後悔はしていない。
「ひぃ……ふぅ……」
「ほら、イッセー。頑張れ頑張れ」
「がんばりなさい、イッセー。ほら、レイ……じゃなかったわね。天野さんも見てるわよ?」
「くぅうう!」
兵藤一誠、十六歳の春。
俺と部長に追いたてられながら彼は山を登っていた。
「……にしても余裕そうね、リクトは。ホントに人間だったの?」
「えー人間ですよー……疑ってます?」
厳密には違うらしいが。
黒歌と出会ってからの高校に入ってあるヒトから聞いた話だ。
……身内と言えば身内なんだけど。
そんな俺の事は露知らず、部長はこくりと頷く。
「勿論よ。だって一つしか無い神滅具を貴方一体何個持ってるつもり? それにイッセーも貴方と同じ神滅具持ってるし」
「さぁ? ……でも神滅具持ってる時点で人間だって証拠でしょう? それに天野がやってたように他人から抜き取ったとしても、使いこなすようになるのにどれだけ時間がかかることやら……」
「つまり奪い取ったりしてないと。……なんでこうもウチの兵士達は異常なのよ……」
失礼な。
「イッセーは変態ですよ? 一緒にしないで下さい」
「ぬぐぐ……! 先輩! 聞こえてますよ!」
「良いから黙って登って来い! お前が変態なのは事実だろうが!」
「うぅ……!」
目標の場所は目と鼻の先。
イッセーと、フラフラと歩くアーシアの付き添いをするを天野を残して、他の全員は既に登りきっていた。
-------------------------
荷物をおいて、いざ修行。
「じゃあ「部長、俺から一つ良いですか?」……何よ、リクト」
だがしかし俺は「待った」を掛ける。
きっと部長さんの修行内容はイッセー、それからアーシアの強化がメインにしようと考えているだろうからだ。
禁手を既に使える俺は除外されてるとみて、習うべきは座学くらいだろう。
新規メンバーだけでなく、四人も鍛えるべき。
でないと、まず紛いなりにも不死鳥であるライザーに勝つ事なんて無理な話だ。
「リアス部長。今回の目的はなんでしょうか?」
「? ……何って修行だけど?」
「質問を変えます。……今回の修行で鍛えるべきメンバーはイッセー、アーシアの二人だけですか?」
「言わんとすることは分からないでも無いけれど……でも、必然的にそうなるわよ? なんせ10日しかないのだから」
まぁ、そうだろうと思った。
なんせ時間は限りなく無いに等しい。
イッセーは俺の言いたい事が分かったようで、納得した顔をする。
「えっと、奴良先輩もしかして……」
「イッセーそれは後でな。……リアス部長、新規メンバーだけでなく貴方たちも鍛えますよ。得に木場と小猫ちゃんは」
二人が驚く。
朱乃さんは口元に手を当て、驚きながらも聞いてくる。
「どうしてでしょう? さっき部長が言ったように時間は……」
「無い事は無い。……な、イッセー」
「……はい。先輩の神器らしいんですけど、一定の空間の時間を引き延ばす事が出来るらしいです。俺も、ブーステッド・ギアの使い方を教えて貰う時に……」
「あらあら……うふふ。それは初耳ですわね」
朱乃さんが心底面白そうだ、という表情になり口を閉じた。
プルプルと部長さんが震え出す。
なんだろう、風邪でも引いたのだろうか……なんて。
「リクト! 貴方ってヒトは……どうして先に言わないの!」
「だって聞かれなかったし」
聞かれなかったし。大事な事なので二回言いました。
とりあえず時間のことについてはなんとかなることが分かった。
ただ、肝心の鍛える内容には触れて居ない。
気になったようで名前の出た二人が聞いてくる。
「流石です鬼畜先輩。……でも私と祐斗先輩はどう鍛えるんですか?」
「いやだから、小猫ちゃんそれ褒めてないよ。……ただ僕も気になります。何を鍛えたら良いんでしょうか?」
「後で別個で言う。……二人の引き出しについては俺は知ってるからね?」
二人は黙ってじっとこちらを見てきた。
「……」
「どこまで知ってるか分からないですけど……何時気づきました?」
「初めからだよ。術で知って神器が教えてくれた。……さ、ほかに何か質問はある?」
二人は黙り、イッセーの隣にいるアーシアはオロオロしていた。
そんな中、天野が口を開く。
「……本当に何者なの、貴方……?」
「俺ですか? 俺はリアス・グレモリーの兵士の一人で神器を沢山持ってる、ただの転生悪魔です」
ニコリと全員に笑いかけ、一応この妙な空気を『ずらした』。
まずはこの『山』という一帯を時間軸から『ずらし』、気を取り直した部長の声掛けでイッセーの戦闘技術の訓練が始まった。
-------------------------
とりあえずイッセーは木場と小猫ちゃんと一戦交えて、己の弱さと技術の重要性を身を持って知って貰った。
後は持久力を増やしてもらう。
それは小猫ちゃんを除いた女性組に任せた。
煩悩は奴を強くする。……良い所でもあるし悪い所でもあるけど。
「じゃあ木場。お前の神器は『
「はい。……でも先輩は……」
「持ってるよ」
「……ははは。もう僕は何聞いても驚きません。えぇ、決して」
無理だろう。
神滅具の『魔獣創造』に、『魔剣創造』の聖剣版である『聖剣創造』、その他創造系神器を持ってるって聞いたら卒倒するだろうさ。
「じゃ、とりあえず一個作って見せてくれ――自分の思う最強の剣を」
「……っ! わかりました。――ソード・バース!」
「甘いッ!」
「な!?」
形成される剣より先に剣を創り出し、叩き折った。
俺の作り出した剣は黒く、脈打つように赤黒い剣だ。
……スペックと造形はセイバー・オルタの『魔剣エクスカリバー』である。
魔力を込めるとその魔力を内部で『切断』の概念を帯びた魔力に変換&増大させる優れものだ。
魔力の込め具合によればまんまFate/のエクスカリバーである。……世界観が違うからちょっと貧相に見えるけど。
その剣で、切れ味が上がるレベル程度の魔力を込め斬った。
パラパラと光の粒子になって消えて行く木場の魔剣の残骸を見て言う。
「……今考えただろ? どうしたら強い魔剣が創れるか」
「そ、そうですけど……いきなり破壊するのは酷くないですか!?」
「酷く無い。俺と同じ速度で創れるのなら壊されず受け止めれてたはずだ。木場っちは騎士なんだし」
「っ! そうですけど……でもどうしてそんな早く……」
「I am the born of my sword. ……知ってる?」
「知らないです……でもそれが何か?」
そうかー知らないかー。
「イッセーは知ってたからなぁ……よし、木場はコレを見てさっきのセリフを言った人について、Wi○iでもいいから調べて理解を深めろ」
「え、えぇっと、でもこれって……」
「俺はそのイメージで魔剣創造を使ってる。……アニメ、漫画、ゲームだとか……創作物だからと言って侮るな。魔剣創造や聖剣創造の使い手からして見ればそれは指南書と言っても過言では無い」
「は、はぁ……でもこれ聖剣の出てくる話ですよね。……僕、聖剣って嫌いなんですよ……どうしようもなく」
俯く木場。
その声からは憂いと恨みを感じさせる。
色々あっただろうから……仕方ないか。
「……まぁ、嫌なら見なくても良い。でもそんなことでは強くなれないし己の意地も通せない……悪魔の世界って力がモノを言う世界だろ? 本当にそれで良いのか? 力を貪欲に、妥協せず、一切の悔恨も残さぬために……求めるべきじゃないか?」
「……それで強くなれるんですか?」
「保障しよう。もし強くなれなかったとしても時間は10日以上ある。だから俺が噛み砕いて教えてもいいけども……しかし自分で得た方が為になると思う」
「……少しだけ、我慢して観てみます。実際に先輩は見せてくれましたから」
俺からその映画の入ったBDを受け取って、早速彼は与えられた部屋に行ってしまった。
ちょっと気負いすぎじゃないかな……失敗したかもしれん。
でも、まぁその時はその時で最終手段。「ずらして」修復してやろう、うん。
良心が少し痛むが我慢だ。
じゃあ次。
今回の俺の此処に来た一番の目的。
「奴良先輩。私はどうすれば……」
「ちょっと、話しをしよう。――猫又の中でも仙術に長けた一族である猫魈の小猫ちゃん」
「……っ……やっぱり知ってたんですね。……仙術ですか?」
「あぁ、仙術を覚えて貰おうと思う。……きっとこの先、君は力が無い事に後悔するだろうから」
――言うや否や。
小猫ちゃんは拳を握り殴ってきた。
「――私には戦車の力で十分ですっ!」
「……それで守れるのか。要らない意地の為に己の大切な人を守る事が――出来るのかっ!」
その拳を受け止め、俺はその細い腕を振り払う。
あまり重くない拳だ。そこまで本気ではないのだろう。
「貴方には……貴方には関係の無い事ですッ!」
「所がぎっちょん! 関係大有りさ。……リアス部長の下に集まった仲間だもの!」
殴り、受け流すを繰り返す。
時折混ぜてくるフェイントを見切りつつ、しばらく森の中にて先ほどの一発とは違った少々本気の戦闘を繰り広げた。
Fate/が苦手な方には謝罪を。
『魔剣創造』が『無限の剣製』にしか見えないのが悪い。
小猫ちゃんがアップを始めました。