Fate/Extra Loop Side   作:ぴんころ

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というわけで三回戦の時に言った修正入りまーす


二回戦 二日目〜三日目

 毒に苛まれながらも暗号鍵を取得することに成功し、アルターエゴの魔術によって解毒された翌日、『イチイの毒』という昨日アリーナ内部で聞いた文言について調べるために図書室に向かう最中、聞き覚えのある声が廊下の先から聞こえて来た。

 

「はじめまして。サー・ダン・ブラックモア。高名な騎士にお目にかかれて光栄です」

 

「こちらこそ。ハーウェイの次期当主殿とこのような場所で会うとは」

 

 片方は、完全な少年王としか表現しようがない、レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ。

 そしてもう一方は、俺の次の対戦相手。ダン・ブラックモア。

 

 会話の内容を聞くに、やはり遠坂の言っていた通り二人は『ハーウェイ』という一点で繋がりが存在するようだ。

 

 けれどどうやら、これまでに出会ったことはないようで、さらには『このような場所で』というからには、ダンさんが来た目的とレオが来た目的は重なっていないのかもしれない。……もちろん、『ハーウェイから送られる人材の補佐をしろ』とダンさんが命令を受けてやって来たら、その人材がレオだった可能性もあるから、単純に『協力関係』にないと断言しきるのは難しいが。

 

「そう驚くこともないでしょう。僕はただ、我々の手に在るべき物を回収するために来ただけです」

 

 レオは、ダンさんの驚きの言葉に対して平然と返す。

 

「未だ戦場を知らない若輩ですが、一族で協議したところ、適任者は僕だったので」

 

 それも、貴方を前にしては恥ずかしい話ですが、などというレオは、けれど負けるとは微塵も思っていない。

 

 一番正反対なものでいうと、やはりシンジのそれだろうか。あいつは自分の実力に驕り、『自分は負けるはずがない』と盲信していたが、レオに関しては相手の力をはっきりと把握した、その上で負けないと考えている。どうやって倒そうという悩みすらない。正面から叩き潰すのが当然であるという、ある種王道の存在。

 

「万能の杯……。聖杯は貴方のものである、と?」

 

「ええ。あれは我々(ハーウェイ)が管理すべき物です。所有権が空席なら尚更のこと」

 

 人の手に余る奇跡は、人の手に渡るべきではなく。その管理は王の手にあるべきだ。

 

 それが、レオの、ハーウェイの思想。……けれどそれは本当に? レオ以外の何者か(ハーウェイ)が、西欧財閥を構成する者たちが、それを使う俗物ではないと、なぜ言い切れるのか。

 

「聖杯戦争という手続きは聊か面倒ではありますが、そこは仕方ありません」

 

「──王は人に非ず。超越者である、と。……なるほど、貴方なら口にする資格がある」

 

 人ではないのだから使い方は間違わない、と。それを、自分なんかよりもはるかに経験のある歴戦の軍人が、そう認めてしまった。ならばそれはきっと真実なのだろう。

 

「これはいよいよ、聖杯も真実味を帯びて来ましたな。正直なところ、わしは半信半疑でしたが……」

 

 ククっと小さく笑いを漏らすダンさん。

 

「いやいや、年甲斐もなく楽しくなって来た。まさかこの歳で聖杯探求の栄誉に関われるとは」

 

「もちろん。聖杯は真実です。少なくとも、貴方の国にとっては」

 

 どういう意味だろうか。まるでその言い方だと聖杯が真実ではない場所があるようだが。

 

「ほう、それはいかがな理由で?」

 

 ダンさんも同じことが気になったらしい。

 

「それは貴方の存在ですよ、ダン卿。軍属でありながら女王陛下に騎士勲章を賜ったほどの戦士。その貴方を派遣したことが何よりの証に思えます」

 

「何を仰る若き王よ。わしはこの通り老兵だ。生還の保証のない戦いと知り、老い先短いわしに声がかかっただけのことでしょう?」

 

「女王陛下の懐刀である貴方が? 風聞ですが、陛下は今の同盟体制に一言あると聞きましたが?」

 

「さて、女王の意向はわかりかねますな。所詮は一介の軍人ですので」

 

 ……正直に言って、この会話をこれ以上聞き続ける意味があるのかどうか測りかねている。この会話から彼のサーヴァントの情報が手に入るとは思えない。彼の戦い方についての情報が手に入るならまだしも、それすらなく「彼がすごい軍人である」という遠坂から得られた情報と同程度。それなら、おそらくはサーヴァントを近くに潜ませているであろう今のうちにアリーナに移動してしまうべきなのではないだろうか?

 

 そこまで考えたところでしかし

 

「おや、お久しぶりですね、雪城さん。一回戦を突破したとお聞きしました。おめでとうございます」

 

 どうやら話が終わったらしく、踵を返していたレオがこちらに気づいて話しかけて来た。……それにしてもレオはバカにしているのだろうか。ここに残っている以上、一回戦を勝ち残ったからに決まっているだろうに。

 

「次は二回戦ですね。どうかお気をつけて、と言いたいところですが……」

 

「やっぱり、ハーウェイの当主としては西欧財閥に属するダンさんの相手を応援することはできない?」

 

「いえ、そんなことはありませんよ。彼が生き残ったところで、どうせ最後は僕が倒すのですから。だからここで一時、彼の生存を祈る理由がありません」

 

 その言葉に嘘はない。彼はどちらが勝ってもいいと思っている。最終的な勝利は揺るぎないのだから、倒す相手が変わるだけだと、心の底から考えている。

 

「とは言っても貴方では……ああ、いいえそんなことはありませんね。先ほど話してわかりました。黒騎士の槍は折れている。いいえ、槍を剣に持ち替えたのでしょうか」

 

 黒騎士、というのはダンさんのことだろう。けれどそれ以外がわからない。俺がそれを口にする前に──

 

「もし彼の信念が以前と違うものなら、あるいは……貴方にも勝機があるのかもしれません」

 

 そう言って、レオは去っていく。

 

 ……当初の予定からは少し遅れたが、『イチイの毒』について調べないといけない。今から図書室に向かうとしよう。

 

 

◆◆◆

 

 

『イチイ、別名アララギ。イチイ科イチイ属の植物。果実は甘いが種は苦く、含まれているアルカロイドの一種、タキシンは有毒。種を誤って飲むと呼吸困難に陥り死に至る場合もある』

 

 図書室にて調べると、そんな情報が出て来た。けれどイチイという木が育つ地域が多岐に渡り、この情報だけではあの英霊の真名の把握には至らない。

 

 結局、あの毒に殺される危険性を理解した上で情報会得のためにアリーナに潜るしかない。未だ第一暗号鍵しか取得していないが、第二は生成されていないようだし。

 

 そう思って図書室から出たところで

 

「あ、いた」

 

「白野? どうかしたのか?」

 

「うん、ちょっと来てもらってもいい?」

 

 白野と出会い、どこかに呼び出される。ついて行って大丈夫なのだろうか? こいつが俺のことを殺しに来ない可能性は?

 

(でも、いきなり殺しにかかる?)

 

 アルターエゴの念話が届く。……うん、確かに今いきなり殺す理由はない、はずだ。けれど先に理由だけは教えて欲しい。

 

「ああ、うん、ごめんごめん。そういえばそうだった」

 

 そして白野が語ってくれたのは、どこか都合がいい、そんな提案をして来た少女のことだった。

 

 ラニ=Ⅷ

 

 蔵書の巨人(アトラス)の最後の裔。そんな人間味がないらしい少女が、師の言葉に従い、様々な人物の星を見ているらしい。だから、対戦相手ではない相手の協力をする。俺たちは対戦相手の情報を得て、彼女は師の言った人物を探すために星を詠む。そんな利害関係の一致(ギブアンドテイク)。ただの協力よりもよほどわかりやすいし信用できる。

 

「ごきげんよう」

 

 そうして説明されたあとに、連れて行かれた先で出会った少女は、まさしく人形と呼ぶにふさわしく、表情が存在しない少女だった。白野はすでに去っている。だから、ここからは俺と彼女の対話だ。

 

「私はラニ。貴方達と同様、聖杯を手にする使命を負ったもの」

 

「よろしく。俺は雪城輪」

 

 自己紹介はほどほどに。彼女が彼女自身の利益のために協力してくれるということを白野から聞いた、ということを告げる。

 

「はい、その通りです。貴方は、ダン・ブラックモア及びそのサーヴァントの遺物を発見して持ってくる。私はそれを使って星を詠む。結果、私はまたひとつ人間の星を識ることができて、貴方はダン・ブラックモアのサーヴァントについて識ることができる」

 

「うん、わかった。そういうことなら協力を要請するよ」

 

 その言葉で、会話は終了する。あとは、アリーナで遺物を見つけるだけだ。

 

 

◆◆◆

 

 

 アリーナに入る。「遺物を見つける」とは言ったもののどこを探すべきだろうか。闇雲に探しても見つかるとは思えない。

 

「なら、まずは昨日の結界の基点にまで行きましょう。何かしらの残滓があるかもしれないわ」

 

 ああ、うん。そういえば。確かに一番わかりやすいものでいえばそれがあった。そこに行ってみよう。

 

 わかりやすい方針が決まったことで、目指す道筋は毒で朦朧としていたからちゃんとは覚えていなかったけどたどり着くことはできた。そして、結界の基点があった場所に、キラリと光を反射している何かを見つけた。

 

「これって……」

 

「鏃、ね。弓矢の先端についてるアレよ」

 

 弓、ということはあいつはアーチャーなのだろうか? いや、でも一回戦の青行灯のことを考えると、そう単純に見た目だけから判断するのは難しい。候補の一つにしておく、程度が一番いいだろう。

 

「……もう少し探してみようか?」

 

「ええ、そうね。『星を詠む』ってことは占星術を行うってことでしょうし、その導となるものが多くて困ることはないでしょう」

 

 そんな言葉を交わして、エネミーを倒してリソースを取得しながら歩いていると、少し離れたところに、無機質な舗装されたアリーナの地面にはそぐわない異物を見つけた。

 

「棒……?」

 

 折れてはいるけど、こんなところに落ちている、となるとやはり先の矢の一部だろうか? 確か矢を構成するのは鏃、それを取り付ける棒、そして風切羽の三つ。……これで見つかれば出来過ぎな気もするが、一応、探してみようか。

 

「あった……」

 

 風切羽。俺自身は知識として知っているだけなので実物を見てもわからなかったが、弓を使うアルターエゴは見てわかったらしい。これで、矢が完成する。

 

 それ以外にも何かないか探索してみたが、さすがにこれ以上のものは見つからなかった。しょうがない。これだけ見つかっただけでも奇跡のようなものだ。今は、これで納得して帰るとしよう。

 

 

◆◆◆

 

 

 ──三日目。

 

 まずはラニを探して昨日の遺物を届けるとしよう。そう思って、部屋から出てラニのいる場所を探す。

 

 けれど途中、違和感が襲い掛かり、そしてすぐにその違和感の正体に気がつく。

 

「なんか、マスターが少ないような……」

 

 そうだ、マスターが少ない。幾ら何でも静かすぎる。人気のなさに気がついた途端、俺にもわかるほどに明確な殺気が心臓を打ち貫く。

 

 逃げるように、その場を走り抜ける。だが、向けられた殺気に変化はなく、それが否応無く己を背後から狙っていると確信させた。

 

「振り向いちゃダメよ、マスター。振り向いたら最後、踏み込まれるわ」

 

 どこに逃げるべきか。今いる場所は一階。まずは上に逃げてみるべき──

 

「わざわざ逃げ場がなくなるように動いてくれてありがとさん。お礼は、苦しまずに殺してやるってとこで」

 

「マスター!」

 

──れぬ

 

 階段を駆け上る最中、そんな声が聞こえて、矢が突き刺さり──

 

 

死に戻る

 

 

 逃げる場所は校庭かアリーナじゃないとダメだ。なら──

 

 構造を思い出す。今日という日を無事に終えてマイルームに帰るための方法を見つけるために。校庭に逃げると、どうしようもなく「安全地帯(マイルーム)に帰る」ためには、すでに敵のサーヴァントが陣取っている空間を潜り抜けないといけない。

 

 アリーナに向かう。アリーナの入り口を開き、半ば飛び込むようにしてアリーナへの侵入に成功した。

 

「これで、どうにか……!」

 

「まだよ、マスター! あいつ、まだこっちを狙ってる!」

 

「え……?」

 

 独断でアリーナに入ってくるとまでは思わなかった。その事実に一瞬惚けたが、すぐに気を取りなおす。

 

「迎撃できる広い場所に向かうわ。構造はちゃんと覚えてる!?」

 

「もちろん!」

 

 アリーナに入るまでに比べて、遥かに長い距離。狙われているという事実に、今まで為したことのない全力疾走という行動に、疲労が溜まる。けれどどうにか目的地である広い、迎撃のできる場所まで走り抜けた時には、その殺気も感じることができなくなっていた。

 

「逃げ、きれた……?」

 

 崩れ落ちそうになる体を必死にこらえていると

 

「予想通り、わかりやすいマスターで助かったぜ」

 

 サーヴァントの声──!

 

 けれど場所がわからない。そう思い緊張が走るが──

 

──されぬ

 

「マスター!」

 

 咄嗟にアルターエゴが前に出て剣を払う。ああ、でも

 

「死角から狙ってくるなんて徹底してるのね、アーチャー」

 

「おお、お見事お見事。死角からの攻撃を瞬時に弾くなんてさすがは英雄様。しかも、クラスまで見抜くなんてな。……でも、ちょっと甘いぜ?」

 

 もう一本存在した矢が、喉に突き刺さって──

 

 

死に戻る

 

 

 アルターエゴとともに広場までやってくる。問題はここからだ。アルターエゴが対処しきれない二本目の矢があるのなら、それの対処は己がしないといけない。

 

「予想通り、わかりやすいマスターで助かったぜ」

 

 全く変わらない言葉。全く変わらない射撃。確実に、俺をこの場で処理しに来ていることは、二度殺されたことで実感している。

 

「させない!」

 

 アルターエゴが迎撃したのとは違う矢が飛んでくる。前回のそれから、狙いは喉。わかっていればどうとでもなる──!

 

──許されぬ

 

 シロウでは小さすぎて狙いをつけづらいその矢を避けようとした途端、()()()()()()()()()()()()()()()()少し横に跳ぶ程度のはずが大きく動き、空白地帯になるはずだったそこに、俺の腕が入り込んでしまい、突き刺さる。

 

「っ!」

 

 一度の攻撃で二本の矢を放つのか、神速の連射なのか。どちらにせよ、敵のクラスがアーチャーであることには違いあるまい。傷口から入り込み血流に乗って全身を回る毒に、意識が消え失せそうになるが

 

「マスター、しっかり! 今から校舎に戻るわ!」

 

 アルターエゴの言葉に意識を強く、保とうとする。支えられ、歩き続け、どうにかしてアリーナから校舎に戻ろうとする。その中途──

 

「マスター! マスター!?」

 

 崩れ落ちる。意識が消え失せる。呼吸ができない。死んでい──

 

 

死に戻る

 

 

 アルターエゴが一撃目を斬り伏せる。それに伴い俺が前の周の自分の身体能力を思い出して二撃目を避けようとしたところで

 

──その悪性(ルール違反)は許されぬ

 

 今度は、俺の肉体が動くのではなく、矢が逸れるなどという弓の名手(アーチャー)にありえぬ失態が発生し、普段とほとんど変わらない動きの俺と噛み合って、俺の腕を掠っただけで終わる。

 

「んだとぉ!?」

 

 アーチャー自身驚いている。けれど、それなら今が好機。アルターエゴに目配せしてアリーナから校舎に繋がるゲートにまで走り抜ける。途中、正確に己を狙う、先ほどのような失態が存在しない矢の数々が飛んで来たが、それらは全てアルターエゴが切り捨て、あるいはシロウがヘイトをひきつけたエネミーに肩代わりさせて一撃なりとも当たらない。

 

「ちっ……たどり着きやがった」

 

 アリーナから脱出するとき、そんな声も聞こえた気がするが、今は気にしている暇はない。毒矢を受けたのだ。早く保健室に行かないと──

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