修次は辰三と安田と共に修造の元へと向かうとアドレナとのやり取りを話す。
「……ふむ。難民の受け入れと援助か」
「はい」
修造に修次は頷く。
「こう言っちゃなんですが、兄貴は少し肩入れし過ぎじゃないですか?」
「失礼を承知で言わせて貰いますが、自分もタツの意見と同じです。
それに自分達は任侠を重んじているとは言え、ヤクザです。
見返りを求めるにしてもデメリットが大きくて問題があるのでは?」
その言葉に修造は辰三と安田を睨む。
「テメエら、いつから兄貴分の修次に意見出来る程、エラくなったと勘違いしてんだ?」
「ひっ!」
「ーーっ!?」
修造の威圧感に蛇に睨まれた蛙の如く、辰三と安田は固まる。
そんな二人を見てから修造は視線を修次へと戻す。
「ーーとは言え、二人の意見にも一理ある。
俺の見立てでも、その辺りはもう少し値踏みしても良いかも知れん。
疲弊するギリギリまで泳がせても良いだろう」
「……自分も、そう思います」
修次が同意すると修造は何か言いたげな彼を見て、笑う。
「そう思っているってんなら、そんな複雑そうな顔をするのは止めろ」
「……すみません」
「言いたい事があるなら言ってみろ。
俺の跡を継ぐお前までダンマリ決め込む必要はない」
「ですが……」
「俺は本音で話せっつってんだ」
修次は修造のその言葉に黙り込むとポツリと呟く。
「今回の難民の一件は俺に非があります」
「ーーっ!?何を言ってんすか、兄貴!?」
思わず、前に出ようとした辰三を安田が慌てて止める。
それでも辰三は兄貴分の修次に向かって叫ぶ。
「兄貴は何も悪くないでしょ!?
米軍からハジキ返して、ロボットも止めたじゃないですか!!」
「だが、俺は予期していた。それが自分のシマか、そうじゃないかってだけだ」
辰三に修次はそう告げると修造を見据える。
「義親父。罰はなんなりと……」
「感情的でさりげなく、仁義を飾った言葉だ。だが、俺にはそれがお前の本音には聞こえねえな?」
「では、なんと答えれば?」
「言った筈だぞ。お前の本音を聞かせろと……」
その言葉に修次は戸惑う。
そんな修次を見て、修造は笑った。
「仁義を飾る必要も堅気を言い訳にする必要もねえ。
俺はただ、お前が望んでいる事を聞きてえんだ」
「自分はーー」
そこまで言い掛け、修次は意を決して発言する。
「俺は自分みたいな親兄弟をなくしたガキを作りたくありません。出来る事なら全員助けたい。
でも、俺には腐っても月岡組の筆頭若頭と言う肩書きがあります。
そんな俺がおいそれと人助けなど、出来る訳がありません」
「それがお前の本音か……なら、して来い」
「「「……え?」」」
一瞬、何を言われたのか、辰三や安田も含め、修次は目を丸くする。
そんな修次を見て、修造はしてやったりと言う顔をした。
「お前の発言はヤクザとしちゃあ、確かに甘い。
だがな、誰かが誰かを助けたいなんてのに理由なんざ、いらねえ」
「……で、ですが、義親父。それでは月岡組の面子がーー」
「組にとって親の命令は絶対だ。
それを解ってて面子がどうのを言うんだろうな、安田?」
「い、いえ!滅相もありません!」
「解ってんなら黙ってろ。それにお前達、さっきから任侠とは言え、腐ってもヤクザだとかだ抜かしてたな?」
そう言うと修造はガンとデスクを片足で踏み、その膝に肘をついて修次達に叫ぶ。
「テメエら、揃いも揃って月岡組の看板を汚す気か、馬鹿共!
俺が親な内はヤクザを名乗る前に任侠を語れ!」
「「は、はい!」」
「返事する暇があるなら、とっとと行って来い!
これは月岡組組長・月岡修造直々の命令だ!
解ったら、人を集めて、怪我人やら孤児を早く助けに行きやがれ!」
その叫びに辰三と安田が慌てて出て行く。
そんな二人を見送ってから修次はデスクから足を下ろして椅子に座り直す修造に頭を下げる。
「ありがとうございます、義親父」
「礼はいい。お前もさっさと行け」
「はい。行って来ます」
修次は再度、一礼すると部屋を後にした。
そんな修次を見送ってから、修造は独り苦笑する。
「俺も甘くなったもんだ。そろそろ、修次の奴に跡を継がせるかな?」
ヤクザが主役のバイオレンスものの黒い獣はR-15でなく、R-18にした方が良いでしょうか?
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R-15で大丈夫でしょう
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いやいや、R-18になるでしょう