黒歌が可愛くてつい始めた話。   作:楯樰

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仙術を教える日

 翌日。……というよりも眠り始めてから八時間後。

 起きたら自分の胸元の上に、白い肌着を肌蹴させて眠る黒歌さんの顔があった。

 勿論猫じゃない。猫又の姿でだ。猫耳猫尻尾である。……単なる猫の姿だったらどれだけよかった事か。

 人型であるのが残念だった。……この胸の感触は残念というわけじゃ無いけど。

 むしろグッジョブ、ナイスおっぱい。

 彼女限定でいえば俺はイッセーの事を言えないかもしれない。

 

「……すぅ……」

「っう!」

 

 ――というか理性が限界。もう無理かも。抑えてる情欲がONに切り替わりそう。昨日強がって「黒歌とお付き合いはもうちょっと後で」なんて言わなきゃよかった。過去の自分を殴りに行きたい。

 とにかくホントに限界なので黒歌の肩を揺する。

 

「ぅん……うん?」

「おはよう黒歌さん」

「ふわぁ……おはよう?」

 

 見上げてきて欠伸するのが大変可愛らしい。

 黒歌、いとろうたし(たいへん可愛らしい)。

 

「おはよう。ここ、俺のベットなんですが……何故に?」

「え……私のベッドでもあるでしょ? この部屋一つしか無いんだから」

「……あ」

 

 先に寝たから分からなかったけども――そうだったぁ!

 ベッド一つしか無いじゃん! あれれー……もしかして合宿中ずっとですか? 堪えられる自信ないです!

 

「と、とりあえず上から退いてくれませんか。――やばいんで」

「何が?」

「いろいろ!」

「私にはわかんないなぁ……ナニがやばいの?」

「確信犯めぇ……! とりあえず退いてって!」

 

 ホントに! 寝てるけど立っちゃうから!

 

「やだ。ちゃんと言ってくれないと退かないにゃん♪」

 

 言っても聞かない我侭猫。

 もう諦めて二度寝する事にする。起きれないし。

 と、思ったら、我侭な黒猫さんはすんすんと何かのにおいを嗅ぐ。

 ……ちょっとまってよ。

 

「……な、何してらっしゃるの?」

「うにゃあ、リクトって良い匂いするにゃー……」

「ぅあ……ちょっと……やばいって」

 

 わたくし鼻血が出そうですよ黒歌さま、と。

 すりすりと今度はニオイを付けるように頭を胸元にこすり付けてくる。

 一々可愛いのがいけない。身体が反応しそうになる。

 

「にゃははは――」

「……うん?」

 

 自分の悶える表情を見て笑ってた黒歌は少し真剣な表情になった。

 

「うん。……私ねリクト。ちょっとショックだったんだよ? ……もう自分の気持ちを仙術使ってまで誤魔化して、アナタに接さなくても良くなったのに……酷いこと言うから」

「……ごめん」

「いいよ。……リクトは無理矢理えっちな事してこない……だから体裁はちゃんとしたいんでしょ?」

 

 良く分かってる。黒歌さんてばホントに良い女だ。

 ……うん。女々しい事に結構純情だから。ごめんよ黒歌さん。俺ってば付き合ってもないヒトとそんな事出来ねーんです。

 

「……ところで黒歌さんから見て俺ってヘタレに見える?」

「うん、見えない事も無いけど……少なくとも私からはそうは見えないにゃん」

「はぁ……愛想を尽かされる前に早くしないとなぁ……」

「にゃはは……リクトのばーか。白音と何があったか聞けばすぐにでも付き合ってあげるのに」

 

 さらりと黒歌が言った答えを聞くけど、でも駄目だ。男に二言は無いのだ。

 というか。

 

「……白音ちゃんがお義兄(にい)さんって言ってきてる時点で分かってるもんだけどね……」

「どうするにゃ? 妹は了承してくれたよ?」

「やめて! 誘惑しないで!」

 

 本当にこういう黒歌の悪魔の囁きは色々と危ない。

 この悪魔め! 猫の小悪魔め! ちくしょう、可愛いなぁ……!

 

「……何やってんですか二人とも。早く起きてください」

「「――ッ?!」」

 

 ばたん、と扉が開いて白音ちゃんが顔を出した。

 いきなりで驚かされる。

 

「いちゃいちゃイチャイチャ……このバカップルめ」

「「ごめんなさい!」」

 

 ……他の誰かだったらやばかった、と後になって冷や汗が出た。

 

 -------------------------

 

 イングリッシュ風な朝食(?)をとってから一時間後。

 顔も洗いさっぱりして、小猫ちゃんに仙術の指導する事になった。

 それは俺だけでなく。

 

「よろしくおねがいします先輩に――姉さま」

「よろしく」

「よろしくにゃ……って私の事"おねえちゃん"って「呼びませんよ恥ずかしい」……けち」

 

 ……実姉であり、俺よりも仙術に長けた黒歌もだ。

 此処は別荘から少し離れた森の中。

 もしものために、黒歌の存在がバレないよう"認識"も忘れずにずらしておく。

 白音ちゃんとはやっぱり何かあったようで、それなりに仲が良さそうだ。……さて、何があったのやら。

 さて、まぁそれはともかく。

 

「じゃ、小猫ちゃん。自分の"気"は分かる?」

「……なんとなくですが一応」

「そっか……じゃあ自分の"気"を目に集中させてみて」

「目に集中……?」

 

 黒歌のじっとりとした視線が辛い。

 いや、言いたい事はわかるけどさ。……だってまんま"凝"だし……でもこれが確実じゃないか。

 ――ちなみに自身の気と闘気とはまた別物であったりする。

 

「ちょっと難しかったですけど、はい。なんとか出来ました……気が見えるように」

「そう、それは"凝"って覚えて。字は凝視の凝ね。いずれはその"凝"をしなくても肌で感じて判るようになるのが目標。……ちなみにだけど、基本的に自分の中にある"気"だけを使う時は"外気"の影響は受けないから、"瘴気"を心配しなくても良いよ」

「……はい。ところで姉さまはなんでそんなに先輩の事睨んで」

「……なんでもないよ、白音」

 

 黒歌さん怖いです。

 いいじゃない。"念"って仙術教える上で便利なんだもん。もーん。

 

「次行ってみようか。……"凝"はしたままで、"悪い気"と"良い気"が分かると思うから……"良い気"だけを引き寄せてみて。手で掴んでも良いから」

「……む、難しいです。どうしても"悪い気"がくっついてきて……姉さまは出来るんですか?」

「私は出来るよ。だってこれは気を身体に取り入れる上でちゃんと出来ないといけない事だから。……出来なかったら狂うハメになる」

 

 真面目な顔をして黒歌は言う。

 その通りだ。

 仙術の中でも、『外気と内気の合成』を行い"気"を一気に高めて使えるようになるのが、使う上での最大の到達地点で奥義。

 その『外気と内気の合成』が使えるようになったら、ほぼ無尽蔵に仙術による技が使える。

 ただ、そのためには"外気"は選んで体内に取り込まないといけない。

 "瘴気"が身体に入ったら大なり小なり悪影響が出るからだ。

 本当の事を言うと、黒歌は俺と会うまでコレをやらずに"瘴気"もまとめて合成していて危なかった。

 そのために俺と試行錯誤しつつ黒歌に基本的な事を教えて貰いつつ修行したのだけど……流石と言うべきか黒歌のほうが先に成功してしまったのだ。猫魈、実に侮り難し。

 ……ちなみに、その奥義に至るまでの行程として、内気を扱う仙術を黒歌と決めて『地仙術』とし、逆に外気を扱う技術を『天仙術』とした。

 基本『地仙術』が使えればいいけれど、どうしても『天仙術』の方も同時に使えるようにならないとすぐにばてる。

 だから少しづつ難易度の低い内気を扱う『地仙術』の修行をしたいのだけど、白音ちゃんの才能を信じて『天仙術』の基礎も早めにだ。

 

「くっ……姉さまに出来て私が出来ないわけがない!」

「……白音がなんか酷い」

 

 ……この後二時間程で白音ちゃんは天と地、どちらの基礎をマスターした。

 ちなみに習得に掛かったのは黒歌が同じく二時間ほど。

 そして俺は……二週間掛かった。

 

 才能ってやっぱりコワイ!

 

「……応用に入ろう。"内気"と取り入れた"外気"を合成してみて」

「はい。……えい!」

「さっすが私の妹にゃあ。何処かの誰かさんと違ってもう出来てる……ねーリクト」

「……」

 

 ホントに……才能ってこわいね。

 俺が一時間掛かったものをこの二匹は……!

 

「お義兄さん、元気出して」

「うぅっ……」

「にゃははは!」

 

 慰めが身にしみた。

 黒歌は後で覚えてろよ……と、ちょっと復讐してやろうと思ったのは言うまでもない。

 

 

 




書いてて砂糖を吐きたくなった。
とりあえず一言。
主人公爆発しろ。
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