イッセーの感覚で12時間が経った。
俺は本来の時間軸から『ずらして』いた『周囲一帯の空間』と『イッセーの時間の感覚』『成長率』『疲労に対する認識』を元に戻していく。
するとあら不思議。俺の手によって出来ていた惨状は元通りに。
イッセーと俺は、始めイッセーを連れて来ていた所に戻っていた。
構えていた魔力球を消してイッセーの所に行く。
「今度こそ終了だイッセー」
「……」
返事が無いただの屍のようだ。
「おーい。部長が生乳触らせてくれるってよ」
「ッ! 何ですとっ!?」
「おはよーさん」
「先輩! 部長の生乳は! おっぱいは!?」
バカめ。
「あるわけねーだろんなもん。それに此処何処だか分かってる?」
「あ……――先輩ッ! よくも俺を騙したな! 部長のおっぱいが触れるなんて嘘をッ!」
「イッセーは……馬鹿だなぁ」
「すんません、俺が悪かったです。だからその哀れみの視線やめて下さい!」
「はいはい」
コホン。
「……さて、イッセー。体はどうだ?」
「だい――っ――!」
俺の時間感覚で言えばトータル時間48時間。
12時間は逃げることを最優先として。
それから12時間は隠れ忍ぶことを重点的に鍛えた。
残り半分からは肉弾戦を交えつつの特訓。
最後の12時間はイッセーからの一方的に行われる攻撃訓練。
始終動き回り、悪魔と言えどボロボロになるが、そこはそれ『
――その間、筋肉痛の『痛み』を『ずらして』誤魔化していたから――。
「まぁそうなるよなぁ。――ほれ、筋肉痛が来るぞ。気を付けろよ」
「――っつぅあああああ! なんすか、コレぇえええっっ!!」
想像を絶する程の痛みに襲われる。
――……外道の所業だと罵られてもいい。それ相応の事をしているのだから。
……ただ、甘い修行をしてイッセーが満足するのか、と言われたら違った。
イッセーの目は常に前を向いていた。
後輩いびりよりも酷な事をしてきたのだ。
何故そんなに精神力が持つのか、俺には分からない。
……イッセーの考え方については『ずらしていない』のだ。
これが主人公が主人公たる所以なのかどうかは分からないが。
「……ほれ、ちょっと緩和してやるから」
「うぅ……ありがとうごじゃいまず……」
『聖母の抱擁』で少しだけ痛みを和らげてやる。
涙で顔がぐちゃぐちゃだ。
おまけに顔も痛みで歪んでいる。
「……どうだ?」
「うぅ……。ちょっと楽になりました……いてて」
それなら良かった。
「じゃ、帰るぞ。……ちなみに始めてから一時間も経ってないからな」
「まじすか……すんません。ちょっと歩けそうに無いっす……」
「あー大丈夫大丈夫。……距離もそんなに離れてないから……ざっと100mくらい?」
「え……」
「ほれ、肩貸してやるから。……今日は俺が上手い料理食わしてやるからさ元気出せ」
「はははっ……先輩の飯かぁ……美味いんですよね?」
「不味いわけないだろ? ――戻るぞ、イッセー」
「……はい!」
イッセーに肩を貸して、俺は馬鹿でかいグレモリー家の別荘に戻った。
「おーい。アーシアさーん、あまのー」
「……あ、イッセーさん!」
「イッセー! こんなボロボロで……何があったの!?」
「へへへ……ちょっと鍛えて貰ってた。……心配すんなって二人とも! ……ってぇ……骨に響く」
「頑張ってたしな……――ちょっとご褒美やってやれ」
『――っ』
精神的疲労の回復のため照れる天野とアーシアの二人にイッセーを引渡した。
アーシアと天野で引っ張りだこだろう。
それからリアス部長と朱乃さんは姿を眩ましていたので、アーシアと天野の二人に訊けばどうやら休みに行ったらしい。
……ぶっ倒れて、あのブレスレット付けたまま寝てない事を祈る。
そして。
「黒歌? どうしたの、そんな上機嫌で」
部屋に戻ると黒歌がいた。
ベッドの上でゴロゴロと行ったりきたり。
それはもう、見るからに上機嫌で……。
「うにゃあ? ――へへへ……何でも無いにゃんっ!」
憑き物が落ちたかのような、そんな笑顔。
……絶対何かあったに違いない。
とりあえず彼女、小猫ちゃんの様子を聞く。
「白音ちゃんの様子はどうだった?」
「うん。『仙術を習うんだ』……って張り切ってた」
「――っ。へー、そっかぁ……」
なるほど把握した。
つまり――。
「それは良かった。――……何時かさ、彼女に何があったか聞かせてくれる?」
「――」
ピシリと黒歌は固まって、ベッドの
「……今聞かないの?」
「うん。だって今聞いても黒歌にはまだ……俺が解決しないといけない問題が残ってるからさ。……俺にまだあの『答え』を聞く権利は無いよ」
「――なんで! 私、わたしは……リクトのこと……」
続く言葉は聞こえない。
今まで感情を仙術を使ってまで抑えていた黒歌は最後まで言わず、押し黙った。
でも何時かした――「付きあって下さい」と俺が告白したその『答え』は聞かなくてもなんとなく……わかる。
だって、でなきゃ3年も同じ屋根の下で一緒に居ない。
料理をするから教えて欲しい、だなんて言ってこない。
態々自分の為に弁当なんて作ってくれるわけがない。
……きっと俺が望む未来はすぐ其処にある。聞けばそれは叶えられる。
だけど。
「……もうちょっとだけ我慢したいんだ。俺、ずっと黒歌の事好きだったから。ちゃんと周りを誤魔化さなくてもいられるように、俺も頑張るから」
「……この意地っ張り」
ごめん。
「――でも……一つだけ言わせて」
黒歌は持っていた枕を離して。
「――ありがとう。私はリクトの事、大好きだから」
「……うん……」
俺に抱きつき耳元で囁いてきた。
……頑張ろうと思う。
自分の為に黒歌の為に。
――猫又の姉妹が笑って、何も心配せず暮らせるように。
「……そ、外行ってくる……っ」
「……」
恥ずかしくなった黒猫の黒歌さんは部屋から出て行く。
やっぱり黒歌はとても可愛らしかった。
いちゃいちゃ解禁。
色々と突っ込みたい所はあると思いますが、次々話くらいで説明させて貰います。