そして今回から原作だと言ったな。あれは嘘だ。
すみません。
駒王町。
春、麗かな日差しの下で桜の木が揺れていた。
そんな何処にでもあるような、名門女学校であった私立駒王学園があるだけの町。
……其処が名門貴族、悪魔グレモリーとシトリーの領地である事を除けば、だけども。
「それにしてもグレモリーか」
「……」
新年度入学式の翌日。
黒歌が妹の気配がする、というので此処駒王学園へと連れてきたのだけど。
……案の定彼女の妹白音は新一年生として入学していた。
「……でもまぁ、鬼畜外道な輩が妹さんを引き取ったりしなかったから良かったんじゃない?」
「……うん」
「話してくる?」
黒猫の姿から人間の姿になって鞄の中から出てきた黒歌は俯き首を横に振る。
やっぱり拒絶されるのが恐いんだろうか。
まぁ、新入生の塔城小猫……白音ちゃんからみれば、仙術に溺れて主殺しをした姉、って風に演じてたらしいし。
「……まぁ、機会があれば話せるさ。きっと」
「……ごめんにゃあ」
俺の通う駒王学園。そこの高等部三年。
態々隣町から通う事に決めた現在18歳の俺は、現在淡い二度目の青春時代最後の年を送っていた。
残念ながら原作キャラ……オカルト研究部の面々とは違うクラス。
だから関わりも全然無い。
「帰ろうか、黒歌さん」
「……うん」
人目に気を付けて、俺はお得意の能力で家に帰還した。
「リクト、ご飯何が良いかにゃん?」
「何でも良いけど……生姜焼きかな」
「りょーかいにゃー」
エプロンをつけて張り切る黒歌。
彼女の中で何があったのか知らないが、毎日の食事を作ってくれるようになった。
確かに俺としては有り難い。そして嬉しい。
ただ『迷惑掛けている』と、気負ってやってくれているなら申し訳無い気持ちになる。
本当のところはどうなのだろうか。
女として料理の腕が負けた事が苦やしかったのか、はたまた住む場所を提供している事への恩返しなのか。
恩返しなら、リアルで猫の恩返しだなぁ、とか阿保なことを考えつつエプロン姿の彼女を脳内に収めていた。
「……ジロジロ見ないで欲しい。気が散るにゃ」
「ごめん。かわいいなぁ、って思って」
「はいはい。どうもありがとね……お皿出しておいてくれるかにゃ」
「りょーかーい」
新婚夫婦みたいだが違うんだ。
カップルでも無いんだ。
……
「……はぁ」
「……うにゃ」
溜め息をつく俺、フライパンを握る黒歌は溜め息をついた。
どうにもこうにも……世の中儘ならない。
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「うーん……70点」
「あと30点かにゃあ……」
この家の主、奴良リクトは料理に厳しい。
何故かは分からないが途轍もなく料理が美味しいのだ。
なんというか心に響く料理と言ったら良いかな。
――とにかく美味しい。
調味料とか普通なはずなのににゃあ……。
「まぁでも初めの頃よりは成長したんじゃない?」
「うっ……言わないで欲しいにゃー……」
恥ずかしながら、リクトに会うまでは料理なんてお粥や簡単に作れる玉子焼きくらいしか作れなかった。
でも、玉子焼きには自信はある。
……褒められたし。
「料理してちょっとは気が晴れた?」
「……まぁ、少し。でもやっぱりちょっと」
「そっか。……白音ちゃん。笑顔の似合う女の子、じゃなかったよね……笑うそぶり一つも見せてなかったし……」
私のせいだよね。……ごめんね、白音。
「ま、元気そうで良いじゃない。昼食もしっかり食べてたし……ちょっと食べすぎな気はするけど」
「にゃ、にゃははは……はぁ。……食べれる時にはしっかり食べときなさい、って死んだお母さんに言われてるから」
「数の少ない妖怪だもんな……命を狙われる事も多いだろうし。……でもアレはちょっと一言言わせて貰いたいくらいの偏食だな」
「やっぱりそう思うにゃ……」
お姉ちゃんは白音がデブのぽっちゃりにならないか心配です。
まぁ、ぽっちゃりな白音も可愛いと思うけど。
「さて。そろそろ俺、あっちの世界に首突っ込もうと思ってます」
「……本当に良いの?」
今まで認識されないようにしてたのに。
「とは言うものの色々やらかしてるから今更なんだけど。……まぁでも、きっと黒歌の手配書を取り消す功績を作ってみせるからさ」
「……」
……そろそろリクトにちゃんと答えて上げても良いかなって思う。
でも、白音との事。ちゃんと決着をつけてから。……でもまだ決心つかないからもうちょっとだけ。
「……私についてはもうちょっとだけ待ってて欲しいにゃ」
「うん? ……まぁ、気長に待つよ。……早ければ嬉しいけどさ」
一応、もう気持ちは伝えているのだけど。
別に私は嫌いって訳じゃない。お付き合いの事、考えてみるって。
私と白音との事が解決するまで私は自分の幸せは望んじゃ駄目だから。
――春。リクトが高校生最後の学年。
始まった新年度で何が起こるのか……まだ私には想像つかない事だった。
ホントのホントに次回から原作突入。
何箇所か修正しました。