出久君の叔父さん(同学年)が、出久君の運命を変えるようです。Season1   作:SS_TAKERU

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お待たせしました。
第80話を投稿します。
お楽しみ頂ければ、幸いです。


第80話:林間合宿ーその4ー

お茶子side

 

 時刻は8時。プッシーキャッツの皆さんが作ってくれた朝食*1を前に、騒がしくも楽しい朝食が始まる。

 私も、新鮮な卵と炊き立てのご飯で作る卵かけご飯を堪能していると―

 

「うーん……」

 

 焼き鯖を食べながら、緑谷君が難しい顔をしていた。

 

「緑谷君、どうしたん? そんな難しい顔して」

「え? あ…ちょっと考え事というか、なんと言うか…」

 

 私の問いかけに、緑谷君は顔を赤くしながらそう答え、考え事の内容を話してくれた。それは―

 

「戦闘スタイルの…改良?」

「うん、今の戦闘スタイル、『フルカウル・ガンシュートスタイル』は、オールマイトの模倣から抜け出す為に編み出した格闘術。だけど、まだまだ改良の余地は残されていると思うんだ」

「改良……緑谷君の戦い方はパンチ主体だよね? 月並みだけど…キックを使う頻度を増やすとか…どうやろ?」

「やっぱり、蹴り技の使用頻度を増やすのが、シンプルだけど効果的な改良点になるかな。ありがとう、麗日さん。道筋が見えてきたよ」

 

 ある程度考えが纏まったのか、どこかすっきりとした顔になった緑谷君は、そう言って本格的に朝食を食べ始めた。うん、役に立てて…よかった。

 心がほんわかするのを感じながら、お味噌汁に口をつけると―

 

「相澤先生。この林間合宿中はゼリー飲料禁止(・・)です。俺達と同じちゃんとした食事(・・・・・・・・)を摂ってもらいます」

「…食事に時間をかけるのは、合理的じゃ―」

「きちんと物を噛んで食べないと、咬合力が弱くなります。それが脳への血流量減少を招き、結果的に視力や脳機能の低下を招くという研究結果がありますが?」

「………」

「合理を重んずる相澤先生の姿勢は、私個人としても大いに見習いたいところですが、食事面に関してだけは、合理以外の面も重視して頂きたいと、愚考いたします」

「……あぁ、わかった。ちゃんと飯を食うから、頭を上げろ」

 

 相澤先生にちゃんとした食事を摂る様迫っている吸阪君が見えた。その姿を見て、お母さん(・・・・)みたいと思ったのは、私だけじゃない…筈だ。

 

 

鉄哲side

 

「“個性”を伸ばす…ですか!?」

「あぁ、この林間合宿におけるB組の目標はそれだ」

 

 俺の声にそう答えたブラド先生は、東の空に浮かぶ太陽を指差し―

 

「前期はA組が色々目立っていたが、後期は違う。あの昇っていく太陽のように力を高めて、自分達を目立たせるのだ。いいか? 後期はA組ではなく、我々の番だ!」 

 

 力強く俺達を鼓舞してくれた。ブラド先生…不甲斐ない教え子達でごめん!

 

「でも先生。突然“個性”を伸ばすと言っても…20名20通りの“個性”があるし…何をどう伸ばすのかわかんないんスけど…」

「たしかに、具体性が欲しいな!」

 

 ここで取蔭と鎌切が声を上げる。2人の言う事ももっともだ。一体どうやって“個性”を伸ばすんだ?

 

「筋繊維は酷使する事により壊れ…強く太くなる。“個性”も同じだ。使い続ければ強くなり、でなければ衰える!」

「すなわち、やるべき事は1つ! 限界突破!!」

 

 ブラド先生の声と共に、俺達は宿泊施設裏へと足を踏み入れた。

 

「なんだよ、これ…」

 

 誰かが呆然と呟いたが、無理もない。昨晩まで空き地だった筈の空間は、トレーニングの台所ランド(TDL)を軽く上回る規模の訓練施設に様変わりしていた。

 

「ここを利用して、許容上限のある発動型は、上限の底上げ。異形型・その他複合型は、“個性”に由来する器官・部位の更なる鍛錬を行う。通常であれば、肉体の成長に合わせて行うが…」

「まぁ、時間がないんでな。B組にはここで(・・・・・・・)頑張ってもらう」

 

 先に宿泊施設裏に来ていた相澤先生が、ブラド先生に続くように口を開く。B組にはここで(・・・・・・・)…か。どうやら、A組は別の場所で訓練を行うようだ。

 否が応にもA組との差を突き付けられ、思わず歯を食いしばる。

 

「だけど…私達とA組合わせて40人。A組は別の場所で訓練するなら、20個の“個性”×2ヶ所、それをたった6名(・・)で管理出来るの?」

 

 そうしている間に、拳藤と柳が疑問の声を上げ―

 

「その点に関しては、問題ない。A組には特別講師を呼んでいるし、B組に関しては彼女らにお願いしている」

「そうなの。あちきら四位一体(よんみいったい)!」

 

 あっさりと答えが明かされた。

 

「煌く(まなこ)でロックオン!」

「猫の手手助けやって来る!」

「どこからともなくやって来る…」

「キュートにキャットにスティンガー!」

「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」」」

 

 名乗りとポーズを決めながら登場した『プッシーキャッツ』の皆さんが、実演を交えながら説明を開始する。

 

「あちきの“個性”『サーチ』! この目で見た人の情報、100人まで丸わかり! 居場所も弱点も!」

「私の『土流』で各々の鍛錬に見合う場を形成!」

「そして、私の『テレパス』で一度に複数の人間へアドバイス」

「そこを我が、殴る蹴るの暴行よ…!」

 

 …ちょっと待て! ラグドールさん、ピクシーボブさん、マンダレイさんは良いけど…虎さん、あなたは色々ダメだろ! 思わず心の中でツッコミを入れたが、これは俺だけじゃ無い筈だ。

 

「単純な増強型の者、我の元へ来い!」

「我ーズブートキャンプを始めるぞ!」

 

 その直後、宍田や庄田といった増強型のメンツが呼び込まれ、虎さん主導で訓練が始まっていく。

 

「さぁ、お前達! 自分の限界を超える為、Plus Ultraだ!」

 

 残った俺達を鼓舞するブラド先生の声。そうだ、戸惑っている暇なんて俺達にはない。A組に追いつき、追い越す為にもやるしかねえんだ!

 

 

雷鳥side

 

 B組が訓練を行っている宿泊施設裏の空き地から1kmほど離れた場所で、俺達は自主練を行っていた訳だが―

 

「…そろそろ時間だな。相澤先生」

「…あぁ、行ってこい」

 

 時計が11時近くになったところで、俺は相澤先生の許可を得て、宿泊施設へと大急ぎで戻っていく。

 実は昨日の消灯時間前、俺は相澤先生、ブラド先生、プッシーキャッツの皆さんに呼び出され…林間合宿の間、昼食の用意を代行(・・)してくれないか? と頼まれたのだ。

 昨日の昼、マンダレイやピクシーボブが話していたように、情報漏洩を防ぐ目的でスタッフに休みを取らせた結果、この宿泊施設にいるのは、A組とB組合わせて40人の学生と、6人のプロヒーローだけ。

 朝食はプッシーキャッツの皆さんが作り、夕食は俺達自身で作る事になっているが、昼食に関しては全く手が足りないらしく…昨日の昼食で腕前を見込まれた俺に、白羽の矢が立ったらしい…。

 なお、この件について相澤先生は最後まで反対していたらしいが…スタッフに休みを取らせたのが、相澤先生からの要請だった事もあり、プッシーキャッツの皆さんに押し切られたそうだ…。なんというか、お察しします。

 

「悪いな、耳郎。手伝ってもらって」

 

 宿泊施設に戻り、手早く準備を済ませた俺は、手伝いに名乗り出てくれた耳郎に改めて礼を言う。

 出久達も昨日同様手伝いを名乗り出てくれたが、同じ面子が調理を行う事で、訓練時間に偏りが出る事を問題視した相澤先生に却下され、今日は耳郎1人が手伝いに付く事になったのだ。

 

「気にしないで、いつも吸阪や緑谷達にやってもらってたからね。少しは自分でやらないと」

「そう言ってくれると助かる。さて、何を作るかだが…」

 

 メニューを決める為、冷蔵庫の中身をチェックする。直後、目に飛び込んできたのは、2kgはあるプレスハムの塊。

 

「よし、コイツを使って、昼はハムカツ定食といきますか」

「ハムカツ…これを薄く切って、揚げればいいの?」

「それでも良いけど、もう少し手を加えたいかな」

「わかった。どうすればいい?」

「そうだな、まずは…固茹で卵を作ってくれ。46人分だから…まぁ、30個あれば足りるだろう」

「OK。その後は?」

「玉葱の微塵切りと、茄子のスライスを頼む。両方とも切ったら水にさらしておいてくれ」

 

 耳郎に指示を下し、俺はプレスハムのスライスに取り掛かる。厚さは大体3mm。1人あたり6枚使うから、46人分で280枚弱ってところだな。

 

 

 プレスハムのスライスが粗方終わった頃―

 

「吸阪、玉葱と茄子、切り終わったよ」

 

 耳郎の方も野菜の下拵えが終わったようだ。なかなか手際が良いな。

 

「茹で卵の方は?」

「そろそろ…あと2分ってところかな」

「それじゃあ、茹で卵が出来たら殻を剥いて、粗く刻んでくれ。それと水気をしっかり絞った玉葱を合わせ、塩胡椒を振ってからたっぷりのマヨネーズで和える」

「茹で卵にマヨネーズ…卵サンドの中身みたいだね」

「まぁ、卵フィリング(それ)と似たようなもんだな。あ、隠し味としてウスターソースを少量加えてくれ」

「了解」

 

 耳郎が茹で卵の調理へ取り掛かる間に、俺は薄力粉1カップに対し、卵1個、水2分の1カップの割合で作る…ややポッテリとした衣を用意し―

 

「ここからは、ひたすらに挟んでいく」

 

 耳郎と2人がかりで、茹で卵のマヨネーズ和えをスライスしたプレスハムで挟み、衣に潜らせて、パン粉をつけていく。同じ要領で大葉とスライスチーズ、茄子を挟んだ物も作っていく。

 

「あとは片っ端から揚げていく。それは俺がやるから、耳郎は副菜作りを頼む」 

「わかった、任せて」

 

 副菜を耳郎に任せ、俺は170℃の油で、ハムカツを片っ端から揚げていく。そしてカラリと揚がったハムカツを半分にカットし、太めの千切りにしたレタス、くし形にカットしたトマトと共に皿へと盛りつける。

 

「吸阪、味見お願い」

 

 耳郎の作った副菜は…細切りにした人参とツナで作ったキンピラか。一口味見。

 

「うん、人参の甘みがよく引き立ってて、美味いよ。耳郎、なかなかやるな」

「ま、まぁ…家ではそこそこ、やってるから…」

「なるほどね……そういう一面を見せたら、出久も喜ぶぞ」

「えっ、な、なんで…緑谷………」

 

 顔を真っ赤にして狼狽える耳郎。うん、実に解り易い(・・・・)

 

「いや、昨日のピクシーボブとの一件があったし…そうなのかな? と思っただけ」

「………緑谷は知ってるの?」

「いいや。叔父の俺が言うのもあれだが…アイツはこういう事に関しては、とことん奥手だし、疎いぞ」

「……そっか」

「だからまぁ…やるんだったら、正面からの正攻法がおすすめだ」

「っ!? で、でも、緑谷はもう、麗日と…」

「それはそうなんだがな…だが、気持ちを伝えちゃいけない。なんて決まりもない。結果に関して保証は出来ないが、無理に心の奥に押し込めておくより、さらけ出した方が良い…かもしれない」

「……考えとく」

「そうしてくれ」

 

 耳郎とそんな会話を交わし、昼食を一気に仕上げていく。

 ハムカツ3種盛りを前面に、大盛りご飯と長ネギとエノキの味噌汁、耳郎が作った人参とツナのキンピラが脇を固める。

 さあ、あと3分もすれば、腹を減らした皆が食堂に雪崩れ込んでくる。迎え撃つとしますか。

 

 

拳藤side

 

「すご…」

 

 吸阪が作った昼食を前に、思わずそんな声が漏れる。

 A組の何人かに弁当を作っているという噂は聞いていたし、昨日差し入れしてくれたガスパチョで、料理上手だとは思っていたけど、これは予想以上だ。

 

「うめぇ! 滅茶苦茶うめぇ!」

「この味わい…下手な市井の料理人を上回りますぞ!」

「だ、駄目だっ! 箸の動きを止められない! ご飯が! ご飯が足りないっ!」

 

 男子は、鉄哲、宍戸、庄田を筆頭に、物凄い勢いで食べてるし―

 

「A組、いつもこんな美味しい物食べてんの?」

「ん! んん!」

「Deliciousです!」

 

 女子からの評判も上々。

 

「くっ、僕達を味覚の面から圧倒しようという魂胆か…A組め、その手には乗るものか。例え口が裂けても、賛辞の言葉を送ったりなんて―」

「ご飯粒1つ残さずに完食しておいて、今更何言ってんの」

 

 物間に至ってはこんな感じだったので、一撃加えて黙らせた。あと―

 

「むぅ…まさかこれほどの味を出してくるとは…」

「ハハ、ハハハ…今日の朝食、今までで一番の出来だったけど、あっさり越えていかれた…く、悔しいっ!」

「大丈夫、大丈夫だから、ピクシーボブ。あんたの料理の腕も平均以上だから!」

「まだまだお前の料理には、伸びしろがあるという事だ。諦めるな!」

「頑張れ! ピクシーボブ!」

 

 吸阪の料理に感心しているブラド先生はともかく、修羅場みたいになっているプッシーキャッツの皆さんは…うん、見なかった事にしよう。

 

 

出久side

 

 昼食休憩を終え、再び訓練スペースへと戻って来た僕達。そこへ―

 

「待たせたな」

 

 相澤先生に案内されて、特別講師の皆さんがやって来た。あの人達は!

 

「今回、特別講師としてお招きした…エンデヴァー事務所に所属するサイドキックの皆さんだ」

「俺は森乃賢人(もりのけんと)。ヒーローネームは、レイジングヒーロー・ナックルコングだ!」

朱雀蜂矢(すざくはちや)。ニードルヒーロー・レッドワスプだ。よろしく頼む」

「私は夏木由宇(なつきゆう)。ブレイズヒーロー・ルージュだよ。よろしくね!」

花咲咲良(はなさきさくら)と申します。ヒーローネームは、ボタニカルヒーロー・ブロッサム。よろしくお願いしますね」

「俺は引鉄双二(ひきがねそうじ)! ブリットヒーロー・ダブルトリガーだ!」

「私は黒川紫蓮(くろかわしれん)。アコースティックヒーロー・ビートよ。一緒に魂の調べを奏でましょう!」

「拙者、伊賀崎十蔵(いがさきじゅうぞう)と申す。ヒーローネームは、オーシャンヒーロー・クラーケン。短い間ではあるが、よろしく頼む」

 

 凄い! エンデヴァー事務所のサイドキック、そのトップ7が勢揃いだ!

 

「エンデヴァーのサイドキックは、エンデヴァー自身の意向もあって、他事務所のサイドキックよりもレベルが高い事で有名だ」

「特にトップ7ともなれば、その実力は…ヒーロービルボードチャートJPの50位台に匹敵する…凄い、そんな人達から指導を受けられるなんて!」

「あー…緑谷に言いたい事は大体言われたので、俺からの説明は省略する」

 

 ……しまった! また、思考が声に出ていた…。

 

「今回は、お前達の脅威的な成長の早さを考慮し、校長が色々と骨を折ってくださった。それに応える為にも、全身全霊を込めて、励んで貰いたい」

 

 相澤先生の激励に答えるように、僕達は声を上げ…訓練が始まった。林間合宿、ここからが本当のスタートだ!!

*1
ご飯、豆腐とワカメの味噌汁、焼き鯖、ヒジキの煮物、きゅうりの浅漬け、生卵




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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