出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1 作:SS_TAKERU
第79話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。
出久side
「いただきます!」
宿泊施設の食堂に皆の声が響き、賑やかな夕食が始まる。
今日は特別。と、プッシーキャッツの皆さんが作ってくれた夕食は、どの品も絶品の一言。
「凄く美味しいです!」
僕は心からの賛辞を送ったんだけど…
「ねこねこねこ……あたしだって、本気になれば…高校生には負けられないから」
ピクシーボブはどこか遠い目をしながら、そう呟くだけだった。雷鳥兄ちゃんに負けないくらい美味しいのになぁ…。
「美味ぇ!! 米美味ぇ!!」
「五臓六腑に染み渡る!! ランチラッシュに匹敵する粒立ち!! いつまでも噛んでいたい!!」
「土鍋…!?」
「土鍋ですか!?」
「うん。つーか、腹減りすぎて、妙なテンションになってんね…」
そんな中、B組の鉄哲君と庄田君は、山盛りご飯を掻き込みながら、おかしなテンションになっていた。よっぽどお腹が減っていたんだね。
雷鳥side
「温泉に浸かりながら空を見上げれば、満天の星空と三日月。風流だねぇ」
夕食の後は風呂の時間。今回の林間合宿に備えて拡張されたという露天風呂は、A組B組の男子全員で浸かってもなお、余りある程広大。湯量も豊富で、文句無しだ。
「吸阪…」
湯船に浸かってリラックスしていると、鉄哲が真面目な顔で話しかけてきた。
「どうした? そんな難しい顔して」
「いや…本当なら食堂で伝えるつもりだったんだが…タイミングが掴めなくてな。差し入れのスープ、美味かった。この通り、礼を言うよ」
鉄哲の言葉に続くように、B組男子全員が頭を下げる。あの物間も隣にいた泡瀬に促され、渋々頭を下げているのは…なかなかレアな光景だ。
「まぁ、俺が好きでやった事だが…喜んでもらえたなら何よりだ」
「その恩返しって訳じゃないが……この合宿で俺達B組は強くなる。お前達A組に負けないくらいにな!」
鉄哲が高らかにそう宣言し、大きく頷くB組男子達。なるほど、宣戦布告とは面白い。
「フッ…生憎、この合宿で強くなるのは俺達も同じだ。悪いが、差を縮めさせるつもりは微塵もないから、そのつもりで」
俺の言葉に続くように出久や轟、飯田達も頷き…A組男子とB組男子の間で火花が散る。だが、それも一瞬の事。
「まぁ、なんだかんだ言っても同じ雄英高校の1年同士。互いに切磋琢磨してやっていこうぜ」
「おう!」
すぐに雰囲気は軟化し、それぞれを代表して俺と鉄哲が握手を交わす。うん、まさに青春の1ページだ。だが―
「まァまァ、飯とか青春とかはね…ぶっちゃけどうでもいいんスよ。求められてんのって、そこじゃないんスよ」
「その辺わかってるんスよ。オイラぁ…」
その雰囲気をぶち壊すような発言をした奴がいる。峰田だ。
「求められてんのは、この壁の向こうなんスよ…」
「峰田君…何を言ってるの?」
「ホラ…いるんスよ…今日日、男女の入浴時間ズラさないなんて、事故…そう、もうこれは事故なんスよ…」
あの馬鹿…その変態っぷりは、流石と言えば流石だが…幾ら何でも―
「峰田君やめたまえ! 君のしている事は、己も女性陣も貶める恥ずべき行為だ!」
おぉ、流石は飯田。的確な叱責だ。
「やかましいんスよ…」
だが、峰田は止まらない。
「壁とは超える為にある!! “Plus Ultra”!!」
校訓を穢しながら、男湯と女湯を仕切る壁を凄い勢いで登っていき―
「ヒーロー以前に、ヒトのあれこれから学び直せ」
恐らく
「くそガキィイイィイ!!?」
悪態を吐きながら落ちていく峰田。そして洸汰君も、女湯側から声を掛けられ、思わず振り向いた途端―
「わっ…」
驚きの声と共にバランスを崩し、落下してしまう。
「危ない!」
間一髪、一番近くにいた出久が受け止めたが、どうやら意識を失っているらしく、大急ぎでマンダレイのもとへと運んで行った。
「さて…」
出久と洸汰君の姿が見えなくなったところで、改めて峰田を睨みつける。この大馬鹿野郎はどうしたものか…。
「峰田君……君という奴は…」
必死に怒りを押し殺し、極力冷静に声を紡いでいく飯田。落下した峰田の
「一応、確認しておこう。男子諸君、
次の瞬間、満場一致で響く
「さて峰田…小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えながら、命乞いをする心の準備は…OK?」
「す…吸阪…」
「なんだ?」
「ぼ、暴力は…良くない」
「…問答無用!」
そして、夏の夜空に峰田の悲鳴が響き渡った…。
出久side
気を失った洸汰君を抱え、大急ぎでマンダレイのもとへと運んだんだけど…。
「落下の恐怖で、失神しちゃっただけだね。ありがとう、受け止めてくれて」
幸いな事に、洸汰君は怪我1つ負っていなかった。良かった…。
「イレイザーに『1人
「とにかく、何ともなくて良かった…」
「そんな格好で…よっぽど慌ててくれたんだね」
「あっ…」
マンダレイの言葉に、自分が半裸である事を思い出して思わず赤くなる。それと同時に―
-ヒーローになりたい。なんて連中とつるむ気はねえよ!-
昼間の洸汰君の言葉を思い出す。洸汰君はどうしてあんな事を言ったのだろう?
「あの、マンダレイ。差し支えなければ、教えて欲しいのですが…」
意を決して尋ねた僕に、マンダレイは教えてくれた。2年前、ヒーローだった洸汰君の両親が、
突然両親を失った洸汰君に対し、世間は
「そうだったんですか…」
「正直、私らの事も良くは思っていないと思う。他に身寄りも無いから従ってる……って感じ」
「洸汰にとって、ヒーローは…理解出来ない気持ち悪い人種なんだよ」
露天風呂に戻りながら、僕は考えを巡らせる。洸汰君の事情を知った…知ってしまった今、僕はどうするべきなのだろう。
答えが出ないまま露天風呂に辿り着くと―
「おう、出久。戻ったか」
皆が湯船に浸かってリラックスしていた。ただ1人、ボコボコにされて、近くの木に逆さ吊りにされた峰田君は…見なかった事にしておこう。
雷鳥side
さて、現在の時刻は朝の5時30分。俺達1-A一同は、宿泊施設前の広場に集合していた。
22時消灯で5時起床。7時間は眠れた訳だが…昨日の疲労もあり、大部分のメンバーはまだまだ眠そうだ。だが―
「おはよう諸君。本日より本格的に強化合宿を始める。今合宿の目的は、全員の強化及びそれによる“仮免”の取得」
「具体的になりつつある敵意に、立ち向かう為の準備だ。心して臨むように」
相澤先生の声に眠気は吹っ飛び、皆真剣な表情へと変わっていく。
「という訳で緑谷。こいつを投げてみろ」
そして出久に投げ渡されたのは、入学直後の『個性把握テスト』で使った測定用のボール。
「前回の…入学直後の記録は1902.7m。どんだけ伸びてるかな?」
なるほど。この3ヶ月での成長具合を見ようって魂胆か。
「でぇやぁぁっ!!」
出久の声と共に、ボールは弾丸のような速さで空を飛び…向こうの山の頂上付近に着弾する。
「……2816.3m。やはりこうなるか」
3ヶ月前と比較して約1.5倍の記録を出した出久に対し、どこか納得した様子の相澤先生。
その後、俺、砂藤、障子、八百万がソフトボール投げを行ったが、全員4割から5割増の記録を叩き出していた。
「例年であれば、この時期の記録は入学時の3~5%増程度。それは成長したと言っても、あくまでも精神面や技術面。あとは多少の体力的な成長がメインで、“個性”そのものはそれほど成長していないからだ」
「だが、諸君はこの3ヶ月で精神面や技術面だけでなく、“個性”そのものも大きく成長させた。正直言って、
「よって、諸君には……本来予定されていた“個性”伸ばし、ではなく…外部から特別講師を招き、実戦的な訓練を行ってもらう」
「死ぬほどキツイがくれぐれも……死なないように」
その言葉に、気合の入った声で答える俺達。相澤先生は満足げに頷き―
「特別講師が到着するのは昼過ぎの予定だ。とりあえず午前中は自主練とする。朝食は8時から、7時50分までに食堂へ集合するように」
必要事項を伝えると、ブラドキング先生やプッシーキャッツの皆さんとの打ち合わせに行ってしまった。
「それでは皆! 各々怪我には十分気をつけて、自主練を開始しよう!」
飯田の号令で、俺達は好きなように散らばり、自主練を始めていく。特別講師か…どんな人が来るのか、楽しみだ!
死柄木side
「………もう少し、欲しいな」
俺達
そこに記されていたのは、新たに結成した
「足りませんか…戦力的には十分な数が揃っている筈ですが…」
「個々の戦力としては、申し分ない。だが、頭数が…あと2人は欲しい」
「…わかりました。義爛さんに問い合わせてみましょう」
「ああ、任せる」
黒霧にそう伝えると、俺はグラスに残っていた水割りを一気に呷り―
「
ファイルに挟まれていた1枚の写真を見ながら、静かに呟く。それに写っていたのは…ある山中に建てられた宿泊施設。今回のターゲットだ。
「楽しみにしてな、ヒーローの卵ども。パーティーの始まりはもうすぐだ」
最後までお読みいただき、ありがとうございました。