黒歌が可愛くてつい始めた話。   作:楯樰

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ちょっと出来が悪い。
展開に予想がつくかもしれません。


ヨミガエル日

 イッセーはアーシアを抱え、地上へ。

 俺も又、残りの弱りきったエクソシスト達を木場と小猫ちゃんに任せ、後を追った。

 

 そして――

 

「!! ――レイナァアアアレェエエエエッッ!!」

「赤龍帝だからって調子にのるんじゃないわよッッ!!」

 

 ――イッセーが怒りの慟哭を響かせた。

 一歩及ばず。

 イッセーが地下から連れ出したアーシア・アルジェントはもう喋らない。

 神器を抜かれ、魂を傷つけられ。

 力無く、ぐったりと。

 廃教会に残る長椅子に物言わぬ姿で横になっている。

 …………俺がいなければ、であるが。

 

 涙を零し怒りに震えるイッセーに対峙するのは――堕天使レイナーレ。

 その様子をアルジェントに『聖母の抱擁(トワイライトマザー・ヒーリング)』をかけつつ、俺は見ていた。

 アーシアと俺の存在は現在レイナーレの認識から『ずれている』。

 俺はのんびりと眠る彼女の魂を修復する。

 ……そう、『聖母の抱擁』で彼女を救うことが出来ていた。

 あとニ、三分で治す事が出来るだろう。

 

 ……しかし神器を無理矢理はがされた時の痛みは想像を絶する。

 一度だけ試した事があるのだ……興味本位でやって後悔したが。

 そのため彼女が起きるのには時間が掛かるかもしれない。

 

「……うーん……お早う御座いますぅ……うん? あれ、私……」

 

 アルジェントが起きた。

 無事治せたようだ。

 魂の傷は身体的傷を治すより時間が掛かるのが悩みどころだ。

 ……ちょっと弄ってやれば改善出来るが。

 

「おはよう、アルジェントさん。痛い所はもうないか? 助けられて良かった……」

「は、はい……えっと何方(どなた)でしょうか」

「悪魔でイッセーの先輩。ほら、あそこでイッセーが戦ってるでしょ?」

 

 此処からちょっと離れた位置で戦う、空を飛び槍を投げるレイナーレと槍を砕き倍化の力を溜めるイッセー。

 

「イッセーさん……レイナーレさま……」

「まぁ、本格的に危なくなったら助けるよ。……ちょっと聞きたいんだけどいい?」

 

 心配そうに瞳を揺らすアルジェントに……俺は聞きたい事がある。

 

「……なんでしょうか」

「――レイナーレ。……あの堕天使は君から見て……どう?」

「どう、とは……?」

「そう。――アルジェントさんから見た、あの堕天使の印象は?」

「印象、ですか。よく分かりませんが……――ただ、いつも憂鬱そうにあの方は窓の外を眺めてらっしゃいました……何を思ってなのかは分かりませんけど……」

 

 ……。

 

「……それで?」

「それで私は……きっとあの方は誰かに愛されたかったのでは、と思います。儀式の前、神器を抜き取られる前にそんな事を言われましたから……でもそれが?」

 

 ……なるほど。

 

「……シスターアーシア。……貴女はあの堕天使の事を許す事は出来るか?」

「……。どういうことですか?」

「あぁ、説明不足だった。……あれでもイッセーは純情な奴でさ。美人な女の人がいたら目で追っかけてしまうような奴だけど……でもきっとレイナーレ、あの堕天使を殺してしまえばきっと一生トラウマになってしまうと思うんだ」

「はぁ……」

「それを乗り越えるのも奴の成長になるのかもしれない……だけど俺はそんな姿を見たくないんだよ。きっとアルジェントさんがレイナーレを許してやればきっと殺そうとは思わなくなるだろうからさ……」

 

 バカだ。イッセーはバカだ。

 でもバカだけどバカなりに色々考えてる。

 ……それは勿論己を騙したはずの天野夕麻(レイナーレ)の事もだ。

 これから先例え夢であるハーレムを作ったとしても馬鹿みたいに忘れようとしても、頭のどこかで考え思いつめるだろう事はなんとなくだが分かる。

 原作でもイッセーは何だかんだと言いつつ肉体関係は持っていないのだから。

 

「……レイナーレさまはイッセーさんに一体何を……」

「イッセーの恋人をしてアイツにとっての初デートをして……騙して殺した。……将来危険になる神器(セイクリッド・ギア)を持っているからといって」

「そんな……! でもあの方は……」

「あぁ。……レイナーレも多分初めてだったんだろうさ。……こればかりは本人に聞かないと分からないけど」

 

 ……でないと俺が、あの写真を見て「悲しそう」だなんて事思うわけが無い。

 人外だろうと人であろうと、生まれてから18年演技を続けてきた俺に演技をしているか、していないかが分からない訳が無い。

 原作でイッセーが悪魔になったと知った時、何故あの女は顔を歪めたのか。

 何故、赤龍帝だという事が分かって悪魔になっていたのに殺さなかったのか。

 

「……でもきっと奴もイッセーの事を愛していたと思う。短い期間だったけど……それでも人間の天野夕麻として」

 

 アルジェントは頷く。

 

「……わかりました。ただ、少し時間を下さい。一度レイナーレさまとお話しをする時間を」

「うん。それくらいなら用意しよう。……趣味が悪いけど俺も興味があるしな」

「ありがとうございます。……きっと一度、殺された私が許せればイッセーさんも納得してくれるはずです。……納得してくても私が何時か納得させて見せます!」

 

 セイクリッドギア。

聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)』が宿る指輪の存在していた指を、彼女は悲しそうに撫でる。

 

「――そう、死んでしまえば本当の解決なんて一生、出来ないと思いますから……」

 

 ――その言葉は、聖女として今まで誰かを治してきたシスターアーシアの――助けようとして助けられなかった人々への思いが詰まっているような気がした。

 

 -------------------------

 

「……勝ったぞっ……アーシア……ッ!」

「かきゅう、あくまの……ぶんざいでぇ……ッッ!!」

 

 イッセーは勝利した。

 俺の見せた、魔力のみの倍化を行い撃ち放つ方法で。

 ……騙され殺された――そんな過去との清算をつけた。

 

 良くやったと賞賛したいが、残念ながらまだ出るタイミングで無い。

 

「兵藤先輩やりましたね」

「やったね一誠君」

「木場と小猫ちゃん! ……良かった! 無事だったんだな!」

「リクトさんのおかげでこの通り無傷でね……――アルジェントさんは?」

「ッ……駄目だったっ……!」

「……っ」

「先輩……」

 

 小猫ちゃんと木場が地下の祭儀場から出てきた。

 いや、初めから居たようだけども……。

 

「……良くやったわね、イッセー」

「あらあら、一誠君一人で倒してしまったの?」

 

 部長と朱乃さんも来た。

 ……あっちはあっちで始末は終わったのだろう。

 

「ぐ、グレモリーッ!」

「こんばんわ、堕天使さん。アナタの仲間なら消させて貰ったわ……コレ、貴女なら見たら分かるでしょう?」

「ッ! ……ドーナシーク! カラワーナ! ミッテルト……!」

 

 ひらひらと部長の手から落ちてく三つの羽根。

 悪魔と違い、羽根を残して堕天使はその身体を消した。

 

「残るは貴女だけ……っと、所でリクトは?」

「奴良先輩?」

「一誠君について先に上がっていったんですが……知らないのかい?」

「見て無いぞ、俺……あ、アーシア! アーシアの姿も!?」

 

 呼ばれてしまったらしい。

 そろそろ出る頃合いのようだ。

 

「やぁ、皆の衆おそろいで。こっちはやる事やってましたよ……ほら」

「……イッセーさん」

「――アーシア!?」

 

 レイナーレまでもが驚愕し、皆が驚き目を見開く最中。

 俺の背後から元聖女のシスター、アーシア・アルジェントが姿を見せた。

 

 




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