意外に乙女なモカちゃんが送る青春劇   作:GRAENA

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十四時間目

ガヤガヤと音を立てながら人の波が揺れ動く。広めの道の両端には屋台が並んでいて、炭火焼きの香ばしい匂いが運ばれてくる。

 

夏の風物詩の一つ、夏祭りだ。

 

毎年開催されているのだが、細かい日程は覚えていなかった。だから、今年もいつの間にか過ぎてるだろうと思ったのだが、家にやって来た上原とモカにより連れ出された。

 

連れ出した本人達はというと。

 

「次、あれ食べたい!」

「ちょ、ひまり、引っ張らないで」

「ひーちゃん、全部食べたら太るよー?」

「うっ」

「私も食べたいから、半分分けてくれるかな?」

「つ~ぐ~!」

 

ものすごい満喫していた。毎年来ているとここに来るまでに話していたのに、まるで初めて来たように目を輝かせて、屋台を巡っていく。

 

そんな上原に引っ張られる美竹。もう毎年のことなんだろう、上原の行動に仕方ないといった顔をしながら、引っ張られることを許容している。

 

モカはモカで、祭りを楽しんでいるようで、たこ焼きとフランクフルトのプラスチック容器が入ったビニール袋をぶら下げている。

 

つぐみは、上原と食べ物を共有したりしている。さっきみたいなやり取りも一回や二回じゃない。

 

ちなみに宇田川は太鼓を叩くらしく、その準備のためここにはいない。

 

手近な屋台で唐揚げを買ってから前を見れば、上原達も少し前の屋台でりんご飴を買っているようだった。髪が目立つ色のお陰ですぐに見つかるので楽だ。ただ、もう一人上原の近くに目立ちそうな髪色の奴がいない。

 

「ツッキー、ツッキー」

 

くいっ、と二回袖を引っ張られる。向こうに行かずに待っていたのか、もぐもぐとたこ焼きを頬張っているモカ。食べやすい温度に下がったようで、冷まさずに食べている。

 

「待ってなくても良かったんだぞ?」

「いいからいいからー。お一ついかがー?」

「いいのか?」

「どーぞー」

 

差し出された爪楊枝の先端にはたこ焼きが刺さっていた。

 

「どうも」

 

たこ焼きを咥え、口に入れる。程よい熱さまで冷まされていて外側は少し柔らかくなっていたが。

 

「美味しいー?」

「ん、美味い」

 

飲み込んでから、爪楊枝に唐揚げを一つ突き刺して、モカに差し出す。唐揚げの入ったカップから伝わる熱は大したものではないため、冷ます必要もないだろう。

 

「お返しにどうぞ」

「いただきまーす」

 

前から思っていたが、モカは一口が大きい。そこそこの大きさだったのだが、一口でパクリといった。かりっといい音がした。

 

「んー、ふぁくふぁく〜」

「感想は食べ終わってからでいいから」

 

モグモグモグ、ゴクン。という効果音が聞こえた気がした。見てて気持ちのいい食べ方だ。

 

「サクサク美味し〜」

「それは良かった」

 

かりっとした衣を押し潰しながら味わう。うん、美味い。

 

 

………………

…………

……

 

 

 

道の端に置かれたベンチで、各々が買った食べ物をシェアしたりしながら過ごしていると、明らかに人の流れが一方向に偏ってきた。

 

スマホを取り出して時刻を見ると、太鼓が始まる五分前。

 

「そろそろ行くか」

「そうだね!」

「人多いね。はぐれちゃいそう」

「大丈夫だよ、つぐ!こうすれば」

 

言って上原が少し強引に美竹の手を取る。

 

「ちょ、ひまり」

「流石に邪魔にならないか?」

「モカと望月くんは二人ね」

「前と後ろではぐれるだろ」

「そこは………頑張って!」

 

パチン、とウインクしてくる。

 

「上原の腕、関節極めていいか?」

「ダメ!ほら、行くよ」

 

つぐみの手も掴み取り、人混みの中に溶け込んでいった。

 

「行きますかー」

 

右手にするりとモカの左手が絡みつく。

 

「放してはもらえないでしょうか?」

「あたしが一人になってもいいのー?」

「その時は迷子放送かけてやるから安心しろ」

「ツッキー、ひどーい」

 

ていっ、と握りこまれるが、大した握力ではない。全体的に柔らかいが、指先だけが固い。

 

「ギタリストの手だな」

「固いでしょー?女の子の手じゃないよねー」

「確かに女の子の手じゃないけど、いいんじゃないか。頑張ってる人の手って感じで」

 

努力をひけらかすことのないモカの、隠しようのない努力の証。才能はあるんだろうけど、努力もしてるであろうことが伺える。

 

「嬉しいこと言ってくれますなー」

 

僅かに声が弾んでる。繋いだ手が僅かに熱くなった気がした。

 

「ツッキーもギター始めてみたらー?」

「機会があればな」

「それはやらないよねー?」

「さあ?気が向いたらやるかもな」

「あたしが教えてあげるよー。授業料はやまぶきベーカリーのパンねー」

 

手は繋いだまま、雑踏の中を行く。幼馴染ズと合流するまで、繋いだ手と他愛ない話が途切れることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の話のネタ(書けるかは分からない)

  • 学校生活
  • 日常生活
  • Afterglow絡み
  • デート系
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