黒歌が可愛くてつい始めた話。   作:楯樰

7 / 42
始まった日

 いつになく憂鬱な昼休憩が終了し、5限6限の授業はダラダラとしながら受けた。

 

 そして放課後。

 女子生徒は部活に励み、少ない男子生徒も部活に励む。

 残りの生徒は家に帰るか、校内に残って勉強する。

 そんな生徒の時間。

 

 ……元来帰宅部の俺は駒王学園の旧校舎に足を運んでいた。

 そして黒歌は鞄の中に戻ってきていない。

 何時もなら戻ってくる時間なのでちょっと心配だ。

 色々と『ずらしている』から車に撥ねられたり怪我をするようなことは無いと思うけど。

 

 思考を(めぐ)らせながらも旧校舎の中、魑魅魍魎の跋扈するオカルト研究部を見つけた。

 

「失礼します。三年A組の奴良リクトです」

「……どうぞ」

 

 中から知った声が。

 知り合いが居るということで遠慮せずに扉を開ける。

 

「や、小猫ちゃん……その猫は?」

「……こんにちわ奴良先輩」

 

 部室内には旧知の仲、塔城小猫一年生が愛しの黒猫こと、黒歌を膝の上に置いて撫ぜていた。

 小猫……白音ちゃんの前の椅子に腰掛けて膝の上の彼女を眺める。

 ……すっごい黒歌さん身体が強張ってるんですけど。

 お前さん何があったし……なんで捕まってんの?

 

「……さっき旧校舎の前で拾いました」

「そっか。……なんで拾ったか聞いて良い?」

「知ってる猫に似てる気がしたので……」

「そうなんだ……」

 

 一応気づいていないみたいだ。

 でも流石妹。

 姉の事なら一応察することくらい出来るか。

 で、違ったので声のトーンが低い、と。

 

「ふーむ……そいつ貰って良い? 多分ウチの猫だ」

「……そうなんですか?」

 

 言ったら黒歌の身体がピクリとした。

 べ、別に疚しい事なんて考えて無いかんね!

 

「実はこっそり家から連れてきてて。……だって学校行こうとするとついて来ようとするんだもん」

「……本当に?」

 

 ニャー! とか否定する声が上がる。

 同じように小猫一年生は疑うような目つきで見てきてた。

 猫魈だから猫の考えてることとか分かるんだろうか。

 

「……ごめん、嘘ついた。俺がそいつと離れたく無いから連れてきてるんだわ」

「……そうですか……はい、奴良先輩」

 

 そして渡される黒歌。

 よし、もふって…………いや、そんな暴れなくてもいいじゃない。

 

「……先輩元気出してください。きっと良い事あります」

 

 黒歌は腕の中から逃げ出して、横においたバッグの上に鎮座した。

 つーん、とした猫の動きで顔をあわせてくれない。

 ……帰ったら怒られるな。

 

「はあ……有り難う小猫ちゃん。……良い子な小猫ちゃんにはお菓子を上げよう」

「……今日はクッキーですか。いつも思うんですけど何処から出てくるのか分からないです」

「知りたい?」

「……知りたいです」

「四次元ポケット~(だみ声)」

「ぷっ!」

 

 知り合ってから二ヶ月くらい。

 今後のためにも、知り合いになっておこうと思って接触を続けてきたのだけど、最近は表情が多少豊かになったと思う。

 

 ……一応、食生活には一言言わせて貰った。

 あんなに偏った食事をしてたら太る。

 唯でさえ悪魔で猫魈だから寿命長いんだし。

 いまからあんな状態では4、50年で生活習慣病になる。

 

 ……おっと、黒歌がうらやましそうな目でこちらを見ている!

 

 仲間にしますか?

  はい

 →いいえ

 

 ……ゴメンってば。

 

「で、リアスさんはまだ?」

「……そうです。……そういえば先輩は神器持ってるんですか」

「うん。といっても日常生活じゃあんまり使わないような物だけどね」

「先輩は隠すのが上手いですね」

「まあね……あ、お邪魔してます。部長さんに副部長さん」

 

 のほほん、と我が物顔で部室の中に座っている俺。

 入り口、扉の開いた先に居るここの主の眉がピクリと引きつった。

 

 -------------------------

 

 ココの主、リアス・グレモリーが顔を顰めながらシャワー室に消えた。

 もう少し懐を広く持って欲しい。

 白音の『王』なら王らしくあって欲しい。

 あと客人が来てるのに目の前でシャワーを浴びるのはどうかと思う。

 

「……部長がすみません」

「いや、まぁ……俺が早く来すぎたのが間違いだったみたいだし。小猫ちゃんが謝ることじゃないさ」

 

 ――白音。

 まさか捕まるとは思わなかったけど……私の事、リクトが言うようにやっぱり引きずってた。

 でないと猫又でも猫魈でも悪魔でも妖怪でもない……完全に隠蔽してある私の事を捕まえるはずないから。

 辛かったよね白音……ゴメン。

 お姉ちゃんが間違ってた。

 

 ……というか、あなたは謝らなくてもいいのよ?

 

「あらあら。小猫ちゃんがそんな風に……部長には私が謝らせますわ」

「ま、些細なことですし。気にしませんよ」

「聞こえてるわよ朱乃! 小猫!」

 

 ――で、前リクトが言ってたリアスの所の『女王』。

 この学園でも有名人らしいけど、リクトは彼女のこと苦手だ、って言ってた。

 なるほど、確かに腹に何か持ってそうな感じがする。

 上手に隠してると思うけど……彼は演技だとか凄く上手いから。

 

 ……にしても良い性格してるよ、あの人。

 リクトが苦手にする理由分かったかも。

 

 見た限り此処の『王』のリアスは中々良い眷属を集めてる。

 私と同じ猫魈の白音。

 学園の中で噂に聞いた木場佑斗。

 それから多分……あの『女王』は堕天使と人間のハーフ。

 

 分かるだけでも才能のある人材ばかりだ。

 ……あくまで才能を見た限りだけど。

 

「――学園のマスコットの塔城小猫ちゃん!?」

 

 ――で、今来たのが『兵士』。

 リクト曰く、変化の無かった世界を動かす「愛すべき馬鹿」にして「ド変態」。

 

 兵藤一誠。

 

 悪魔に転生し、人間に戻った今代の赤龍帝。

 その変態が今――顔をだらしなくさせてリアス・グレモリーのシャワーカーテンに映るシルエットを眺めていた。

 

「……いやらしい顔」

 

 ……やっぱりそんな奴には見えないよ。

 あと白音がなんだか黒かった……ちょっと悲しい。

 

 

 ――――そうして異形と人間の対談が始まった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。