インフィニット・デカレンジャー~クールで熱い戦士たち~通常形式版 作:憲彦
今日はこの世界に来た2人の転生者の事だ。本編の設定集擬きを読んでくれた方なら分かると思うが、デカマスター、久我司と織斑家次男の織斑千秋は転生者だ。だが転生直後の記憶や前世の記憶は全く持っていない。いや、失っていると言った方が合っているだろう。これから見て貰う話を読めば、それも納得して貰える筈だ。
「今日は2人ですね。この2人の死因は?」
「大学生の方は周りの環境に適合することが出来ずに自殺。過去には趣味や好きなものが原因で虐めを受けていたようだ。それもあってか、大学に入って1年目の19歳で死亡。もう片方の会社員だった方は、就職した会社がブラック企業でな。全うな給料や休みが貰えずに30歳で死亡。しかし根っからの真面目な性格で、先のため先のためと働き過労死した」
「うわぁ~……またこの死因ですか。最近多いですよね~。我々でなんとか出来ないんですか?」
「……私たち神にはそれは出来ないからな。我々が出来るのは見守ることだけだ。あぁ……アニメみたいに破壊神が存在すればな~」
とある建物の中。そこで2人の男が話し合っていた。話から出てきたワードにもあるように、彼らは神だ。死んだ人間の魂を転生させる役職につている神。だが最近は寿命を迎えて死を迎える人間よりも、この2人が言っている人物の様な死が最も多い。神々の間でもかなりの問題になってはいるものの、神には直接手を下す権利はない。「現世の事は現世で」がルールだ。彼らには何もできないのだ。
「この2人、元の世界に転生させても意味無さそうですね」
「ん~……仕方無い。最近魂が減少している世界に転生させよう。小説から生れた世界を担当している神から、ISと言うラノベの世界で魂が減少していると言う報告があった。その世界に転生してもらおう」
「分かりました。では、異世界転生の原則に乗っ取り、特典を与えて転生して貰います」
「あぁ。その方向で頼む。だが、忘れるなよ?その世界の主人公と近しい関係にするなら兎も角、主人公にはさせるなよ?別の世界が生まれる原因になるから」
「分かりました」
会話が終わると、若い方の男が初老の男を置いて部屋に入っていく。その部屋には2人の男が居て、片方は椅子に座っており、もう片方は部屋中をうろうろしている。彼らが今回転生する2人なのだろう。
「千秋さん。お座りください。これから転生についての話をするので」
「あ?誰だお前?」
「転生の話をするんですから。人を転生させられるのは神だけですよ?早く座ってください」
千秋と呼ばれた人間は一瞬驚いた顔をするが、転生と聞くと目の色を変えて指示にしたがった。逆に最初から椅子に座っていた男は、不審そうな顔をして神を睨んでいる。
「さてと。ではこれからお2人には転生についてのお話を―」
「あの。ドッキリなら止めて貰えますか?早く行かないと会社に遅刻するんですが」
「死んだのに会社に行くんですか?行っても構いませんが、誰にも気付かれませんよ?」
「さっきから死んだ死んだ言ってますけど、ここに体があって話しているのに失礼じゃないですか?」
「はぁ……信用してくれませんか……では、お2人の死因をご説明します。まず千秋さん。貴方は周りに馴染むことが出来ず、過去のいじめの事もあり19歳で自殺。司さんはブラック企業での仕事が原因で今日の出勤する直前に過労死。そろそろ2人とも遺体が発見される頃です」
これを言われ、納得出来なかった司も、ウキウキしている千秋も死んだ瞬間を思い出し、全てに納得が行ったような顔をしている。その後は、5分程神から説明を受けて、特典の手続きに入る。
「転生する世界はラノベのIS。と言う小説の世界です。転生者と言うことで、我々が常に存在を確認できるように、原作とは関わって貰います。特典に関する制限はありませんので、お好きに選んでください。選び終わったら、あちらのドアから転生をして貰います」
「IS!?マジで!?よっしゃ!!」
「IS?」
ドアを指差されながら説明をした。転生後の行き先を聞くと、千秋は跳び跳ねて喜び、反対に司は何だそれ?と言う顔をしている。全く知らないようだ。
「何だよお前!知らないのか?あんなに主人公が得をして、二次創作で転生者が輝ける世界は無いんだぜ!ハーレム築き放題の世界だぞ!」
「二次創作……ハーレム……なんだそれ?」
「何だよ。本当に知らないのかよ」
「あぁ。その手の物には関わる事が無かったからな。アニメとかラノベとかは読まなかったし」
「…なんだ。お前もそっち側の人間かよ……」
何故かそれを聞いた瞬間、千秋の顔が暗くなった。理由は分からんがな。だが特典の事を考え始めたのか、顔色はすぐに戻った。
「よし!まずはISの適正だ!ランクはAから!上限は無しで頼む!後は高い身体能力と頭脳。整った容姿!専用機には白式をくれ!機体のスペックは上げてくれよ?後はそれを扱える能力だ!!」
「(多いな……まぁ良いか)分かりました。では、渡しますね。司さんの方は―」
「あ、貰う前に白式を使わせてくれ!慣らしておきたいからよ!当然、ファーストシフトした状態でな!」
「……分かりました」
司に特典の事を聞こうとした神を無視して、自分の特典になる白式を動かし始めた。先に渡された特典である身体能力や頭脳、扱う為の能力の影響か、初心者の動きのそれとは全く違う。
(こんなに与えて良かったのだろうか……)
確かに悩むところだ。しかも前世での虐めの過去。それの原因となった物。それら全てを考えると、少し不安になる。
「ハハハ!ハハハハハハハ!!やったぜ!これで!!おい神!もう1つ追加だ!俺ををIS世界の主人公にしろ!!」
「は!?何いってるんですか!?」
「良いだろうがそのくらいよ。その紙に書くだけだろ?」
「そんなこと出来る訳無いでしょ!」
「何でだよ!良いだろ!!」
「そんなことをしたら、世界その物がおかしくなります!考えてみて下さい!元々その世界にとっての異物が転生者として入るんですよ!?それだけでその世界にどれ程の負担がかかると思ってるんですか!?」
「んな事はどうでも良いんだよ!!俺だけが幸せになれば良いんだよ!!」
神の不安が的中した。神は必死に止めようとする。だが、完全に聞く気は無いようだ。
「おい。落ち着け。この人の言い分も考えろ。他人の幸せを奪ってまで幸せを掴んでも意味無いだろ?」
「うるせー!お前に分かるか!?好きなものや趣味で周りから気持ち悪がられて、虐めの標的になって、挙げ句の果てに友だちだと思ってた連中も一緒になって虐めに加担して。過去がこれだったんだ!少しくらい幸せになっても良いだろうが!!」
「うわぁ!!」
司が落ち着かせるために話をしようとしたが、完全に頭に血が上っており、全く聞かない。邪魔をしようとする司を投げ飛ばし、雪片を展開して神に近付いていく。
「退け。お前が書かないんなら、俺が書く」
「ッ!?」
雪片を神に向けながら、退くように言うが、そんなことは出来ないため退こうとしない。与えてしまった特典を取り上げれば良いかもしれないが、与えてしまったものは無理だ。その為、特典を記入する書類を必死で守るしかない。
「はぁ……零落白夜」
「グワァァァァ!!」
神を切り捨てると、書類に主人公と記入して、ドアを潜っていった。
「おい!大丈夫か!?」
「は、早く!私の事は良いから!彼を止めてください!じゃないと大変なことに!!」
傷が酷いが、神は自分よりも千秋を止めることを優先して、司に止めるよう頼んだ。
「これを持っていって……!貴方の為に用意した特典です!早く!!少しだけ時間を稼ぎますから!!」
「うわ!?」
黒い手帳の様な物と刀を渡されると、扉まで飛ばされてしまった。勢いそのままに扉を潜り、千秋の後を追い掛けていく。その瞬間、神は糸が切れたように床に倒れてしまった。
「待てェェェ!!!」
「チッ。アイツか」
後ろから来る司を見ると、方向転換して雪片を使って司を斬ろうとする。だが、それを神に渡された刀で受け止め、千秋の斬撃を弾いた。
「ディーソードベガ……なんで、なんでお前がそれを持ってるんだ!!!あぁ!!?」
「グッ!」
物凄い力で雪片を降り下ろされ、受け止めきる事が出来ずに仰け反ってしまった。それと同時に転生先の世界に着いたのか、アニメとかで良く目にするワープ空間の様なものを抜け出し、2人は地面に立っていた。
「なんで!なんで!なんで!なんで!!!なんで!お前がその力を貰うんだ!!なんでISを超えた力を手にしてんだよ!!!なんでお前にまで邪魔されなくちゃなんないんだ!!!!!」
「落ち着け!!戦いに来たんじゃない!話を聞け!」
「黙れぇぇぇぇぇぇ!!!!」
激情し、感情に任せて雪片を滅茶苦茶に振るう。司は生身の状態でそれを全て受け流している。どうやら、あの神が飛ばした一瞬の内に何か力を与えたのだろう。だが、底上げされたとは言え生身の人間。ISに勝てるはずがない。しだいに受け流すことが出来なくなり、真正面から攻撃を受けて吹っ飛ばされてしまった。
「はぁはぁ……グッ!」
「戦いに来たんじゃないと言いながら、何故立ち上がる?結局はお前も戦いを求めてるんだろ?素直になれよ。良く言うだろ?辛いって漢字に、他人から盗んだ棒を一本足すと幸せになるって。他人の幸せを奪って幸せになるのは普通の事なんだよ。何も間違っちゃいない。誰もがする当然の事なんだよ!」
「馬鹿な事を言うな!!幸せって言うのは、他者との関係があって成り立つ物だ!お前の言う幸せは、幸せじゃないだろ!!虚しさが残るだけだぞ……?」
この言葉を聞くと、何かが頭に来たようだ。座り込んでいる司の首を掴み、無理矢理自分と同じ目線の場所まで持ち上げる。
「他者との関係?あぁそうか。じゃあ俺を見捨てて虐めに加担した連中は幸せだろうな!!俺を盾にして自分達は虐められずに済んだんだから。そりゃあ幸せだろうな?お前の言ってることは綺麗事でしかないんだよ!説得力の欠片もない詭弁でしかないんだよ!!」
「グワァァァ!!!」
巨大な腕に掴まれたまま、近くの林に向かって投げ飛ばされた。感情に任せて全力で投げたのか、司は木々を破壊しながら飛んでいった。
「所詮裏切られる事を経験した事が無いヤツが言う台詞だ。俺がそれを信用すると思ったのか!?」
「……経験なら、あるさ。生まれてこの方、裏切られてばっかりだ。小さい頃からの幼馴染みにも、同じクラスになったヤツからも、担任をしていた教師からも、同僚からも。裏切られずに生きることなんて、誰にも出来やしないんだよ!必ずどこかで誰かに裏切られる。それを甘んじて受け入れて、進んでいくしか無いんだよ!!」
ディーソードベガを握り立ち上がると、再び千秋に向かって走り出す。司の斬撃は、ISをまとっている千秋からしたら簡単に受け止められる。ほとんど無意味な行動に等しい。
「それはお前の考えであって俺の考えではない。……話を変えようか。何故お前はここにいるんだ?俺を止めるためと言っていたが、見ず知らずのヤツに頼まれて、見ず知らずのヤツの為に命を懸ける。なんのために戦ってるんだ?ボロボロになりながら」
「何故……何故……」
千秋に投げ掛けられた1つの質問。それを聞いた瞬間、司の腕から力が無くなり、ふらつきながら千秋から離れていく。
(何故戦ってるんだ?頼まれたから?イヤ。素性も知らん相手に押し付けられただけだ。誰の為に?全く関わりの無い人に命を懸けるのか?世界のため?俺はただの人間だ……何故……)
「何故……」
「ふん。理由もなく感情で動いてたみたいだな。そんなんで良く俺に偉そうに説教ができたな」
戦う理由が無いことに気付き、感情で動いていた事に気付く。頭の中が何故で支配され、足からも力が抜けて木に凭れ懸かる様に座り込んでしまった。
(なんのために?人を助ける?イヤ。そんな大層な能力俺には無い。コイツを止めるため?同じ世界に転生するだけで関わりなんか無い。頼まれた?。一方的に押し付けられただけ。力を渡されたから?訳の分からん力を無理矢理渡されて人間から外れただけだ……じゃあ何のために?)
「理由が無きゃ戦えないなら、俺の邪魔をせずに死んでいけ!!」
完全に意気消沈している司に近付き、雪片を容赦なく降り下ろす。だが、いつまで経っても斬ったと言う感覚が伝わってこない。何かに押さえ付けられてる様に刃が進まず、斬れないのだ。
「確かに何の為に戦ってるんだろうな~。お前の言うように、俺には戦う理由がない。お前を止める資格も、お前の幸せを奪う資格もない。どっかの仮面ライダーみたいに、人を愛しているからと言うわけでもない。過去に大切なものを失って、もう失わない為に戦う訳じゃない……お前の言っている事の方が、俺よりも遥かに正しいさ」
「そうか……ならここで大人しく―」
「でもな!俺は目の前で、誰かが悲しむのを黙って見てられるほど、メンタル硬くないんだよ。死にそうになってるヤツが目の前にいると、敵でも留目をさせるほど思い切りが良くないんだよ。だから、俺はお前を止める!俺の目の前で、1人でも泣くヤツを減らすために!それがお前を泣かせる結果であっても!」
「この……クソが!!」
「はぁ!!」
「グワ!?」
再び雪片を降り下ろす為に大上段で構えるが、そこにディーソードベガで光弾を放ち、千秋の事を退ける。
「エマージェンシー!デカマスター!!」
そう叫びながら手帳を開くと、司の体の表面に微粒子が集り体に定着。徐々に形を形成してくる。
「フェイスオン!!」
それは徐々にスーツとなっていき、司の体を包んだ。
「百鬼夜行をぶった斬る!地獄の番犬!!デカマスター!!」
「やはりデカマスターの力!!なんで、なんでお前が優遇されんだ!!」
デカマスターに変身した司を目にすると、その顔は憎悪に歪み、怒りに任せて司へと突っ込んでいく。だが冷静に受け流して、体勢を崩したところに一撃一撃を正確に入れていく。
「グッ!なんで」
「ディヤ!」
「なんで!」
「ハァ!」
「なんで!なんで!なんで!!」
必死になって攻撃を入れる。だがそれは全部受け流され、避けられ、自分の攻撃は一向に入らない。それに対して司の攻撃。さっきとはまるで動きが違う。余分な動きは無く、最低限の動きで攻撃を避け、獣の様に荒くも正確な一撃を叩き込んでくる。この状況に、千秋の頭の中がなんでで支配されてしまう。さっきとは真逆だ。
「1つ伝え忘れたが、俺はお前を泣かせるだけで終わらせるつもりはない」
「何だと!?」
「簡単に見捨てられない性分でな。お前がどんな人間になろうとも、お前も俺は救うつもりだ。心の底から幸せだと言えるようにな」
「そんなこと……そんなこと出来る訳無いだろ!!お前の言っていることは綺麗事でしかない!お前のやろうとしていることは、お前が満足するための偽善でしかない!!雪片弐型!!」
「偽善でも善である事に変わりはない!ディーソードベガ!!」
恐らく、2人の攻撃はこれが最後になるだろう。千秋は残っているエネルギー全部を零落白夜に回し、司は最後の一撃に全てを懸けている。
「零落、白夜!!!」
「ベガスラァァァッシュ!!!」
2人の最大の攻撃がぶつかり合う。その瞬間、辺りは強い光に飲み込まれ、2人が戦っていた林はその部分だけがポッかりと無くなっていた。光が晴れると千秋はその場に居なくなっており、白式も消えていた。司は容姿が中学生位までに幼くなって倒れている。恐らく神がやった時間稼ぎが終わったのだろう。
「?こんなところに子供が……」
通りがかった男が司を抱えあげると、どこかへと連れていってしまった。そして司が次に目覚めたのが、道場の様な場所。身体中に手当てされた跡があり、服も別のものになっていた。
「目が覚めましたか。どうです?体の具合は」
「はぁ……悪くはありませんが」
「そうか。それは良かった。3日も眠ってたんですよ?一体何があったんですか?」
「3日も?……一体何が……と言うか、俺は誰なんだ?」
「え?失礼ですが名前は?」
「名前……思い出せない。俺は、俺は一体誰なんだ!?一体何者なんだ!?」
司は何も覚えていなかった。辛うじてポケットに入っていたハンカチに名前が書いてあったので、それだけは判明したが、それ以外の事は何も覚えていなかった。
それからは仕方無いと言うことになり、この道場に住み込みで習いに来ている教え子となった。剣術道場だったので、司はここで剣術を研き、みるみる上達してった。だがそれだけではなく、拾ってくれたこの夫婦に、力は何たるか、優しさとは何たるかを教えられ、心身ともに強くなることができた。
「師匠。今日もありがとうございました」
「今日も頑張りましたね。ゆっくりと体を休めて、明日に備えなさい」
「はい。今後とも、よろしくお願いします」
このままプロローグもよろしくお願いします!