諸君、私は黒歌が好きだ。
諸君、私は黒歌が……(ry。
……詰まるところあの猫魈、黒歌が好きだ。
白い肌に映える黒い髪。
妹を思い、自ら追われる事をよしとする愛情。
容姿も性格も完璧。
俺的御嫁にしたいランキング一位。
そうこの世界の事に気づいてから15年と少しの間、常々思っていた。
……しかしそれは先ほどまでの事。
「"気がついたら悪魔の翼が生えた中学生くらいの黒歌が傷ついた様子で俺の家の前に居た"
何を言っているのかわからないと思うが俺も何を言っているのか分からない」
つい俺がポル略をするのも無理はない。
だが、言える。
俺は自重を辞めるぞー! ジョジョォオオッ!
『黒歌を嫁にするために ~怪我をしている所を発見した場合~
――怪我をしているのなら、まず何処か人目の着かない所に移動しましょう。
貴方がもし神器を持っているなら別ですが、きっと追手もしくは敵が近くに居る可能性が高いです』
残念ながら神器は持って居ないがそれに準じる程の能力はある。
なので家の中から救急箱を持ってきて、この場で手当てを開始。
「餅肌だ。ぷにぷにしてる――はっ……イカンイカン」
煩悩退散煩悩退散。
『黒歌を嫁にするために ~目が覚めて自己紹介~
手当てが終われば彼女が起きるのを待ちましょう。では起きてからです。自己紹介をしましょう。挨拶は人の基本です。原作時期にもよりますが、禍の団に既に入ってない状態ならばきっと警戒心が強いです。なので注意が必要。……とは言え既にテロリストであっても彼女も一個人。見知らぬ男性相手ならば警戒もします』
よし、家に上げて起きるのを待とうか。
『あ、一つ。人型の場合、家に連れ込んだりするのはお勧め出来ません。出来れば家の出口に近い庭や軒先に寝かし、寒く無いよう毛布を掛けて起きるのを待ちましょう。好きなのは分かりますが早急過ぎです』
「あ、危なかった。そう言えばそうだったな……でもどうするかな……むむむ」
彼女、黒歌を抱えて唸る。
なら敢えて此処は……
「――連れて入ろう。一応窓際のソファーに寝かせよう」
一軒家。
親の居ない屋根の下一つに俺は黒歌を運び入れた。
長年練りに練ったマニュアルはその時になるとあまり役にたたない事が分かりました、まる
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「――……うん?」
目が覚めて、目の前には知らない天井。
否、私にとって天井と言うものが存在する場所で寝たのは忌まわしいあの悪魔の屋敷で過ごした2年間だけだ。
私、黒歌は『猫魈』と俗に呼ばれる猫又が転じた仙猫であり、一昨日主を殺して逃げ、人間界の何処素知らぬ場所で行き倒れたのだ。
しかし、私にとって壁紙の張られた天井にはとんと覚えが無い。よって他人様の家の中で生き倒れるはずはない。
そのため、私を此処まで運んだのはきっと邪な考えがあってか……と思い至って、身体に痛みを覚えた。
「――っうぅ!」
あぁ、たしか痛めつけられた。
傷口は消毒してあり、包帯が巻かれている。助けてくれた誰彼がやってくれたのだろう。
有り難く思うが、その根底に下心があると分かっているとどうにも心から感謝出来ない。
……悪いが此処は早くお暇させて貰おう……。
「そこのお姉さん。折角お粥作ったんだ。食べてってよ」
「――ッ!?」
背後。座っているソファーらしき物の後ろから声がして振り返る。
……鍋掴みで小さい土鍋を持ったなんとも言え無い少年が居た。
歳は十五、六だろうか。顔立ちは良いとも言え無いが、悪いとも言えない。……ただ、平凡な容姿でもない。
そこそこ鍛えているのだろう。彼の『氣』の巡りは良かった。
「……ま、色々聞きたいだろうけどさ。……きっとお腹減ってると思うんだけど?」
言われて空腹に気づいた。
どれくらい寝ていたのだろうと思いながら、改めて体に何かされて居ないかどうか氣で確かめた。……どうやら何もされていないらしい。
少しだけ彼の事を信用してみよう。
……意識のある女を無理矢理……という趣味がある外道である事も、もしかすればあるかもしれないけど。
「……じゃあ少しだけ頂きますっ」
お礼をしようと頭を下げただけで身体が軋む。
アイツら……やってくれた。
「何があったのか分からないけど。体中痣だらけで骨も何本か罅いってたみたいだから……食べさせようか?」
「いや、けっこ――うぅっ!」
「はははっ、まぁまぁ遠慮しないで……ほい、あーん」
「いや、自分で食べられますからっ――!?」
身体が軋み、拒否する間もなく口に運ばれたその粥。
美味しい。多分、玉子粥だろうか。良い具合の塩加減で、しょっぱ過ぎず。かといって薄過ぎず。
仄かに香る醤油の香ばしい匂いが少し口の中に残る。
「――にゃあ」
飲みこんだ後、思わず声が漏れる程には。
「にゃ?」
「あ、や、えっと……予想以上に美味しかったので……」
正直な所、人間の姿から猫魈に戻りそうになっていた。
不意打ちはいけない。不意打ちは。
「そっか。それは良かった。……はい次、あーん」
彼はそんな私の内心の事など露知らずな様子で、美味しいと言われてにこやかにこちらを見ていた。
「え、――ん」
レンゲに乗せられた玉子粥が口の中に運ばれる。
話を聞かない失礼な人だな、と思いながらも甘んじてその運ばれてくる粥を受け入れていた私はきっと弱っていたのだ。
……そう。きっとそうに違いない。
見知らぬ男性への警戒も。白音の事、悪魔の事。
何もかも忘れて何だかんだとお風呂に入れさせられて、彼の家にその日泊まる事にされていた私。
そう、彼が悪い。
美味しいご飯が悪い。
温かいお風呂が悪い。
だから私は……悪くない。