意外に乙女なモカちゃんが送る青春劇   作:GRAENA

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クオリティが低いため、投稿しようか悩んだ作品です。それでも許していただけるなら、どうぞ


十時間目

のし。腹に何かがのっかる感触で目が覚めた。いや、瞼を開けてないから、目が覚めたは変か。

 

お腹の感触が何か知らないが、寝返りを打って落とそうとするも、思いの外重たいようでそもそも寝返りが打てなかった。

 

「重たい………」

 

呻くように漏らした次の瞬間、額に衝撃がきた。それも割と強めの。

 

薄っすらと目を開けると白っぽいさらりとした髪が見えた。カーテンを開けていないため、顔立ちもぼんやりとしか分からないが、それは確実にモカだった────は?

 

「何でモカ?」

「思いも体重も重いモカちゃんでーす」

 

目が覚めたら眼前に美少女がいる、なんて、どこのゲームだ。となると考えられるのは。

 

「…………夢か」

「ていっ」

 

ぺしん。二度目の衝撃。

 

「いたっ………痛い?夢じゃない?」

「そうだよー」

 

起きたばっかりで頭が働かない状態では今起きている出来事を整理できない。

 

「とりあえず、下に行っててくれ」

「はーい」

 

体からもベッドからも重みが消えたようで、ぎしりとベッドのスプリングが軋む。それから扉が閉まる音。

 

モカがいなくなってから一分ほど夢心地を引きずるようにぼんやりとしたあと、頭を振って眠気を振り払う。

 

立ち上がって、カーテンを開ければ眩しい陽光が飛び込んできて網膜を灼く。目を逸らした先にはちょうどデジタル時計があり、09:48と光で教えていた。

 

くぁ、と小さく欠伸をしてから、クローゼットを開き、適当に服を引っ張り出す。

 

服を時間をかけて着ながら、頭の中で今日の家族の予定を思い起こす。父さんは朝から、母さんは昼から仕事。妹はバスケの試合で夕方まで帰ってこない。

 

今日は母さんの仕事を手伝わなくてもいい日なので、昼までは寝たかった。

 

後頭部についた寝癖を撫でながら階段を下る。高度を下げていくと、どんどんパンの香りが強くなる。

 

パンの香りの元はキッチンに隣接されている背の高いテーブルの上に置かれている紙袋からだ。テーブルとセットの椅子にモカも座っていた。

 

「おはよー」

「おはよ。コーヒー飲むけど、モカも何か飲むか?」

「いつものおねがーい」

「タバスコとかデスソースなどなど家にある辛味全てを混ぜた望月家スペシャルブレンドになるけど?」

「コーヒーでいいよー」

「砂糖とミルクは?」

「一個ずつでお願いー」

「ん」

 

やかんに水を入れてIHコンロの上に置いて、電源を入れる。その間に、コーヒーの瓶や、砂糖とミルクを棚から取り出しておく。

 

一通り出し終え、あとはお湯が沸けるのを待つだけだ。

 

移動も面倒なので、L字になっている調理台の縁に寄りかかる。キッチンとリビングを隔てる仕切りがないため、近くにいるモカも目に入る。

 

モカは、ぐでーっとテーブルに張り付いている。他人の家でここまで寛げるその胆力は相当だと思う。

 

「それで?何で俺の家に?」

「山吹ベーカリーに行ったら、ツッキーのお母さんにあってねー。まだ寝てるツッキーを起こしてって言われたんだー」

「面識あったのか?」

「なかったよー。でも、ツッキーがあたしのこと話してたんでしょー?それで分かったみたいだよー」

「あー。話したって言うか、ほとんど尋問だったけどな、あれ」

 

前の動物園デートの日の夜に、母さんと翠(妹)に行った相手について根掘り葉掘り聞かれたんだった。外見とか性格とか、その他もろもろ。

 

その時の二人の目が肉食獣のそれだった。父さんは黙ってこちらに耳を傾けていた。ダメだ、ロクなやつがいない。

 

「あとは、ちょーどさーやに名前呼ばれたから、それで確信したんだってー」

 

確かに外見は口頭でしか伝えてない。外見だけなら思い過ごしかもしれないけど、名前も一致したならまず間違いないだろう。

 

「モカって名前は中々いないからな」

「蒼って名前も珍しいよねー」

「そうだな。単体で使う字じゃないよな」

「あたしは結構好きだよー?蒼っていいやすいしー」

「何かモカに名前で呼ばれるのは初めてだな」

「そういえばそうかもー。ツッキーがしっくりくるからかなー」

「もう一回名前で呼んでみてくれよ」

「蒼?」

「…………違和感しかない」

「二文字だと語呂が悪いからかなー?んー………そーくん」

「…………思いの外、しっくりきた」

「あたしも思ったー」

 

そろそろかとやかんを見れば、口から白い煙を吐き出していた。ちょうどいい頃合いだ。

 

粉末状のコーヒー豆をスプーンでマグカップに移してお湯を入れる。よくかき混ぜてから、俺の分には砂糖一つ、モカの方にはリクエスト通り砂糖とミルクを一つずつ入れる。

 

「お待たせ」

「ありがとー。あと、ツッキーの朝ご飯だってー」

「ご飯じゃなくてパンだけどな」

 

差し出された紙袋を覗きこむと、パンが二つ入っていた。ソーセージロールとチョココロネ。山吹ベーカリーのチョココロネは土日にしか手に入らないレアパンだ。今のところ学校前に手に入れられたためしがない。

 

「モカは朝食べたのか?」

「メロンパンとクロワッサン食べたよー」

「モカにしては少ないな」

「今月は少しピンチなんだー」

「デザートにチョココロネ食うか?」

「いただきまーす」

 

即答だった。聞くまでもなかったな、と少し呆れた声で応じつつ、紙袋から取り出してチョココロネを渡す。

 

いやー、さすがはツッキー、とモカが軽い調子で受け取って、美味しそうに食べる。

 

俺もソーセージロールにかぶりつく。買ってから時間も経っているのに美味しい。バターの風味とソーセージの相性が抜群だ。

 

最後の一欠片を口に放り込んで、コーヒーで飲み下す。朝食───といっても遅すぎるか。時計がちょうど十時を指し示していた。

 

「今日バイトは?」

「休みだよー」

「貴重な休みを俺の家で過ごしてていいのか?」

「いいのだよー」

「モカがいいならいいけど。じゃあ、向こうのソファでテレビでも見て寛いでてくれ。俺はまだやることあるから」

「はーい」

 

 

 

 

 

身だしなみを整え、リビングに戻る。モカはソファーの背もたれに全体重を預けてぐてーとしてた。

 

「あんまり面白い番組やってないねー」

 

何か言う前にモカがリモコンを渡してきた。それを受け取って番組表を開くと、ニュースや子供向け番組しかやっていない。

 

「本当に何もやってないな。何か観るか?」

「いいねー。何あるのー?」

 

テレビをDVDの再生モードにしてから、ソファを立つ。

 

うちのテレビやその周辺機器やらは充実している。父さんが映画好きで、コンセプトは“映画と同じ迫力をご自宅に”だ。

 

大きめの木製のテレビデッキに右側の木製戸を開くと、びっしりと並べられたDVDケースが顔を出す。

 

「わぁー、沢山あるねー」

「父さんの趣味でな」

 

へえ、と声を漏らしながらDVDの名前を確認していく。タイトルをなぞっていた指が止まる。

 

「これ気になってたんだよねー。映画館には行けなかったから、まだ見てないんだよねー」

 

それは、三週間前ぐらいにDVD発売されたアメリカのヒーローもので、父さん曰く、最後が泣けるんだ…………!らしい。

 

お前も見てみろ、と言われていたが、ガンスルーしていたし、いい機会だろう。ちなみに家族全員に勧めていたが、誰にも相手にされなかった。きっと、この前の夜中に泣いていたのはこの映画を見たからなのだろう。

 

横のガラス張りの戸を開き、ディスクをDVDデッキに挿入する。黒かったテレビの画面に色がつく。目がちかちかしそうなド派手な配色だ。

 

「こっちのリモコンで操作頼んでいいか?」

「任せなさーい」

「さてと、ポップコーンあったっけな」

「ツッキー、歯磨いたばっかりじゃないのー?」

「ポップコーンなしの上映会は味気なくないか?」

「確かにー」

「ということだ。ちょっと、ポップコーンの捜索してくる」

「任せたよー、ツッキー隊員」

「ラジャー」

 

 

………………

…………

……

 

 

「よし、準備万端」

 

テーブルには、コーラが注がれた大きめのグラス。真ん中にはパーティ開きされたポップコーン。光が入らないようにカーテンも閉めた。映画を観るのにここまで最適な状況はない。

 

「贅沢ですなー」

「本当にな」

「それじゃー、スタートー」

 

ぽちっとボタンを押すと画面が動き出した。

 

 

………………

…………

……

 

 

英語で下から上へと流れるエンドロールを眺めながら、伸びをする。

 

普通に面白かった。ただ、ラストはヒーローがヒロインを助けてハッピーエンドというありきたりな感じだった。映画に明るくない俺でも予想できた。これで泣くって涙腺緩くねぇか?

 

「モカは…………」

 

感想を聞こうと横を向くと、モカは眠そうに目を擦っていた。表情もいつもの四割増しでぼんやりしている。

 

「んぅ………?終わったー?」

「終わったぞ。眠いのか?」

「少しねー。ということで、ツッキーの膝借りるねー」

 

言い終わるよりも早く膝に頭を乗せる。数回、頭をもぞもぞと動かし、ベストポジションを見つけたのか、ピタリと動きを止めた。

 

その体勢は大胆にも仰向けで、横を向いて寝るよりも辛そうだ。それでも小さく寝息を立てていることから、本当に眠っているのだと理解させられる。

 

「男の膝でいい夢見れるとは思えないけどなー」

 

さらりとした白髪を撫でると、くすぐったそうな声を上げながら身動ぎする。普段の悪戯っ子のような雰囲気は鳴りを潜め、あどけない子供のような寝顔だ。

 

喋らなかったら美少女、なんて言ってたのは上原だったか。確かにその通りだ。整った顔付きをしている。

 

男の部屋に上がり込んだり、こうして寝顔を晒したりするのは信用してくれているからなのだろう。

 

───それにしても

 

「…………無防備すぎないかねぇ」

 

返答はもちろんなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の話のネタ(書けるかは分からない)

  • 学校生活
  • 日常生活
  • Afterglow絡み
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