黒歌が可愛くてつい始めた話。   作:楯樰

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討伐の日

 ――……俺の持つ神器については流石に悪魔の上層部でも分からなかったようで。

 とりあえず「大量の神器使いが魔王の妹の眷属に入った」とだけされたようだ。

 

 それを知らされた後日。

 

「いい加減になさいイッセー!」

「嫌です! 俺は――ッ!」

「分かってるの? 私は貴方の主よ!?」

「……ならわかりました。もういいです……俺を眷属からはずして下さい」

「――それ、貴方本気で言っているの?」

 

 ……。

 …………なんだろうか、このカオスは。

 

 ……今日は掃除当番の日で遅くなり、必然的にオカルト研究部に来るのが遅れた。

 それから黒歌との合流に遅れたのだけど……あ、コレは余談だ。

 

 とりあえずオカルト研究部についてみると、ションボリとした様子で項垂れる未来の義妹。

 苦笑いのオカルト研究部では空気の薄い木場君。

 楽しそうに眺めるドSの朱乃さん。

 ……そして口論を繰り広げる一誠にリアス部長。

 

 原因は――。

 

「菓子如きで喧嘩するなよっ!」

 

 二人の手に握られている菓子であった。

 確か昼休憩の時、俺から小猫ちゃんに渡した黒歌が数日頑張って作った傑作。

 事の発端はどうやら小猫ちゃんがお裾分けしたせいだと予測。

 

「……ぬらせんぱい。おかし……」

「だってイッセーが……」

「だって部長が……」

「喧しい! とりあえず、しろ……じゃなかった。小猫ちゃんに返しなさい! 俺が全員分作ってやるから……」

 

 二時間後。

 

「……美味しいです、先輩」

「ははは……これはこれは。部長と一誠君が喧嘩するのも分かった気がしますね」

「ごめんなさい奴良さん、俺がバカでした」

「ごめんなさい小猫。あんまり美味しかったから……」

「……ちょっと自信を無くしますわ……コレ」

 

 ……そんなこともあって、翌日から新入部員の白龍皇兼赤龍帝の俺は何やら菓子係に任命されていた。

 

 -------------------------

 

 黒歌の存在がなんとなく部活の面々に認知されるようになって数日。

 何時ものように意気揚々と俺がお菓子を作っている時。

 

 ――はぐれ悪魔バイサー。

 

 オカルト研究部、我らが部長リアス・グレモリーの元に討伐の依頼が大公から下りた。

 

「此処に居るんですか?」

「えぇ。なんでも人間を誘き寄せて食っているのだそうです」

「……うへぇ」

 

 廃墟近くに転移してきたオカルト研究部もとい、グレモリー眷属の兵士である兵藤……と俺。

 ――そう、無事俺は悪魔になる事が出来たのだ。

 

 兵藤の転生に掛かった兵士の変異の駒は四つ。

 そして同じく俺も四つ。

 最低でも神滅具二つに、悪魔をも回復させ転生悪魔を人間に戻せるほど強力な価値のある神器一つを持つ俺。

 ……兵藤とは桁違いに転生コストが掛かるはずが、変異の駒とはいえ同じ個数で転生出来たのだ。いつものように『ずらして』。

 当然その場に居る、姿を偽っている黒猫の悪魔を除いて約全員が驚いた。

 しかし「変異の駒なら仕方無い」と納得するあたり変異の駒の価値は凄いのだろう。

 

 ……いや、それでいいのか転生悪魔。

 もうちょっと不思議に思ってもいいんじゃないの?

 

 そんなイレギュラーな転生をした兵士である俺と、同じく兵士の兵藤は、眷属の役割を見せて貰うためにバイサー討伐について来ていた。

 

「へー……廃墟と言うと何やってたんだろ、ここ」

「……さぁ。……ただもう来ましたね」

 

 特定の誰かと話をするわけでもなく呟き、それに返してくれた小猫ちゃん。

 

「美味しそうな臭いがするぞ。不味そうな臭いもするぞ。甘いのかな、苦いのかな」

「美人の生おっぱい!? ……いや、でもあれは残念だ……」

 

 そしてケタケタと笑いながら出てきたはぐれ悪魔バイサー。

 胸部に反応していた兵藤の言う通りその姿は美しい上半身と完全に異形の下半身。

 俺は、そんなはぐれ悪魔をみて「悲しい」と思った。

 

 ……悪魔と関わらなければ、きっとまともな人生を送れていたのだろう。

 それは未だ人としての面影が残る上半身が綺麗なことからわかる。

 美人と言うだけでも選択肢は平凡な女性より多かったろう。

 いや、あの容姿があったからこそなのかもしれない……。

 

 ……あのはぐれ悪魔に何があったのかは分からない。

 無理矢理悪魔にされたのか、それとも自分の意思でなのか。

 

 もしくはあのはぐれ悪魔が「はぐれ悪魔」になったのは運命だったのかもしれない。

 

 だけどタダ俺はそれが無性に。

 ……無性にその碌でもない運命が疎ましく思った。

 

「はぐれ悪魔のバイサー。アナタを討伐しにきたわよ」

「小娘が!その体を紅い髪と同じように血で染めてくれるわァアアア!!」

 

 そうしてバイサーが襲い掛かってきた。

 それに合わせ木場が『騎士』力で疾走し斬りつける。

 

「佑斗の役割は『騎士』。スピードに特化した駒よ」

 

 腕を切り裂かれ、今度は美しかった上半身をも醜悪な物に変えて、小猫ちゃんをその獣の足で踏みつける。

 

「小猫ちゃん!?」

「安心して、イッセー。小猫は『戦車』よ……圧倒的な防御力と攻撃力が特徴ね」

 

 ……が、『戦車』である彼女はその頑強さ故に踏み潰される事はなく、逆に圧倒的なまでの力で足を掴み振り回し、床に叩き付けた。

 

「最後に……朱乃!」

「あらあら、うふふ……どうしましょうか?」

 

 そこへ『女王』の朱乃さんが魔力を雷に変換しバイサーに落す……恍惚とした表情を浮かべて。

 

「朱乃は『女王』の駒。『騎士』『戦車』『僧侶』三つの駒の特性を持つわ……それから朱乃は究極のSね」

 

 ……やっぱり苦手だ。

 

「だけど仲間には優しいから……」

 

 なんて部長さんが後ろにいる一誠と俺に言ってるけど安心出来ないからね?

 ……わかってんだろうか。

 分かって無いんだろうな。……露出狂だし。

 

「さて、バイサー。……言い残したい事は?」

「……殺せ」

 

 そうして廃墟の中にクレーターを残し、一人のはぐれ悪魔は消えた。

 

 ……。

 

「帰りますよ奴良先輩。……どうしたんですか」

「いや、ね。……はぐれになったら、皆こんな風になるのかと思って、ちょっとね」

 

 先ほど部長の手によって出来たクレーター。

 そこにバイサーがいたという痕跡は一切無い。

 

「……。……そうですか」

 

 きっと小猫……白音ちゃんは思ったのだろう。

 はぐれ悪魔である姉の事を。

 今部室で待っている黒猫の事を。

 

 ……なるほど、バイサーを見て俺が苛々していたのはそういうことか。

 

 くだらない運命を作るのは神か。悪魔か。

 どっちでも良い。

 

 だけど……

 ――そのふざけた運命はぶち壊す。

 

 姉妹が笑って暮らせるように。

 身勝手だけど……自分の為にも。

 

 ――柄にも無くクツクツと感情を高ぶらせながら、兵士だと告げられてショックを受ける兵藤の後を追った。

 

 

 




ありがたや日刊3位。
黒歌さんが好きな人多いのかな、やっぱり。
主人公と同い年設定なので色気あるお姉さんにはならないですね。
……主人公、精神年齢的には随分年上ですけど。

遅れてすみません。
これから随時、感想の返信を行っていきます。
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