運命はいつも残酷で。
巡り合わせは突然に。
始まりを告げぬまま。
終わりを告げようとして。
いつになったらこの残酷な運命は
終わりを迎えるのだろうか....。
うーん、やっぱ無理!
ー陽乃sideー
あの日からずっと想いを寄せていた愛しい人。
別れは告げたはずなのに恋しくて。
もう会うことなんてないと思ってた。
でも目の前の世界にはあの日と同じ彼がいた。
《服を血で濡らした》彼が。
えっ...いやっ...
「いやぁあああああああああああああ!!!」
私は絶叫した。普通ならすごく痛みを感じるくらいの声で叫んだが、今はそんな痛みすら感じなかった。それよりも目の前の彼の痛みの方が遥かに自分に来ているからだ。
私の身体が刺されたわけじゃないのに、刺されたように鋭く心が痛んでいる。
「雪ノ下さん...!とりあえず離れて...ください...!」
彼は男が包丁を持っている方の手を掴み
「あああああ!!!」
声とともに男を押し倒した。その時、包丁がさらに深く彼の身体に刺さり込む。
それでも彼は男を押さえ込み続けた。
「くそっ!ガキが!!離しやがれ!!!」
男がもがき、抵抗していたが彼はピクリとも動かなかった。そして無理して作った笑顔をこっちに向ける。
その顔にはもう血の気がなかった。
いや...もうやめて...
声はかけられなかった。どうやら思考回路が止まってしまったらしい。私は何も出来ず、座り込んだままだった。
数分くらいたった頃だろうか。近くでサイレンの音が聞こえだした。どうやら救急と警察が来たみたいだ。
「くそっ!来やがったか!どきやがれってんだ!」
男はやっとの思いで押さえ込んでいた彼の身体から抜け、道を引き返すように逃げていった。が、警察がもう到着していたみたいで、捕まっていた。
「大丈夫ですか!!」
救急隊の人が別方向から担架を持って走って向かってくる。この細道はどうやら車は通れないようだ。
「あっ...、雪ノ下...さん...。とりあえず...救急...呼んで...大丈夫...から...。」
彼の声は次第に途切れ途切れになっていき、ついには何も言わなくり、そのまま目をつぶった。
「あっ...いやっ...!」
いや...いや...死なないで...!
「大丈夫ですか!!」
再び救急隊の人の声がした。もうここまで来たようだ。
少し安心したのか、ちょっと眠たくなってきた。
そして意識は少しずつ薄れていき、いつの間にか
意識を失っていた。
---数時間後---
目が覚めたそこは病院だった。
救急搬送なんて初めてだったけど、意識がなかったせいでそんなことは覚えてなかった。
それより彼は...?
「比企谷くん...。」
力なく呟く。返事なんて帰ってくるわけじゃないのに。
「はい?」
しかし返事は帰ってきた。
そしてその返事は、聞き覚えのある声だった。
え?どこ?
急いで辺りを見回す。
「あぁ、ここですよここ。」
隣のベッドのカーテンが開く。
そして彼はそこにいた。
「え?なんで...?」
ー八幡sideー
さて、飛び出してきたはいいものの...参ったなこりゃ。
自分の身体には包丁が刺さっている。ただ、1番驚いているのは、この状況で異常な程に冷静な判断が出来ている自分自身だった。
何故か痛みは感じない。こういう時、アドレナリンは本当に役にたつ。
そんなことはどうでもいい。とりあえず今まずすべき事は...。
「雪ノ下さん...!とりあえず離れて...ください...!」
俺は雪ノ下さんに逃げることを催促した。腹周りが刺されているようで、声が途切れ途切れになる。が、まだ平静は保っているようだ。
「あああああ!!!」
そのまま声を出しながら男が包丁を持っている手を掴み、地面に押し倒した。さらに包丁が奥深く突き刺さる。流石に痛みが伝わる。
「.......!!」
声にならない悲鳴をあげる。けど今は抑えなければ。
そこからはもう何も考えないことにした。
雪ノ下さんを守ること。男を抑え込むこと。
脳に残っていた指令だけに従って無我夢中で動いた。
男がなにか喚いているが聞こえない。
ただ、遠くから聞こえるサイレンだけは耳に入ってきた。
そしてその一瞬。油断してしまったのかもしれない。男は俺の抑え込みを抜けていき、そのまま逃げていった。
(くそっ、逃げるな...!)
が、もう身体が限界を迎えていた。血を出しすぎたのかもしれない。立つことができなかった。
ただ、遠目に男が捕まった様子が見えた。とりあえず一件落着である。
雪ノ下さんは固まって動かなくなってしまっている。まずい。何か伝えなければ。
「あっ...、雪ノ下...さん...。とりあえず...救急...呼んで...大丈夫...から...。」
やっとの思いで声が出るくらいしか、もう力は残ってなかったようだ。
さて、今は休憩するか...。
もう身体を使う気力がなかった俺は意識を失い...
数ヶ月前とおなじ病室で目が覚めた。
...えぇ?
とりあえずまた辺りを見回す。時計の針は5時を指していた。が、明かりがないあたりどうやら朝だろう。
特にやることもないので、傷口の周りを見ている。そこには痛々しい手術の跡があった。
はぁ...また入院かぁ。すまんな小町。お兄ちゃんこんなで。
そんな他愛もないこと思っている頃だった。
隣のベッドからゴソゴソと音がした。どうやら起きたみたいだ。
そういえば、前回は病室に他の人はいなかったのだが、今回はいるらしい。
「比企谷くん...。」
聞き覚えのある人の声が聞こえた。が、その声に元気はない。
「はい?」
とりあえず返事は返しておいた。すると隣から更に音が聞こえ出す。俺を探しているみたいだ。
「あぁ、ここですよここ。」
そう言ってカーテンを開ける。そこには焦った様子の雪ノ下さんがいた。
「え?なんで?」
雪ノ下さんはとても驚いていた。まあ、普通は起きるのに時間のかかるような傷だ。刺された位置がよかったとしか言い様がない。
「まあ、運が良かったんだと思います...。」
「そっか...。」
雪ノ下さんは俯いて何も言わなくなった。そしてせき止めていたものが溢れたかのように泣き出した。
「よかった...死なないで...よかったよ...。」
「そこまで深い怪我じゃないっすよ。だからそんなに泣かないでください。」
しかし雪ノ下さんは泣き止まなかった。それどころか強くなっていくばかりだった。
「もうやだ...もうやだよぉ...!なんで...普通に生きれないの...!なんで《雪ノ下》なの...!命を狙われないといけないの...!ただの女の子として...生きさせてよぉ...!」
そこに仮面をつけた雪ノ下さんはもういなかった。そこにいたのはただ1人の、心の弱い少女だった。
あぁそうか。雪ノ下さんが抱え込んでいたものはこんなに大きかったんだ。
それに雪ノ下さんは決して強くなんてない。こんなものを引きずっていたまま生きてきたこの20年で、もとよりの自分が壊れてしまっていたのだろう。
ただ、今、壊れた自分を取り戻しているのなら。
遠慮はいらない、もっと心に素直になればいい。
俺はまだ少し痛む身体を起こして雪ノ下さんのベッドに近づいて、そのまま雪ノ下さんの身体をそっと抱き締めた。
「今はもっと泣いていいですよ。大丈夫です。全部受止めますから。」
「比企谷くん...。」
その一言で充分だったようだ。
それから雪ノ下さんは壊れたように泣き続けた。
平均評価8.0...嬉しい限りですm(_ _)m
――――キリトリ線――――
そういえばこのNEXTなんですけど、多分10話もいかないと思います。ただ、内容が薄いとは言われたくないので、そこは今まで通り、それ以上に頑張ろうと思います!
(今回言う内容ないなんて言えない...)
――――キリトリ線――――
今回もここまで読んでいただきありがとうございました!
NEXTはおそらく短いですけど、最後まで読んでいただきたいと思ってます!ですので、これからもよろしくお願いします!!!