結局小猫ちゃんの活躍は書けなかった。
……無念。
私が着いた時、イッセー先輩はボロボロの姿で戦ってた。
先輩の左腕にあるブーステッド・ギアに今、光はない。
禁手に至るか、至らないかで使えないかもしれないと合宿の時言っていたけれど……結局間に合わなかった。
だから今回、倍化の能力も少ししか使えないと言っていた。
……ボロボロの姿にまでなって部長のために頑張っている。
だから私が頑張らないといけない。
"内気"と"外気"の合成。
良い気だけを取り込み、悪い気だけは取り込まない。
お姉ちゃんとお義兄さんに習った『地仙術』と『天仙術』。
……私はもう仙術は恐くない。
なぜなら大切な人たちを守れると知ったから。
優しいお姉ちゃんともう一度引き合わせてくれたから。
掌底を焼き鳥の腹に打ち込んで合成した膨大な気を私は送り込む。
――血を吐いたようだけど効いていなかった。先輩の言う通り、気の巡りも肉体と一緒に再生された。
あぁ、本当に心が折れそうだ。
幾ら仙術を克服しても、力を付けても……敵わない者には敵わない。
でも情の深いリアスお姉さまの事だ。……今の私よりも辛いだろう。
『滅びの魔力』――その性質上、迂闊にリアスお姉さまは攻撃はできないから……。
私は気を活性化させて治りが早くなってるとはいえ、火傷は今もこうして出来て行く。
祐斗先輩も攻撃は効かず、すっとダメージばかり増えていく。
そしてイッセー先輩は――もう見るに堪えない。
それを、その光景を私達の『王』は一人受け止め……。
「――リザインします。もう、お願いだから――この子たちを傷つけないで……っ」
――れなかった。
私達はまだ戦える。
でも私達の王がもう限界だった。
――……そして勝てたはずの試合が終わる。
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私は呆然としていた。
横でアーシアが涙を流して倒された。
怒った朱乃は目の前で倒された。
「俺が部長を――守って……ッ!」
「! もうやめて――イッセーっ!」
そしてイッセーが今、成長段階らしいブーステッド・ギアのせいで強化もうまく使えずに殴られて、蹴られて……それでも顔を上げて、睨みつけて戦ってくれてる。
「部長!」
「……リアスお姉さま!」
祐斗と小猫が来たけれど……あの不死身には勝てそうにない。
相手はフェネクス。聖獣一匹にも数えられる種と同じ不死身の悪魔。
祐斗が氷の魔剣で斬り付けるけど、炎は消えない。
小猫が相手の気を滅茶苦茶にしようとしているようだけど、燃え盛り治ってしまう。
あぁ、小猫が燃やされてしまう。
祐斗が
どうしてこうなってしまったのだろう。
リクトのおかげでしっかり修行は出来た。
皆は力を付けれたし、私も少しだけ成長できた。
なのに――何故?
イッセーが動かなくなった。
あぁ、この子は……私の為にって……『リアス部長の為に』って。
祐斗も新しい火傷の痕が見ていて辛い。
小猫の小さい身体がボロボロになっているのも見ていて心が痛くなる。
……あぁ、そうだ。私が負けを宣言すれば……。
「――リザインします。もう、お願いだから――この子たちを傷つけないで……っ」
三人の私を咎める声が聞こえる。
……ごめんなさい。私は――。
――――グレイフィアの声がフィールドに響いた。
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試合が終わり、治療のために運ばれた部屋。
そこに俺は、肩に黒猫を乗せて見舞いに来ていた。
「……お疲れさま、小猫ちゃん」
「……先輩っ! どうしてあの時助けてくれなかったんですか! イッセー先輩も祐斗先輩も私も……あんなになってたのに」
「俺は部長の心が折れなかったら助けに入ると言った」
見ていたから知っている。
イッセーは気絶しながらも立ち上がって戦っていた。
木場は無駄だと分かって居ても斬り付けに行っていた。
小猫ちゃんも諦めずに気を送り込み戦っていた。
……一番に負けたのは部長だ。
「っ……でも!」
「王様は部下が目の前で殺されても常に冷静でならなきゃらない。……優しくてもいいさ。そりゃあ民から好かれるような眷属を大事にする王様でもいい。だけど王が挫けてしまえば、幾ら部下の士気が高くてももう集団としては機能しない。その辺はチェスのゲームと一緒だ」
あそこから支えられて部長が立ち上がれば、俺は助けに入っていた。
でも負けてしまった。……それは気持ちの面で、だ。
小猫ちゃんも分かっているようで、悔しそうに顔を歪めた。
「はぁ……ともかく! ……これからリアス部長の結婚式が始まる。付き添いで一緒に行こう、小猫ちゃん。――まだ寝てるイッセーは恐らく後から来るからさ」
「後から……? ――もしかして……」
「さてはて。ちょろっと夢の中で激励送ってきたような送ってないような。――負けたけど勝つぞ、小猫ちゃん」
「……」
回復系神器で小猫ちゃんを諸々回復させて、俺は彼女を連れ立って部屋から出た。
場所を移して冥界。
リアス・グレモリー、ライザー・フェニックスの結婚式。
木場にもこれから起こる事を説明して、一応怒りの矛を収めて貰った後。
何時か入ってくるリアス部長と付き添いの朱乃さんを待ちつつ、一時的に入れる許可を貰った俺は、木場と小猫ちゃんの二人と会食を口にしていた。
「それで、何でリクト先輩はあの時助けに入ってくれなかったんですか?」
「知りたい? じゃあ、……小猫ちゃん説明」
「嫌です。……口が塞がっているので」
「いや、今何も食べて……うん何でもないよ。……ちっと赤い髪のお嬢さんに灸を据えるためさ。普通自分の人生が掛かってるのに慢心するかね? お前らもだけど」
「……ごめんなさい」「……すみませんでした」
二人が気まずそうな顔をして顔を背けながら言う。
いや、謝る相手が違うでしょうに。
「まぁ、この場では言わないでおくよ。さて、新郎新婦のご入場だ」
パチパチと何処からともなく拍手の音がしはじめる。
音の発生源を見ると部長が副部長を連れて一段上の貴賓席に着いた。
魔王のサーゼクス・ルシファーを挟んで反対側にライザーが座る。
しかし、待ったを掛けるように「頼もう!」と一つ声が響いた。
「同じく花嫁泥棒もご登場っと」
「……馬鹿で変態な先輩を持つと大変ですね」
「小猫ちゃん、何時になく饒舌で毒舌だね……」
大きな扉を開いて現れたのは赤龍帝の篭手を身に付けた兵藤一誠。
……これからこの結婚式の花嫁を奪おう、という大層な奴だった。
「……勝てるんでしょうか、イッセー君は」
「勝つさ。俺が断言してやる」
始まるイッセーと部長の兄であるサーゼクス・ルシファーの問答。
……そうしてイッセーの一世一代の大勝負が始まった。
イッセー君の戦いは省略。
原作と少しだけ変わる展開になりますので。
というわけで次回で二巻終了。
間章挟んで三巻です。
ではでは。