黒歌が可愛くてつい始めた話。   作:楯樰

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再度注意しますが、今章は「ぬらりひょんの孫」要素たっぷりです。
HSDD要素は名称が出てくる程度だと思いますので、苦手だと思う方はページを戻り"間章最終話"に飛んで頂き、三巻に入って貰えればと思います。

それでは遅くなりました。
間章第一話です。



木葉舞のダイグレッション
実家に連れて行かれた日


 高等科、二年の秋。

 駒王学園の生徒は修学旅行に、紅葉が綺麗なこの時期京都へと行く事が決まっていた。

 宿泊施設は京都の中でもそれなりに高級とされるサーゼクスホテルとセラフォルーホテルに泊まるとの事。

 ……ツッコミを入れたくなったけれど堪えた。きっと言っても経営者の妹とその女王しか分からない。痛い子で見られることは必至だ。

 

 そして仕送りだけをしてくる両親にその事を伝えたら――……危うく俺の修学旅行が無くなりかけた。

 

「……どうしてなの?」

『いや、どうしてって言われてもなぁ……母さん、どうする? 説明するか? ……うん、うん――あー、母さんに代わるぞ』

「……うん」

 

 電話の相手が変わる。

 

『もしもし陸人。口で説明してもわからないと思うから――母さんたち、一度ソッチに帰るわ。……いいわね?』

「……」

 

 内心、「ただ事じゃないな」と思った。

 基本海外暮らしなのだ。

 前世と変わらず二人とも。

 少し、日本から逃げているんじゃと思ってしまうが、そういう訳じゃないと顔を背けながら言っていたので正直な所は分からない。

 ただ、とんでもない事が起こりそうだ、と心の内で思っていた。

 

 -------------------------

 

 二日後。帰ってきた二人。

 必需品だけらしい軽めの鞄をリビング付近に置いて、両親は黒猫を抱く俺と机を挟んで対面していた。

 とても険しい視線でこちら……主に黒猫の方を見ていた。

 

「陸人。とりあえずこれから母さんの実家に帰ろうと思う。……いいな?」

「……急すぎてアレだけど。……というか初めてじゃない? 母さんの実家に行くのって」

 

 一度目の人生からして初めての経験である。

 

「そうよ。……ちょっとこの人が苦手でね……!」

「……ははは」

 

 肘で小突かれる我が父はとても気まずそうに顔を背ける。

 

「んん! その前に一つ聞かせてくれるか。……その黒猫は何だ」

「うん? 二年くらい前に」

「そういう話じゃない。――その黒い猫又は何だと聞いているんだ。……正体を現せ化け猫」

「――ッ」

 

 俺も驚きだが手元の彼女も、驚きで身体がはねた。

 黒猫……黒歌から、仙術を応用した念話が来る。

 

『……陸人。コレってどういうことなの……』

 いやいや俺も驚きなんですが。……マジで。

 なんで二人とも分かったの……。そりゃあ俺は家の中では黒歌の存在だとかいうモノはずらしてないけど……。

 でも黒歌は確かそれでも仙術使って猫又の気配は散らしてたろ? なんだって……。

『……じゃあ本当に陸人は何も知らないんだね』

 ……うん。というかそろそろ姿見せた方が良いと思う。

 母さんと父さんからの殺気が凄い。……というかなんでこんな殺気出せるの!?

 

 念話を切られ、黒猫が腕の中から出て人型になる。

 着物を正して彼女は俺の隣に座った。

 

「猫又、名前はなんだ」

「……黒歌。黒い歌と書いて黒歌よ」

「お前は何を思ってウチの息子に近づいた。――返答次第では俺が直々に滅す」

 

 父さんが手に持つのは筆記体で文字が書かれた札。

 ……アレ、凄い退魔の気配がするんですが……って!

 

「――や、ちょっと待っ」

「陸人は黙ってなさい! ……それで?」

 

 母さんも手元の妙に長いモノに手を掛けていた。

 ……あれも凄い退魔の気配ががががが。

 

「私はお宅の息子さん、陸人さんに拾われただけです。……恩義も感じています。決して仇なそうだなんて考えておりません」

「証拠は」

「それは……」

 

 なんでこんな事になっているのか。

 なんでウチの両親二人からこんな気配を感じるのか。

 とりあえず言えるのは、

 

「落ち着けよ三人ともッ! 母さん父さん! 黒猫が彼女だって事、俺は知ってたから!」

 

 この剣呑とした空気は好けなかった。

 

「……どういうことだ、陸人」

「説明してくれる?」

 

 どうしましょう、今度は矛先がこちらに向いてしまいました。

 ……うちの母親と父親がカタギじゃ無さ過ぎる!

 

 

「……で?」

「いや、でって言われても……はい。黙ってて御免なさい」

「……よろしい」

 

 黒歌が家に居候する事になったあらましを話して一応の理解は貰えた。

 でも流石にあれだ。

 黒歌が俺の事を騙して居候していたならともかく、俺が認知していたために実質は同棲生活のような状態だったのだ。

 親としては思う所があるのは分かりきったことだった。

 

「それでだ。陸人、お前は妖怪についてこの世界の裏の顔について知っているんだな」

「……はい。知ってます」

「妖怪については知っているの?」

「それは、あまり……でもなんで妖怪?」

 

 気になった。なんで妖怪の話を持ちだしてきたのか。

 今の所皆目見当つかない。

 

「……うーん。俺の口から言っていいものか。とりあえず母さんの実家に行くぞ。多分その方が早い」

「……。お父さん? 行きたくなかったら行かなくてもいいのよ?」

「うー……でもそろそろ顔出しとか無いと……」

 

 えらく弱々しい我がファーザー。

 そんなに母さんの実家が苦手なのか。

 よくわからん。

 

「とにかく行くぞ。多分今から行っても夜には着ける。昼も嫌だけど……夜かぁ……」

「はいはい。……じゃ、行くわよ。……黒歌さんも一緒に行く?」

「えっと……」

「一緒に来なさいな。これから陸人と一緒に暮らすのなら知っておいた方が良いから、ね?」

「あ、いえ、私は……」

 

 もじもじと言葉に詰まる彼女。

 あーうん。だってそんな関係じゃないし、俺たち。

 ……いや、俺はそうなりたいけどさ……って言っても駄目か。

 

「ほら、準備準備。あ、多分日帰りは出来そうにないから着る物も持って行っときなさいよ」

「わかった」

「……うぅ……」

 

 そうして車に詰め込まれ、電車で東京へ。

 浮世絵町という町へ行く事が決まった。

 

 

「ゴメン、黒歌。巻き込んだっぽくて」

「ううん、いいのにゃ。私の方がリクトのこと巻き込んじゃってるんだから……」

 

 両親が帰宅し二時間後、新幹線の二人席。

 俺と黒歌は並んで座っていた。

 前の席に座る両親二人は多分、眠ってる。

 飛行機で飛んですぐに……だから、時差的に辛いものがあってもおかしくない。

 ……ただ二人の体力を考えると実は起きて話を聞いているかもしれないが、まぁ良いだろう。

 特に気にする事はない。

 

 ただ、寝ているかもしれないのは確かなため、小声で話をする。

 

「それにちょっとリクトの事知りたかったから、良い機会だなって思ってる」

「……そっか」

「うん。……にしてもリクトの親はなんの仕事してるの? いつもは海外に居るって聞いたけど」

「さぁ? 外資系の会社に勤めてるって聞いた事はあるけど他はさっぱり」

 

 ただ、退魔は関係なかったと思うけれど。

 というか世界の裏の顔って言ってたし……エクソシストとかじゃないのは確か。

 札って事は陰陽師? でもなら悪・即・斬だから問答無用で黒歌の事を殺しに掛かってるはずだ。

 つまりまだ分からない、か。

 

「気になるにゃん……」

「……うん」

 

 会話をしつつも時間は流れる。

 しばらくして東京駅へと着いた。

 

 -------------------------

 

 浮世絵町。

 文明化の進む現代日本でも、何処か江戸の風情を未だに感じさせる町。

 その理由は分からない。

 ……ただ此処に立った時、懐かしいモノを得れた。

 来た覚えがある、ような気がする。

 

「さて、到着。……此処が母さんの実家よ」

「えー……っと。武家屋敷ってどういう事?」

 

 にんまりと笑う母さんは答えない。

 目の前にあるのは門。

 古風溢れる武家屋敷の門であった。

 ただ思うのは……少々一般人の実家と言うには規模が大きいように思う。

 

「うぅ……居るんだろうなぁ……今日に限って家に居ないとか無いだろうし……ハァ」

「もう、アナタ……そんな何時までも私のお父さんの事恐がらないのよ。……さ、入った入った」

「……まったく、訳が分からないよ……」

「同じく。……というか凄い妖気を感じるのにゃあ」

 

 戦々恐々としながら、俺は目の前の大扉を開ける。

 ……そして、気のせいでなければ。

 あぁ多分気のせいだろうと……そう思いたいのだけど。

 ――少し開いて覗いた先に、手乗りサイズの口が3になってるナニかが居た。

 

「どうも」

「あ、どうも。失礼しまし「なーにやってるのよ。ほら、行く!」ちょ、母さん押すなって!」

 

 押されて敷地の中に入る。

 ……見渡せば極道系のドラマを想起させるような屋敷に庭。

 そして至る所から感じる異形からの視線。

 さっき見た3の口をした妖怪が俺の服を引っ張る最中。

 俺は驚きで体を硬直させて思う。

「母さんの実家は妖怪屋敷らしいです」と。

 そして、お嬢が帰ってきたぁああああ! なんて叫び声が至る所から聞こえてきたのを俺は忘れ去りたい。

 ……母さん、アンタお嬢って……。

 突っ込む事も出来ないまま、駆け寄ってくる白い着物を着た美人さんが一人。

 

「お帰りぃいいい! もう! ずっと帰ってこなくて心配したのよ!」

「ははは。ごめんね母さん。それからただいま。……お父さんとお爺ちゃん達いるかな」

「うん居るわよ。あの人は丁度出掛けたから今居ないけど。……アレ? もしかしなくとも……陸人くん?」

「え、まぁ……」

 

 母さんが母さんというと言う事は……もしかしなくともこの方が俺の祖母で。

 若い。若すぎるくらい若い。

 そして瞳が人とは違う。

 

「始めまして。妖怪の雪女、奴良(ぬら)氷麗(つらら)です。お婆ちゃんって気軽に呼んで頂戴ねっ♪」

「は、はぁ……」

 

 お前のようなお婆ちゃんがいるか、と声を張り上げてニコニコと笑う彼女に言いたかった。

 ……自分の血に4分の1妖怪が混ざっている事が確定。

 お婆ちゃんしてないお婆ちゃんに手を握られながら、俺は改めて自分について考え始めた所だった。

 

 




HSDDではメスゴリラの雪女しか居ない事になってますが、近作では「妖怪の雪女(容姿端麗)」と「魔物の雪女(メスゴリラ)」の二種類の雪女が居る事とします。
でないとぬら孫の原作主人公のヒロインがメスゴリラになるので。
……やばい、鳥肌立ってきた。
氷麗ちゃんがメスゴリラとか嫌過ぎる。

ではでは。
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