ニンジャストーリーズ・ハイデン・イン・ハーメルン   作:ローグ5

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サイバネティクス…ヤクザ…人情…そしてニンジャ。全てが一体となった『スズメバチの黄色』は遥かに良い……


【204X:ゼア・イズ・ア・リグレット、イーブン・ソー・エンバース・イズ・スティル・バーニング 2】

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!ナ、ナンデ!?ナンデ俺が殺されなきゃいけない!?ナンデ!!?」「イヤーッ!」「アバーッ!サヨナラ!」

 

ボロ雑巾のようになるまで殴られたニンジャが爆発四散した。死んだニンジャは実力と品性の双方において下等なヨゴレニンジャであるが、此度のイクサは惨いまでに一方的な圧勝。されど殺した側のニンジャも満身創痍だ。青色の装束は血に汚れ切り、モータルであれば痛みのみで数度は死ぬほどの重傷を負っていたのだ。

 

「ARRRRRRRRRRRRRGH!!殺す…全て殺していやる!」

 

だが手負いのニンジャは、エンバースはハンターの包囲に陥り狂乱するライオンめいて叫び荒れ狂う。捨て鉢な憎悪が彼の心身を覆いつくし憎悪の獣めいた状態に堕としていた。

 

「そこかああああああああああああ!!」「アイエッ!?狂人か!」「イヤーッ!」「アバババババーッ!」

 

荒れ狂うエンバースは女と血濡れの宝飾品を抱えて逃げる汚れニンジャを発見。スプリントで近寄り敵がカラテを構える前にカトンチョップで貫き、残忍なローマ剣闘士めいて天に掲げる!インガオホー!

 

「イヤーッ!」「アババババババーッ!!サヨナラーッ!」

 

貫かれたニンジャは追い打ちのカトンに身を焼かれ絶命した。タツジンめいた一瞬の早業であるがエンバースはその戦果に満足しない。即座に身をひるがえし次の獲物を求める。そして邪悪な色付きの風と化して廃墟のようになったアッパーガイオンを駆けて行った。

 

10年前キョートの表層にあるガイオン地域をマッポーカリプスめいた惨禍が襲った。当時キョートを裏から支配していたニンジャ組織ザイバツ・シャドーギルドは世界支配の為の最終計画を発動、本拠地であるキョート場を浮上させ大虐殺を行ったのだ。さらに泣きっ面に蜂とはこの事か、ザイバツと呼応するかのように発生した謎のニンジャによる殺戮と大暴動でキョートガイオン全域が大被害を被り、かつてないほどの被害者を出した。その中にはエンバースことサゴの娘も含まれている。

 

そして恥ずすべきことに当時のサゴはザイバツ・シャドーギルトのアデプトニンジャだった。かつての彼の組織への忠勤がシャドーギルド首領の謎めいたジツの影響か、まだ若かった彼自身の意思かはそれは今となっては分からない。だが一つ彼自身にとって確かな事がある。

 

自分は愛する娘の、彼女と同じように誰かに愛されて育った人々の死に加担した最低の男であることだ。

 

【ゼア・イズ・ア・リグレット、イーブン・ソー・エンバース・イズ・スティル・バーニング 2】

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

休日のキョート西部の公園。カチグミファミリー向けにカジュアルながら高品質の遊具や休憩施設の供えられたそこは市民たち憩いの場となっており、平日である今日も家族連れでにぎわっている。遊具では子供達が遊び、若い夫婦が穏やかな顔でそのほほえましい姿を見守る。実に平和な光景だ。

 

だが公園の片隅で悲鳴が聞こえた。有名な芸術家のデザインしたという幾何学的な形状のジャングルジムに上っていた子供が足を滑らせ、頭から落ちようとしたのだ。遠くから見ていたその子の両親は慌てて駆け寄ろうとするが間に合わない。子供はそのまま頭から地面に――――とはならなかった。素早く駆け付けた壮年の男が子供を受け止め、そのまま優しく地面におろしたのだ。

 

「アーン!アーン!」「アリガトゴザイアマス!本当に何とお礼を言ったらいいか…!」「いえ、お礼はいりません困った時はお互い様です」

 

何度も頭を下げる父親に対し子供を救った男は何事もないようにそう言った。そして子供の持っていた人形を拾い上げる。

 

「ほら、これは君の人形だろう」「モチヤッコだ!」

 

人形を渡してもらった子供は瞬時に泣き止み人形に頬擦りする。よほどその人形を気に入っているようだ。

 

「その人形、好きなのかい?」「うん!お父さんに買ってもらったの!僕の宝物だよ!」「そうか、なら大切にするといい」

 

穏やかな目の男はそう言って去ろうとする。モチヤッコ。確か彼の娘もそんな人形を持っていたはずだ。もういない、彼の娘が。

 

「それでは失礼します。仕事があるので」「「アリガトゴザイマシタ!」」

 

両親の声をよそに男は、サゴは去っていく。仕事というのは本当だ。この公園の付近でもテツノオニらしきヨタモノの目撃情報があった為彼は念の為に警戒に来たのだ。だがヨタモノは影も形もない。あの若い家族には幸いな事に空振りのようだ。

 

この公園が平和であるのは悪い事ではない。しかしサゴの目には焦燥がある。原因はここ一週間の奴らの犯行だ。昨日起きた事件と言いこれまでにないほどのペースで奴らは犯行を行っている。そのエスカレートぶりは治安局に追い詰められている事による焦りもあるのだろうが、次の商売が近い事もあるのだろう。早く解決せねば二度とキョートの地を踏めぬ者達が続出することになりそうだ。

 

「………」

 

サゴの目には焦燥の色が強い。速く奴らを殺すか捕らえねば。されど捜査はなかなかに核心まで進まぬ。実に難儀な事だった。

 

だがサゴの端末はこの時鳴った。それは運命へのいざないか。

 

「モシモシ」『このクズが!イヤーッ「アバーッ!」サゴか?理由は道すがら話す。ASAPで今から言う場所を襲撃してくれ!』

 

ホワイトリングの怒声にサゴ、エンバースは表情を戦士のそれへと変える。彼のカラテを振るう時がいよいよやってきたようだ。

 

 

 

夜を迎えたキョート、絢爛な観光施設や文化財が並び治安が高水準に保たれているガイオンにおいても治安の悪い要注意の地区はいくつか存在する。その一つが西部の港湾エリアからほど近いマリアシ地区である。付近を領有していたキョート貴族の没落により一挙に寂れたマリアシ地区にはヨタモノがはびこり、善良なるキョート市民は決して近寄らない。

 

あえて近づく者がいるとすればそれは違法ビジネスの加担者か、あるいは犯罪捜査に携わる者くらいであろう。そんな人通りの少ない状況故か入り口近くの塔に見張りめいて立つモヒカンの顔は弛緩している。

 

「アバーッ!」「へへ、ポイントゲット」

 

浮浪者を遊び半分に撃ち殺したモヒカンはくちゃくちゃとガムをかむ。特にケビーシなどが来るわけでもなく見張りは退屈だった。もっとも建物の中に入ってもやることがそうあるわけではない。キョートの各地から攫ってきた娘たちに卑猥な言葉を投げかけるのは楽しい。だがファックは厳禁だ。女たちに手をだそうとしたコロジはニンジャ――――『取引先』の恐ろしく強いニンジャになぶり殺しにされ、オブジェめいて手足を床に揃えられた。。

 

「BRRR……」

 

あの時の時のことはモヒカンからしても恐ろしい出来事だった。だがニンジャは商品に手を付けないならば、高圧的ではあるが金払いは良い。彼の払った金で何度もゲイシャを抱いてきたモヒカンはそれを知っている。しかも今日運び出す予定の商品は上物ばかり。払われる金を想像すると頬が自然に緩んだ。

 

CABOOOOOM!!「アイエッ!?」

 

現代のキョート市街では珍しい爆発が遠方の市街地で起こった。唐突に起きた爆発にモヒカンは顔をしかめるが、すぐに距離の遠さと爆発したのがカネモチの多いアッパーガイオンであることに思い至り、再度頬を緩ませる。

 

「へっカネモチ共が燃えるのはいい気味だぜ」

 

モヒカンは薬物入り煙草を取り出す。これをやりながら運転や銃撃を行うのが大好きなのだ。まだ長く新鮮な一本に火をつける為ライターを取り出し、点火する前に煙草に火が付いた。

 

「おっ」

 

親切な誰かがつけてくれたのか。そう思い礼を言おうとしたモヒカンの頭はそのまま溶断されたかのような焦げた切断面を見せて崩れ落ちた。その背後にはニンジャソードを構えたエンバース。周囲に敵影がない事を悟ると滑るようにシャウトもなく塔から飛び移りテツノオニのアジトへ潜入していく

 

「………」

 

急場での潜入とはいえザイバツでの訓練と長年のイクサで培った彼の能力は一級品。音もなく裏口から入り込み構造から推察される建物の中心部へと向かっていく。

 

「アバーッ!」「アバーッ!」

 

彼にとって薬物で弛緩したヨタモノなど何の障害にもならない。すれ違いざまに切り殺して再び闇から闇へと駆けていく。だがその動きと技は普段よりもわずかに荒い。

 

理由はホワイトリングからもたらされた情報だ。彼らは以前よりテツノオニに対する内通者を疑い内定調査を進めていた。その結果今日になってケビーシ・ガード内の内通者が判明し、内通者に対して迅速に制圧・拷問を行った。痛めつけられた内通者により彼らのアジトのいくつかが判明した。今エンバースが強襲しているのはそのうちの一つだ。

 

本来は装備や手数を整えるべき強襲作戦をエンバース単独で行った事には理由がある。副次的な情報により攫われた女性達の買い手が来るのは今日の深夜との事。高速輸送船で乗り付けてくるという彼らの手に渡ってしまったならばもう彼女たちは戻らない。エンバースの娘のように、家族の元へは帰れない。

 

「アバーッ!」

 

2階の各フロアを制圧し音もなく背後から忍び寄り殺す。幸いな事にメインホールへのドアは何があったのかもうない。蛇めいた低姿勢で忍び寄り通り抜け、木箱の裏に潜むと手鏡で1階の吹き抜けを見る。

 

適当にゴザを引いた地面には何人かのまだ若い娘達が縛り上げられて転がされている。肩を震わせなく彼女達を見て笑うのは椅子に座った上役らしきヨタモノ2人。少し離れた所にはショットガンとマシンガンを構えた護衛が4人立っている。

 

モータル6人など一瞬で倒せる。されど娘たちに流れ弾を当てない為には少しばかり注意が必要だ。脆弱なモータルの肉体に被害を与えず速やかに制圧する。やれるか。

 

上役ヨタモノの一人が娘たちを言葉でいたぶる為か近づいた。位置がいい。

 

「イヤーッ!」

 

接近戦。切って殴って全員殺す。飛び降りると同時に上役ヨタモノを後ろから拘束し片腕の力で首をへし折る。ほぼ同じタイミングでもう片方の腕に握ったニンジャソードでもう一人の上役ヨタモノの脳天を刺した。

 

「「アバーッ!」」「エッ……」「イヤーッ!イヤーッ!」「「アバーッ!」」

 

上役ヨタモノを立てにした状態でスリケンを投げて二人を殺す。これ以上は肉の盾は無用だ。サイバネ改造による反応速度と火力で対応される前に盾を突き飛ばし射線をふさぐ。

 

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」

 

立て続けに叩き込まれたパンチでサイバネヨタモノが体をくの字に折る。サイバネ化された男を殺すにはこれだけでは不要。だが無防備な頭が目の前に来ている。

 

「イヤーッ!」「アバーッ!」

 

エンバースの肘がヨタモノの頭を陥没させ即死させる。残り1。

 

「テメッ……」「イヤーッ!」「アバーッ!」

 

向き直る最後の一人にニンジャソードを投擲。断頭チャクラムめいた回転で飛翔するニンジャソードはそのまま住所う撃しようとするヨタモノの首をはね、薄汚い血が間欠泉のように噴き出した。残数0。

 

「アイエエエ!」「アイエエエエ!ゴメンナサイ!本当にゴメンナサイ!」

 

一瞬で行われた決断的殺戮に数拍遅れて女性達はさらに泣き叫ぶ。彼女たちにとってヨタモノ達はおよそ人間性という物のない怪物であり、彼らを瞬殺するエンバースはニンジャという人知を超えたさらなる化け物だ。抱く感情は恐怖しかない。

 

「アイエエエエ!アイエエエエ!!」「静かに。俺はキョート治安局の使いだ」「エッ」

 

エンバースは手早く拘束を切っていく。ヨタモノ達の人間性を暗示したかのような雑な拘束により女性達の手首足首には鬱血や切り傷がある。その有様にエンバースは顔をしかめた。クズ共め。

 

「じきに後続が来るから安心するんだ。……立てるか?」「アッハイ」

 

エンバースは一番若い娘を助け起こした。疲弊しているが重傷はない。何とか立ち上がる彼女を支えるエンバースは一瞬何か懐かしいような感覚を覚える。だがそれが何なのか自覚する前に彼は背後に向き直った!増援のニンジャだ!

 

「イヤーッ!」

 

回転ジャンプでエントリーしてきたのは灰色装束のニンジャ。中肉中背のとりたてて特徴のないニンジャであるが、そのアトモスフィアからしてこれまで倒してきたテツノオニのニンジャとは格が違う。あからさまなまでに強力なニンジャであった。

 

「ドーモ。フォルネウスです。弱小国家の弱卒にこうも趣味と実益を兼ね備えたビジネスを邪魔されるとはな」

「ドーモフォルネウス=サン。エンバースです。貴様が元締めか」「左様、と言ったらどうするね?」「無論殺す」

 

エンバースの胸には怒りがある。その激烈な怒りは彼の背に裂帛のカラテを立ち昇らせた!

 

「その様子…言葉は不要といったところか。ならば」

 

フォルネウスもカラテを構える。カタめいて動くなめらかに動く手はそのカラテ段位を雄弁に語る。二人はにらみ合い互いへ向かって突進した。

 

「「死ね」」

 

タツジンのカラテが薄暗い建物の中ぶつかり合う。これこそが真のニンジャのイクサである。

 




次回も可能なら明日更新する予定です。
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