黒歌が可愛くてつい始めた話。   作:楯樰

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遅くなりました。


追い詰める日

 相手女王が倒れた事により試合は中盤戦へと移る。

 一通りインカムからグチグチとした俺に対する文句が流れて、部長から全体に指示が入った。

 

『ともかく。――……少し早いけど中盤戦よ。祐斗、小猫はグランドに向かって頂戴。イッセーは朱乃とそのまま旧校舎周辺の守護を続行。……相手兵士を一通り倒し次第、一度部室に戻ってきなさい。それからイッセーには指示を与えるわ。』

「部長ー、俺は」

『……。散歩でもしてなさい、まったく』

「……はーい」

 

 ちょっと呆れが入ってた。

 ……気持ちは分かるけれど。

 いや、女王やっちゃうのはどうかなー、とは思ったけど……あのまますんなり逃がしてくれるとは思えなかったし。

 一般人じゃ有るまいし、気絶させなくても――って気絶させれば良かったか?

 アナウンスが入らない。つまり相手側に情報を与えず、かつ無力化していける。

 気絶って戦闘不能扱いになるのか、と思い部長に確認を取った。

 

「部長、気絶させたらリタイヤですっけ?」

『確か違ったはずよ……ってアナタ、何をするつもり?』

「いえ、今度敵に会ったら気絶させます。それなら文句無いでしょう?」

『ハァ……アナタってホントに、もう!』

 

 ブツン、と向こうから切られた。

 なんでそんなに怒らなきゃならないのか。

 というか、やっぱり当初の目的忘れてないか。

 あんたの結婚云々が原因でしょうに。

 

 はぁ、と溜め息を吐く。

 地上に降りて、お馴染みの散歩の時の曲を鼻歌で歌いながら歩き始めた。

 

 -------------------------

 

「……なんですか、アレは」

「……私にも、何が何だか……」

 

 空中に投影されるレーディングゲームの様子。

 一人、また一人と倒れていく。

 それは見ている側……駒王学園会長、副会長からしてみれば異様な光景だった。

 ――現在行われているゲームはプロ対アマ。

 御家同士の問題解決として行われる事になった試合だが……聞くだけでもアマチュアであるリアス・グレモリーに勝ち目など皆無であった。

 ……しかし善戦、否、このまま一時間もしない間に勝ちを取るだろう速さで進軍して行っている。

 プロで実質無敗のライザー・フェニックス相手にだ。

 

 生徒会長室でその光景を見る二人にはそれが異様に見えた。

 

「……特に驚きなのがあの兵士……確か三年A組に在籍してる奴良陸人ですか。どうにも悪魔に成りたてとは思えません」

 

 会長が言う。

 

「確かに。あの魔力量は異常ですね。――あそこの『王』であるリアス・グレモリーさんにも迫るレベル……いや、それ以上かもしれませんね。確か神器を沢山持っていると聞きましたが……もしや自分の体を弄っているのでしょうか」

 

 副会長が続けて言った。

 二人の見る先、投影された画面の向こうには鼻歌混じりで体育館の裏を歩いている奴良陸人がいる。

 場違いなまでにのんびりとゆったりしている。

 やる気は有るのだろうか、と二人は思った。

 

「二年の転入生、天野夕麻。堕天使から人外に『変えられた』()堕天使。……ありえるかもしれません。『幽世の聖杯(セフィロト・グラール)』が生命を司ると報告書には書いてありました。――ですが……」

 

 会長は閉口し思考する。

 報告書には乱用すれば亡者が見えるようになる、と書かれていた。

 ……そんな事を今まで一般人であった人間がするだろうか。

 幾ら過去に堕天使や悪魔……異形達に襲われたとしても自らの身体を躊躇なく改造出来るだろうか。

 しかし何かしら力に渇望するようなことがあれば理屈は通る。

 だがそれもオカルト研究部の部長……幼馴染であるリアスの言では無さそうだ、と。

 ならば何故――。

 

「……ソーナ会長?」

 

 其処まで考えて生徒会長――ソーナ・シトリーは思考の海から引き戻された。

 ――兵士である奴良陸人の魔力が膨大なのは偶々であろう。

 ……今気にしていても仕方は無い。

 

「ごめんなさい。……やはり魔力が多いのは天に恵まれた、いや、運が良かったのでしょう。――それよりも今現状はどうなっていますか?」

「今リアスさまが動き出しました。今の間に相手側兵士全滅、リアスさまの損失はゼロです」

「……」

 

 ソーナ・シトリーは頭を押さえる。

 その理由は相手女王を瞬殺した規格外の兵士でもない。

 女王と連携して敵を撃ち取っていく赤龍帝の兵士でもなく。

 急速な成長を遂げた騎士に、術で無力化して倒して行く戦車でもない。

 

 一番はリアス・グレモリーという幼馴染が10日という短い期間で、プロを凌ぐ強さにまで眷属を鍛え上げた事だった。

 

 ――後の話だが。

 ソーナ・シトリーの邪龍を宿す眷属がこう語る。

「多分会長が眷属の育成に熱心になったのは兵藤の初試合のせいだ」

 それは彼の夢が叶った時、自分の受け持つ生徒に聞かせたり聞かせなかったりするが……それはまた何時かの話だ。

 

 -------------------------

 

 駒王学園レプリカのグランド。

 そこでは小猫ちゃん、木場、遅れてきたイッセーが戦っている。

 ――そんな最中、現在俺は相手の僧侶……ライザーの妹であるレイヴェルと戦闘風景を見ていた。

 

「……あ、お宅の戦車さん……えっとイザベラだったけ。……イッセーにやられたけど使わなくて良いの?」

「……中々やりますわね、あの赤龍帝……スケベだけでは無いですか。ユーベルーナも貴方にやられてしまいましたし、今更使う相手は居ませんわよ。――私の持つフェニックスの涙は今、よくてサクリファイスに一度誰か使える程度の価値しかありませんから。それなりに精製にも時間が掛かりますし。……なので今回はもう使う気はありませんわ」

「いやーごめんね? 気絶させれば良かったと反省している」

「変な事で謝らないで下さいまし。……ハァ、まったく」

 

 まぁ、お門違いも良い所だ。

 本来倒すべき相手なのに、気絶させれば良かったって……アホかっての。

 

「それでおぜうさんは戦わないんだよな?」

「えぇ。どうせ結果は見えていますし。それに疲れるのは嫌ですから。……それに今回の結婚については兄が悪かった所もあると思いますから」

「まぁ、これから結婚する相手の前でディープキスなんてするのは常識知らずだわな」

「……ですわね」

 

 肩を竦めさせて相槌をうつレイヴェル。

 見ていたら小猫ちゃんが僧侶の一人を倒し、木場が騎士の残り一人を倒していた。

 ……これでもう残りは此処の『僧侶』と『王』だけ。

 

「ま、もう俺が出張らなくても勝てると思うし。……というかやらせてくれないんだよなぁ……」

「怖いですわ、貴方。本当に元人間なのか疑ってしまいますわよ……」

「はっはっはー照れるぜー」

「……棒読みで言われたらツッコミをする気も失せますわね。……それでは、程々になさって下さいな。ちょっと私は気になる事がありますのでこれで」

「ばいびー……っと」

 

 そう言って残り一人の僧侶はイッセーの下にゆったりと歩いていった。

 さてと俺は――……ちょーっとやらかそうか。

 

「おーい、木場ー、小猫ちゃーん。ちょっとこっちに来てー」

 

 一息ついている二人に声を掛けて、俺は手招きする。

 

「どうしたんすかせんぱーい」

「イッセーは関係ないぞー作戦通り先に行ってろー」

 

 ハテナマークを頭上に飛ばしながらイッセーは部長と朱乃さん、アーシアの向かった新校舎の方へと歩いてった。

 そしてこちらに来た二人。

 

「なんですか、リクト先輩」

「……なんですか」

「おつかれ、二人とも。……体調はどうだ?」

「……?」

「大丈夫ですが……?」

 

 まぁ、なんでこんな事聞いてくるかなんて分からないわな。

 

「うんうんそれならよし。……で、今回全力出せた?」

「いえ……少し消化不良です」

「小猫ちゃんと同じく僕も……」

 

 そっかそっか。

 

「じゃあ……――丁度いいから俺と模擬戦しようか。あっちはイッセー一人行っただけで十分だろ。……来いよ、本気の稽古付けてやる」

「……へ?」

「……お義兄さん馬鹿ですか。今回の目的は」

「リアス部長の婚姻破棄、だ。それは俺も分かってる」

「……なら、どうしてでしょう」

 

 木場が聞いてくる。

 わかってないな、多分。

 

「今回ちょっと調子に乗ってたろ。ちっとばかし力つけたからって慢心して。――そんなので勝てるわけないだろう」

 《――リアス・グレモリー様の『女王』一名、『僧侶』一名リタイヤ》

「「……っっ!!」」

「言わんこっちゃない。勝てたのに慢心しやがって……まぁ、イッセーが一人で戦う事になってんなら模擬戦もお説教も試合の後だ。行ってやれ、二人とも。多分残りが実質『王』一人になってるからライザー・フェニックスは本気でくるぞ。不死鳥は精神の続く限り無限に生き返る。例え剣で刺したままにしようが、例え相手の気を滅茶苦茶に乱そうが即全回復だ」

 

 不死身の恐ろしさはそこにある。

『フェニックスの再生』とはつまりダメージを受ける度にオートでケアルガがかかるようなもの。

 そんな毎ターン全回復してくるようなラスボスと戦うのだ。持久戦はお勧め出来ない。

 短期決戦。しかも一撃必殺の力が必要だ。

 

「くっ……!」

「……分かってたんですか?」

「ライザーはチャラいがあれでも好戦績を残してるんだ。……俺はアイツの事もアイツの眷属の事も油断してなかったよ」

 

 だから俺はユーベルーナを倒す時、フェイクで作ったとはいえヒト一人消し飛ばせる威力の魔力球を作ってた。

 鼻歌混じりで散歩していたとしても、俺は幾ら各下の相手だろうと決して油断はしていない。

 慢心は強者必衰の理だ。

 何処かの金ぴか王のように。

 

「ほら、さっさと行ってこいや。――部長の心が折られて居なかったら俺は助けに入るからさ。急がんと手遅れになるぞ」

「わかりました……!」

 

 小猫ちゃんは頷いて走り出し、木場も持ち前のスピードで走りだす。

 

「さて、と。……じゃあ俺は上空から眺めてましょうかねー……」

 

 悪魔の翼を出して俺は新校舎の屋上、部長らの居る場所の上空へと飛んだ。

 

 早く終わらして黒歌とデートしたいなー、とか考えながら。

 ……ふざけてるだなんて誰にも言わせない。

 こちとら大真面目だよバカヤロウ。

 

 ――――そうして最後の戦い(終盤戦)が目前にて始められた。




そろそろ二巻が終わります。
小猫ちゃんの活躍無くてごめんなさい。
多分次回も無いです。
余り出番らしい出番がないので次のお披露目になると四巻辺りになるかも。

ではでは。
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