Fate/Extra Loop Side   作:ぴんころ

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そろそろ???の内容も出るかな?


??? 第三節

 ──マイルーム

 

 旧校舎ではあるがこの空間も『聖杯戦争のマスターのための空間』であることには変わりなく、それゆえに用意されたマイルームに、俺も白野も同じ扉から入るも、IDが別なために入る部屋は違う。ここに来るまでに誰ともすれ違わなかったあたり、結構な時間……皆が眠りについたりするような時間まで探索していたのだろう。

 

 幾体かのエネミーを撃破した後校舎に戻るように言われ戻ってきたのだが、さすがに疲労が濃い。あのアリーナにおけるエネミーは、全て有機的な存在で、本当にムーンセルが生み出したエネミーなのか疑問が残る。……いや、別にどうでもいいか。全部倒すだけなんだし。

 

 あのエネミーたちはこれまでに戦ったエネミーとは比べることすら烏滸がましいレベルの相手だった。それでも、全滅させないと。あいつらを容易く全滅させられるレベルでないと聖杯を手にすることはできないはずだ。だって、侵入者を殺すための試練で難易度が上昇するアリーナで、それの一番最初なんだから。

 

 俺はアルターエゴとイリヤを死なせたくなくて、そのためには自分が死ぬわけにはいかなくて、でもそのためにはアルターエゴを死ぬかもしれない戦場に送る必要があって……

 

「マスター」

 

「どうかした……!?」

 

 突然、ベッドに横になった俺の真横に、アルターエゴの顔が現れて驚き、落ちそうになってしまうが、アルターエゴが引っ張り抱き寄せ、そんな未来は回避された。

 

「また、思考がどうしようもない悪循環に入り込んでるでしょ」

 

「そんなことはないよ」

 

「……そう」

 

 自分よりも幼い少女に抱きしめられる現状。けれどこれこそが、己のことを一番、あるいは自分よりもわかっている少女に抱きしめられている現状こそが、俺にとっては一番安らげる状況なのだ。だから、こうしていると彼女のいうところの思考の悪循環からは抜け出せる。だから、彼女に抱きしめられた時点で、もう彼女の質問の答えはNoなのだ。

 

 なんとなく、雰囲気が悪くなった気がする。

 

「……ねえ、マスター。この格好どうかしら?」

 

 いきなりの話題転換をした彼女は俺を離して立ち上がり、ひらひらと舞うようにくるくると回る。きっと、自分が空気を悪くしたのだと思っての行動なのだろう。だから俺もそれに乗って、起き上がって彼女の姿をしっかりと見る。

 

「すごく、似合ってる」

 

「ふふ……うん、ありがとう。さすがに首輪含めて似合ってるのは複雑だけど」

 

 そう言った少女は、踊るのをやめて俺の元にやってきて、今度は俺の膝の上に乗ってきた。

 

「今日はもう休みましょう。明日からもしばらくの間は、マスター同士の親睦を深めるために迷宮探索は私たちになるんだろうし」

 

「うん、そうだね」

 

 アルターエゴの首輪にそっと触れる。ちらりと袖口から覗くすでに役目を果たせない手錠にも視線を向けて、おそらくは安堵の表情になっているだろう顔を見られないようにそっと俯く。

 

 アルターエゴに死んでほしくない。

 イリヤに死んでほしくない。

 俺が死にたくない。

 

 この三つの思いはイリヤ以外が死んだ場合は全員まとめてお陀仏になる、という関係である今は、イリヤが旧校舎にいる今は『俺とアルターエゴの死亡』にのみ気をつければいい。何せイリヤは優秀な魔術師だ。どんどんきつくなることがわかりきっていて、アリーナの最奥に向かう最中でどれだけ死人が出るかわからない現状で、わざわざそのサポートを減らす理由はない。

 

 だから、気をつけるのは最初の二つ。

 

 そしてアルターエゴに関しては『俺というマスターに従うのが嫌になったから座に帰る』という手段が取ろうと思えば取れるのだ。だから、なんの効力もないとわかっていても『縛る』ための道具(首輪)がついているというのは、視覚的なだけのものではあるが安堵を与えてくれる。

 

 そしてそこで、マイルーム内に転移してくる反応が出た。

 

「あー、二人がイチャイチャしてるー!」

 

 入って来たイリヤがこちらの姿を認めてそんなことを言い、そのまま飛びかかって来るのに苦笑しながらも

 

 ──夜は、更けていく。

 

 

◆◆◆

 

 

 翌朝、俺とイリヤが今現在レオを中心にサポート役に入っているメンバーがいる生徒会室へと向かうと、すでに白野も含めて全員揃っていた。

 

「ああ、遅かったですね。昨日、貴方と白野さんが戦ったエネミーについての情報をまとめましたので、今から皆に説明します。……ミス遠坂、お願いします」

 

「はいはい」

 

 そう言ってホワイトボードに映される画像は、昨日戦ったエネミーのもの。合計十数種ものそれらが、所狭しと写っているのは、見辛く、わざわざ全部映すことに何かしらの理由があるのだろう。

 

「まずこいつらだけど、見てわかる通り、全部爬虫類みたいな見た目ね。こいつらは種類によって戦闘能力はピンキリだけど、基本的にはB~Aクラスのサーヴァント級ってみていいわ。……少なくともエネミーだからとなめてかかったらやられる危険性は誰にでもあるわ。その代わりに得られるリソースは表とは比べ物にならないけど」

 

 敵の特徴を話しているが、それに関しては俺と白野は交戦したわけだから、行動パターンなどはある程度わかっている。なので昨日はちゃんと見れなかったレオの呼びかけに答えた面々に目を向けてみる。

 これから先は彼らと仲間としてやっていくのだから、覚えておいた方がいいだろう。もしもの時はアルターエゴや俺が生き残るための肉壁になってくれるかもしれない。白野を初めとした知り合いだとちょっと罪悪感があるが、そうでもない連中なら今の俺は殺しても特に気にならないし。

 

 恨むなら、助けるだけの力のない自分のサーヴァントを恨め、としか思えない。まあ、本当にどうしようもない状況でもないとするつもりはないが。

 

 こうしてみるとアバターをカスタムした面々がこの生徒会室の人間の中に多い。

 

 レオはなぜかアバターカスタムはしておらず、旧校舎の制服のまま。凛、ラニ、ユリウスは旧校舎の制服をそのまま使ってこれまでの服装にカスタムしたのか、見慣れた服装。白野と俺はアバターカスタムをする力などないので旧校舎の制服のまま。イリヤは俺とお揃いということが琴線に触れたらしく、変えられるにも関わらず変えていないまま。

 

 他にもごった煮の宗教家らしき服装の、見た目通りにいろんな宗教が混じった発言をポンポンしている男。確か臥藤門司とかいう名前。

 道化師の衣装を身にまとい、顔にも道化師メイクをした女性。片言で喋っていることやちょっと食人したらしき言動をしているせいで話しかけるのは躊躇する……ランルーくんと呼べば良いのだろうか?

 あとはカスタムしていないマスターが三人いる程度。合計十人のマスターとイリヤ、そして昨日話を聞いたところサーヴァントを失っているというラニの二人からなる完全なサポート役。六人のマスターを除いたそれが、このムーンセルからの指令に参加を表明した面々であった。

 

 そんなことを確認していると

 

「最後に、こいつらについてデータスキャンしたりしてみたところ、その全員がサーヴァントで言うところの『悪属性』に類似した性質を持っている、ということが桜の協力でわかったわ。悪属性に効果のあるスキルや宝具を持ってるサーヴァントがいるなら、真名や宝具の効果はともかく『そういうのがある』ってことだけは教えてもらえるとこっちも作戦にそれを組み込めるからやりやすいわ」

 

「ありがとうございます、ミス遠坂。では兄さんも」

 

「……昨日、岸波、雪城両名の探索が終わった後、俺とアサシンはレオの指令によってアリーナ内での隠密行動を行なった。その結果、あの階層にいるエネミーは全て爬虫類系。そしてエネミーの出現手段はアリーナ内部で生成されるのではなく、下の階層から上がってきている、ということがわかった。どの階層に存在するのかはわからんが、確実にどこかに巣穴が存在する」

 

「と、いうことです。これから先下の階層に向かうことになった時に、そのことに注意してください。少なくとも僕たちに与えられた時間はBB曰く『無限の時間』らしいですから。今急いで降りて死ぬ必要はないです。なのでこれは今すぐに必要になる情報、というわけではないんですがね」

 

「ふむ、レオ会長。小生から一つ質問があるのだが」

 

「なんですか、ミスターガトー?」

 

「今もなお校舎内でパニックになっているマスターはどうするのだ?」

 

 しかしその大男、臥藤の質問にレオは当然のように

 

「放っておきましょう」

 

 笑顔のままさらりと言った。

 

「先ほど、レオさんは『急いで降りる必要はない』と言いましたが、それでも悠々自適に『時間はいくらでもある』なんて考えていて良いわけではありません。時間がない、と焦りすぎてもいけませんし、時間がある、と余裕を持ちすぎてもいけない。”今の状況そのものが異常なのだから他に異常がおきないなんて言い切れない”ということを忘れてはいけないのです」

 

 ラニがそれを補足するようにして、その理由を付け加える。何も間違ってはいない。けれど白野は納得が行かないらしい。一度声をかけるべきではないのか、と思っているようだ。

 

「もちろん。放置して下手なことをされても面倒ですので、手が空いている人員に何かしらの説得はしてもらう予定ですが。今は何もかもがわからないままですから」

 

 そこにラニの捕捉が入り白野も納得したようだ。……一応、他の面々とも『一緒に迷宮探索をできる程度』の交流は持っておかないといけないだろう。すでに面識のある人間ならともかく、カスタムしていないマスターとは話をしておいたほうがいい。

 

 え? 残りのカスタムアバター持ちの二人? まともな話をできると思えないので却下で。

 

「え? この同盟に参加した理由? ……お前や岸波ならいいか。実は俺、次の対戦相手がレオなんだよ。レオに勝てる気はしないけど、この戦いならレオの影に隠れるように立ち回れば生き残れて、さらに聖杯まで使えるかもしれないんだ。参加しない理由がないぜ」

 

「同盟参加理由? 実は私、次の対戦相手の遠坂に勝てる目が見えなかったから。生きて願いを叶えられるならそれでいいかなって」

 

「あー、俺もそっちの二人と同じかな。次がユリウスとの戦いで。このままだと暗殺されるんじゃないかって不安でしょうがなくてな。逆に『もう勝ち目がない。死んでしまう』って諦観があったから、この状況もすんなりと受け入れられたんだと思うぜ。そういう意味じゃ、お前らと当たったりした連中は『まだ勝ち目があったのによくも余計なことを』ってなってるんだと思う。そういうのもあって周囲に当たり散らして、それでこっちに参加できないんじゃねーか?」

 

 ……話しかけた途端、襲い掛かられる可能性もあるのだろうか。話しかける場合は慎重にしないと。

 

 結構ありがたいことを教えてくれたと思う。一応礼は言っておく。

 

 

◆◆◆

 

 

 参加しない生徒たちは『こちらには関わらない』スタンスを取るため、上の階を根城にしているらしい。一応そちらに足を運んでみると、階段の踊り場を超えたタイミングで防音の結界を越えたのか、色々と不平不満が大声で漏れているのが聞こえた。

 

『なんで俺らがこんなことに巻き込まれなきゃなんねーんだ!』

 

『そうよ! 私の次の対戦相手なんて、ただの偶然で勝ち残ってきた雪城なのよ!? それを台無しにされて黙ってられるもんですか! ふざけないでよムーンセル!』

 

 色々と聞こえて来る中、一人が教室から出て来たことに気がついた。

 バレたらまずい、と思って隠れようとしたが、それよりも先に向こうに気づかれたらしい。こちらにやってきた。

 このまま下にまで連れて行ったら俺まで何か言われるかもしれない。それは面倒なので、話で終わらせられるなら終わらせるし、無理そうならこの場で……

 

「なあ、雪城、だよな」

 

 そこまで考えたところで、相手から話しかけられた。

 

「ああ、そうだけど……」

 

「一つだけ聞かせてくれ。なんでお前ら、あのBBとかいうAIの言葉を信じられるんだ?」

 

 ムーンセルが招き入れていない侵入者。それを倒すために自分たちが使われる。クリアしたら聖杯戦争に優勝していないのに願いを叶えられる上に生きて帰れる。これらの発言には全く信用できる部分がない。こんな荒唐無稽な言葉だけでもパニックになるのに、お前ら(俺たち)は全くそれを疑わずに平然と迷宮に向かっていく。それも、さっきまで敵だった連中に生命線を預けて。

 

 それが信じられないのだと、俺たちがまるで同じ人間には見えないからさらに混乱するのだと、そんなことを言い出す。

 

「なら、さ」

 

 でも、こっちからも一つ聞かないといけない。彼は不安要素ばかりをあげているが根本的な部分を履き違えている。

 

「ここであいつの言葉を疑ったら現実は変わるのか?」

 

「…………は?」

 

 今、旧校舎に閉じ込められているという現実。

 旧校舎から出られる場所がアリーナしかないという現実。

 

 それらはBBの言葉を疑ったところで変わりない。

 

「現実が変わらない以上は、結局アリーナに向かうしかなくて、それならその先には何かいいことが待ってるって考えたほうがいいだろ。……全員、あいつの言葉が真実かどうかは十分疑って、それでもできることがそれしかないからやってるんだよ。報酬の件が本当だったら儲けもん、ぐらいの考えでいるんだよ」

 

「……そっか」

 

 彼は俯くが話はこれで終わりだろうか。それならこれから白野と迷宮攻略なのでもう行きたいのだが。

 

「……」

 

「……」

 

 どうやら何もないらしい。それならもう行かせてもらうとしよう。

 

 

◆◆◆

 

 

 マスターが突入する階層より少し奥。そこでは今、マスターたちが誰一人として想像もしていないような儀式(サバト)が起きていた。

 

 同胞喰い。

 

 エネミーだった爬虫類の死骸が、周囲に食い散らされた状態で転がり、それらは全て魔力と溶ける時に彼らを食い散らした存在に溶けていく。

 

 それは一匹のトカゲだった。

 

 いいや、もはやトカゲにすら見えない。

 けれど、この階層にある死骸は全て爬虫類のものであり、ならばそれが「同胞を食らった」結果である以上は、それはトカゲだったと言われると一番しっくり来る程度。

 手足は短く、胴体は長く、蛇にしか見えない姿に変貌しながら、巨大化しながら、その階層の主とも呼べる存在へと変貌していた。

 

 この世のものとすら思えない呪詛の籠った咆哮をあげながら、”ソレ”は次なる獲物を探す。




シトナイの服装はプリヤアラームの巫女服に純白の首輪と手錠追加した感じで
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