「な、なんだったんだ……?」
兵藤が呟いた。
洗面器に着替えを入れて部室の中に入ってきた美少女(?)は物凄い勢いで逃げ出した。
男の娘のギャー君だろう。誤字にあらず。
……知らないフリ知らないフリ。
「さぁ? あ、部長の僧侶じゃない? 居るって言ってたし」
「なるほど。……あんな子も仲間なんすね……ぐへへ」
変態さんの一誠君は誤解しているようだが言わないでおく。
停止教室まで待とう……うん。
『……そろそろ説明してもらおうか
「おまえ酷いな。とりあえず本人から説明して貰うから……出て来いドライグ」
自分の篭手に宿るドライグの精神が「ずれて」兵藤にも見えるようになる。
そして部のテーブルの上に手乗りサイズの半透明の赤龍が現れた。
「……ちっさくないっすか?」
「本来はもっとでかい。ただ、部屋のサイズに合わせて小さくなって貰ってるだけ」
『すまんな相棒。……よう、失礼な変態。あとオレのこと紛いモノ扱いしたオレ』
『……何故外に出られているのか分からんが……赤龍帝は常に一匹。それ以外は紛いモノ……そうだろう? オレと言うならば分かるはずだ』
『あぁ、分かるとも。オレだからな。……たがな、実際にオレは赤龍帝だ。お前と同じくな』
『フン……ならば何故貴様は『白いの』といるんだ』
『……はぁ?』
篭手の宝玉が明滅し声が流れる。
半透明の龍は至極分からないと入った風にその蛇顔を顰(しか)めさせた。
『そりゃ……仲を直したからに決まっているだろう』
「『――は?』」
驚く所は違うが、二人の息は何気に合っている。
「や、まあなんていうのかな……どうやら俺の神器にいる二天龍はこの世界のじゃないらしいんだ」
「――えぇっ!?」『――なんだと!?』
兵藤と向こうのドライグが驚きの声を上げる。
脈絡も無く秘密を話した状態だもんな。
「ただ詳しくは言え無い。時間が来れば話せると思うけど……一応その時まで黙っていてくれたら助かるな」
「……はい」
「じゃ、そっちのドライグが驚いた理由も分からないと思うから……とりあえず兵藤は白龍皇と赤龍帝の関係性についてそのドライグに聞いて勉強してこい」
「どうしてですか?」
さて本題だ。
「――鍛えてやる。……いや、少しだけその神器の使い方教えてやる。あのシスター、助けたいんだろ?」
「……は!? はいっ!」
「というわけでもう今日は帰ろうか。……あんまり長居してたら生徒会長辺りが怒りに来そうだしさ」
そうして、焼いてたマドレーヌを食べて酔っ払ったらしく眠ってしまった黒歌を鞄に入れて部室を出る。
篭手を出して明滅する宝玉に話を聞く兵藤と、しばらく並んで歩いて帰った。
-------------------------
――次の日。
「……ん?」
「――すぅ……」
ベッドの中に黒歌がいた。
な、何をいっているかわからねーと思うが俺も何を言っているか分からない。
頭がどうにかなりs(ry。
よし、落ち着こうか。
「……服は着てる。と言うことは何も無かった?」
「――んん……」
寝返りをうち、彼女の口から寝息が漏れる。
……。
駄目だろ俺。
駄目だ……ちょっと色っぽいとか思ったら。
…………おっと、発育の良い胸が……はっ?!
ちゃっちゃと起きよう。うん。
……きっと間違いだから。これ。
寝ぼけて俺のベッドの中に入ってきただけだから。
「はぁ……」
むなしくなりつつ、兵藤にメールを入れて朝食の用意を始めた。
黒歌さんの赤面を拝みながら朝食を済ませた後。
『――Boost!』
「これで五回目……!」
「よし休憩しようか。……兵藤、感覚は掴めたか?」
「……えぇ。ただヤバイほど疲れますね……」
「ま、二天龍って規格外な力だからな。疲れるのも当然の事さ」
失った体力を『
現在、兵藤と俺は朝の公園に来ていた……コスプレのような赤い篭手を出して。
ただし俺の篭手の方は、現在中の奴は居ない。
機能だけ残してアルビオンと一緒に、未だに悶えてた黒歌さんの所に残してきた。
自由が効くようになって嬉しい、と強面の顔で笑っていたのが印象的だ。
コスプレ、とは言ったものの、実際に人に見られて恥ずかしい事はない。
何せ『公園という区画』を現在時間軸から『ずらしている』のだから。
要はちょっとした『精神と時の部屋』状態なわけだ。
兵藤に言ったら「マジで!?」と敬語が抜けるほど驚いてた。
「? 先輩何してるんすか」
「……いや、ちょっと良いもの見せてやろうと思って」
『――Welsh Blaster!!!』
自分の篭手から機械音が鳴り形状が変わる。
宝玉が手のひらに移動し、篭手の周囲に突き刺さるようにして現れる筒のようなボルトのようなもの。
『MagicalBoost!』
十秒が来て、設定したように魔力だけ倍化する。
すると一つ、腕に刺さる筒のようなモノのウチ一本が「ガチン」という音と共に少し篭手から盛り上がった。
「……??」
「ま、気にすんな。……とりあえず一発で」
「はい?」
斜め上の空に篭手を掲げて。
「……行くぞ?」
一言告げて、――極光が空を埋め尽くした。
「……はぁあああああああ?!」
「こんな事も出来るようになるわけ。神器は『所有者の想いに応える』……つまり『ぼくのかんがえたさいきょうののうりょく』を具現化するものだと思えば良い」
「それって厨二病じゃ……」
「だけどよく考えてみろ。"紅髪の滅殺姫"って渾名。"赤龍帝"っていう呼称。……そもそもが厨二的じゃない?」
「あ」
「だろ?」
「そっすね……っ!」
「笑えば良いと思うよ」
笑いを堪える彼にサムズップ。
思い至ったようにケラケラ笑う兵藤が落ち着いてから。
厨ニ的能力を考える上で慢心しない事、決して驕らないことを教えて一応今日は解散することになった。
兵藤はまだ公園で筋トレするらしく、それくらいならと『精神と時の部屋状態』を終わらせて、俺は自宅に帰った。
『おい、赤龍帝が厨二ってなんだ! いや、厨二病ってなんなんだ?!』
終始、未来の乳龍帝おっぱいドラゴンの方はうるさかった。