その涙は何のため?
彼の傷のため?私の情けなさのため?
あってるけど、違う。
きっと今流している涙は
今までの自分のためかもしれない。
一人称視点あらすじ。
ー陽乃sideー
あれからどれだけ泣いただろう。
今まで溜め込んでいた涙が全て流れたような気分だ。おかげで胸に残ってたものが今はない。
その間、比企谷くんはずっとそばにいてくれた。とてもありがたかった。
そして、全て流し終えて初めて自分の気持ちが改まって分かってきた。
その思いの丈を比企谷に言おう。
「ねぇ...比企谷くん...。」
少し強く彼の袖を引っ張る。彼は直ぐに気づいてくれた。
「あ、もう大丈夫ですか?なら、良かったです。」
「そうじゃなくて...まあ、それもあるけど...。」
彼はふぅっと短い息を吐いた。
「言いたいこと、あるんですよね。いいですよ。聞きます。」
「うん、あのさ...。何回も言ってるように、私は変わりたい。雪ノ下の名前を捨てて自由に生きたい。けど、そんな道なんてあるのかな...。」
「...ありますよ。」
彼の答えはYesだった。
「俺はあの日をもって変われました。それはもちろん陽乃さんのおかげだと思ってます。それに...。」
彼は続ける。
「いつか雪ノ下さんが持っていた本。一見、答えが書いてない様に見えて、実は簡単なことが答えだったんです。そしてそれは誰にでもできることだと思いますよ。」
彼は少し勿体ぶるように話した。今はちゃんと話して欲しいものだけど。
「...教えて欲しい。だめ?」
「別に隠すつもりは無いですけどね...。いいですよ。」
『変わるために必要なこと。それは、今ある居場所を全て壊すことです。』
彼はそう告げた。
壊す...。雪ノ下という名前を...?
私は戸惑った。それはきっと、答えが大胆だったからに違いない。
私にそれができるの...?
不安で拳が震える。その拳の上からそっと彼は自分の手を重ねた。
「本当に変わりたいならこうするしかないんです。それまでの過去は全部なくなっちゃいますけど...。大丈夫ですよ。雪ノ下さんなら。仮面がなくても雪ノ下さんはきっと強いですから。」
励まし。
1度もなかったそんな言葉。それはとても暖かかった。
うん、私ならできる。やってやる。
心の底からそう思えてきた。
「分かった。じゃあ、改めて力を貸してくれることを依頼していいかな?」
「喜んで。...っ!」
彼は傷口の方に手を当てた。まだ痛いのだろう。
「...くれぐれも無理はしないようにお願いします。」
時刻は6時前。もうすぐ夜が明ける。
---数時間後---
それからどういう事をやればいいのか、具体的に話し合った。幸い、親の見舞いはもう少し時間がかかるようだ。
「まあ、俺が事故した時親は3日くらい来ませんでしたけどね」と、どっかの誰かが言った。うん、ドンマイ。
時刻は昼を回り、気づけば14時になっていた。
その時、病室のドアが開いた。
「お兄ちゃん、見舞いに来たよーってあれ、陽乃さん。」
「ひゃっはろー、小町ちゃん。」
入ってきたのは小町ちゃんだった。手にはMAXコーヒーが二三本入ったビニール袋を持っている。
「あれ、今日学校早かったのか。」
「一応午前中で終わりだったからねー。あとこれお見舞いね♪」
そしてそのビニール袋を彼に渡した。
でも、お見舞いに缶コーヒーって聞いたことない...。
「ねぇ比企谷くん。お見舞いそれでいいの?」
「何言ってるんですか。これがいいんすよ。MAXコーヒー好きにはきっと悪い人いませんし。」
「いいんですよ陽乃さん。こっちの方が兄的に金もかからず心に逆らわずwinwinですから。」
「...そういうことです。」
彼は渋い顔をしていた。けどそこに嫌気は感じられない。これが彼の普通なんだろう。
そういうの、ちょっと憧れるなぁ...。
「そういえば陽乃さん。前々から話したかったことが山ほどあるんですけど、聞いてくれますか?」
小町ちゃんは急にこっちを向くなり真剣な顔付きで話しかけてきた。
「うん、いいよ。」
「まず最初に...。あの時は兄のこと、本当にありがとうございました。」
小町ちゃんは深々と頭を下げる。
「いいよいいよ礼なんて。とりあえず頭上げて。」
小町ちゃんは頭を上げるなり話を続けた。
「あの時、誰もお兄ちゃんの味方はいないのかなって思ってたんです。でも、実際は陽乃さん達がいてくれて、今こうしていつも通りでいられるんです。だから...本当にありがとうございました。」
「...」
遠目に見た比企谷くんは少し顔を赤くして照れていた。
これは気持ちの代弁だったのかもしれない。
「そっか。それはありがとね。けど、私は小町ちゃんにひとつ謝らなければいけないね。...今回のこと。」
「いや、兄なら大丈夫ですよ。家の事ならさほど困ってないですし(寧ろちょっと気が楽ですし)、まあ、また運ばれたって聞いた時はびっくりしたんですけど今回はケースバイケースってことで別に問題ないですよ。」
「...ねえ小町ちゃん。さっきしれっとひどいこと言わなかった?」
彼が突っ込むが見事にスルーされた。
「そう。それならよかった。」
「そういえば陽乃さん。小町、総武高校受かったんですよー!」
「へー、おめでとう!」
「それで質問なんですけどー...」
こうして他愛のないおしゃべりは40分くらい続いた。比企谷くんは最初本を読んでいたがいつの間にか寝てしまったようだ。
「あ、もうこんな時間ですね。小町、ちょっと用事があるのでそろそろ帰ります。それと陽乃さん。最後に...。」
「うん、なになに?」
「幸せになってくださいね。」
「...うん、ありがと。」
そう言って小町ちゃんは病室を出ていった。
幸せになる、か。
その権利は誰にだってあるんだろう。
それはきっと私にも。
だったら私は今は隣で眠っている彼と。
どこまでも幸せになってやる。
総UA10000件まであと少し...!!
――――キリトリ線――――
3話です!うん、5〜6話で終わりそうですね。
このNEXTはプロローグ書き始めの段階でもう考えるまで至ってたんですけど、やっぱり細かいところは難しいですね。頑張ります。
やっぱ小説って書くのは楽しいですね。この気持ちでまだまだ頑張りたいです!
――――キリトリ線――――
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました!
この作品もそう長くないですが、最後までよろしくお願いします!!