黒歌が可愛くてつい始めた話。   作:楯樰

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手合せする日

 会談の後、オカ研と教会の二人は場所を移した。

 目を覚ましたイッセーには部室を出る時に何が起こったのかを話し、今はローブを脱いだゼノヴィアに対して鋭い目つきを向けている。

 ただ、あの顔は「あぁ、あの戦闘服……イイな」とか怒りながら考えている顔だ。

 これから手合わせをする、という所でそんな事を考えていたイッセーはぶれない。

 俺は小猫ちゃんと「アイツぶれないね」的な話をしていた。

 

「さぁ、手合せ願うよ。……エクスカリバー壊しちゃったらゴメンね」

「フン……貴様に出来るものならな。だが、手合せをするからには名を名乗り合うか。私はゼノヴィア……悪魔よ、名は何と言う」

 

 木場とゼノヴィアが双方共に剣を構える。

 

「……木場祐斗。聖剣計画の生き残り。――君達の先輩だよ」

「……なるほどな。君から感じられるその殺気の理由が分かったよ……じゃ、始めようか」

 

 木場の剣は無骨で飾り気の無いブロードソードだ。

 強度だけは相当なものと見える。

 ……何をするのかは皆目見当つかないが、破壊の名を冠する聖剣相手にそれで大丈夫なのか、と味方ながら思ってしまう。

 

 そして二人は交差した。

 接触した剣同士が火花を散らす。

 

 弾き合い、押し合い、なぎ払う。

 

 ……破壊の聖剣と名乗るだけあって少し、少しづつブロードソードの方が耐え切れなくなり罅が入っていく。

 が、寸分違わないブロードソードを同化させるように補強・強化していっている。

 それに加え今度は刀身に魔力を倍込めていたようだ。

 

 ……それからも打ち合いは続く。

 今度は木場がエクスカリバーの全体に高速で打ち込み始める。

 火花が散りすぎるあまりに花火が炸裂しているようにも見えた。

 

 するとゼノヴィアが突如として大振りに聖剣を振り、木場の攻勢を殺ぎ――そして剣先を地面に突き刺し『破壊』する。

 

「くっ――!」

「フン――」

 

 ゼノヴィアを中心にクレーターが生まれ、二人は離れた。

 見ていて少しハラハラしたけど……怒りに身を任せず、本来の戦闘スタイルで戦えてる。

 ……ただ、すこし動きがぎこちなかったのと、沢山の剣で翻弄するという事はしなかったが……それくらいだろう。

 

 ――もっとも、木場の狙いは大まかにだが判ったから、それも納得できたけど。

 

「中々、やるよう、だが……ふぅ。……疲れてきたんじゃないか」

「まだまだ、……と言いたい所だけど、これから紫藤さんともやりたいからね。この辺りで幕引きさせてもらうよ。……ただ一つ、手合せした仲としていいかな」

「……なんだ」

 

 木場が剣を虚空へと消し、聖剣に聖骸布を巻くゼノヴィアに声を掛けた。

 

「――アーシアさんは僕の仲間だ。例え教会が彼女の事を魔女だ、悪魔だと言っていたとしても……君達が彼女に、僕の仲間に害を為そうとするならば僕は命を賭しても君達を殺す」

「……宣戦布告ととってもいいのか、それは」

「いや、何時か君とは決着を付けたいと思っているけどね。……とりあえず謝ってくれないかな。アーシアさんは例え殺そうとしてきた人間でも、目の前で傷つく人を見て救いたいと願う、願える事が出来る――君達の言う都合に合う様な紛い物の聖女なんかじゃなく、彼女は本当に『聖女』だ」

 

 イッセーとアーシア、そして天野が息を呑む。

 二人は木場の行動に対して。一名は何時かアーシアの尊さを理解していたモノ。

 ……ついさっきまで、アレだけ身の回りを省みない行動をしていた木場にどんな心情的な変化があったのかはわからないが、木場は仲間想いな奴に戻っていた。

 

「……一応、礼と謝罪は言わせてもらうとするよ。……だが、聖女という言葉は残念ながら素直に認める事は出来ないなのでな。すまない」

「そうか。やはりそれが教会のやり方……いや、それでいいよ。――イッセーくんもそれでさっきの僕の事は許してくれないかなっ!」

 

 一瞬顔を歪めたが再度普通の表情に戻り、イッセーに対して木場は問う。

 

「あぁ、いいぜ木場! 俺が言いたい事は全部言ってくれたからな! ……後で何があったか聞かせろよ!」

 

 対するイッセーは、キザな野郎だ、と呟きながらも満更嫌そうではなかった。

 そして木場も、いつものイケメンスマイルを浮かべて返事とした。

 ……部長も少し胸に(つか)えていたものが取れたようで、安堵の息を吐いている。

 

 俺も、復讐に捕らわれすぎた木場の姿を見て居たくはなかった。

 復讐をするのは構わないと言ったが、やはり見ているとどうしても止めたくなるのが俺の性だ。

 ……いや、人外でどっちつかずである自分に(さが)なんて有って無いようなものだけど。

 

 復讐はやり終えた後、どうしようもない喪失感が残る。

 復讐を支えに生きては駄目だ……と思う。

 ……果たせばきっと己の死を望んでしまうから。

 

 そんな心情である俺は、木場に近づくイッセーとアーシアを見る。

 笑って近づいてくる木場は――――その場で倒れた。

 

 木場のことを呼ぶ声が旧校舎近くの広場で響く。

 

 

「――なに、心配することはないさ。ちょっとした魔力の使いすぎと疲労だよ」

「……よかったです……」

 

 俺の診断結果に安堵するのはアーシア。

 同じく続くようにオカ研の皆が安堵した。

 ――にしても本当に『理解』してしまうとは思っていなかった。

 起きればきっと使えるようになっているだろう。……復讐を違うアプローチで果たすつもりか。

 ……いや、彼等の願いを叶えるため。俺があの合宿で言ったように『仲間を守るため』なのか。

 まぁ詳しい事は本人が起きてから聞く事にしよう。

 

 まずは側に立っている人間への用事を済ませよう。

 

「で、イッセーの幼馴染さん。木場が倒れたし、俺と試合うか?」

「げ……」

 

 なんでイッセー「げ」って言った? あぁん?

 ……後であの合宿でやった奴をやってやろう。

 いや、なんで皆そんな可哀想な顔でイリナさん見てんのか。

 俺ってそんなに皆にとって悪魔か何かか……って悪魔だわな、うん。

 

「ハァ……で、紫藤さんであってるよな? どうする?」

「私としては、その……イッセー君とやりたいかなーって」

「えっと、マジですか?」

 

 モジモジと答える紫藤イリナ。

 ……大概乙女チックな奴だな、と思いきや所がどっこい。

 

「えぇ! だって久しぶりにあった幼馴染が悪魔になっているだなんて! これはもう私が救って(殺して)上げないとダメよね!」

「……」

 

 イッセーは唖然。

 空気が一気に残念になった。

 ……なんだかんだと言いつつ、結局手合わせをやり始めるイッセーは良い奴だと思う。

 

 いつの間にかドレス・ブレイク覚えてやがって一騒動あったが、聖剣に少し斬られたイッセーの負けで終わった。

 

 -------------------------

 

 木場が目を覚ました頃には既にイッセーの試合は終わって、二人は帰っていた。

 まぁ教会の上の連中に今回の試合の事は一切伝えてもらわないようお願いし、今日の所は手打ちにしてもらえたので大きな問題にはならないだろう。

 

 場所は移って再度オカルト研究部の部室。

 木場が部長の前に立ち、黒猫を抱いた俺と小猫ちゃん、アーシアと天野に挟まれたイッセーがソファーに座っている。

 副部長の朱乃さんはお茶を用意しに行っていた。

 

「それで祐斗。話、聞かせて貰える?」

「はい、部長。……自分は何のために生きているのかを此処の所ずっと考えてました。そのせいで少しボーっとしたりしてましたし、少し皆にキツイ事を言っていたような気がします」

「そうね。……おかげで球技大会ではイッセーのこか……にドッジボールの球が当たって惨事になってたものね」

「……ごめん、イッセー君」

「あー……いいって。アーシアに治して貰ったから」

 

 少し、イッセーは腰が引けていた。

 ……相当痛かったらしいことが伺える。

 その後体育館裏でアーシアに下腹部に回復かけてもらったらしいから、イッセーにとって良かったのか悪かったのか見ていたこちらとしてはさっぱりだけども。

 木場も少し想像したのか顔を顰めていた。

 

 あの痛みは男にしかわかんないもんね。

 俺は男だから分かるよ。

 

 俺は女じゃないからね。……フフフ。

 ――おっとダークサイドに堕ちかけていた。

 

「……で、それがどうして今日あんな事になったの?」

「えぇ。丁度あの会談の時あの合宿でのことを思い出してました。……リクト先輩が僕に言ってくれたことなんですが、それについても少し考えてたんです。……それであの二人がアーシアさんを殺そうとしていたのを見たら――……なんだか考えてたこと全部吹っ切れて、イッセー君の代わりにあの二人を止めてました」

 

 木場は自分でも分からない、といった顔で苦笑していた。

 

「……そう。それで……――祐斗はまだあの剣に復讐をしたいのかしら」

「それは思ってます。――でもそれはただ破壊する事ではないです。まず今は……」

 

 そこまで言って口を噤んだ。

 

「どうしたの?」

「えっ……はい。……その、皆を守れるようにと。それにあの子達の願いを叶えて上げたくて――これを」

 

 そういって少し恥ずかしげに照れる木場が創る――いや造るのは一本の魔剣。

 ……それを見て俺もだが、皆が目を丸くする。

 

「――これって」

「エクスカリバー……の魔剣の姿。破壊の聖剣を『理解』して創った魔剣。――名付けるなら "破壊の魔剣" 」

 

 その強度・性能と言った出来栄えは見る限り本物、いやそれ以上。

 感じられるオーラは赤黒く禍々しい。

 

 木場が言う。

 

 ――自分と聖剣計画の犠牲になった子供たちの始めの願いはエクスカリバーの使い手になる事。

 

 ……その願いを叶えたいと木場は言った。

 その創られた魔剣は……『聖剣計画の被害者の子供たち』にしか使えないよう、想いを込めて創造された神秘性を高められた剣で。

 木場の想いを乗せてその魔剣――『エクスカリバーン・ディストラクション』は創られた。

 

 

 ただ、問題が一つ二つ。

 簡単な能力なら付与して『破壊の魔剣』をベースに魔剣を作れると言うのだから――これはもうコカビエルだなんだと言っている場合ではない。

 ……俺もあのレベルの聖剣・魔剣は創れるけども。

 

 ……いや、俺は知らないんだ。

 木場がこんな赤い弓兵の真似事をするようになった理由を俺は知らない。

 

「……お義兄さん」

「……ハハハ……どうしたんだい小猫ちゃん」

 

 だから小猫ちゃん……お願いだからそんなジト目で見るのは止めて。

 

 

 朱乃さんの入れてくれたお茶で一息つき、驚愕を収める。

 瞑目していた部長は口を開いた。

 

「少し驚かされたけど、とりあえず良いわ。……祐斗はこれからどうするつもり?」

「僕は……あの二人の手伝いをさせて貰いたいと思います。そのためにも――部の皆には手伝って貰いたいんです」

「……でもグレモリーの名を出したから……私は大きく動く事は出来ないわ」

「はい。……できれば転生悪魔の小猫ちゃん、イッセー君とその使い魔である天野さん――それから良ければリクト先輩に手伝ってもらいたいんです」

「……なるほどね。ドラゴンが協力し、そのドラゴンが自分の使い魔と仲間に力を貸してもらう事で関わると。……それなら問題はないものね」

 

 部長にそう言って、木場はこちらに向き直り頭を下げる。

 

「四人にお願いします。……僕と、僕のために犠牲になってくれたあの子たちのために……力を貸して下さい」

 

 ほぼ直角なまでに腰を折り、頭を下げる我が部の貴公子。

 それに対してイッセーがまず了承し、天野もそれに連れて了解。

 小猫ちゃんは俺の方を見て、俺の返事を待っていたようだった。

 

 今木場の思う復讐は、単純に破壊する事ではなく『エクスカリバーを魔剣に変える事』だと彼は言った。

 その過程でエクスカリバーの破壊を行うが、前の破壊だけを目的とする復讐より何倍か良い。

 ……その復讐はカタチとして残る。破壊での復讐は終わった後空しいばかりだ。

 

 まぁ、その復讐の手伝いなら俺も良いと思う。

 自分も了承し小猫ちゃんも頷く。

 そうして俺含めた四人は木場に力を貸す事となった。

 

 

「……朱乃……私たち除け者にされてる」

「……そうですわね……」

 

 部長と副部長は皆に聞こえないようぼやいていた。

 




木場がやっちゃった回。

んん? と思った方に補足。

エクスカリバーン
Ex.Caliburnとも。カリバーンは折れた王賜剣で不幸不吉を呼ぶと言われるらしい。
HSDDではコールブランド(カリバーン)が現存するため、差別するために本来とは外れたという意味でのEx(エクストラ)

ちょっと更新滞ります。
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