本屋の帰り道、住宅街を歩いているとリサ先輩が前を歩いていた。化粧品店の袋を持って、ご満悦な様子だ。
声をかけようとして近付いたとき、微妙な違和感があった。白い服の一点に黒いシミが────いや、違った。そこそこ大きめな蜘蛛が背中についている。素手で掴みたくない絶妙なサイズだ。
肩甲骨辺りに留まっている。全く動く様子はないが、少しでも動けばオフショルダーで剥き出しの肩に。
両のポケットに手を突っ込んで、ありもしないティッシュを探る。
………仕方ないか。
足音を立てずに小走りで近付く。こちらに気が付く前に取ってしまおう。
あと少しというところで、グイッと肩を掴まれた。ギリギリと力が入れられている。握力はそうでもないが、爪が痛い。
「あなた、リサに何をしようとしたの?」
タイミングが悪い。長い銀髪に、冷たい眼でこちらを射殺さんばかりに睨む湊先輩。
「あれ?友希那?蒼?どうしたの?」
標的がこちらに振り向いた。あー、ミッション失敗だ。
「この人がリサに悪戯をしようとしていたから」
「はぁ、湊先輩。リサ先輩の背中見てください」
「背中?」
「多分、すぐ分かりますから」
「………」
何言ってるんだ、こいつ?みたいな目を向けられて、それでもゆっくりとリサ先輩の背中に回り込む。背中に回ってすぐに気付いたようで、目を白黒させて思いっきり後退りした。
「!?!?」
「どうしたの、友希那?!」
こちらへ背中を向けてくれた。蜘蛛の足が肩につく本当にギリギリだった。
手早く掴んで、投げ捨てる。
「ちょ、どうしたの!?」
「リサ先輩の背中に蜘蛛が────」
「うそ!?どこ!?」
「そこの地面に」
わしゃわしゃと八本足を動かして、電柱の影に歩いていく。
「そんなに大きいのついてたの!?」
驚いて、湊先輩同様思いっきり後退るが、やや踵が高い靴だったせいで後ろにパランスを崩してしまった。寸前で、湊先輩が抱き止めたおかげで転びはしなかった。
「リサ先輩に気付かれる前に取りたかったんですけど、邪魔されまして」
「仕方ないじゃない。どう見ても不審者にしか見えなかったんだもの」
さっきの醜態なんて感じさせない凛とした態度だ。切り替え早いな。
湊先輩にくっついて上手く立てないリサ先輩に手でも貸そうと近付いたところ、素早く体勢を立て直し、後ろに三歩下がる。
「?」
一歩前に出れば、一歩後退する。
二歩前に出れば、ニ歩後退する。
「なんで距離取るんですか?」
「え、えーと、感謝はしてるんだけど、その手でこっちに来ないでくれないかなー、なんて?」
「………」
「無言でにじりよってこないで!?」
「いや、俺もあのサイズの蜘蛛掴むの抵抗があったのに、終わってからこの仕打ちはあんまりだなーって」
スタスタスタ。俺が前進する。
タタタタタタ。リサ先輩が後退する。
タッタッタッ。湊先輩が小走りでリサ先輩についていく。
傍から見たら、すごい滑稽な図だろう。
「謝るから!謝るから!」
その言葉にピタリと止まる。それに合わせて、適度な距離を保ったままリサ先輩も止まる。
俺が少し笑いながら近付けば、嫌な予感でもしたのか、袋を湊先輩に預けて、等速度で距離を取る。
「仲直りに握手でもしましょうか?」
…………バッ!
言葉を聞いてすぐに身を翻して一気に駆けた。靴のハンデなんてものともしない走りだ。あとを追いかける。こちらは本が数冊入ったビニールを下げてるので、あまり速度が出ないが、着かず離れずという一番嫌な距離を保てている。
────あっ、紗夜、助けてー!!
────何事ですか!?
補習はモカの出ない作者の趣味と思ってください。
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