色々と注意。
今代の赤龍帝――兵藤一誠は森の中に隠れつつ逃げていた。
現在は木の幹に背中を預け、息を何時襲われてもおかしくない状況下で肺に溜まった二酸化炭素を深く吐いている。
まだ一応走れる。走れないは許されない。
何故なら走らなければ死ぬのだから。
だけど今は少し休憩をして……と、だがもう動かなければならなかった。
――さもないと……と、思った所で背中の木が爆ぜた。
「ホントに容赦ねーな先輩! チクショウ!」
「あたりまえだ。お前はまず体を鍛えないことには禁手に至る段階まで行く事すら出来ないしな」
「だー――もうッ!」
その場から駆け出す。
後ろから赤く迸る魔力光が感じられるようになって、一誠は一応避けれるようにはなった。
――だがその感覚が短い。
その上、一発一発が必死の一撃なのだ。このままでは何時か当たるだろう。
……当たった時の惨状は振り返れば分かる――後方一帯が更地になっているのだ。
ちなみに此処は山。木々は吹き飛び、土は捲れ、クレーターをいくつも作っている。
そんな状態の後方へ戻ろうとするのは愚行というものだ。
一誠にはもう、後戻りの選択肢は無い。
既に山を一つ二つは越えている自信はある。
後何時間でこの逃走が終わるのか。
後何時間この生と死の狭間を疾走しなければならないのか。
――……もう一誠は考える事は出来なくなっていた。
「イッセー! 今日はもうお終いだ!」
不意に告げられたそんな言葉。
「――!? ホントですか!」
イッセーは混濁とした意識の中で振り返る。
――目の前に迫ってきたのは赤い閃光だった。
……が――当たるものか――と一誠は身を翻し、かわす。
「……避けれるようになったか」
「なんでっ――!」
そして見るのは地面に降り立つ赤い鎧。
緑色の宝玉がキラリと光り、よく見ればまだ夜にもなっていなかった。
「……スマン一誠。まだ12時間は来ていないんだ。……あと九時間ある」
「――……うそでしょ?」
「マジと書いてガチ。……ただまぁ今からちょっと勝負をしようか。一回でも俺に触れたら三時間減らす……やる?」
一誠にとっては良い提案であった。
……しかし――。
「……やめておきます。きっと触れる事すら出来ないんでしょう?」
「正解。それに一回当てたくらいで三時間も修行をしないなんて……自分の為にならないからな」
「……ははは。もう、なんだか意地でもやってやろう、って思い始めました」
「まぁ、それでこそだ、お前は。……それに……」
奴良陸人。
彼は鎧の面を収納して一誠の前に立つ。
「小猫ちゃんも今努力している。自分と向き合って。自分が誰かの為に力を振るえるかどうか……考えてる」
「……小猫ちゃんが」
「ま、お前も頑張れよ。――さて、続きを行くぞ。40秒待ってやるから……今度は隠密行動を意識して避けろよ?」
「――はいッ!」
……40秒経って再び一誠の逃走劇は始まった。
実は周囲の時間の流れが遅く、イッセーの認識がずらされているだけで。
――イッセーは既に12時間近く逃げていた。
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木場は思っていた。――何故あの先輩はこんなものを僕に見せるのだろうか――と。
しかしその考えはソレをみて払拭される。
世界観については、まだ彼は理解の域に入っていないので省かなければならないが……今見た映画の主人公とも言えて主人公でないそのキャラクターは、ネットで調べた前知識によると『聖杯』と言う願望機をめぐる『戦争』ともいえる争いに巻き込まれた過去が有り、その以前に起こった『第四次聖杯戦争』による災害を生き残った一人。
先ほど木場が見た映画では描かれていなかったが、その彼が呼び出した『英霊』。
彼は、木場の憎む形状も作られた方法も違うが、同じ名称の忌まわしい『聖剣』を持つ『英霊』に憧れて限りなく近いその『聖剣』を作り上げたのだ。
少しだけ共感もでき――……同時に数多の者を魅了するその『聖剣』が憎く思えた。
その彼の考え方、精神は異常と言っていい。
……中世、騎士を超えるだろう自己犠牲の精神が彼の幼少からの異常な人格形成をしていた。
原因は作中に出てきた『聖杯』の中にあった『泥』――この世全ての悪――アンリ・マユというゾロアスター教にでてくる悪神の所為だとされるが……まぁ、省こう。
話を戻す。
――赤い外套を身に付けた彼。
主人公にもなるくらいだ。それなりに彼は特異な技能を持っていた。
それは『
具体的には剣を中心に本物を魔力で創り上げるという、彼の世界観に置いて途方も無いデタラメな能力。
しかし、木場はこの能力に近いモノを持っていた。……創造系神器『
木場の持つこちらは想像し創造する。……オリジナルで魔剣を『創れる/作れる』がその想像を創造に反映させるのには、人間の場合は魔法力だが、彼は悪魔故に魔力を消費する。しかし、神器の使い手自身が成長しなければ創造するのも難しい。
因果逆転、龍殺し……概念の付与となるとどれだけかかる事か。
……だがその主人公の場合、『創造理念』『基本骨子』『構成素材』『製作技術』『憑依経験』『蓄積年月』という工程をもって本物を創りだす、要は『本物の贋物』を
それは、
『創造の理念を鑑定し、基本となる骨子を想定し、構成された材質を複製し、製作に及ぶ技術を模倣し、成長に至る経験に共感し、蓄積された年月を再現する』
と言う事で、つまり一度「見て(/視て)理解する」事で、自分が使える伝説に記されるようなの剣が出来てしまうのだ。
――……此処まで知って木場は分かった。
――何故、僕にこの作品を見せたのか。
――何故、このキャラクターについて調べろといったのか。
――何故、剣の創造系神器を持つ者にとって指南書と言ったのか。
自分はあのセイギノミカタと同じ戦闘スタイルであり。セイギノミカタとは違い、自分には悪魔の膨大な『魔力』があり、『
つまり、と木場は合点がいく。
『先輩が言いたかったのは、創ろうと思えば本物を越える魔剣を作れるんだぞ、と言う事か』
……と。
また、「本物の魔剣を超えるための方法」も創作物を通して教えて貰えたと理解を得た。
そして、"ならば"と一人部屋の中。
木場は自らの魔力で、ある「魔術」を再現する事からはじめた。
……木場祐斗。
彼は残念ながら少し拡大解釈をしたようだった。
――当の教えた本人が予想だにしてなかった成長を木場は始めていた。
ちなみに。
木場がこの『型月』という世界観に少しハマったのはどうでもいい余談である。
やっちゃったぜ。