ニンジャストーリーズ・ハイデン・イン・ハーメルン   作:ローグ5

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【192X:デイブレイク・アフター・シジュウクニチ】

科学全盛のこの大正時代においても霊魂を信じる人間は少なくはない。それは田舎の人々だけでなくガス灯がくまなく照らす帝都東京に住む、日本どころか世界でも有数の進歩人達もいまだにオバケの恐怖やアンセスターの加護を信じており、死者に対する敬意を持ち続けている。もし土地の有効利用の為墓地を撤廃しようなどと唱える資産家がいればその日の内にセプクに追い込まれるだろう。

 

されど夜中の丑三つ時となれば流石に墓地を訪ねる者は誰もいない。墓守も寝付き静かな夜に墓地は場所にふさわしい完全なる静寂を得ていた。

 

否、ただ一人のみがこの墓地にはいた。まだ新しい墓石の前に立つ影は時刻故に分かりづらいが全身を血の様な赤黒装束で包んでおり、面頬には「忍」「殺」と刻まれている。その殺伐たる姿はあからさまに……ニンジャだ。ニンジャは真新しい墓石を丁寧に汚れをぬぐい掃除していく。その姿には無慈悲なキリングマシンらしからぬ穏やかなアトモスフィアがあった。

 

ヒシャクで墓石に水をくまなくかけ、木の葉の一欠けらに至るまで取り除くとニンジャは線香にチョップで火をともし備える。そして冥福を祈った。この墓に眠る彼の妹、アズサとリコの。「……四十九日の法要、出来なくて悪かったな」

 

今日は彼の妹たちが死んでから四十九日目であり、日本において死者を弔う上で重要な法要を行うべき日であった。だが彼はすでに公的身分を喪失した社会的死人であり、公的な法要は行えなかった。故に深夜の密かな墓参りが彼の法要となる。「俺はお前達と一緒に死ぬことは出来なかった。だが、その代わりにこの力を手に入れた。俺はニンジャに……ニンジャスレイヤーなった」

 

赤黒のニンジャはその自分の右手を見る。分厚い鉄板をひしゃげさせニンジャの首を切り裂き幾度なく血に染まった手だ。それは紛れもなくニンジャに対する死神たるニンジャ”ニンジャスレイヤー"の手で、かつてこの帝都に生きていた妹思いの青年カザミ・ケンジョウの手ではなかった。

 

「俺は奴らを、帝都の暗雷を殺しつくす。お前たちを殺した奴らにインガオホーの死をもたらしてやる……!だからお前たちはあの世で安らかに見ててくれ」二人の好物であった焼き菓子を備えると彼は再び手を合わせる「俺は駄目な兄だけど、それぐらいはやってやるから」

 

ニンジャスレイヤーは静かに告げ目を閉じて再度妹たちの冥福を祈る。そしてジャスト5秒後目を見開いた!「イヤーッ!」赤黒の風が駆け抜けた後には丁寧に揃えられた清掃用の道具が残るのみ。ニンジャの速度で駆け抜けるその姿はすでに墓地の外の雑木林の中だ!

 

(((グググ……休憩の時間は終わりかケンジョウよ……少々長すぎて退屈だったぞ)))「黙れナラク!」邪悪なニューロンの同居者の嘲りの声を否定し輝きの中に邪悪を秘めし魔の帝都に向かって飛ぶように走る!(((まあ良い……11時の方向にニンジャがおるぞ)))「何だと!?」

 

(((おそらくは帝都の暗雷とさえずるコワッパ共の一人よ……疾く縊り殺せい!)))「無論だ!帝都の暗雷のニンジャは全員殺す!ふさわしいインガオホーの死にざまを見せてやる!イヤーッ!」バサム!風に乗ったニンジャスレイヤーは凧めいて滑空し帝都の街並みに飛び込んでいく!

 

何の為に?全ては復讐の為、殺された妹たちの弔いの為だ!悔恨はニンジャを殺してからすればよい!「イヤーッ!」

 

 

 

 

 

 

「ハァーッ!ハァーッ!お父様……!」フナコは船の形に整えられた履物を蹴散らし葬式場の外へとまろび出る。それは良家の子女である彼女にはおよそ相応しいとは言えない行いであったが今この場でなりふり構ってはいられない。それだけの事をするだけの理由が彼女にはあった。「お父様……!」

 

フナコの父は数日前に亡くなった。官僚であった父は出先からの帰途の途中に事故に遭いあっけなく亡くなってしまった。まだ四十代と若く文官とは思えない程に壮健な父の死にはフナコも母も哀しみ以上に戸惑いの感情を隠せない。そんな彼女たちに変わって葬式の手配を行ったのは叔父だった。

 

世慣れしていない彼女たちに変わって手配をしてくれた叔父には感謝している。しかし葬式が洋式の―――――――黒を基調とした装いや装具で、立派で豪華な、そして最後には霊柩車で遺体を運び焼き場で遺体を火葬するという物である事については閉口とはいかないまでもやや疑問があった。

 

白を基調とした簡素な樽めいた棺で土葬を行うこれまでの日本の葬式は諸外国とは全く異なる物である事はここ数年の海外からの弔問客により大勢に知られる事になっている。故に耳聡い名家や資産家の家系はこうした洋式の葬式を行うようになっていた。「お前の父親はこの大正エラにふさわしい盛大な葬式を上げる」事実叔父もこうした社会の風潮にならい様式の葬式を行うと決めた。

 

(((西洋の文化技術を取り入れる事は大いに結構。だが儂は葬式までそうする事には反対だ。確かに海外の葬式に出席するにはそうした黒の装いがよかろう。だが日本の装いは古来より白と決まっておる。それを変える事は……儂は好かん)))生前の父はそう言っておりその旨は叔父にも伝えたが、其処は大正デモクラシーの世と言っても小娘の言う事だ。聞かれる事なく相応しい葬送を行うと断言された。

 

その事が葬儀を控えた前日になってもいまだにフナコの胸のつかえとなっている。だから今日の夜はなかなか寝付けず、彼女はこれで良いのだろうかと自問自答していたのだ。しかしそんな奥ゆかしい自問自答はふと目を窓の外に向けた事で終わりを告げた。

 

窓の外を離れていくのは人魂、それも父の顔をおぼろげに浮かび上がらせた人魂だった。本来ならばコワイ過ぎる光景にフナコは卒倒しただろう。だが長時間の自己問答の末にゼンめいた境地にいたフナコは苦鳴を噛み殺し外に飛び出した。

 

「お父様……!」まだ父と話したりない。先程の振る舞いを叱られてもいいからもっと話したい事があった。例え一時でもいいからとフナコは慣れない激しい動きに息を切らしながらもガス灯の下を駆け抜けていく。父の顔をした霊魂が漂っていくのを必死に追いかけていく。「ハァーッ!ハァーッ……!ここは……!」

 

フナコが息を切らしてたどり着いたのは帝都に普及し始めたタクシーの操車場だ。何台かのタクシーが倉庫に収められている其処は墓場めいて静かだ。そんな空間を父の人魂は浮遊し滑るように飛んでゆき、やがて一か所にとどまった。その周辺にはアナヤ……別の人魂もが浮かんでいる。

 

(((タクシー操車場に無数の人魂が……?これは一体……アイエッ)))思案するフナコはそこである者に気づきとっさに口を押える。操車場の中心にはこの時刻にもかかわらず5人もの人間が確かに存在していた。

 

一人を中心に四方を囲むように立つ彼らは皆軍装だ。帝国陸軍のカーキ色の制服を着てどういう訳か小銃で武装し、腕には青い腕章を付けている。そしてそんな彼らの奇妙な姿の中でひときわ目立つ者がいた。中央に立つどこか濁った白装束の真鍮製の仮面をつけた男は、黒塗りの棺めいた箱を掲げ人魂を吸い込んでいく、彼は白目を剥き、痙攣しながらもしっかりと箱を掲げ人魂を吸い込んでいく。「アッアアア……アッ!」

 

(((アイエエエエ!?)))中心にいる男はガクガクと瘧めいて身を震わせると急激にしゃっきりとするがフナコはその奇天烈さに恐怖を覚え必死に息を殺す。「フーッ……準備が済みました。ではいきましょうか」大正エラの日本には珍しい長身の男は肩を上下すると明確に指示を出す。「……とその前に、其処のあなた出てきてください」「アイエッ!?」その目は紛れもなくフナコの方を向いていた。

 

動揺のままフナコはふらふらと彷徨い出た。押し殺したはずの声が聞こえていたのだろうか?「そこのお嬢さん、あなたは何というんですか?私はオウンガンと言います」「ア……ッアア……ワタシはフナコ、です」「フナコさんですか。雛臭い名だ」ツカツカと歩み寄るオウンガンの、虹彩の見えない黒い目は冷たい。

 

「フゥム。この時刻は職業婦人が出歩くでもなし……ひょっとしてあれかね?家族の人魂でも見たとか?」「アッハイ。死んだ父の人魂を見かけて」「ハハハ正解か!ロンドン行きの旅行券が欲しいところだね」オウンガンの態度は異様なほど鷹揚だ。その真鍮製の仮面に非人間的な目は笑みに細められているがフナコにもわかる。あれはよからぬ笑いだ。

 

「アアッ……そ、その何故人魂、を?」「ああそれはしいて言うなら燃料だ」「エッ」「燃料だよ、ね・ん・りょ・う。ほら車でも何でも機械を動かすには燃料が必要だろう?これはそれと同じで……おっと、これ以上話すわけにいかないな」フナコは恐ろしいオウンガンの顔から眼をそらし黒い箱に目を向ける。そこには先ほど見たように父の魂が。「あの…それを返し」「ナンデ?私はニンジャなのに?」

 

「アイ……ニ、ニンジャナンデ……」フナコはうろたえ呟く。ニンジャとは小説などの娯楽作品の中にのみ存在するはずだ。元になる乱波や御庭番が過去にいてももうこの大正エラにはいない。現実にはいないはずなのにナンデ?「私はニンジャで、君は非ニンジャの屑。私が何をしようと君は受け入れなくてはいけないはずだ。世の中はそうなっている」

 

フナコには理解しがたい理屈を述べるオウンガンは、ニンジャは恐ろしい。だがそれでも燃料という事は、父の魂は使いつくされ祖先の待つアノヨにはたどり着けないという事ではなかろうか。それは嫌だ。絶対に嫌だ。親の魂がそのように蹂躙される事な度あってはならなかったからフナコは勇気を出した。

 

「お願いです。お金が必要なら払います。だからどうか父の」「ズガタッキェーッ!!」「アイエエエ!!」だがニンジャの暴威は予想以上に凄まじかった。古のニンジャスラングによりフナコは心を折られ失禁!「アイエエエ!アイエエエエエエ!!」

 

叫ぶフナコを傍らにオウンガンはうんざりとした表情で首を振る。「全く近頃の屑共は我々への礼儀が鳴っていない……つくづく下等な生物だ」虹彩のない目は郡よりも冷たくフナコを見据える。「まあいい。抑えろ」「ハッ!」彼の従えていた兵士が無理やりにフナコを押さえつけ首を垂れさせる。「殺して、こいつも燃料にするか」

 

オウンガンは左足を半歩踏み出し手刀を掲げる「ア…アア!ARRRRRGH!」生命の危機に混乱の中にあるフナコは叫び声をあげる。オウンガンは邪悪で強くか弱いフナコが勝てる要素は全くない。現に今も一喝で容易く屈服させられた。しかしそれでも、彼女の中にある奥ゆかしい何かが屈してはならぬと唱えていたのだ。

 

(((いいかフナコよ。確かに古きよき習慣は大事にしなくてはならん)))思い起こされるのは父の言葉だ。(((だが女だからと、意見をないがしろにしていいというのはもはや時代遅れだ。だからお前もどうしても納得出来ない事があれば声を上げなさい)))嗚呼、父にはもっと多くの事を教わりたかった。

 

「ARRR……ムッ…グッ!」せめてもの抗議に恐怖と混乱の中にありながらもフナコは叫び続けるが猿轡を噛まされた。最早何もできない彼女を軽蔑し鼻を鳴らすとオウンガンは再び手刀を構え……不意にクロス腕ガードに体勢を変えた。「イヤーッ!」「グワーッ!」

 

「「アバーッ!」」吹き抜け他の強烈な赤黒の風だ。暴風の如きそれはオウンガンを5メートルほどノックバックさせ、左右の兵士をフナコを傷つける事なく切り裂いた。否、それは風ではなく赤黒のニンジャだ。「ドーモ、ニンジャスレイヤーです」「チッ……オウンガンです」ニンジャのアイサツを認識すると共にフナコは奇妙な満足感に包まれながら気絶した。

 

 

 

 

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」丑三つ時を超えた帝都の廃工場にニンジャの双影が滑り込む。ニンジャスレイヤーとオウンガンは鋭いカラテをぶつけ合い丁々発止のやり取りを繰り広げる。オウンガンは帝都の暗雷の幹部ではない一般構成員であるがそのカラテは練達の物だ。「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

暗い工場内で両者は力強い拳と旋回するプロペラめいた蹴りをぶつけ合う!その凄まじいカラテラリーにマグロの切れ身を投げ込めばたちまちネギトロとかすだろう!「イヤーッ!」「グワーッ!」だが優位をとったのはニンジャスレイヤーだ!オウンガンの拳を巧みにいなして打ち下ろすような拳を叩き込んだ!

 

のけぞるオウンガンにそのまま無慈悲な断頭チョップを叩き込もうとするが「ゾオオオォン!」どこか不吉な靄がチョップにまとわりつきその勢いを減衰させる!「ヌゥ―ッ!」その隙にオウンガンはワームムーブメントから立ち上がり牽制のクナイ・ダートを投擲する。

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーもスリケンを投げ返し並走し再びの攻撃機会をうかがう。(((グググ……これは忌々しきシ・ニンジャクランのホロウバインド・ジツ。死霊の力を用いたカナシバリよ)))ニューロンの奥底でナラクが嘲笑う。

 

(((所詮は小賢しいまやかし……奴に対応しきれぬ手数と激しさで攻めい!)))「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはスリケンを投げ続ける。その素早いマシンガンめいた連射にはオウンガンも攻めあぐねる。「チィーッ!うっとおしいぞっ!」

 

「ゾオオオォン!」「イヤーッ!」「グワーッ!」オウンガンが背後から近づけた死霊の靄をバックキックで吹き飛ばしスリケンを投げ続ける!「グワーッ!」死霊の操作にリソースを注いだオウンガンは対応しきれず、二枚のスリケンが突き刺さった。ニンジャスレイヤーの優位だ!しかしそこで廃工場の壁が砕ける!

 

ギャルルルルル!そこへやってきたのはオウンガンへの援軍が来た!「ヤッチマウゾコラー!」自動車に車載用機関銃「三勇士」を取り付けた現代のテクニカルめいた車両に乗るのは、大日本帝国ではなく帝都の暗雷に忠誠を誓った堕落兵士!彼らはオウンガンを援護するように広い工場内を走りながら機関銃を乱射する!

 

「ハッデカシタゾ!形勢逆転だなニンジャスレイヤー=サン!」ニンジャスレイヤーは一転劣勢に追い込まれる。如何にニンジャであろうとカラテで威力を減衰できない大口径弾を叩き込まれれば実際死ぬ!ニンジャスレイヤーは躱し切れぬ銃弾に身を削られながらも戦い続ける!

 

死霊の妨害とオウンガンのクナイ・ダート、さらに機関銃の掃射を躱しながら機をうかがう。帝都の暗雷は手ごわい。強力なニンジャを多数抱える上に軍や財界に多数のシンパを持ちこうした援軍を繰り出してくる。単独で立ち向かうには強大に過ぎる相手だ。

 

(((だが、それがどうした!)))だろうとも妹たちのインガオホーを果たす為チルハ・ニンジャに連なる者は殺しつくす!それにはまず耐え抜き観察し、そして勝機を見出しカラテで殺す。それのみが

 

(((俺のすべき事だ!)))懸命の回避の中土埃の中を悶えるように揺蕩う亡霊の靄を見たニンジャスレイヤーの瞳孔が収縮した!突破口を見つけたのだ!

 

KABOOOOM!榴弾の爆発の勢いを利用してニンジャスレイヤーは工場のメインシャフトに取り付き勢いのままに駆け上がり、そして十分な高度を得ると「イヤーッ!」自動車に真正面から飛び掛かる!「何だと!?」オウンガンは驚愕に目を見開くが速度の乗った突撃はオウンガンにも、車両に乗った堕落兵士にも対応する術はなく…!

 

CLAAAAAAAAAAASH!「「アバババ―ッ!!」」車両は搭載した弾薬毎爆発炎上しこれまでとは比べ物にならない程の砂埃をまき散らす!「オノレ……!」視界を満たす砂埃が広がる前にオウンガンが見たのは飛び退る傷だらけのニンジャスレイヤー!その凄絶たる殺意を湛えた目は撤退ではなく間違いなく殺しに来る事を選んだ目だ!

 

「イイイイイヤアアアアアーッ!」砂埃に視界が満たされる中オウンガンはホロウバインド・ジツを最大発動!これまで蓄えた死霊を総動員しニンジャスレイヤーを捉えようとする!「「ゾオオオォォン!!」」

 

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」「グワーッ!」だがニンジャスレイヤーはその全て悉く躱しカラテで弾き肉薄する!その手負いの獣めいたデスパレートな動きはされど確かな確信に裏打ちされているようだ。「イヤーッ!」「グワーッ!」最後の死霊がニンジャスレイヤーに弾かれるのを見たオウンガンは呻く。ニンジャスレイヤーの確信の根源が分かった。

 

ホロウバインド・ジツで使役する死霊はこの世の存在に物理的な拘束力を持つ。ならばそれは確かにこの世に存在する力状で在り、当然ながら砂埃にも影響を与える。その性質を見出したニンジャスレイヤーは爆発により満たした砂埃の揺らぎから死霊の動きを読み取り、的確な対処をしオウンガンに肉薄したのだ。

 

ニューロンの閃きでニンジャスレイヤーの意図を読み取ったオウンガンはカラテ迎撃の耐性をとるがすでに機を逸した。地面すれすれに身を伏せたニンジャスレイヤーは至近距離まで近づき、決断的に地を蹴りその力を解き放った。「イヤーッ!」

 

それは左下から右上に逆袈裟に放たれた亜流のサマーソルトキック!三日月の様な軌跡で放たれた異端の必殺蹴りはオウンガンのカラテガードを一蹴し、首を跳ね飛ばした!「……サヨナラ!」斜め上に跳ね飛ばされた首が白目を剥くとオウンガンは爆発四散した!

 

「フゥーッ……!」ニンジャスレイヤーはザンシンするとしばしダメージを堪えると顔を上げた。「オオオォ……」オウンガンに酷使されていた死霊の群れは昇天していく。邪悪なるホロウバインド・ジツの拘束から解き放たれてあるべき天へと帰っていくのだ。

 

少し離れた操車場でもオウンガンの黒い箱から解き放たれた魂が解き放たれてゆき、気絶から覚めたフナコは安らかに天へと昇っていく死霊の中に父の姿を視た。そして彼女は哀しみだけではない涙を流したがそれをニンジャスレイヤーは知らない。

 

だがニンジャに虐げられていた奥ゆかしく彼は死霊たちに一礼すると、焼け焦げた死霊の中で唯一無事だった黒漆塗りの重箱を抱え上げその中の寿司を咀嚼しながら廃工場の外へと歩みだす。

 

廃工場の外に出ると帝都の夜は明け、すでに朝日が昇っていた。

 

 

【デイブレイク・アフター・シジュウクニチ 終わり】

 

 


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