールマイト…どうしてここに?」

「私が、彼と個人的に話す事があってね。連絡していたんだ」

 

 出久の声に、笑ってそう答える塚内さん。個人的に話したい事(・・・・・・・・・)ね。塚内さんの言葉、何か含む物を感じるな。

 

「オールマイトも…」

 

 出久が口を開いたのは、その時だ。  

 

「オールマイトも、(たす)けられなかった事は…あるんですか…?」

 

 出久の問いに、オールマイトは一瞬だけ戸惑いの表情を浮かべ―

 

「……あるよ。たくさんある。今でもこの世界のどこかで、誰かが傷つき、倒れているかもしれない」

「悔しいが、私も人だ。手の届かない場所の人は救えないさ…」

「だからこそ、笑って立つ。“正義の象徴”が、人々の、ヒーロー達の、悪人達の、心を常に灯せるようにね」

 

 静かに、だがハッキリとした声で、そう答えた。流石はオールマイト。言葉に説得力がある。更に―

 

「死柄木の言葉を気にしてる。多分、逆恨みかなんかだろうさ」

「彼が現場に来て、救えなかった人間は、今まで1人もいない」

 

 塚内さんの発した言葉で、出久の疑問は解消出来たのだろう。どこかスッキリした顔になった。

 オールマイトと塚内さんに挨拶して、俺達は帰路に岐路につく。姉さんも心配しているだろうから、早く元気な顔を見せないとな。

 

 

オールマイトside

 

 私と塚内君に挨拶をして、帰路についた吸阪少年と緑谷少年を見送りながら―

 

「オールマイト…」

 

 塚内君が静かに口を開いた。

 

「今回は偶然の遭遇だったようだけど…今後、彼ら…ひいては生徒が狙われる可能性は低くないぞ」

「もちろん、引き続き警戒態勢は敷くが、学校側も思い切ったほうが良いよ」

「強い光ほど、闇も大きくなる。雄英を離れる事も視野に入れておいた方が良い」

 

 雄英を離れる事も…か。

 

「………教師生活、まだ3ヶ月とちょっとだぜ」

「ははっ、だから前にも言ったろ。向いてない(・・・・・)って」

 

 容赦ない物言いに苦笑しつつも、私は塚内君に拳を突き出す。塚内君も拳を突き出し、互いにぶつけ合う。

 

「オール・フォー・ワン。今度は、ちゃんと捕えよう」   

「うん。今度こそ………またよろしくな。塚内君」

「おう!」

 

 

雷鳥side

 

 翌日、俺達は相澤先生からの連絡を受け、教室に集まっていた。そこで聞かされたのは―

 

「……と、いう訳で(ヴィラン)の動きを警戒し、例年使わせて頂いている合宿先を急遽キャンセル。行き先は当日まで明かさない運びとなった」

 

 前世の記憶通りの内容だった。となると…いや、爆豪はもういないし、皆原作とは比べ物にならない位強くなっている。

 油断してはいけないが、過剰な心配も必要ないだろう。

 

「合宿自体をキャンセルしねえの、英断すぎんだろ!」

 

 峰田の叫びを聞きながら、俺は自分にそう言い聞かせた。

 

 

出久side

 

 時間はあっという間に流れ、遂に林間合宿当日!

 

「え? A組は1人も補習いないの? いやぁ、流石はB組よりずっと優秀なA組だ。君達が試験で派手にやってくれたおかげで、僕達h…」

「A組煽りたいからって、自分で自分の傷口広げてどうすんの…」

 

 僕達を見つけた途端、物間君が僕達を煽って…いるのか? よくわからない事を口走り、拳藤さんの一撃で静められると―

 

「A組、ホントごめんね」

「物間…おかしい」

「アイツは、頭の螺子がどこか外れているんだノコ」

「Oh! あれガ黄色い(イエロー)救急車(ピーポー)の出動案件ナノですネ!」

「ん…」

「そういう事だね」

 

 B組の女子から厳しい言葉を次々にぶつけられながら、鉄哲君に担がれ、バスへと運ばれていった。B組の皆も大変だなぁ…。

 

「体育祭じゃ色々あったけど、まァよろしくね。A組」

「ん…」

「こちらこそ」

 

 B組を代表して挨拶してきた取蔭さんと小大さんに笑顔でそう返すと、飯田君が誘導しているバスへと乗り込んでいく。

 ちなみに…怪しい息遣いをしながら、B組女子を見つめていた峰田君は、雷鳥兄ちゃんの一撃を受け、そのまま引き摺られていった…相変わらずブレないなぁ…。

 

 

イレイザーヘッド(相澤消太)side

 

 A組の生徒達と俺を乗せたバスが走り出して15分が経った頃。最前列の席に座っていた俺は―

 

「1時間後に1回止まる」

 

 この後の予定を伝えようと、背後に視線を送るが…。

 

「その後は………」

 

 生徒達は、実に楽しそうにバス旅行を楽しんでいた。まったく、意味もなく騒ぐのは不合理なんだが…。

 まぁ、いいか……わいわい出来るのも今のうちだけだ(・・・・・・・)

 

 

雷鳥side

 

 バスに揺られること、1時間20分。休憩の為停車したのは―

 

「何ここ、パーキングじゃなくね?」

「ねぇアレ? B組は?」

 

 どこかの山中にある広場。パーキングというよりは、ただの空き地……うん、前世の記憶どおりだ。そして―

 

「よーう、イレイザー!!」

「ご無沙汰してます」

 

 近くに止められていたミニバンから姿を現したのは…。

 

「煌く(まなこ)でロックオン!」

「キュートにキャットにスティンガー!」

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」

 

 戦闘服(コスチューム)に身を包んだ妙齢の女性2人。その正体は…。

 

「今回お世話になるプロヒーロー『プッシーキャッツ』の、マンダレイさんとピクシーボブさんだ」

「連名事務所を構える4名一チームのヒーロー集団! 山岳救助等を得意とするベテランチームだよ! キャリアはもう12年にもなる!」

 

 出久、毎度の事ながら詳細な説明ありがとう。

 

「心は18!」

「ッ!」

「にゃん!?」

 

 だが、いくら殺気に満ちた一撃を放ってきたからといって、(ヴィラン)でもない女性に反撃(カウンター)を放つんじゃない。まぁ、寸止め出来たから、強くは言わないけど…。

 

「す、すみません! あまりに凄い一撃だったので、つい反射的に…」

 

 攻撃を仕掛けてきたピクシーボブの顔面に、危うく反撃(カウンター)を叩き込む所だった出久が、コメツキバッタの様に頭を下げるのを尻目に、マンダレイが俺達を見回し―

 

「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね。あんたらの宿泊施設は、あの山の麓ね」

 

 軽く10kmは離れた山の麓を指差した。こいつは…そろそろ(・・・・)だな。

 マンダレイの言葉に周囲がざわつく中、何気なく相澤先生に視線を送ると―

 

「………」

 

 無言ながら、不敵な笑みを浮かべていた。まったく、やってくれるよ。

 

「今はAM9:30。早ければぁ…12時前後かしらん」

「12時半までに辿り着けなかったキティは、お昼抜きね」

 

 次の瞬間、ピクシーボブが“個性”を発動し、大量の土砂が俺達を飲み込んだ。

 

「悪いね諸君。合宿はもう、始まってる」 

「私有地につき、“個性”の使用は自由だよ! 今から3時間! 自分の足で施設までおいでませ!」

「この…『魔獣の森』を抜けて!」

 

 相澤先生とマンダレイの言葉が響く中、土砂と共に崖下へ送り込まれた俺達。その眼前に広がるのは、鬱蒼とした森。なるほど、魔獣の森とはよく言ったもんだ。

 

「まったく……あんな空き地にバスが止まったから、何かあるとは思ったが…」

「あぁ、流石は雄英だ。ある意味、期待を裏切らない」

 

 轟と飯田の呟きに、他の皆も同感という表情を見せる。そこへ姿を現したのは―

 

「「マジュウだー!」」 

 

 土の色をした四足歩行の魔獣(モンスター)。その姿に、瀬呂と峰田の悲鳴が響く。

 

「静まりなさい獣よ。下がるのです」

  

 すぐさま口田が“個性”を発動するが……効果がない。ならば!

 

 

イレイザーヘッド(相澤消太)side

 

「いやはや、あの子達凄いねイレイザー。まさに自慢の教え子ってやつ?」

「まだまだひよっこですよ」

 

 マンダレイさんの感心したような声に対し、俺は努めて冷静に答える。あいつらの実力が高い事は事実だが、甘やかすのは不合理だからな。

 

「私の土魔獣、もう10体倒された。躊躇の無さといい、すぐさま陣形を組んだところといい、金の卵は伊達じゃないね。くぅー、逆立ってきたぁ!」

 

 それにしてもピクシーボブさんは、前に会った時と、雰囲気が変わっているような……まぁ、仕事に差し支えなければ、気にする必要はないか。

 

「このペースだと、ホントに昼過ぎまでにゴールしそうね。私達も移動しようか」

「えぇ、ピクシーボブ。引き続き、魔獣の方をお願いします」

「おまかせ!」

 

 向かって来る土魔獣の群れを、陣形を組んで迎え撃ちながら、宿泊施設(ゴール)へ向けて一直線に向かっていく教え子達に無言のエールを送り、車へと乗り込む。

 さぁ、今回も俺達の予想を上回ってみせろ。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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