きっと人生は間違いだらけだ。
けど、そんな人生だからこそ本物になれる。
自分らしくあれるはずだ。
だから比企谷八幡は。
最後まで持ち直さなかった前書き。
ー八幡sideー
捻くれた性格の自分を構成するという名目で強制的に入れられた部活、奉仕部。雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣とそこで過ごした時間は悪くなかった。けど、俺は結局そこで変わることはできなかった。きっと居続けても変わることは出来ないだろう。だから、奉仕部に別れを告げることにした。
比企谷八幡という男が、変わるために。
ということを、なんて言おうか考え続けるうちに、気づけば放課後になってしまっていた。やばい、時間ない...。
「由比ヶ浜、先行ってろ。後から行くから。」
とりあえず何か言われる前に先手を打っておく。これで少し時間は稼げるはずだ。
「あ、うん。分かった。」
とりあえず返事は返してくれた。うし、じゃあ気持ちの整理と言葉の整理だな。
が、結局考えきれず、部室に行って話をしながら考えることにした。という訳で、部活に向かう。
その道中、職員室前廊下でよく見なれた服装、姿の人を見た。雪ノ下さんと平塚先生のようだ。
なにか二人で話しているが、笑顔は見られない。なら、割り込みはよそう。
あえてそのふたりがいる場所を避けるようにして部室へ向かう。
部室の前まで着いた。
とりあえず1回深呼吸を行う。
すぅ...ふぅ...。
よし、行くか。
ガララと音を立てドアが開く。聞きなれた音だ。
「...よう。」
中を見回す。雪ノ下も由比ヶ浜もそこにはいた。
「ヒッキー...。」
「比企谷くん...。」
2人して呼びづらそうに俺の名を呼ぶ。まあ、こんなことがあれば無理もない。
「とりあえず座ってもらえるかしら、比企谷くん。」
いつもよりトゲトゲしてない雪ノ下の声に座るよう諭される。
「あー、その事なんだけどな...。」
「何、どしたの?」
由比ヶ浜が不安そうに尋ねる。
「俺は、今日をもって奉仕部をやめる。今日はそれを伝えに来ただけだ。」
「えっ...?」
「...」
部室に緊張が走る。けれど、話はここからだ。
「冗談だよね...?ねぇヒッキー...!」
「いや、これは俺の本心だ。嘘なんかはない。」
「ねぇ何で?私達があの時否定したから?それとも別の何か?ねぇ何でなの...!?」
「違う、そうじゃねえんだ。誰が悪いとかじゃねえんだよ。」
由比ヶ浜は泣きそうな顔で下を向く。変わりにそれまで黙っていた雪ノ下が口を開いた。
「...私達はまだあなたの更生の依頼を終えていないわ。だからそんなこと...。」
その時再びドアが開いた。平塚先生だ。
「私が認めた。」
「先生...!?」
雪ノ下は驚いた表情で平塚先生を見る。
「それは、この男の更生がもう終わったという見解ですか?」
「いや、そう思ってはいない。だが...」
そう言って平塚先生は俺の方を見やる。ここからは俺の番か。
「俺は今回の問題を経て、自分に接してくれた人といて、初めて変わりたいと心の底から思った。素直な見方をもった、《本物》の比企谷八幡になろうと思った。けどな...。」
一旦言葉を区切る。雪ノ下は口出ししようとはしてないようだ。ちゃんと聞いてくれる分ありがたい。
「けど、それはこの場所じゃ見つからない。そう思った。だから俺は奉仕部をやめる事にした。」
「...どうして、ここでは見つからないって思うのかしら。」
「これまできた依頼、覚えてるか?それをどうやって解決したか覚えてるか?」
川崎のことや、材木座のこと。確かにこれらは自分の意思でどうにかなるものだった。でも、千葉村や、相模の1件、そして今回もそう。誰かを犠牲にしなければ、誰かが傷つかなければ解決へ導かれない問題があるのだ。
「俺は、自分を犠牲にして解決への手立てにした。でも今は自分をもっと大切にしたいと思うようになった。けれどここに来る依頼がそれを縛る。だから...」
「《逃げる》というのね...。」
「そうね、逃げだね。」
また新しい声がした。今度は雪ノ下さんだ。
「姉さん...!」
「でもね雪乃ちゃん。あなたの行ってる《逃げ》よりは全然比企谷くんのやってることが正しいと思う。比企谷くんは自分で変わるために、自分を犠牲にすることから、奉仕部から逃げることにした。立派なことだよ。自分から変わろうなんて。それに比べて雪乃ちゃんはどう?素直になることから逃げて、また1人になるんだよ。なんで、気づかないかな...。」
最後の方は声が消えてしまったため聞き取れなかったけど、雪ノ下さんは俺が思ってることをちゃんと伝えてくれた。
「...という訳だ。納得してくれなくてもいい。けど俺は変わることを選ぶ。それだけだ。」
そしてもうひとつ、伝えるべきことを伝えてここから消えよう。
思い出との決別の為に。別れとして区切るために。
「ここで過ごした時間は悪くなかった。今までありがとな。」
由比ヶ浜は1人泣き、平塚先生も雪ノ下ももう黙っていた。
...終わりか。
奉仕部の部室に背中を向けて歩き出す。振り向くことは無い。
「じゃあな。」
誰にも聞こえないように呟いて、1歩、また1歩歩き出す。
数分後、後を追ってきた由比ヶ浜と少し話した後、校門を出ると雪ノ下さんが待っていた。
「やぁ、比企谷くん。」
「どうもです。」
さっきもあったんだけどね...。
「結局、私は君の居場所を壊してしまったね。」
「雪ノ下さんは何もやってないですよ。そもそも、いつかは終わらなければいけなかったんですから。それに...。」
「それに?」
「今は今で新しい居場所がある。そんな気がするんです。」
「...そっか。」
雪ノ下さんは悲しげに答えた。理由はなんとなく分かる。
「...ねぇ比企谷くん。多分、こうやって面と向かってゆっくり話すのは今日で最後かもしれない。少なくとも、当分は会えないかなって思うの。」
「昨日の話ですか。」
「うん、だから告白の返事もまだ待ってもらうことになると思う。それでも、待つの?」
そんなこと、決まっている。
「待ちますよ。ずっと。次の機会まで。」
「...ありがと。」
そう言って雪ノ下さんは少し黙り込む。そして、また動き出す。
「じゃあさ比企谷くん。別れの前に渡したいものがあるからこっち来て。」
そう言って雪ノ下さんはちょいちょいとこっちへ招く。
俺は言われるがままに近づいていく。
だいぶ距離を詰めたその時だった。
自分の唇に柔らかいものが当たった気がした。
「!!」
そしてそれが雪ノ下さんの唇だということを理解した。
「これが渡したかったものだよ。どうだったファーストキスは?」
「え、ええ...。」
「ふふ、可愛いよ。」
やっぱり最後までこの人は侮れない。
「じゃあね比企谷くん。また会えたら面白い話聞かせてね!」
そして最後は笑顔で。
雪ノ下さんは背中を向け帰っていった。
きっと俺の青春ラブコメはまちがっているはずだ。今までも、そしてこれからも。
だけど俺は変わり続けよう。本物になるために。そして...
自分を変えてくれた、仮面の少女の為に。
ないです。
――――キリトリ線――――
メインルート終結。ちゃんと走りきれました!!
物語はまだ終わらないのですが、ひとつの区切りということで。
精一杯の力を込めて...
『よくやった私!!』
と褒めたいです。
本編についてですが、特に言うことは無いです。ブレブレでしたが最後までありがとうございました!
小言があるとすれば、是非1〜10段階で評価して欲しいです。では、また次回。
※何回も言いますけど、続きます。
――――キリトリ線――――
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました!
次回もあります!ポンコツ主ですがこれからもよろしくお願いします!