プロローグ #0 そして夜はいくつもの終わりを告げる
秋、俺は修学旅行に向かう時2つの依頼を受けた。
1つは戸部から受けた依頼「戸部の告白を成功させる」こと。このことは奉仕部の全員が知っている話だ。
だがもう1つ、俺は個人で依頼を受けた。それは戸部が好意を寄せている相手、海老名さんから受けた「戸部の告白を未然に防ぐ」という依頼である。
この大きく矛盾する依頼を解決することはほぼ不可能と言ってよかった。いや、不可能だった。
当然だ。海老名さんには男性への好意がない。告白したってそれは自殺行為だ。
そこで1番予想できるパターンのように告白が失敗するとしよう。
いつも同じグループにいる海老名さんと戸部の間に溝ができれば、酷く脆いあのグループはいとも簡単にすれ違いが起き、すぐ消えてしまうだろう。
そうすれば、依頼の関係ない所の人も被害をこうむってしまう。それだけは避けたかった。
だから俺は自分を犠牲にすることで問題を消そうとした。
「海老名さん、ずっと前から好きでした。付き合ってください」
俺は嘘の告白で海老名さんの本心を引き出し、そこはかとなくそれを戸部に伝えた。
もちろん、海老名さんからの答えは「NO」であった。
これでいい。結局傷つくのは俺一人で済む。どうせあいつらは住む世界が違う人間だ。
そう思っていた。
しかし、雪ノ下、由比ヶ浜からは批難の声を浴びた。
「あなたのやり方...嫌いだわ」
「人の気持ち、もっと考えてよ!」
なんだよ...。このやり方で何も悪くねぇじゃねぇか。
なぁ雪ノ下。
やり方が嫌い?だったら他の方法があったのかよ。
誰もが不幸なく生きれる方法なんてない。今生きている世界がそうだ。
なぁ由比ヶ浜。
気持ちを考えろ?気持ちだけで依頼が解決出来るか?それまで変わらなかった関係を変えずにいられるか?
その答えは「否」である。
(誰かが犠牲にならなければ。人という字は片方が支えながら出来ているように、自分が犠牲になるしかない。なのに...。なのに、そのやり方を否定するなよ...)
俺は自分の生き方を否定されたような気がし、いつの間にか心にイライラを生んでいた。
そう気づいた時、俺達奉仕部の関係にヒビが入ったような音がした気がした。
それから俺と由比ヶ浜と雪ノ下はホテルへの帰路についた。
だが、そこには言葉はなく、冷たいままの空気、長らく続く静寂だけがあった。
時間は夜。もう少し日が過ぎれば冬のような冷たさがやってくるだろう。
けれど、
その冷たさが今、自分をおおっている気がした。
失踪しないよう頑張るぞ( *˙ω˙*)و グッ!