ガヤガヤと音を立てながら人の波が揺れ動く。広めの道の両端には屋台が並んでいて、炭火焼きの香ばしい匂いが運ばれてくる。
夏の風物詩の一つ、夏祭りだ。
毎年開催されているのだが、細かい日程は覚えていなかった。だから、今年もいつの間にか過ぎてるだろうと思ったのだが、家にやって来た上原とモカにより連れ出された。
連れ出した本人達はというと。
「次、あれ食べたい!」
「ちょ、ひまり、引っ張らないで」
「ひーちゃん、全部食べたら太るよー?」
「うっ」
「私も食べたいから、半分分けてくれるかな?」
「つ~ぐ~!」
ものすごい満喫していた。毎年来ているとここに来るまでに話していたのに、まるで初めて来たように目を輝かせて、屋台を巡っていく。
そんな上原に引っ張られる美竹。もう毎年のことなんだろう、上原の行動に仕方ないといった顔をしながら、引っ張られることを許容している。
モカはモカで、祭りを楽しんでいるようで、たこ焼きとフランクフルトのプラスチック容器が入ったビニール袋をぶら下げている。
つぐみは、上原と食べ物を共有したりしている。さっきみたいなやり取りも一回や二回じゃない。
ちなみに宇田川は太鼓を叩くらしく、その準備のためここにはいない。
手近な屋台で唐揚げを買ってから前を見れば、上原達も少し前の屋台でりんご飴を買っているようだった。髪が目立つ色のお陰ですぐに見つかるので楽だ。ただ、もう一人上原の近くに目立ちそうな髪色の奴がいない。
「ツッキー、ツッキー」
くいっ、と二回袖を引っ張られる。向こうに行かずに待っていたのか、もぐもぐとたこ焼きを頬張っているモカ。食べやすい温度に下がったようで、冷まさずに食べている。
「待ってなくても良かったんだぞ?」
「いいからいいからー。お一ついかがー?」
「いいのか?」
「どーぞー」
差し出された爪楊枝の先端にはたこ焼きが刺さっていた。
「どうも」
たこ焼きを咥え、口に入れる。程よい熱さまで冷まされていて外側は少し柔らかくなっていたが。
「美味しいー?」
「ん、美味い」
飲み込んでから、爪楊枝に唐揚げを一つ突き刺して、モカに差し出す。唐揚げの入ったカップから伝わる熱は大したものではないため、冷ます必要もないだろう。
「お返しにどうぞ」
「いただきまーす」
前から思っていたが、モカは一口が大きい。そこそこの大きさだったのだが、一口でパクリといった。かりっといい音がした。
「んー、ふぁくふぁく〜」
「感想は食べ終わってからでいいから」
モグモグモグ、ゴクン。という効果音が聞こえた気がした。見てて気持ちのいい食べ方だ。
「サクサク美味し〜」
「それは良かった」
かりっとした衣を押し潰しながら味わう。うん、美味い。
………………
…………
……
道の端に置かれたベンチで、各々が買った食べ物をシェアしたりしながら過ごしていると、明らかに人の流れが一方向に偏ってきた。
スマホを取り出して時刻を見ると、太鼓が始まる五分前。
「そろそろ行くか」
「そうだね!」
「人多いね。はぐれちゃいそう」
「大丈夫だよ、つぐ!こうすれば」
言って上原が少し強引に美竹の手を取る。
「ちょ、ひまり」
「流石に邪魔にならないか?」
「モカと望月くんは二人ね」
「前と後ろではぐれるだろ」
「そこは………頑張って!」
パチン、とウインクしてくる。
「上原の腕、関節極めていいか?」
「ダメ!ほら、行くよ」
つぐみの手も掴み取り、人混みの中に溶け込んでいった。
「行きますかー」
右手にするりとモカの左手が絡みつく。
「放してはもらえないでしょうか?」
「あたしが一人になってもいいのー?」
「その時は迷子放送かけてやるから安心しろ」
「ツッキー、ひどーい」
ていっ、と握りこまれるが、大した握力ではない。全体的に柔らかいが、指先だけが固い。
「ギタリストの手だな」
「固いでしょー?女の子の手じゃないよねー」
「確かに女の子の手じゃないけど、いいんじゃないか。頑張ってる人の手って感じで」
努力をひけらかすことのないモカの、隠しようのない努力の証。才能はあるんだろうけど、努力もしてるであろうことが伺える。
「嬉しいこと言ってくれますなー」
僅かに声が弾んでる。繋いだ手が僅かに熱くなった気がした。
「ツッキーもギター始めてみたらー?」
「機会があればな」
「それはやらないよねー?」
「さあ?気が向いたらやるかもな」
「あたしが教えてあげるよー。授業料はやまぶきベーカリーのパンねー」
手は繋いだまま、雑踏の中を行く。幼馴染ズと合流するまで、繋いだ手と他愛ない話が途切れることはなかった。
次の話のネタ(書けるかは分からない)
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