12/5 少し修正。
「アーシア……! 良かった……本当に良かった……」
ボロボロの体でイッセーはアルジェントが生きている事に歓喜し、フラフラと身体を揺らしながら彼女に近寄る。
「あぁ、イッセーさん! こんなにボロボロになって――……待っててください。ちょっとレイナーレさまとお話ししてきます」
「……アーシア?」
アルジェントはそんなイッセーを抱きとめて地面に座らせた。
そしてイッセーに微笑み、彼から離れてもう一人のボロボロになっている人物の所へ行く。
その堕天使……レイナーレの前に彼女は座った。
「……レイナーレさま。私と、お話ししてもらえませんか?」
「な、なんなのよ……アナタ! 神器を抜き取られて死んだんじゃないのッ!?」
「それは……あの方に治していただきました」
「……まぁ、そういうことな」
アルジェントは俺のほうに顔を向け、小さく会釈する。
皆が驚いた風に一斉に顔を向けてきてちょっとドギマギ。
部長が後で話聞かせて貰うわよ、と睨んできてるのが恐い。
――そんなことより黒歌もふもふしたい。
「レイナーレさま。貴女にどのような過去があったのですか? ……堕天使となる前の事。堕天使になってから。そして、それからの事。……一度殺した私への贖罪として……話していただけませんか? 私は貴女の事を知りたいんです……駄目ですか?」
アルジェントは静かに語りかける。
「――……貴女は私の事恨んでないの?」
その彼女に訝しむようにレイナーレは訊いた。
「……恨んで無いと言えば嘘になります。ですが……その人の事を知りもせずに、私は誰かの事を憎んだり。恨んだりしたくないんです。……教会では悪とされる悪魔にも、イッセーさんやその先輩さんみたいな方がいたように」
「……ふんっ……ただの小娘の自己満足ね」
「そうです、私の自己満足です。……でも世間知らずの私ですけど――考える事は出来ます。思いやる事も出来ます。……イッセーさんの先輩にさっき教えてもらいました」
レイナーレはアルジェントの言葉に項垂れた。
そんな様子の彼女を、アルジェントはじっと見る。
「……正直話したくない。でも……」
「――話していただけませんか?」
「――っ。……良いわ。話して上げる。……どうせ私は殺されるのでしょうから」
そして短くも長く感じる、ある天使が堕天し今に至るまでの過去が話された。
-------------------------
……知ってるかもしれないけど、私達堕天使と天使は元々「神の造形物」として生み出された存在よ。
私もアーシアが言うように天使だった。
与えられた位としては今と同じように中級に当たるわね。
熾天使だなんて上等な物じゃなかったわ。
……でもね、私はそんな中でも駄目な「作品」だった。
中級の中でも下の下。
与えられた仕事は上手くこなせない。要領は悪い。肝心な所でドジをする。
……それが私だった。
勿論、天使と言うのは基本「赦す存在」だから私の失敗を咎めるものは居なかった。
そう、私の事を怒りもしないの。
ただ周りの仲間は「貴女の出来る範囲でやればいい」と言うだけ。
何時からだったか覚えて無いけど……でも確か同じような事が続いてたある時から。
私は「要らない存在なんじゃないか」と思いはじめて。
それから「彼らはきっと表面上は私を許してくれているけど、でも本当は消えてしまえば良いと思ってるんじゃ」なんて疑心暗鬼になってしまった。
……今思えばそれが堕ちる切片になっていたのかもしれない。
疑心暗鬼に陥って、私の事を本当に気に掛けてくれている……愛してくれるような存在はいないモノだと思って。
誰かに愛されたくて。求められたくて。
……それで私は堕ちたの。
私が堕ちてからしばらくして、アザゼルさまとシュムハザさま……その他のミカエル様達セラフに近い上級天使の方々が地獄に堕ちてき、そして「神の子を見張る者(グリゴリ)」という組織が地獄……冥界に出来た。
勿論私も其処に組み込まれたけど。でも結局……天界にいた時となんら変わり無い生活。
……ただ失敗した時、疎まれるということが増えただけ。
-------------------------
「――だから私はアーシア・アルジェントが魔女に認定され『
「……」
手を後ろでつき、未だに肩で息をするイッセーはジっとレイナーレをみていた。
レイナーレの言葉に嘘はなかった。
……嘘があったら俺は全部喋らせる前に奴の口を塞いでいる。
イッセーにもある程度本当の事だと言うのが分かっていたのだろう。
目は真剣に話していたレイナーレを捉えていた。
「あら、なに、イッセー君。……笑いたい? 自分を騙して殺した女の事、笑いたい? ……貴方を殺した女はこんな愚かな奴なのよ……至高だ至高だなんて言って……あーもうホントにバカみたい。分かってたでしょうに……どうせドジをするって。結局グレモリーにバレて、騙して作ったとはいえ仲間も殺されて……最後には危険だと思って殺した元彼氏が悪魔になって復讐しにくるなんて…………ほんとにばかみたい」
自分の事を語り、愚かだと言うレイナーレは涙を流す。
アルジェントもどことなく俯いていた。
イッセーは複雑そうに押し黙っている。
「レイナーレ。……いや、夕麻ちゃんは俺の事――愛してくれてたのか?」
「さっき聞いて無茶苦茶に言われて、改めてよくそんな事聞けるわね」
「――答えてくれ」
「ハァ……ま、私は死ぬのだしいいか。……――愛してた。……バカみたいに王道なデートで、バカみたいに気遣ってくれて、バカみたいに期待して……そんな貴方の事が可愛くて愛しくて愛してたわよ。悪魔になってショックも受けた。……多分今もアナタの事を愛してるのかもね――プレゼント、今死ぬ寸前まで大事にしちゃってるから」
「……っ!」
イッセーは顔を歪める。
……なにせ殺したいほどに憎んでいた相手だ。
そいつが「愛してた」と本気で言うのだ。
困惑しても当然だろう。
「……レイナーレさま。私は許します……私に、私と同じ誰かを求めていた貴女を……これ以上責める資格はありませんから。……イッセーさんはどうですか? 聖女として祭り上げられて、『友達』という誰かを求めていた私の、初めての友達になってくれたイッセーさんは――この方の事をどう思いますか?」
「アーシア……うん。――俺はレイナーレの事……許すよ。夕麻ちゃんのこと、まだ好きだからさ……」
「……っはぁ? 何言ってるのよアナタ達……私は殺したのよ? それなのにっ……なんで許すのよっっ!! ……バカよっ!アナタ達はッ!」
二人の言にレイナーレは叫ぶ。
「――バカでも良いよ。実際バカだから。俺の事好きになってくれて俺が好きになった女の子に……一回殺されたくらい許すよ。バカだから……って言っててむなしくなってきた」
「イッセーさんも私も今こうして無事に生きているのですから……私もレイナーレさまの事、許しても当然ですよ」
イッセーもアーシアも。
悪魔とされて魔女とされて。
絶対悪とされた存在の二人は一度自分達を殺した、堕ちた天使を許していた。
「――ホントにバカよ――」
暫くの間、ぽたりぽたりとレイナーレは涙で床を濡らし、聖母のようなアルジェントに慰められていた。
-------------------------
――結局レイナーレは赦された――
「ふーん……あの神器って禁手だったのねぇ――なんで言わなかったの?」
「別に問題無いかな、と。聞かれなかったし。……まぁいいじゃ無いですか。おかげでイッセーは死なずに済んだし。アーシアさんも生き返れた。大団円で良いじゃない」
――俺は事態を収拾するため、レイナーレに三つの選択肢を与えた――
「私悲しいわ、眷属に隠し事されるのって」
「そんな風に
「アナタの好きな人も気になるけど――ちょっとまって。露出狂ってアナタ……何の事いってるの?」
「何って……イッセーの横で裸で寝たり。幾ら部室の中だからと言って見せつけるように下着履いたり。日本での暮らしは長いんでしょ? ……露出狂じゃなかったら何になるって言うのでしょうか?」
「……ひ、否定出来ない……っ!」
――1つ、「
「ちわーっす!」
「こんにちわ」
「あ、あら。イッセーに小猫じゃないの……きょ、今日は早いのね」
「? どうしたんすか部長。いつもと同じ時間ですが……」
「おかしいです」
「そ、そうだったかしら……――私が、露出狂……っ??」
――2つ、堕天使として羽根を残しすぐにでも消されるか――
「ま、まぁいいわ……入ってらっしゃい、二人ともイッセーが来たわよ?」
「ん? なんですか部長――」
「――イッセーさん」
「……イッセー」
――……そして3つ目――
「……ってえぇ!?」
「ど、どうでしょうか?」
「に、似合うと思う?」
――『堕天使である事を死して辞め、転生悪魔と同じように人外へ天野夕麻として転生するか』――
結局彼女は三つ目を選んだ。
元聖女の神器『
そして
一人はグレモリー眷属として。
一人は祝福も無く光の力が使える天使のような白い翼が生えた、新しいこの世に生まれた種族として。
新しくこの駒王学園の二年生として入る事となったのだ。
恐らく変態馬鹿三人組と同じクラス。
「まさか『
「さぁ?」
聖杯の話は残念ながら真っ赤な嘘だ。
堕天使から光の力を操る能力を『ずらして』残し、種族を『人外』に『ずらす』。
それから翼を『黒』から『白』に『ずらした』だけ。
これで『翼の生えた人外:天野夕麻』の完成だ。
だから流石にチートしてる俺でも聖杯は持っていない。
あ、でも代償は『ずらして』しまえばいいし……。
……ちょっと手に入れてこようかな、と思う俺は悪くない。
想像ついたかもしれませんがレイナーレ生存。
一誠君のハーレム入りです。
……主人公に惚れるとか無いんじゃよ?
これにて一巻終了。
色々ツッコミ入れたい所沢山あったけど、まぁご愛嬌と言う事で。