リクトの家に帰ってお風呂に入った後。
私はさっぱりして扇風機で涼んでいた。
……にしても今日は驚いた。
まさかあの亜種禁手で転生悪魔が人間に戻るなんて。
アレを使えば私がはぐれ悪魔なんて名称を付けられなかったのに、とふと思う。
そんな時だ。
「黒歌さん。『聖母の抱擁』で悪魔から妖怪に戻りたい?」
そんな事をリクトは言ってきた。
恐らくもなにも、……今日やって見せた禁手のことだ。
私は、SS級はぐれ悪魔である、黒歌は妖怪に戻る事を選ぶべきだろう。
……だけど私は首を横に振って答える。
「いいの? それで」
「……良いのにゃ」
きっと私があの悪魔の所に居たらお願いしてただろう。
でももう今は「~たら」「~れば」の話。
「……だって白音を放っておいて私だけ戻るのは白音に悪いと思うから」
あの子も私も。
必要に迫られて悪魔になる事を選んだ。
だから私だけ一人妖怪に戻るのは……なんだか悪い気がする。
「そっか……だったら白音ちゃんとのことが解決したら、また聞く事にする」
「……うん。ありがとう」
やっぱり優しい。
ちゃんと返事ができないのはやっぱり辛い。
……早く私も解決しないと。
「じゃ、俺は計画通り進めるからさ。……でもそれまでには解決して欲しいカナーって」
意地悪く笑いながら言う。
なんでそんな酷い事言うのか。さっき決意したばっかりなのに。
宿題をやろうと思って「やりなさい」って言われた時みたい気分。
私は気分を害した!
まったく……それが出来てたら今日みたいに一緒に学校行かないのに。
今日も白音を遠目から見守る一日だったのにっ!
……でも、進展も無いし……。
「……じゃあ、やっぱり妖怪に戻った方がいいかにゃー…?」
「いや。きっと姿が似てるってだけで狙われるだろうから。結局俺が頑張んないとね」
「そっかー…」
結局私は彼に頼りっきりになってしまうのか。
やっぱりどうにか改善したい。
「じゃあそろそろ俺は寝る。……さて、黒歌も一緒」
「駄目にゃ!」
「やっぱりかぁ……」
ショボーン、って顔文字みたいになってるけど駄目なものは駄目。
リクトの隙あらばエッチなこと言ってくる所は嫌い。
……無理矢理そんなことしないって分かってるけど。
付きあっても無いし、そんな事したくない。
――私達は友達以上恋人未満なんだから。
「……分かってるんだか分かってないんだか」
ちょっと悲しそうにしながら自室に帰っていく彼の後姿は気持ち小さく見えた。
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朝、黒歌がベッドの中に潜りこんできていたなんて美味しいイベントなんて更々無く。
今日も今日とてハイスクールに通っていた。
そしてお昼時。
今日も黒歌さんの手作りお弁当である。
最近料理をしてないので鈍って居ないか心配だ。
……今日は自分が夕食をつくろう。
「おい、あれ。隣の組の朱乃さんじゃん……どうしたんだろ、ウチのクラスに」
「ん? あー……」
そんな事を飯を食う連れの一人が言った。
彼の視線の先はキョロキョロと辺りを見渡す姫島朱乃。
オカルト研究部副部長その人だった。
こいつぁくせぇ! 厄介事の臭いがプンプンするぜぇ!
……と、よし。何か起きる前に俺から行動をしようか。
「……わりぃ、多分あの人俺に用事あるんだと思う」
「なんでっ!?」
「昨日あの人なんか暴漢に遭いかけててな丁度俺がその現場に出くわして」
「なるほど、その暴漢をギッタンギッタンにして助けたのか……」
「いや、一緒に逃げた」
「だろうと思ったよ。……じゃ、先に食っとくな」
「スマンな」
黒歌印の弁当を持って件の人物に話しかける。
俺が話し掛けない限り見え無いようにしてるし、それのせいでキョロキョロしてたんだろう。
全部俺が悪いな。……バレたら恐い。
「こんちわ、姫島さん。昨日の暴漢ヤバかったですね。あれから大丈夫でした?」
「えっ……!? え、えぇ…?」
目の前に急に現れて吃驚したんだろう。ちょっと返事が遅い。
「なんでこんなつまんないクラスに来てるのかは知らないですけど……あ、昨日のお礼なら良いですからね! そんなたいした事した覚えはないんで!」
ただ、この人は策士だ。
なら策を考えさせる前に流れを作って俺に好都合な噂が流れるようにする。
……何も手をうっておかないと、あっちからの呼び出しで告白されただとか色々要らない
「…………じゃ、あの時の奴良陸人さんであってますよね?」
「えぇ、そうですよ。……あ、昼飯食べました? 良かったら一緒に。……それで昨日のお礼って事にしてくれれば結構ですから」
「……うふふ。それじゃ、屋上に行きましょうか……人の目も少ないですし」
「勘弁して下さいよ。そんな事言われると勘違いしちゃいますよ?」
「あらあら、そうなの……ちょっぴり残念。……ちょっと待ってて下さいますか? お弁当箱取って参りますので」
「……了解です」
綺麗なお辞儀をして去って行く。
うーやっぱりあの人苦手だ。
回復も早いし、意図返ししてきた。
黒髪の美人だけどやっぱり黒歌のほうが断然良い。
素直だし可愛いし健気だし可愛いし美人だし。
コソコソと周りが話しているのを流しながら暫く待って。
大変不本意な噂をされつつ、二人並んで屋上に向かった。
「……つまり貴方は公園で転寝をしていたら死に掛けの兵藤君とリアスに遭遇した、と?」
「そんなとこです。まぁ、彼が助かって良かったです」
人気の無い屋上の一角。
備え付けられているベンチに腰を掛けて昼食を取りつつ、学園のお姉さま姫島さんに話を聞かれていた。
「悪魔をも治す
「……そんな大層なものなんですか、これ」
知らないフリ知らないフリ。
知ってたとしても偶々発現したって事にしておこう。
「あらあら、何をとぼけていらっしゃるのですか。貴方、裏の事はご存知でしょう?」
「いや、悪魔だとか堕天使だとかが襲ってきたことがあるから知ってるんですよ? 偶々なんか発動して撃退してきましたけど」
「それはそれは。そうでしたか……御免なさい、辛い事を思い出させてしまったなら謝りますわ」
「いえ、まぁ別に厄介だっただけですけども……器物破損とか色々」
「……そうですか」
設定としては割と与太話程度な迷惑具合である。
……でもそれだけ強力な神器だということは印象付けれたろう。
「益々興味深いですわね。もう少しお話しを聞きたいですけど、もうお昼休みも終わりそうですし……今日の放課後、旧校舎のオカルト研究部に来ていただけますか?」
「……いいですけど。取って食ったりしませんよね?」
「うふふ。しませんわ。……魔王様に誓って」
「神じゃないんですね。流石悪魔。……ま、貴方みたいに話の分かる悪魔も居てちょっと悪魔のこと見直しました」
「ふふ、そうですか……それは有難うございますわ。……それでは、放課後また」
どうにも薄っぺらく見える微笑みを残して、姫島朱乃は屋上から去って行った。