出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第78話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
雷鳥side
さて、林間合宿初日。いきなり崖の下に叩き落された
道中、次々と現れる土で出来た四足歩行の
そんな事を考えながら進んでいる内に―
「到着っと!」
特に大きなトラブルも無く、宿泊施設に到着した。さて、時間は?
「12時3分。まさか3時間を切ってきたなんて…」
ふむ。今の俺達の実力なら、妥当なタイムだな。それにしても、“個性”の使い過ぎで半分グロッキー状態のピクシーボブはともかく、マンダレイの表情は…驚愕というか、
「いやぁ、3時間って、
おいおい、実力差自慢だったのかよ。マンダレイの言葉に苦笑してると―
「正直、早くてもあと2時間はかかると思ってた。私の土魔獣も、信じられない数が倒されてるし…良い、凄く良いよ君達」
「特に……そこの4人、雄英体育祭トップ4は、伊達じゃないね。3年後が楽しみ! ツバつけとこーっ!」
グロッキー状態から立ち直ったピクシーボブが、
だが、“個性”の使い過ぎで消耗していた事もあり、咄嗟に飛び出してきた梅雨ちゃん、麗日、耳郎、八百万に阻まれてしまう。
「ば、売約済み……」
絶望した! と言わんばかりの表情で崩れ落ちるピクシーボブ。その光景に相澤先生が呆れ顔を見せながら、マンダレイに問いかける。
「マンダレイ、あの人…あんなでしたっけ?」
「彼女焦ってるの。適齢期的なアレで」
適齢期的なアレ…ね。それにしても、
「あ、ずっと気になっていたんですが…」
そんな事を考えていると、出久が何かに気が付いたように声を上げた。
「その子は、どなたかのお子さんですか?」
その視線の先にいるのは、先程の空き地でも姿を見せていた目付きの悪い少年。前世の記憶によるとたしか、マンダレイの…。
「あぁ、違う。この子は私の
そうそう、洸汰君だったな。マンダレイに促され、渋々といった様子で近づいてくる洸汰君に、出久も笑顔で近寄り―
「あ、えっと、僕は雄英高校ヒーロー科の緑谷出久。よろしくね」
握手を求めるが、洸汰君はその手を払いのけ、出久の股間目掛けて拳を振るう。
「………」
もっとも、今の出久に子どものパンチが当たる訳がない。出久は洸汰君の拳を容易く受け止め―
「何の真似かな?」
「放せ! 放せよ!」
「放しても良いけど、いきなり殴ってきた理由を教えてくれないかな?」
………出久の奴、怒ってるな。まぁ、理由も無しに股間を殴られれば怒って当然だが。
「ヒーローになりたい。なんて連中とつるむ気はねえよ!」
「………君が僕達と仲良くする気が無いなら、それはそれで構わない。だけど、さっきみたいなやり方は良くないよ。見ず知らずの他人に理不尽な暴力を振るうのは、
「……うるせぇ!」
出久の言葉が余程癪に障ったのか、洸汰君は解放された途端、半泣きで悪態をつき―
「洸汰っ! 待ちなさい!」
マンダレイの制止も振り切って、どこかへ走り去ってしまった。
まあ、
「えー…空気を読まずに質問しますが…」
ここは無理にでも空気を変えるとするか。
「先程、12時半までに到着出来なかったら、昼飯抜きと仰ってましたけど…俺達、条件クリアしましたから、有るんですよね? お昼」
極力明るい感じで、昼食について尋ねてみる。だが―
「あ、えっと…」
「その…ね…」
なんだ? このマンダレイとピクシーボブの反応は…。
「ごめん!」
「実はお昼ご飯、出来てないの!」
「なん、だと…」
マンダレイとピクシーボブからの謝罪に、俺を含む全員*2が凍り付く。
「正直、こんなに早く来るとは思ってなかったの…」
「それに情報漏洩を防ぐ目的で、私達以外のスタッフには休みを取らせたから、人手も足りなくて…」
ふむ…人手不足か。その点に関しては、同情すべきだが―
「昼飯抜きかよ…やべぇ、空腹で倒れそう」
「こんな事なら、バスの中でお菓子食べとけばよかった…」
「今なら、その辺の草でも食える気がする…」
今は、皆の空腹を何とかするのが先決だな。
「マンダレイ! 今すぐ食べられる物はないんですか? 非常食の類とか」
「ご飯は炊けてる。それに食材自体は山ほどあるよ」
「だったら、俺が何とかしましょう。厨房をお借りしますよ」
俺がそう宣言すると、皆から地響きのような歓声が上がり―
「雷鳥兄ちゃん、僕も手伝うよ」
「ケロケロ。私も手を貸すわ」
「私も!」
出久、梅雨ちゃん、麗日が手伝いを名乗り出てくれた。砂藤や瀬呂、耳郎も名乗り出てくれたが…とりあえず、4人で大丈夫だろう。
「よし、昼食作りといきますか!」
出久side
部屋に素早く荷物を運んだ僕達は厨房へと集合。手洗いとアルコール消毒を済ませてから、備え付けのエプロンと三角巾を身に着け、打ち合わせを進めていく。
「メイン食材は…この豚バラのブロック。こいつを使ってガッツリ食べられる…肉野菜炒めを作ろうと思う」
「肉野菜炒めか…うん、良いと思う」
雷鳥兄ちゃんがわざわざ
「出久、梅雨ちゃん、麗日には汁物と副菜を頼みたい」
「わかったよ。雷鳥兄ちゃん」
「ケロケロ。分担してやっていきましょう」
「頑張ります!」
「今の時刻は、12時18分。遅くとも13時には食事を始められるようにしたいから、焦らず急いで慎重にやっていこう」
そう言うと雷鳥兄ちゃんは包丁を手に、豚バラブロックを切り始めた。汁物や副菜に関しては、僕達の自由にしていいという事だ。
手早く分担を話し合い、僕が汁物、麗日さんと梅雨ちゃんが副菜をそれぞれ担当する事を決めたら、それぞれ調理に取り掛かる。
「よし…」
食材の山から、汁物の具材として選び出したのは、ニラとトマト、そして油麩だ。
「まずは具材のカット」
トマトと油麩は一口大に、ニラは3cm幅のざく切りにしていく。
「鍋に水を張り、顆粒の出汁の素を入れて火にかける」
時間があれば、鰹節や昆布を使って出汁を取るんだけど、今回は時間がないから出汁の素に頼る。
「出汁が沸騰したら、トマトと油麩を入れる」
3分もすれば、最初は硬かった油麩が出汁を吸って、軟らかくなっていく。そうしたら―
「一度火を止めて、味噌を溶かし…ニラを加える」
味噌の香りやニラのシャキシャキ感を損ねないよう、ここからは弱火。沸騰は厳禁だ。
「あとは器に盛れば…ニラとトマトと油麩の味噌汁。完成」
一口味見…うん、上手く出来た。
雷鳥side
「肉のカットは、これで良し。次は…」
5mm幅にカットした豚バラ肉をボウルに入れ、酒、塩胡椒、片栗粉を入れて揉みこみ、暫し置く。
「今のうちに野菜のカットだ」
包丁を一度綺麗に洗い、野菜をカットしていく。キャベツは軸の部分を切り取ってざく切り、軸の部分も縦に薄く切っておく。
玉葱は6等分のくし切りにしてからバラバラに解し、ピーマンは細切り、人参は千切りにしておく。最後にもやしは水洗いして、
「出来れば
時短の為、木耳は泣く泣く除外。最後に大蒜と生姜を微塵切りにして、準備は完了だ。
「あとはスピード勝負」
特大の中華鍋で、まず大蒜と生姜の微塵切りを炒め、香りを出していく。そこに豚肉を入れ、8割方火が通るまで炒めてから、一旦取り出しておく。
「野菜はまず玉葱と人参」
中華鍋に油を追加してから、まず玉葱と人参を炒めていく。玉葱に透明感が出たら、キャベツとピーマンを加えて更に炒める。
キャベツに艶が出てきたら、豚肉を戻し、もやしも加えて強火で炒めていく。
「味付けは塩胡椒と合わせ調味料」
塩胡椒で軽く味付けしてから、醤油と味醂を混ぜた合わせ調味料を鍋肌に回しかける。水分が粗方飛んだら―
「味見…よし」
仕上げに鰹節を加えて一混ぜ。
「完成、肉野菜炒めガッツリ仕様!」
肉野菜炒めを前面に、大盛りご飯と出久の作った味噌汁、梅雨ちゃんが作ったキュウリとラディッシュの酢の物が脇を固める。そこへ―
「これを乗せたら、完璧」
麗日の作った半熟の目玉焼きが加わる事で、完璧な布陣となった。さぁ、昼食といこうか。
「なんじゃこりゃぁ!」
「滅茶苦茶うめぇ!」
「うめぇ…うめぇよ…」
皆に振舞った肉野菜炒め定食は好評だったのだが…。
「吸阪…お前は
恐らく極度の空腹でおかしな事を口走った常闇や―
「料理の腕……完敗だ…美味しいのに、悔しいっ!」
肉野菜炒めを一口食べた途端、泣き出してマンダレイに慰められているピクシーボブは…見なかった事にしておこう。
「それにしても、肉野菜炒めに半熟の目玉焼きを合わせるのは、良いアイデアだ。流石だな麗日」
半熟の黄身を絡めれば、手軽な味変にもなるし、作るのに手間もかからない。実に素晴らしいアイデアだ。
「それ、
「なるほど…いや、勉強になった」
ハンバーグやカレーに目玉焼きを添えるのはよくやっていたが、肉野菜炒めにも合うとはな。今度家でも試してみよう。
食事がある程度進んだところで―
「お前達、食べながらで良いから聞け」
俺は声を発すると、途端に賑やかだった室内が静まりかえり、話を聞く態勢が整った。この反応、実に合理的だ。
「この後の予定だが、夕食と就寝の時間以外は決まっていない。合宿の本格的な指導は明日からなので、体を休めるなり、自主練を行うなり好きにしろ」
「施設の裏には、広い空き地もある。存分に“個性”を使えるから、使用するなら俺か『プッシーキャッツ』の皆さんに声をかけるように。以上だ」
生徒達からの応答の声を聞きながら、俺は食堂を後にする。
「…まともな飯を食うのも、偶には良いもんだ」
吸阪達の作った昼食で膨れた腹を擦りながら、寝る場所を探す為に。
「来たか…」
A組から遅れること5時間半。ようやくゴールへ辿り着いた教え子達に、俺は安堵の声を漏らす。
「お前達、よく頑張った。全員怪我が無いようで何よりだ」
皆限界まで“個性”を使い、疲労困憊で声を出すのも辛い。といった様子だ。
「あと30分ほどで夕食だ。少し休んでから、荷物を部屋に運ぶといい。それから………」
この事を伝えるべきか否か、俺は数秒の間迷い―
「これは、
真実を皆に伝えた。そして俺は、魔法瓶と人数分の紙コップを委員長の拳藤に渡し、その場を後にする。
「先生! A組は…いつゴールしたんですか?」
「………12時3分。スタートから2時間半で、ゴールしている」
拳藤の問いに、そう答えて…。
拳藤side
A組の吸阪から差し入れられた、
「うめぇな…」
「そうだね…」
近くに座っていた鉄哲の声に相槌を打ちながら、スープを少しずつ胃の中に収めていると―
「吸阪…あいつはきっと、いや間違いなく良い奴だ。このスープだって、純粋な善意で作ってくれたんだろう」
鉄哲が悔しさに顔を歪めながら、言葉を紡いでいく。
「だからこそ、腹が立つんだ…吸阪やA組にじゃねぇぞ…完膚なきまでの差をつけられちまった自分自身にだ!」
「鉄哲…悔しいのは、自分自身に腹が立っているのは、アンタだけじゃない。あたし達B組全員がそうさ」
鉄哲の声にそう答えながら周りを見れば、B組の皆があたしの声に頷いていた。
「頑張ろう! この合宿で何倍も強くなって、A組を見返してやろう!」
「そして、あたし達が不甲斐ないせいで迷惑をかけっぱなしのブラド先生に、恩返しするんだ!」
あたしの鼓舞に、B組の全員が鬨の声を上げる。
見てなよA組! この合宿の主役はあたし達B組だ!
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皆様の期待に少しでも応えられるよう、これからも頑張ってまいります。