――夜中、午後十時。
「いよいよです。……準備はいいですか、オカ研の皆さん」
「大丈夫よ、ソーナ。……一応聞くけど帰りたいヒトは居る?」
誰もいない。居るわけがない。
「じゃ、行くわよ皆!」
リアスを筆頭に生徒会の敷いた結界の中へと突入した。
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「コカビエルッ!」
「ようこそ、紅髪の姫。ご壮健のようで何より。……どうだったかな、俺様が差し上げたプレゼントは」
「――っ! ……グレモリーを代表して、私たちが相手をさせてもらうわ!」
「この俺様を倒せるとでも? 魔王の妹君は冗談がお上手だ。だがその前にちょっとしたショーをお見せしようか」
「ッ! ケルベロス――!!」
「その通り。冥界から連れてきた。……さて、出来たかバルパー」
コカビエルが指を鳴らし、彼が冥界から連れてきたケルベロスがグランドに5匹現れた。
続くようにしてバルパー・ガリレイが敷いていた魔方陣が輝く。原型を留めていた『破壊』と『擬態』の聖剣をベースに鉄片と化していた四つの聖剣の核が吸収されていく。オカルト研究部のメンバーも目を見開き、現状をただ眺めていた。
「――ふははははッ! あぁ、コカビエル。できた! 完成したぞ! 聖剣エクスカリバーを私が完成させたッ!」
「おいおいおい! 俺っちの聖剣ちゃんチョー輝いてやがんぜ! え、何? ほとんど昔のエクスカリバーに近い? バルパーのおっさん、あんたホントにいかれてるぅ!」
「褒め言葉だ。……さぁ、この聖剣で悪魔どもを――ぐっふぅ!」
バルパーが呻いたことでリアス率いるイッセーたちは正気に戻る。
赤い篭手を身に着けたリクトの拳がバルパーの腹に入っていた。首からは『聖母の抱擁』掛かっており、発光している。殴ったと同時に治癒したのだ。とはいえ痛みはある。殴られ即座に回復されたバルパー・ガリレイは気絶し、無傷でグランドに横たわることになった。気絶した彼をリクトは結界の外へと投げ飛ばす。
「テメェは……あぁ! あぁッ! てめーはッ!! 俺様を虚仮にしてくれた……!」
「……誰だっけ? あぁ、このおっさん用無しだろうからこっちで貰うな。白髪神父」
「オボエテねぇだとぉ……! エクスカリバァアアアア!!」
エクスカリバーが発光する。目にもとまらぬ速さに加え、実際に剣の姿が見えなくなった。だというのに対するリクトは避ける気がないといわんばかりに一歩下がっただけ。――剣と剣がぶつかり合った金属音が鳴り響く。
「君の相手は僕だよ! リクト先輩、ここは任せてください! ――出来たんです。試させてください」
「それじゃ任せた。後でこれを――……いや、今渡しとこう」
割り込んできた木場が振るった剣はエクスカリバーに打ち負かされることは無く、逆に白髪の神父、フリード・セルゼンを仰け反らせた。そこへ思い直したリクトが跳び蹴りで追撃し、フリードは跳んで行く。リクトが握っていた物を木場に手渡す。
「これは?」
「聖剣の因子。木場の仲間たちが集められたのは、少ないながらも聖剣への適性を持つ子供たちから、その適性を因子として集め、一つの聖剣の因子の質を高めるため。――つまり人造の聖剣使いを作るため、因子を集め……無用になった子供たちを処分したんだよ、あのバルパーは」
「――ッ! バルパーッ! お前というやつはッ!」
「今言っても仕方ない。……ただ、この因子は受け取ってあげてくれ。きっと奴に殺された子供たちも少しは報われるんじゃないかな」
「っじゃあ……もしかしてこれは」
「木場の仲間たちから取られた物。見たところだと木場に対する想念が残ってるよ。……こんな時だけど、最後のメッセージを聞いてあげたらどうだ? 聞けるようにしておいたから」
木場の歌う聖歌が聞こえてきた。不思議と悪魔には被害はない。
リクトは木場から離れ、一瞥してコカビエルに向き合う。篭手だけでなく、光翼を出現させていた。
「な、何故だ! 何故! 悪魔のお前がそれを持っているのだッ!! 奴と同じ神滅具が――同時期に同じ神滅具が存在するなどッ!」
――『『Welsh & Vanishing Double Balance Breaker!!!!!』』
背中にある宝玉と篭手の宝玉から禁手化を告げる音声が流れた。――篭手と翼を起点に赤い銀の鎧が展開されていく。赤銀の鎧、『
「……堕天使とは高いところから誰かを見下ろすのが好きなのか? 神に堕とされたことを気にしてるのか? 生憎と、俺は堕天使じゃないからわからないんだが」
「ッ……それに何故相反する神滅具が――まぁ、いい。……何者だ貴様」
「ただの人外だよ、堕天使。血沸くような、飽くなき戦闘をしたかったのだろう? 俺が相手してやる。……下の事は気にしないでもいいようにしよう」
結界を張り、結界内の時間の流れと外の時間の流れをずらした。
「……ふん。分かる、分かるぞ。貴様は俺様よりも強い。何故あんな悪魔どもと一緒にいる。お前なら一人でも十分やっていけるのではないか?」
「そうでもない。所詮個人は個人。集団に勝てるといったらそれは英雄的人物くらいだ。――その英雄も最後は集団に殺されるんだがな。……あの連中とでないとできないこともある。だから俺は『はぐれ』になったりしないんだよ。……あぁ、それと提案なんだが――」
提案を聞いたコカビエルが狂ったように笑う。
「大概貴様も狂ってるなッ! いいだろう。その賭け、乗ろうッ!」
「いい返事を聞けて何より。――では、行くぞ?」
――『『Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost! ……』』
計50回の倍加。瞬間、リクトの背後の空間が爆ぜた。時間が止まったような感覚を覚える中、コカビエルに近寄り軽く身体を押した。それだけでコカビエルは吹き飛び、リクトの張った結界の壁に叩きつけられる。意識はあるが、朦朧としており、飛ぶことすら儘ならなかった。……しかし、それで終わるのは許されない。首にぶら下げた『
「……まだ終わりたくはないだろう? 今まで力を振るえず、燻っていたはずだからな。存分にかかってこい」
「屈辱的だがその通りだ。――だが、まだ負けは認めん! 一撃でも入れねば、あの戦争で先に逝った部下にも示しがつかんッ! 二天龍に巻き込まれ、殺されたアイツらのためにも一撃はッ!」
復帰したコカビエルが光の槍を生み出す。槍は止まる事を知らないように大きくなっていく。
「ふぅ……いつ以来だったか。各上相手に挑むのは。……やはり、あの戦争の時以来だろうな。――喰らうがいい、下級悪魔よッ!」
「動きを止められた……っ!?」
光の槍は投げられた。その大きさに比例せず、閃光の如く鎧姿へと接近する。避けようとするも体はその場から動かない。ならば、と思いリクトは甘んじて攻撃を受ける。直撃と同時に起きる衝撃と光の奔流。少し鎧に罅が入った。
「……やはり駄目か。だが一撃は入れた。油断したな、悪魔。俺は星と星座の運行を司る堕天使だぞ」
「なるほど。納得した。……だがそんな簡単に手の内を明かしていいのか?」
――コカビエルは天界にいた時、星と星座の運行を司る天使だった。星の運行とはつまり、重力を自在に操ること。重力を操り、星座を動かす。――神が死んだ今、遠く離れた宙に浮かぶ星を操れることはできない。しかし、今でも地球の人ひとり程度は重力で足止めすることが出来るだろう。
――だがそれでも力の差は埋まらない。神に従属していた天使であった堕天使と、三大勢力が力を合わせて神器に封印した、神を殺した龍の二匹。勝負は始まる前からついていた。
「もう打つ手はない。――あれで駄目だったのだ。もう勝てるわけがないだろう。潔く負けを認めよう」
「そうか……もういいんだな?」
「あぁ。だが、――約束は違えるなよ、悪魔」
「……勿論だとも。契約を守るのが悪魔だからな」
――……では、一度気絶して貰うぞ。
リクトが接近し、コカビエルの首に一撃入れる。
コカビエルが意識を失う前に感じていたのは久しぶりに感じた、戦いの後の高揚感だけだった。
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祐斗先輩がリクト先輩に渡されたもの握りしめた後、周りに現れた幽霊の子供たちと色々な感情をこめて聖歌を歌っていた。不思議と頭痛はしなかった。――イッセー先輩に後で聞いたところによると、聖歌を歌い終わった後で禁手化したらしい。それから駒王学園の上空が結界に覆われた。
あの神父を祐斗先輩が相手をしているのに対して私たちの前には五体のケルベロスがいる。昔の私なら一匹相手するのも難しかっただろう。
今の状態でも倒せるけど、慢心はしない。私は内気を高め、取り込んだ外気と合成する。合成した気の何割かを闘気に変えて、お姉ちゃんに教わった『猫魈モード』を使った。
尻尾が増えて、ちょっと体が成長する。
初めて使ったとき、将来自分がぺったんこじゃないって知ったときは嬉しかった――のは秘密。
イッセー先輩の視線が気持ち悪いので、気円斬の応用で作った火車の中に入れて締め付けておく。
「熱い! 痛い! 止めて小猫ちゃんッ!」
「そのいやらしい視線を止めてくれたらやめます」
「うん、それムリ! あっぢぃいいい!」
鎧着けててもわかるいやらしい視線をどうにかしてほしい。ホント切実に。
それをなくせばモテなくもない容姿と性格をしているというのに。
ただ今は有事なため解放してあげた。
「一人につき一体相手すればいいですか、リアスお姉さま」
「え、えぇ……小猫なの?」
「小猫です」
リアスお姉さまが驚くのも無理はない。私は今、部長二人と同レベルなのだから。峰不○子に勝て……ないか。あとお姉ちゃんにも勝てないや。
「はぁ……じゃあ先に倒してきます」
上には上がいるという非情な現実に対して一つため息。
――私は『戦車』だけど足にも自信はある。リクト先輩が言っていた。
『パワー×スピード=最強』
なんですかソレ、とツッコミを入れた私は悪くない。
曰く、「攻撃は最大の防御。当たらなければどうということは無い。見敵必殺。サーチ&デストロイが出来る白音ちゃんは強い!」なのだそうだ。……お姉ちゃんも頷いていたから似た者同士のバカップルめ、とつい思ってしまった。まだ恋人じゃないらしいけど。一緒に夜寝てるのに。
……でも二人の言う事は正しい。攻撃をされるまえに相手を倒すことが出来るのが一番良い。カウンターに引っかかったとしても避けることが出来たなら攻撃されることはない。
「「「キャウン!?」」」
「ケルベロスにコレは似合わないか」
ケルベロスに近づいて気を乱し、周囲に待機させてた気円斬と火車で毛を刈り取った。ちょっとやりすぎちゃったかも。
……ケルベロスは殺さなくてもいいかな。お腹見せてきてるし。肌の色が見えて全身ピンク色だけど……可愛げがないこともない。
うん。アーシア先輩にあげよう。