落ち着いた店内の雰囲気と、純粋にコーヒーの味が好きで、この店に通っている。
土日のどちらかはそこに行き、コーヒーや軽食などを取るのが俺の日課になっている。
木の扉を開く。来客者を知らせるベルが鳴る。
俺の三大癒しスポットの一つ、羽沢珈琲店。その店の看板娘にして、地上に舞い降りし天使が一人ツグミエルが店奥からトタトタと歩いてくる。
「いらっしゃいませ!」
「おはよう、つぐみ」
「おはよう、望月くん」
俺が来る時間帯にはあまり人がいない。居ても一人か二人ぐらいだ。今日はどれくらいいるかと、店内を見れば、こちらを見て手を振る女の子が一人いた。
暗色系統のアンティークで統一されている羽沢珈琲店では若干浮いているその白髪。つまりは、モカだ。
「席はどこでもいいの?」
「え、えと。モカちゃんとの相席になります」
「たくさん席が余ってるけど?」
「う、うぅ」
困ったような声を上げる。モカからのオーダーなのか。ここで拒否すると、つぐみにダメージが行きそうなので素直に頷いておく。
「モカちゃんと相席できて嬉しいー?」
会って早々この言葉を言えるモカちゃんは中々の逸材だと思う。
「確かに美少女モカちゃんとお茶できるなんて光栄だな」
メニュー表を手に取って、今日は何を頼もうか考える。
「ふっふっふっー。ツッキーもようやくモカちゃんの可愛さが分かったんだねー」
頼むものを決めたので、メニュー表を閉じる。
「つぐみー」
「はい!ただいま」
呼ぶと奥からすぐに声が返ってくる。知り合いなんだからそこまで急がなくてもいいのにと思いながら、そこが彼女のいいところだと再確認する。
「キリマンジャロ一つとサンドイッチお願い。」
「はい!かしこまりました!」
ペコリと頭を下げてから下がっていった。
「ところでモカ、今何か言った?」
「………何も言ってませんよー」
唇を尖らせるモカ。珍しいものを見たな。そんなにボケを流されたのが気に食わなかったのだろうか。
「どうぞ」
「ありがとう」
元気一杯のつぐみが、コーヒーとサンドイッチをテーブルに置き、にこりと微笑んでから、下がっていった。
「…………」
「あっ、そうだ。モカ」
「何ですかー」
不機嫌丸出しで、言葉にも少しだけトゲが混ざっている。その意地らしい姿に少しだけ笑ってしまう。それに気付いたモカがさらに不機嫌になる。
「モカ」
「…………」
もう一度名前を呼ぶと、だから何?とでも言いたげにこちらを見てくる。恥ずかしいという気持ちを圧し殺して、言葉を紡ぐ。
「モカちゃんの可愛さは十分わかってるよ」
さすがのモカも驚いたようで、白髪から覗く耳が真っ赤に染まっている。
にやけそうになる頬を引き締めて、コーヒーを口に含む。
「うん。やっぱり美味しいな。つぐみ、毎日俺のコーヒーを作ってくれ」
「え?!」
「って、痛い!モカ、蹴るな!」
テーブル下でモカから脛を抉るような蹴りが放たれた。大したことない脚力でもクリティカルヒットの為、ダメージが1.5倍で入った。
そのあと、サンドイッチ7割の損害を出すことで、モカの機嫌は保たれた。意外と安いと思った俺は悪くないと思う。
望月蒼は一言余計である。
次の話のネタ(書けるかは分からない)
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