黒歌が可愛くてつい始めた話。   作:楯樰

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なんかちょっと変な感じに。
それでもよければどうぞ。


憂いを解く日

 恥ずかしくなったらしい黒猫になった黒歌が、何処かの白猫さんの部屋行って。

 俺は厨房で人数分の飯を作っていた。

 そして一時間程で完成。

 

「飯出来たぞー」

「っしゃー!」

「……お義兄さん(・・・・・)の料理楽しみです」

「にゃっ!?」

 

 キャリーに料理を乗せて運ぶと腹を鳴らす赤い龍と白い猫がいる。……というかなんでお兄さん呼び? と思って見てみると、無表情だった小猫ちゃんはニヤリと姉の姿を見て笑っていた。

 

「……小猫ちゃん、なんで奴良先輩の事を兄だなんて」

「イッセー先輩には関係無い事です……」

 

 じーっと小猫ちゃんは見つめてくるけど――あー! 俺はしーらない!

 赤面しないよう努めて、イッセーの隣に座る二人に声を掛ける。

 

「えー、アーシアさんと天野は部長達起こしてきてくれないか。飯が冷えるから」

「はい……」

「わかったわ。……うぅ……お腹減った」

 

 二人も相当訓練したらしくへばっていた。

 それでも言われた通り部長らの部屋に行ってくれたので助かる。

 イッセーが周りを見て不思議そうに言う。

 

「そういや木場は?」

「……私は見てないですよ。……部屋に篭ったっきりじゃないですか」

「え?」

 

 ……なんか嫌な予感がするのは俺だけか。

 多分二人には見に行って貰う事は出来ない。

 

「……二人ともちょっと待っててくれ。――俺が見てくる」

「……何かあったんですか」

「何でもないといいけどな……じゃ、俺は行くから」

「先輩っ!」「……お義兄さん」

 

 今生の別れのようにして俺は木場の部屋に向かった。

 というかノリがいいな、二人とも。

 

 -------------------------

 

 木場の部屋の前に来て二回ノック。

 

「木場さーん。ご飯出来ましたよー」

『……』

 

 部屋から返事は無い。

 不安になりながらももう一回。しかし返事は無い。

 

「……開けるぞー」

 

 中を覗くと、木場はベッドの上で瞑想していた。

 

「おーい。木場――っと……」

「……先輩?」

「おう。飯出来たから呼びにきたんだけど……なんか掴めたのか?」

「はい、おかげさまで。……今行きます」

「で、何掴んだの?」

「それは――」

 

 あの映画とネットから得た事を教えてくれる。

 

「……マジか。いや、うん……凄いな、お前」

「そんなことないですよ。結局個人の力では何にもならない事ですから」

「そりゃそうだけど……」

 

 彼が得たものは魔力による対象の『鑑定理解』。

 それは『赤い弓兵』と同じ『トレース』が出来るようになったと言うこと。

 

 ――『創造の理念を鑑定し、基本となる骨子を想定し、構成された材質を複製し、製作に及ぶ技術を模倣し、成長に至る経験に共感し、蓄積された年月を再現する』――

 

 つまり魔剣限定にだがアーチャーと同じ事が、出来るようになったという事だった。

 

 だけどそれだけなのかどうか……まだ分からない事は多い。

 ……アニメ映画見せただけなのにこんな事になるとは思ってなかった。

 よくて『魔剣創造』の参考になればいいかな、と思ってたんだけどさ。

 

 ――木場……恐ろしい子! と戦慄しつつ、少し精神状態が不安定な木場君を連れて食堂に入る。

 

「……待ちくたびれました」

「木場、早く席に座れ!」

「身体が重いですわ……」

「……なんなの、アレ。ホントに辛い……」

 

 木場が空いている席に座り、俺も小猫ちゃんの隣に座る。

 全員が揃い、唱和して夕食を取り始めた。

 

「うめぇ、うめぇよぉ……」

「イッセー、口の端にご飯粒ついてるわよ……でもホントに美味しいわぁ……」

「むー! 夕麻さんずるいです!」

 

 号泣しながら飯を食べるイッセーの横で甲斐甲斐しく世話をする天野と、それに嫉妬するアーシア。

 

「……朱乃。私ね、料理は上手だと思ってたのよ……」

「私もですわ……」

「……あぁ、あの子たちにも食べさせたかった……」

 

 確然とした料理の腕の差に嘆くお姉さま二人に、涙を流しながらスープを飲む木場。

 

「……」

「……」

 

 黙々と食べる白音ちゃんと、黒歌用に用意した料理を黙々と妹と同じように食べる姉猫。

 カオスだなぁ、と思いつつ俺は箸を動かした。

 

 -------------------------

 

 風呂である。

 イッセー君のスケベ魂が発動し、女性陣と一緒に入る入らないの問答があったがそんなことは忘却して。

 黒歌を小猫ちゃんに任せて、現在男湯に木場とイッセー、俺は浸かっていた。

 食事以後木場は暗く、どうにも風呂場の空気が悪かった。

 

「お前、エクスカリバーが苦手なのか?」

 

 タオルを頭の上に乗っけて湯の中に浮きながら俺は木場に訊いた。

 やっぱり雰囲気悪いとこっちも暗くなってしまうから、改善しようと思う。

 自分に出来るのか不安だけど。

 イッセーがアホ面をさらす。

 

「へ? なんすか、それ」

「イッセーは関係無い。女湯の透視でも頑張っとけ」

「……ひでぇ」

 

 しくしくと女湯との仕切りに近づいていくイッセーは放っといて。

 

「で、どうなんだ?」

「……苦手どころじゃないです。あの剣のせいで僕と彼等は……」

「あー……すまん。無粋なこと聞いたかもしれん……けど今は部長の危機だからさ、心の隅に追いやれないか? その復讐したいって感情」

「――! ……凄いですね、そんな事分かるんですか。……僕、表情出てましたか」

 

 木場の問いに頷いて返事する。

 まさしく彼の言う通り表情に出てたし纏わりつく暗い雰囲気でわかった。

 それ以前に『原作』での木場の行動を知ってたからなんだけど。

 ……壁際に行ったイッセーも静かに聞き耳立ててるのがわかる。

 奴なりに木場が心配なんだろう。エロの権化の癖に、と思うが……それよりもだ。

 どうしたものか。共通の話題で話を振ろうか。

 

「あの映画……見てどうだった?」

「何を急に……いえ。そうですね……面白かったですよ。ちょっとハマりました」

「……そうか」

 

 木場がハマっちゃうのは予想してなかったけど……。

 

「なら、ちょっと思ったんじゃないか? アーチャーが格好良いって」

「……はい。でもそれが何か?」

「……正義の味方を目指して生きてきた。でも正義の味方ってのは矛盾してて……それでも、自分の信念を通すため戦って……最後は仲間に裏切られて処刑されて死んだ。でもさ、その事には抵抗しなかった。……皆が決めたことだからって最後まで誰かの事を信じてさ」

 

 ぷかぷかと浮かぶのを止めて俺は胡坐をかいて、体を木場に向ける。

 

「ただ後悔はしてた。抑止力の一つと契約を交わして正義の味方になれたと思ったら――それは少数を切り捨て、大多数を助ける――彼の望む正義の味方じゃなかったからだ。だから自分を消そうと聖杯戦争の中で過去の自分を――衛宮士郎を殺そうとした」

「……」

「木場。お前の復讐は果たしたらどうなる……? もし、お前がその聖剣に復讐をしたら……過去が何か変わるのか? ……あの話には色々な結末がある。衛宮士郎が英霊エミヤにならなかった結末の一つは聖杯戦争の時、過去の自分が変わってくれる事を信じて後悔をやめたからだ。それであの弓兵の願いは叶った」

「……っ……でも僕は、あの子達の代わりにあの聖剣に……!」

 

 木場は声を荒げる。

 でもそれは無駄な事だとわかったようで、押し黙った。

 

「今更、なんとなくだけど分かったよ。お前は人生を聖剣に振り回されたのか。……でもそれ、今も振り回されても良いのか? それで大切なものが分からなくなってないか?」

「――」

「お前に何があったのか……本当の所は俺には分からないさ。でも今は、あのバカと元シスターと元堕天使と小猫ちゃんや部長たちと。……バカやって、どうしようもなく長い悪魔の一生を歩けば良いんじゃないか? ……復讐は止めろとは言わない。時に生きる活力にもなるから。……だけど今はゆっくりすればいいじゃないか」

「……そうでしょうか」

「そうに決まってる。これからの人生、いや、悪魔生は長いんだから。……だから今は笑えば良いと思う。お前の言う『あの子達』の分もニコニコと。イッセーの嫌うイケメンスマイル振り撒けばいいじゃん」

 

 ホントに似合わない事を言ってる自覚が有る。

 きっと黒歌の事もあってすこし舞い上がってるのかもしれない。

 まったく。……こういう自分は嫌になる。

 でも言いたかった。

 

「……良いんですか、僕は。……笑っても、楽しい時間を過ごしても――」

「復讐してくれ、ってその子達は言った訳じゃないんだろ? なら笑って、その子たちを喜ばせてやれよ。復讐なんて回りくどい事せずにさ、俺は元気だぞ、って」

「そうですね――先輩の言う通り彼等の為に笑ってみます……」

 

 木場が笑い、暗い雰囲気は消えた。

 

「手始めにグレモリー眷属の仲間同士交友を深めますね――イッセー君! 背中流して上げるよ!」

「やめろぉー! 気持ちわりーんだよぉ! 背中くらい自分で――ってぇ!」

「流して貰え、イッセー。お前、筋肉痛でやばいんだから」

 

 話を聞いていてなんか泣いてたらしいイッセー。

 割と奴には木場の提案は嬉しいものだったりする。

 ただ、そんな木場君がホモではないかとちょっと疑う自分が嫌だった。

 違うよね?

 ――違うと言ってくれよ。

 

『『違うよ』』

 

 お前らじゃないし、ドライグにアルビオン。

 

 ――……少しして「ぬわぁあああああ!」というイッセーの声が風呂場に響いた。

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